COVID-19関連追加(202135日)

トシリズマブについて その3

当院HP関連ファイル:

2020820-2

2021127

Covid-19におけるインターロイキン-6受容体阻害(EDITIORIAL)】

Rubin EJ, et al. Interleukin-6 Receptor Inhibition in Covid-19 — Cooling the Inflammatory Soup. N Engl J Med. Feb 25, 2021. https://doi.org/10.1056/NEJMe2103108.

ウイルスは自分自身で複製することができない.その代わりに、ほとんどすべての複製機能を宿主に依存している.同様に,多くのウイルスは宿主の免疫システムなしでは傷害を引き起こすことはできない.このため,多くの場合,2つの戦略で疾患を改善することができる; 複製を遮断する抗ウイルス薬と,感染によって引き起こされる傷害を制限することができる抗炎症薬である.肺では,この後者の戦略は,Pneumocystis jiroveci肺炎をグルココルチコイドによって治療することで疾患重症度と死亡リスクが軽減することが示されている1)2).しかし,炎症経路を遮断することで宿主の反応が低下し,病原体の複製が増加する可能性が高まるため,抗菌薬または抗ウイルス薬が同時に使用されている.

Covid-19ではSARS-CoV-2ウイルス量が低下している感染後に遅れて多くの患者で重篤な症状が発現したため,局所炎症の役割が明らかになった。Covid-19の炎症を媒介する主要な候補の1つは,マクロファージによって産生され,炎症惹起反応を誘導し,Covid-19患者ではしばしば上昇するサイトカイン,インターロイキン-6である.インターロイキン-6の魅力の一つは,サイトカインまたはその受容体のいずれかを遮断する薬剤がすでに承認されていることである.実際,この治療に対する関心は非常に高く,インターロイキン-6遮断薬は,その有効性の証拠を得る前から米国で広く使用されていた.しかし,SARS-CoV-2の複製を遮断する強力な抗ウイルス薬がないため,この治療戦略が安全かどうかは明らかではなかった.今回,2つの試験の結果がJournalに掲載されたが,明らかに矛盾する結果であった.

Randomized, Embedded, Multifactorial Adaptive Platform Trial for Community-Acquired PneumoniaREMAP-CAP3)では,呼吸器または血圧補助,またはその両方を必要とする患者約800人が,プラセボ、またはインターロイキン-6受容体遮断薬(トシリズマブまたはサリルマブ)の単回投与に無作為に割り付けられた.主要転帰は,21日目までの院内死亡および呼吸器または血圧補助がない日数の複合であった.インターロイキン-6受容体遮断薬を投与された群の院内死亡率は27%(対照群36%)であり,臓器補助がない日数の中央値は10-11日(対照群0日)であった.より伝統的な無作為化比較試験であるCOVACTA 4)では,酸素飽和度93%以下の患者452人が,トシリズマブ単回投与群とプラセボ投与群に2:1で無作為に割り付けられた.主要転帰は28日目の臨床状態であり,死亡率は副次転帰であった.トシリズマブ投与群の臨床状態の中央値は1(退院または退院準備中),対照群の臨床状態の中央値は2(集中治療室から退院し,補助酸素を投与していない)であった.死亡率はトシリズマブ群で19.7%,対照群で19.4%であった.両試験ともオープンラベルであったため,臨床管理に関する意思決定に影響を与えた可能性がある.

これらは,インターロイキン-6阻害の役割を評価するいくつかの試験のうち,最新のものである.ほとんどの試験では死亡率に対する効果は認められていない5)-9).しかし,RECOVERY試験の最近のプレプリントでは,REMAP-CAPと同様に,トシリズマブを投与することで,疾患重症度が異なる群でも死亡率が低下したことが示されている10)

これらのばらつきのある結果をどのように理解すればよいのだろうか?各試験では,登録基準,抗インターロイキン-6療法を開始した時期(感染の時期および炎症の重症度に関して),主要転帰,背景の治療(background care)における違いがある.すべての炎症は同じではないかもしれない: 初診時に重症であった患者は,後に炎症が進行した患者とは異なる病態である可能性があり,治療のタイミングが反応を理解する上で重要であるかもしれないことが示唆されている.しかし,おそらく最大の変数は,試験が実施された期間であろう.Covid-19の基準となる治療は変化してきたし,感染流行が始まってから死亡率は低下したようにみえる.特に注目すべき変化としては,これらの試験のほとんどの治療対象である重症患者には,20207月に死亡率を低下させることが示されたグルココルチコステロイド11)が現在ではほぼすべての患者に投与されていることであるCOVACTA試験では,グルココルチコイドを投与された患者はごく少数であった; トシリズマブ群(19.4%)は,プラセボ群(28.5%)に比べて,グルココルチコイドを投与された患者が少なかった.一方,REMAP-CAP試験では93%RECOVERY試験では82%の患者がグルココルチコイドを投与されていた10)RECOVERY試験のサブグループ解析では,グルココルチコイドを投与された患者は生存率が高いことが示されており10),これはインターロイキン-6阻害との治療相互作用を示唆している.インターロイキン-6阻害とグルココルチコイドの併用は,異なる経路で作用するため,相加的または相乗的であるかもしれない.あるいは,グルココルチコイドの使用は,単に感染流行の過程で起こった他の治療の変化を示すものであるかもしれない.

 

References

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REMAP-CAP試験】

The REMAP-CAP Investigators. Interleukin-6 Receptor Antagonists in Critically Ill Patients with Covid-19. N Engl J Med. Feb 25, 2021.

https://doi.org/10.1056/NEJMoa2100433.

BACKGROUND

Covid-19患者に対するインターロイキン-6受容体拮抗薬の有効性は明らかではない.

METHODS

我々は,現在進行中の国際的な多因子適応プラットフォーム試験において、トシリズマブとサリルマブを評価した.集中治療室(ICU)で臓器補助を開始してから24時間以内の成人Covid-19患者を対象に,トシリズマブ(8mg/kg),サリルマブ(400mg),標準治療(コントロール)のいずれかに無作為に割り付けた主要アウトカムは,院内死亡(-1の値が割り当てられた)と21日目までの臓器補助を受けていない日数を組み合わせた順序尺度で,呼吸器および心血管補助を受けていない日数であった.この臨床試験では,優越性,有効性,同等性,または無益性(futility)の事前に定義された基準を持つベイズ統計モデルを使用している.オッズ比が1より大きい場合は,生存率の改善,臓器補助なしの日数の増加,またはその両方を表している.

RESULTS

ENROLLMENT AND RANDOMIZATION:

202039日にREMAP-CAPに最初のCovid-19患者が登録され,トシリズマブが使用可能になり,419日に免疫調節療法領域の無作為化が行われた.サリルマブが使用可能になったのは620日であった.1028日の中間解析の結果,独立データおよび安全性監視委員会は,トシリズマブが有効性の統計的基準を満たしていると報告した(事後確率99.75%, オッズ比1.87; 95%CI, 1.20-2.76).プロトコールによると,1119日には,異なるアクティブな免疫調節介入の間で継続している無作為化とともに,コントロールへの追加の割り付けは終了した.この時点で,重症患者2046人が少なくとも1つのREMAP-CAP領域で無作為化を受け,895人が免疫調節療法領域で無作為化を受けた(366人がトシリズマブ,48人がサリルマブ,412人がコントロール,69人が領域内の他の介入に割り付けられた)(Figure 1).患者30人がその後同意を撤回し,患者11人の主要アウトカムは失われた.その後の中間解析の結果,データおよび安全性監視委員会より,サリルマブも有効性の統計的基準を満たしているとの報告があったため,これらの結果も報告されている.

 

 

Figure 1: Screening, Enrollment, Randomization, and Inclusion in Analysis.

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Patients:

ベースライン特性は介入群間でバランスがとれており,重症Covid-19患者集団の典型的なものであった(Table 1, Supplementary Appendix Table S1).3人を除くすべての患者が無作為化時に,高流量鼻カニューレ(HFNC)による酸素療法(29%非侵襲的人工呼吸(42%侵襲的機械換気(29%を含む呼吸支援を受けていた大多数の患者(707人)は,617日およびRECOVERY試験16)17)によるデキサメタゾンの結果発表後に登録された; これらの患者のうち93%654人のうち610人)は、登録時またはその後48時間以内にグルココルチコイドによる治療を受けていたTable S2617日以前に募集された患者158人のうち,合計107人がREMAP-CAP内のコルチコステロイド領域で無作為化を受け,41人がヒドロコルチゾンの7日間コースに,39人がショック依存性ヒドロコルチゾン(shock-dependent hydrocortisone)に,27人がヒドロコルチゾンなしに割り付けられた13).レムデシビルの使用は807人のうち265人(33%)に記録された.

トシリズマブ群では,患者の92%が少なくとも1回の投与を受け,患者の29%が治療医の判断で2回目の投与を受けた.サリルマブ群では,患者の90%が割り当てられた薬剤を投与された.対照群では,患者の2%に試験プロトコール外の免疫調節薬のいずれかが投与された.

Table 1: Baseline Characteristics of the Patients in the Immune Modulation Therapy Domain.

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PRIMARY OUTCOME:

臓器補助を受けていない日数(organ support-free days)の中央値は,トシリズマブ群で10日(IQR, 1-16),サリルマブ群で11日(IQR, 0-16),対照群で0日(IQR, 1-15)であったTable 2, Figure 2調整オッズ比(主要モデル)の中央値は,対照群と比較して,トシリズマブ群で1.6495%CI, 1.25-2.14),サリルマブ群で1.7695%CI, 1.17-2.91)であり,それぞれ99.9%99.5%を超える優越性の事後確率が得られた.プールされたインターロイキン-6受容体拮抗薬群の院内死亡率は,対照群の36%397人のうち142人)と比較して,27%395人のうち108人)であった.院内生存率における調整オッズ比の中央値は,対照群と比較して,トシリズマブ群で1.6495%CI, 1.14-2.35),サリルマブ群で2.0195%CI, 1.18-4.71)であり,それぞれ99.6%99.5%を超える優越性の事後確率が得られた.感度解析の結果は,主要解析の結果と一致していた(Table 2, Supplementary AppendixにおけるTable S3, S4,そして統計解析委員会及び国際共同治験運営委員会の解析報告書).トシリズマブあるいはサリルマブとグルココルチコイドの併用療法を受けた患者における治療効果の推定値は,いずれかの介入単独の場合の推定値よりも大きく,インターロイキン-6受容体拮抗薬とグルココルチコイドとの間の相互作用の推定値は,相加的でわずかに相乗効果の方向にあったが,推定値にはかなりのばらつきがあった(Table S5, S6

 

 

Table 2: Primary and Secondary Outcomes.

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Figure 2: Distributions of Organ Support–free Days.

パネルAは,死亡を最初に,各介入群の患者の累積割合を日別に示している.曲線が徐々に上昇するほど,生存日数と臓器補助を受けていない日数の分布がより良好であることを示している.各曲線の”-1”の高さは,各介入群の院内死亡率を示す.任意の時点での各曲線の高さは,その時点での臓器補助を受けていない日数の,またはそれ以下の患者の割合を示す(例えば,10日目の高さは,10日目”以下”の臓器補助を受けていない日数を有する患者の割合を示す).任意の点における曲線の高さの差は,その生存日数と臓器補助を受けていない日数に関連した臓器補助を受けていない日数の分布におけるパーセンタイルの差を表す.パネルBは,介入群に応じて臓器補助を受けていない日数を水平方向に積み重ねた割合で示している.赤はより悪いアウトカムを示し,青はより良いアウトカムを示す.ベイズ累積ロジスティックモデルを用いた主要解析の調整オッズ比中央値は,対照群と比較して,トシリズマブ群で1.6495%CI, 1.25-2.14),サリルマブ群で1.7695%CI, 1.17-2.91)であり,対照群に対する優越性の確率はそれぞれ99.9%99.5%を超えていた.パネルCDはパネルABに似ているが,トシリズマブ群とサリルズマブ群をプールしたものである.調整オッズ比の中央値は1.6595%CI, 1.27-2.14)であり,対照に対する優越性の確率は99.9%を超えていた.

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SECONDARY OUTCOMES:

副次アウトカムをFigure 3Table S7に示す.トシリズマブとサリルマブは,90日生存期間,ICUおよび病院の退院までの時間,14日目のWHO順序尺度の改善を含む,すべての副次アウトカムにおいて有効であった18).同様の結果はサブグループにおいても認められた(Table S8, S9).

Figure 3: Time-to-Event Analyses.

個々の介入群別の生存率(パネルA)と,トシリズマブ群とサリルマブ群をプールした場合の生存率(パネルB)のKaplan-Meier曲線を示す.プールされた介入群での死亡は109人(トシリズマブ群99人,サリルマブ群10人),対照群では142人であった.この結果,ハザード比は1.6195%CI, 1.25-2.08)となり,インターロイキン-6受容体拮抗薬が対照群よりも優れている確率は99.9%を超える事後確率となった.また,個々の介入群に応じたICU退院までの時間(パネルC)および個々の介入群に応じた退院までの時間(パネルD)を示す.すべてのハザード比は対照との比較である.

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トシリズマブ群で報告された重篤な有害事象は,二次感染1例,出血5例,心臓イベント2例,視力低下1例を含む9例であった.対照群の重篤な有害事象は,出血イベント4例,血栓症7例を含む11例であった.サリルマブ群は重篤な有害事象は報告されなかった.

Discussion

我々は,重症Covid-19患者において,インターロイキン-6受容体拮抗薬であるトシリズマブとサリルマブが,大多数の患者(> 80%)でグルココルチコイドを含む現在の標準治療と比較して有効であることを示したこの有効性は,主要アウトカムと副次アウトカム,およびサブグループと副次解析の間で一貫していた

インターロイキン-6は疾患重症度と死亡率に関連する重要なサイトカインであることが,複数の観察研究およびex vivo実験研究で示されている19)-21).重症Covid-19患者を対象とした最近のゲノム解析では,インターロイキン-6炎症経路の遺伝的変異が生命を脅かす疾患(life-threatening disease)と関連していることが示された22).これらの観察は,重症Covid-19患者におけるインターロイキン-6経路を阻害する治療戦略を支持するものである.

我々の試験は,Covid-19におけるインターロイキン-6受容体拮抗薬の他の試験と比較すべきである.以前に報告された多くの試験では,重症度の低い患者が含まれており,すでに呼吸器補助を受けている患者は除外されている6)-8).これらの試験では,トシリズマブが疾患の進行を防止するのに有効であることを示唆する明確な証拠はなく,生存期間に関しても有益性は認められなかった.1つの試験では,対照群の死亡率は驚くほど低く(64人のうち2, 3%),退院までの時間はトシリズマブ群の方が短かったことに注目すべきであるが,安全性の懸念から中間解析で早期に中止された11)EMPACTAEvaluating Minority Patients with Actemra)試験では,全死亡率に大きな差は認められなかったが(加重差, 2.0ポイント, 95%CI, 5.2-7.8),トシリズマブを投与された患者はプラセボを投与された患者に比べて28日目までに機械式人工呼吸を受けるか,または死亡する可能性が低いことが示された(ハザード比, 0.56; 95%CI, 0.33-0.979)患者の約38%が機械式換気を受けていたCOVACTA試験では,トシリズマブ群とプラセボ群で28日目の臨床状態や死亡率に有意差は認められなかったが,退院までの時間はトシリズマブ群の方が短くなっていた(ハザード比, 1.35; 95%CI, 1.02-1.7910)サリルマブの臨床試験のデータはまだ入手できていないが,プレスリリースによると,全集団では有益性は認められないが,重症患者群では死亡率が減少する傾向があり,機械式換気を行っていないサブグループでは有害性が認められる傾向があることが示されている23)24)

トシリズマブとサリルマブでは、対照群に比べて臨床的改善までの期間が短く,死亡率も低かった.したがって,インターロイキン-6阻害による臨床的利益(すなわち,生存率の改善)が最大となるのは,死亡リスクが最も高い重症Covid-19患者である可能性がある.しかし,我々の試験では,患者はICUでの臓器補助を開始してから24時間以内に登録されなければならなかったことに注意することが重要であるこれは有効性を最大化するための重要な要素であると考えられる: 重症患者を早期に治療し,その間に発症した臓器機能障害はより可逆的になる可能性がある

研究者たちは,CRPやその他の炎症マーカーを用いて,炎症亢進状態の患者を選択して治療を行うことを提案している6)8).我々は,この重篤な患者集団のすべてのCRPサブグループにおいてインターロイキン-6阻害の有益な効果を認めた.Covid-19は”サイトカインストーム”を引き起こすと説明されているが25)最近の研究では,全身のサイトカインレベルは,敗血症や急性呼吸窮迫症候群の他の原因で見られるほど高くないかもしれないことが示されている26)呼吸機能障害によって証明されるような局所の炎症が,インターロイキン-6阻害がどの患者に有効であるかを示すより有用な指標であるかもしれない.トシリズマブやサリルマブなどの免疫調節薬を,新たなウイルス感染により重症化した患者に投与することに懸念が表明されてきた.本試験を含むこれまでのすべての試験で一貫した結果として,重篤な有害事象の増加が報告されていないことが挙げられる

REMAP-CAPの実用的で国際的なデザインは,我々の結果が重症Covid-19患者集団に一般化可能であることを意味しているが,標準ケアは他のICUや時間の経過とともに異なるかもしれないし,他の集団には異なるハイリスク患者が含まれているかもしれない.この試験には他の限界がある.この試験ではオープンラベルデザインを使用しているが,介入の割り付けが主要アウトカムの死亡率に影響を与える可能性は低い.これは初期の暫定報告であるため,11のアウトカムを含むいくつかのデータが欠落している.一部の患者は入院したままであるため,長期転帰はここに示された短期転帰とは異なる可能性がある.この試験はベイズデザイン(Bayesian design)であるため,結果は多くの臨床医には馴染みのない複雑な統計モデルに依存している.また,多因子デザインにより,複数の介入を同時に評価することができ,より効率的な結果を提供し,治療ごとの潜在的な相互作用を考慮に入れることができる.しかしながら,これらの介入の多くは継続しており,その効果や相互作用の可能性はまだ報告されていない.

CONCLUSIONS

ICUで臓器補助を受けている重症Covid-19成人患者において,インターロイキン-6受容体拮抗薬であるトシリズマブとサリルマブを投与したところ,生存期間を含むアウトカムが改善した.(REMAP-CAP ClinicalTrials.gov number, NCT02735707.

 

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COVACTA試験】

Rosas IO, et al. Tocilizumab in Hospitalized Patients with Severe Covid-19 Pneumonia. N Engl J Med. Feb 25, 2021.

https://doi.org/10.1056/NEJMoa2028700.

Abstract

<BACKGROUND

Covid-19は,インターロイキン-6レベルの上昇を含む免疫異常と高炎症に関連している.インターロイキン-6受容体に対するモノクローナル抗体であるトシリズマブの使用は,症例報告やレトロスペクティブ観察コホート研究において,重症Covid-19肺炎患者において良好な転帰をもたらした.無作為化プラセボ対照試験からのデータが必要である.

METHODS

この第3相試験では,血中酸素飽和度が93%以下,またはP/F300mmHg未満である,重度Covid-19肺炎で入院した患者を2:1の割合で無作為に割り付け,トシリズマブ単回静脈内投与(8mg/kg)またはプラセボを投与した.参加者の約4分の1は,1回目の投与から824時間後に2回目のトシリズマブまたはプラセボを投与された.主要アウトカムは,トシリズマブまたはプラセボの少なくとも1回の投与を受けたすべての患者を含む修正intention-to-treatITT)集団における,28日目の臨床状態を1(退院または退院準備ができている)から7(死亡)までの順序尺度の評価である

RESULTS

無作為化を受けた452人のうち,438人(トシリズマブ群294人,プラセボ群144人)が主要解析および副次解析に含まれたトシリズマブ群では,ベースライン時(57[19.4%] vs 41[28.5%])および試験期間中(99[33.7%] vs 75[52.1%])ともに,グルココルチコイドを投与された患者の割合がプラセボ群よりも低かったTable 1.抗ウイルス治療を受けた患者の割合は,ベースライン時および試験期間中ともに,トシリズマブ群とプラセボ群で同程度であった.トシリズマブ群では10人(3.4%)(ベースライン時5人(1.7%)を含む)に,プラセボ群では6人(4.2%)(ベースライン時1人(0.7%)を含む)に,試験期間中に回復者血漿が投与された.トシリズマブ群65人(22.1%),プラセボ群43人(29.9%)にトシリズマブまたはプラセボの2回目の投与が行われた.

28日目の順序尺度における臨床状態の中央値は,トシリズマブ群で1.095%CI, 1.0-1.0),プラセボ群で2.0(補助酸素なしの非ICU入院)(95%CI, 1.0-4.0)であった(群間差, 1.0; 95%CI, 2.5-0; P= 0.31 by van Elteren test.安全性集団において,重篤な有害事象はトシリズマブ群で295人のうち103人(34.9%),プラセボ群で143人のうち55人(38.5%)に認められた.28日目の死亡率は,トシリズマブ群19.7%,プラセボ群19.4%(加重平均差0.3ポイント; 95%CI, 7.6-8.2; nominal P= 0.94)であった

 

 

Table 1: Demographic and Disease Characteristics of the Patients at Baseline.

Table 2: Primary and Secondary Efficacy Outcomes.

https://www.nejm.org/na101/home/literatum/publisher/mms/journals/content/nejm/0/nejm.ahead-of-print/nejmoa2028700/20210225/images/img_xlarge/nejmoa2028700_t2.jpeg

 

 

Figure 1: Changes in Clinical Status and Hospital Discharge.

パネルAは,患者の臨床状態を評価するために使用した7項目の順序尺度において,ベースラインから少なくとも2つの項目で改善するまでの時間を示している.パネルBは,28日目までの退院までの日数または退院準備までの日数を示している.パネルAおよびBのデータは,1からKaplan-Meier推定値を引いたものとしてプロットされている.試験を中止した患者,または何らかの理由で追跡対象から外れた患者のデータは,最後の順序尺度評価の時点で打ち切られた(ハッチングマークで示されている).死亡した患者のデータは28日目に打ち切られた.パネルCは,ベースライン時の項目に応じて28日目に7項目の順序尺度で評価された患者の臨床状態を示す(1: 退院または退院の準備ができている; 2: ICU入院(酸素補助なし); 3: ICU入院(酸素補助あり); 4: ICUまたは非ICUでの入院(NIPPVまたはHFNC; 5: ICU入院(機械式換気あり); 6: ICU入院(ECMOまたは機械式換気および追加臓器補助あり); 7: 死亡).カテゴリー6のデータには,試験初日に死亡したが,その日にプラセボ投与を受ける前にカテゴリー6に割り付けられていた患者が含まれている.

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Table 3: Adverse Events (Safety Population).

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CONCLUSIONS

重症Covid-19肺炎入院患者を対象としたこの無作為化試験では,トシリズマブの使用により,28日目の臨床状態がプラセボに比べて有意な改善あるいは死亡率の低下は認めなかった.(COVACTA ClinicalTrials.gov number, NCT04320615.

 

 

 

 

 

COVID-19関連追加(202135日)

トシリズマブについてその3 に37日追記しました

 

CONVINTOC試験】

Soin AS, et al. Tocilizumab plus standard care versus standard care in patients in India with moderate to severe COVID-19-associated cytokine release syndrome (COVINTOC): an open-label, multicentre, randomised, controlled, phase 3 trial. Lancet Repiratory Medicine. Mar 4, 2021. https://doi.org/10.1016/S2213-2600(21)00081-3.

Background

COVID-19入院患者を対象とした抗IL-6受容体抗体トシリズマブのグローバル無作為化比較試験では,相反する結果が示されているが,退院までの時間と集中治療の負担が減少する可能性がある.トシリズマブは,人種や少数民族が多い試験集団において,機械式人工呼吸への進行と死亡を減少させた.我々は,低中所得国で行われたトシリズマブの初の多施設無作為化比較試験において,トシリズマブがCOVID-19の進行を予防できるかどうかを調査することを目的とした.

Methods

COVINTOC試験は,インド全土の12の公立,私立病院で実施された,多施設共同,無作為化対照非盲検(オープンラベル)第3相試験である.SARS-CoV-2 PCR陽性で確定した中等症〜重症COVID-19(インド保健省分類: 中等症は呼吸回数15-30/[2020613日に24/分に改訂]SpO2 9094%と定義; 重症は呼吸速度≧30/分または室内気SpO290%,またはARDSまたは敗血症性ショック; appendix p4)が確認された入院患者(18歳以上)を対象に、トシリズマブ6mg/kg+標準治療(トシリズマブ群)または標準治療単独(標準治療群)に無作為に割り付けた(1:1ブロック無作為化).トシリズマブを6 mg/kg単回静脈内投与とし,最大480mgまで投与した.初回投与後12時間から7日以内に臨床症状が悪化あるいは改善が認められない場合は,6mg/kg(最大480mg)を追加投与することができた.主治医が必要と判断した場合には,メチルプレドニゾロン1mg/kg以下と同等のコルチコステロイドを投与することを認めた.無作為に割り付けられた患者は、ベースライン時(試験0日目)に治療を受け,入院中は注意深く観察され,無作為化後30日間はフォローアップが行われた.

主要エンドポイントは,ベースライン後評価を少なくとも1回行った全参加者の修正ITT集団において,14日目までのCOVID-19の進行(中等症から重症へ、または重症から死亡へ)とした副次エンドポイントは,米国移植細胞治療学会のサイトカイン放出症候群のグレード22)1つ以上改善した患者の割合,臨床的改善(National Early Warning Score 2 [NEWS2] 2以下が24時間維持されたものと定義)までの時間,人工呼吸器なしの日数,臓器不全なしの日数,ICU に入院した患者の割合,ICU入院なしの日数,COVID-19グレードによる臨床的改善までの時間,退院までの時間,RT-PCRが陰性になるまでの時間,28日目までの全死亡率,および 7142128日目までの死亡率,そして血清IL-6,フェリチンおよびCRP濃度,有害事象,重篤な有害事象,および治療後の感染症を発症した患者の割合,腎代替療法の必要性,を含んでいた.安全性は,無作為に割り付けられたすべての患者で評価された.本試験は完了し,Clinical Trials Registry IndiaCTRI/2020/05/025369)に登録されている.

Results

2020530日〜2020831日に患者183人がスクリーニングされ,そのうち180人が登録および無作為化の適格基準を満たした(Figure 1; appendix p1).最終的には,患者180人のうち143人(79%)が28日間のフォローアップを完了し,トシリズマブ群では75人(82%),標準治療群では68人(76%)であった.トシリズマブ群では28日目以降に2人の患者が死亡した.

Figure 1: Patient disposition.

https://marlin-prod.literatumonline.com/cms/attachment/767fcf85-0024-4a1d-a637-6cea6d3fb415/gr1_lrg.jpg

 

ベースラインの人口統計および臨床的特徴は,治療群間で概ね均衡していた(Table 1).ほとんどの患者(179人のうち161[90%])が補助酸素を受けており,ベースライン時に侵襲的機械換気を受けていた患者はほとんどいなかった(9[5%]).糖尿病患者の割合は,標準治療群(88人のうち43[49%])がトシリズマブ群(91人のうち31[34%])よりもわずかに高かった.中等症および重症COVID-19患者の割合,および試験期間中にレムデシビルを投与または副腎皮質ステロイド併用された患者の割合はトシリズマブ群と標準治療群で同様であった(Table 1).

Table 1: Baseline demographics and clinical characteristics (modified intention-to-treat population).

 

 

14日目までの進行性COVID-19患者(中等症から重症への進行,または重症から死亡への進行)は,トシリズマブ群で9%91人のうち8人),標準治療群で13%88人のうち11人)であったが,その差は統計的に有意ではなかった(−3.71[95%CI , 18.23-11.19]; p= 0.42; Table 2, Figure 2

Table 2: Efficacy outcomes (modified intention-to-treat population).

 

 

Figure 2: COVID-19 progression up to day 14 (primary endpoint).

Figure thumbnail gr2

 

28日目までにサイトカイン放出症候群が1グレード以上改善した患者の割合,機械式人工呼吸の発生率,人工呼吸器なしの日数,臓器不全なしの日数,ICU入院の発生率,ICU入院期間,死亡率,補助酸素なしの日数を含む副次エンドポイントについては,トシリズマブ群と標準治療群との間に有意差は認められなかった(Table 2トシリズマブ群91人のうち1人(1%),標準治療群88人のうち6人(7%)が28日以内に腎代替療法を必要とした28日目までに有害事象,重篤な有害事象,治療後の感染症を発症した患者の割合は,両群間でほぼ同程度であった28日目までの臨床的改善(NEWS2による2以下が24時間維持)までの時間およびCOVID-19グレードによる臨床改善までの時間をKaplan-Meier解析したところ,治療群間で統計的な差は認められなかった(Figure 3A, B.トシリズマブ群では,IL-6受容体がトシリズマブで飽和している場合に予想されるように24),血清IL-6濃度が大幅に上昇したが,標準治療群では認められなかった; ベースラインから7日目までの変化の中央値は,トシリズマブ群で37.9pg/mLIQR, 6.3-105.2),標準治療群で−4.3pg/mL(−20.0-6.3)であった(p= 0.0013).CRPとフェリチン値は両治療群で低下し,トシリズマブ群と標準治療群ではベースラインから7日目までの変化に有意差はなかった(Table 2

 

 

Figure 3: Time to clinical improvement.

Figure thumbnail gr3

 

有害事象の報告はトシリズマブ群33人(36%)で54件,標準治療群22人(25%)で55件であった(Table 3).トシリズマブ群では13人(14%),標準治療群では15人(17%)が試験期間中に死亡した.有害事象のほとんどは重症度グレード1または2であった(トシリズマブ群では54件のうち30件(56%),標準治療群では55件のうち20件(36%)).ほとんどのイベントはトシリズマブとは無関係と考えられた(トシリズマブ群では54件のうち45[83%]).重篤な有害事象はトシリズマブ群で18人(20%)に23件,標準治療群で15人(17%)に24件報告された.重篤な有害事象全体で最も多く報告されたのは,急性呼吸窮迫症候群,ショック,心疾患,多臓器不全症候群であった(Table 3).

 

 

Table 3: All adverse events (safety population).

 

28日目までに病勢が進行した患者の割合は,トシリズマブ群で12%91人のうち11人),標準治療群で18%88人のうち16人)であり,その差は−6.0995%CI, 20.73-8.79; p= 0.25; Figure 4A).ベースライン時に重症COVID-19患者であったサブセットのうち,28日目までに病勢進行(すなわち死亡)した患者の割合は,トシリズマブ群で16%50人のうち8人),標準治療群で34%41人のうち14人)であり,その差は−18.15(−37.79-2.43; p= 0.044; Figure 4A)であった.全患者(Figure 4B)またはベースライン時に重症COVID-19患者(Figure 4C)の事後分析において,28日目までの病勢進行または死亡までの時間中央値は未到達であった(すなわち,評価できなかった; 28日間のフォローアップを完了しなかった患者37人および28日目以降に死亡した患者2人のデータは,28日目に打ち切られた).群間比較のためのlog-rank p値は,全体で0.25であり,重症患者では0.04であった.ロジスティック回帰分析では,60歳以上であることと重症COVID-19は,より高い死亡率と関連していることが示唆された(appendix p5).

Figure 4: COVID-19 progression post-hoc analyses.

 

 

Discussion

COVINTOC試験は,インドにおけるCOVID-19入院患者の効果的な治療というアンメットメディカルニーズに,抗IL-6受容体抗体であるトシリズマブが対応できる可能性があるかどうかを調べるために行われた.主要エンドポイントおよび副次エンドポイントは,トシリズマブ+標準治療と標準治療単独では有意差はなかった.したがって,本試験は成人COVID-19患者におけるトシリズマブのルーチン使用を支持するものではない.安全性の結果は,トシリズマブの既知の安全性プロファイルとCOVID-19入院患者の臨床症状に基づいて予想通りであった.事後解析の結果,ベースライン時に重症(インドのMoHFWで分類)で,そのほとんどが機械式人工呼吸器を使用していない患者では,標準治療に加えてトシリズマブによる治療は死亡へと進行するリスクが減少する可能性が示唆された; しかしながら,これらの患者を確実に特定するための臨床的パラメータやバイオマーカー,およびCOVID-19の進行期における最適な治療のタイミングは未だ不明である.

COVID-19入院患者を対象としたトシリズマブの他の4つの無作為化比較試験は,我々の試験開始後に終了した.重症COVID-19肺炎で入院した患者を対象としたグローバル無作為化比較試験COVACTA試験では,トシリズマブによる臨床状態の改善や標準治療以上の死亡率の改善は認めなかったが,退院までの時間やICU入院期間に有益である可能性が確認された15)(注: 論文では未査読とあるが,Rosas IO, et al. Tocilizumab in Hospitalized Patients with Severe Covid-19 Pneumonia. N Engl J Med. Feb 25, 2021. に掲載された).

COVID-19肺炎で入院したが機械式換気を行っていない患者(特にハイリスクで少数派の患者)を登録した別の国際無作為化比較試験では,トシリズマブと標準治療を併用した場合,標準治療のみの場合と比較して機械換気や死亡のリスクが減少することが示された16)

これは,ベースラインで重症の患者が標準治療に加えてトシリズマブを投与された場合,28日目の生存期間が延長されたという我々の事後分析での観察結果と類似している.米国で行われた別の無作為化比較試験では,COVID-19入院患者の気管内挿管や死亡を防ぐためにトシリズマブを投与した場合の効果は示されなかった17).また,フランスで行われた非盲検無作為化試験では,28日の臨床状態や死亡率におけるトシリズマブの効果は認められなかったが,この試験では14日目の非侵襲的人工呼吸,機械式人工呼吸,死亡のリスクが減少する可能性が示唆されている18)

我々の研究の限界は,この研究がプラセボを含まないunmasked studyであったことである.試験期間中,ほとんどの患者が副腎皮質ステロイドを併用しており,約半数の患者がレムデシビルによる抗ウイルス療法を受けていた.これらの患者で併用薬を使用したことにより,そうでなければトシリズマブで得られたかもしれない有益な効果が弱まったかもしれない.もう一つの限界は,パンデミック時に患者を迅速に募集することが困難であり情報が収集されていなかったために,研究者が当初検討したもののスクリーニングされなかった患者の数が不明であることである.それにもかかわらず,同意したすべての患者が正式なスクリーニングを受けた.サンプルサイズは,有意な改善を仮定して決定された.そして比較的大きなサンプルサイズにもかかわらず,わずかな差を検出するパワーをもった研究ではなかった.治療群間の差を確立するためには,より大きなサンプルサイズが必要となる可能性がある.さらに,中等症と重症の臨床基準(すなわち定義)は主観の影響を受けている可能性がある.したがって,臨床エンドポイント(疾患の進行)はこのような影響を反映している可能性があるが,両治療群で観察された結果が類似しているため,このようなバイアスの可能性は除外されている.

Conclusions

我々の研究は,COVID-19成人患者におけるトシリズマブのルーチン使用を支持するものではない.しかし,重症COVID-19(さらに定義されるべき)患者ではトシリズマブの役割があるかもしれない.

 

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