COVID-19関連追加(202138日)

バリシチニブについて

 

Covid-19入院患者に対するバリシチニブ+レムデシビル併用療法RCT

Kalil AC, et al. for the ACTT-2 Study Group Members. Baricitinib plus Remdesivir for Hospitalized Adults with Covid-19. N Engl J Med 2021; 384:795-807. Mar 4, 2021. https://doi.org/10.1056/NEJMoa2031994.

Introduction

20205月,無作為化二重盲検プラセボ対照試験であるAdaptive Covid-19 Treatment TrialACTT-1)の第1ステージで,Covid-19肺炎で入院した成人患者に対してレムデシビルが有効な治療法であることが示された1).レムデシビルの有用性にもかかわらず,Covid-19による実質的なmorbidityと死亡率は依然として残っている.新たなデータによると,疾患重症化の原因の一部は,制御不能な炎症反応によるものである可能性が示唆されている2).免疫反応を緩和し,炎症反応の亢進を防ぐことが,臨床転帰をさらに向上させる可能性の仮説が立てられている.バリシチニブは,経口投与されるヤヌスキナーゼ(JAK: Janus kinase1および2の選択的阻害剤であり,人工知能アルゴリズムを用いてSARS-CoV-2に対する治療薬としての可能性が予測されている3)4).バリシチニブは,インターロイキン-2,インターロイキン-6,インターロイキン-10,インターフェロン-γ,顆粒球-マクロファージコロニー刺激因子など,重症Covid-19で上昇することが知られているサイトカインの細胞内シグナル伝達経路を阻害する; AP2-関連プロテインキナーゼ1の障害を介してSARS-CoV-2に対して作用し,SARS-CoV-2の細胞への侵入および感染性を防止する; Covid-19患者におけるリンパ球数を改善する3)5)-8)Covid-19患者の3つの症例シリーズにおいて,バリシチニブによる治療は,酸素化改善と選択的炎症マーカーの減少のどちらにも関連していた9)-11)Covid-19患者における免疫調節の役割をさらに理解するためには,無作為化比較試験が必要である.ACTT-1の終了後,バリシチニブとレムデシビルの併用療法がレムデシビル単独療法よりも優れているかどうかを評価するために,ACTTの次の反復試験(ACTT-2)を計画した.

Methods

成人Covid-19入院患者を対象に,バリシチニブとレムデシビルの併用を評価する二重盲検,無作為化,プラセボ対照試験を実施した.全患者にレムデシビル(10日以内)バリシチニブ(14日以内)またはプラセボ(対照)を投与した主要アウトカムは回復までの時間であった副次アウトカムは15日目の臨床状態であった

 

この二重盲検プラセボ対照試験への登録は,202058日に開始され,202071日に終了した.試験は,米国(55施設),シンガポール(4施設),韓国(2施設),メキシコ(2施設),日本(1施設),スペイン(1施設),英国(1施設),デンマーク(1施設)の8ヶ国67施設で実施された.対象患者は,レムデシビルとバリシチニブ,またはレムデシビルとプラセボのいずれかの投与を受けるように,1:1の割合で無作為に割り付けられた.無作為化は,試験施設と登録時の重症度によって層別化された.患者はレムデシビルを1日目にローディング用量として200mg静脈内投与され,その後,2日目から10日目まで毎日100mgの維持投与を行うか,退院または死亡するまで投与されたバリシチニブは14mg2mg2回経口投与または経鼻胃管内投与)を14日間または退院まで投与した.推定糸球体濾過量が60ml/分未満の患者には,バリシチニブ2mg11回投与した.一致する経口プラセボを活性薬(active drug)と同じスケジュールで投与した.すべての患者は試験実施地の病院で標準的な支持療法を受けた.静脈血栓塞栓症の予防は,主要な禁忌がないすべての患者に推奨された.病院にCovid-19の治療方針が書かれていれば,患者はその治療を受けることができた.書面による方針がない場合,Covid-19の特定の治療として意図された他の実験的治療や市販薬の適応外使用は禁止されていた.これにはグルココルチコイドが含まれ,副腎不全,喘息の増悪,喉頭浮腫,敗血症性ショック,急性呼吸窮迫症候群などの標準的な適応症に対してのみ許可された.

OUTCOME:

主要アウトカム指標は回復までの時間であり,回復日は登録後28日間のうち,患者が8カテゴリーの順序尺度でカテゴリー 1,2,3のいずれかに達した最初の日と定義した.死亡の競合イベントは,Fine-Gray競合リスクアプローチ(FineGray competing-risk approach)と同様の方法で処理された13)

カテゴリーはACTT-11で使用されたものと同じであり,Supplementary Appendix Table S1に記載されている.主要解析は,レムデシビルとバリシチニブを併用した場合の回復までの時間を,レムデシビルとプラセボを併用した場合と比較して,ベースラインの重症度(すなわち,登録時に4または5 vs 6または7の順序尺度スコア)によって層別化した対数順位検定(log-rank test)で行った.

主要な副次アウトカム指標は15日目の臨床状態であり,8カテゴリーの順序尺度に基づいて評価された.その他の副次アウトカム指標には,ベースライン時の順序スコアからカテゴリー1あるいは2の改善までの時間; 358111522および29日目に順序スケールで評価された臨床状態; 1日目から358111522および29日目までの順序スコアの平均変化; 退院までの時間,またはNational Early Warning Score020の尺度でスコアが高いと臨床的リスクが高い)が2以下を24時間維持,のいずれか早く起こった方; 29 日目までの補助酸素,NIPPV,高流量酸素,または侵襲的換気またはECMOを受けた日数(もしこれらがベースライン時に使用されていた場合); 酸素の新規使用,NIPPVまたは高流量酸素の新規使用,および侵襲的換気またはECMOの新規使用の発生率と期間; 29 日目までの入院期間(29 日目時点で入院したままの患者は”28日間”); および登録後14日と28日の死亡率,を含んでいた.副次安全性アウトカムには,グレード3および4の有害事象および29日目までに発生した重篤な有害事象,何らかの理由で試験製品の投与(trial-product administration)を中止または一時的に中断した場合,および評価された臨床検査値の経時的変化が含まれていた.主要仮説検定は単一であった(single primary hypothesis test).副次アウトカムについては,多重性の調整は行われなかった.

特定のサブグループは,性別,疾患重症度(層別化として,登録時に4567の順序スコアで定義),年齢(18-39歳,40-64歳,または65歳以上),人種,民族,無作為化前の症状の持続期間(10日未満または10日以上,medianIQR),施設(site location)および併存疾患の存在によって定義された.

RESULTS

合計1033人の患者が無作為化を受けた(うち515人が併用療法,518人が対照群).バリシチニブ群回復までの時間は,対照群では中央値8日(95%CI, 7-9)であったのに対し,中央値7日(95%CI, 6-8であった(回復率比[rate ratio for recovery], 1.16; 95%CI, 1.01-1.32; P= 0.03.そして,バリシチニブ群において,15日目の臨床状態の改善オッズは30%高かった(オッズ比, 1.3; 95%CI, 1.0-1.6登録時に高流量酸素または非侵襲的人工呼吸を受けた患者回復までの時間は,バリシチニブ群で10,対照群で18日であった(回復率比, 1.51; 95%CI, 1.10-2.0828日の死亡率バリシチニブ群で5.1%,対照群で7.8%であった(死亡ハザード比, 0.65; 95%CI, 0.39-1.09重篤な有害事象は,バリシチニブ群では対照群に比べて頻度が低かった16.0% vs 21.0%; , 5.0%ポイント; 95%CI, 9.8-0.3, P= 0.03またバリシチニブ群は新規感染症も頻度が低かった5.9% vs 11.2%; , 5.3%ポイント; 95%CI, 8.7-1.9, P= 0.003

 

 

包含基準を満たした患者1067人のうち,1033人が無作為化を受け,併用群515人,対照群518人に割り付けられた(Figure 1ITT集団には,中等症(順序スコアが4または5[人工呼吸を受けていない])の患者706,および重症(順序スコアが6または7[非侵襲的または侵襲的人工呼吸を受けている])の患者327が含まれていた.併用群に割り付けられた患者のうち,507人(98.4%)が割り付けられた通りの治療を受けた.対照群に割り付けられた患者のうち,509 人(98.3%)が割り付けられた通りの治療を受けた.29日目までに試験を終了した患者は,併用群498人,対照群495人であり,回復したか,あるいは死亡した.患者の平均年齢は55.4歳で,63.1%が男性であった(Table 1.全体では,患者の48.0%が白人,15.1%が黒人,9.8%がアジア系,1.0%がアメリカンインディアンまたはアラスカネイティブであった; 51.4%がヒスパニック系またはラテン系であった(Table 1).米国の患者の特徴をTable S4に示す.

 

 

Figure 1: Enrollment and Randomization.

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Table 1: Demographic and Clinical Characteristics of the Patients at Baseline.

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PRIMARY OUTCOME:

バリシチニブとレムデシビルの併用療法を受けた患者は,レムデシビルとプラセボの併用療法を受けた患者よりも中央値で1日早く回復した中央値7 vs 8; 回復率比, 1.16; 95%CI, 1.01-1.32; P= 0.03, 実際のベースラインの重症度に応じて層別化したlog-rank testによる)(Figure 2, Table 2.無作為化時に入力された重症度(中等度 vs 重症)によって解析すると、ハザード比は1.1595%CI, 1.00-1.31; P= 0.047)であった(Table S6).非侵襲的人工呼吸または高流量酸素療法を受けた患者(ベースラインの順序スコアが6)の回復までの時間の中央値は,併用群で10対照群で18であった(回復率比, 1.51; 95%CI, 1.10-2.08ベースラインの順序スコアが4(酸素療法なし)および5(補助酸素)の患者では,回復率比はそれぞれ0.8895%CI, 0.63-1.23)および1.1795%CI, 0.98-1.39)であった登録時に機械式換気またはECMOを受けていた者(ベースラインの順序スコアが7)では,回復率比は1.0895%CI, 0.59-1.97)であった(Table 2, Figure 3試験期間中に臨床適応でグルココルチコイドを投与された患者223人の回復率比は1.0695%CI, 0.75-1.48)であった.病院施設のランダム効果を用いた感度分析でも同様の結果が得られた(回復率比の条件付きランダム効果推定値1.16; 95%CI, 1.01-1.33; 分散の制限付き最尤推定に基づく分散ランダム効果推定値, 0.0305)(Table S13).

 

 

Figure 2: Kaplan–Meier Estimates of Cumulative Recoveries.

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Table 2: Outcomes Overall and According to Score on the Ordinal Scale in the Intention-to-Treat Population.

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Figure 3: Time to Recovery According to Subgroup.

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KEY SECONDARY OUTCOME:

順序尺度で評価した15日目の臨床状態の改善のオッズは,併用群の方が対照群よりも高かった(改善のオッズ比, 1.3; 95%CI, 1.0-1.6ベースラインの順序スコアが”6”の患者併用治療を受けた患者は,15日目の臨床状態の改善の可能性が最も高かった(改善のオッズ比, 2.2; 95%CI, 1.4-3.6)(Table 2, Figure S1

MORTALITY:

無作為化後28日目の死亡率のKaplan-Meier推定値は,併用群で5.1%95%CI, 3.5-7.6),対照群で7.8%95%CI, 5.7-10.6)であった(死亡のハザード比, 0.65; 95%CI, 0.39-1.09併用群と対照群との間で死亡率の数値的差(numerical differences)が最も大きかったのは,ベースラインの順序スコアが51.9% vs 4.7%; ハザード比, 0.40; 95%CI, 0.14-1.14)または67.5% vs 12.9%; ハザード比, 0.55; 95%CI, 0.22-1.38)の患者であった無作為化後14日の死亡率のKaplanMeier推定値は,併用群で1.6%,対照群で3.0%であった(ハザード比, 0.54; 95%CI, 0.23-1.28)(Table 2, Figure S2

ADDITIONAL SECONDARY OUTCOMES:

順序尺度”1区分”カテゴリーの改善までの時間は,併用群で中央値6日,対照群で中央値8日(率比, 1.21; 95%CI, 1.06-1.39)であり,退院または24時間のNational Early Warning Score2以下になるまでの時間は,併用群で中央値6日,対照群で中央値7日(率比, 1.24; 95%CI, 1.07-1.44)であった(Table 3酸素の新規使用の発生率(22.9% vs 40.3%; , 17.4%ポイント; 95%CI, 31.6-2.1),機械式換気またはECMOの新規使用の発生率(10.0% vs 15.2%; , 5.2%ポイント; 95%CI, 9.5-0.9)は,併用群の方が対照群よりも低かった.登録後にこれらの介入が開始された患者または新規の使用が観察されずに死亡した患者128人のうち,機械式換気またはECMOを受けた日数は,併用群で中央値16日,対照群で中央値27日であった(差, 11.0; 95%CI, 17.7-4.3).死亡または非侵襲的あるいは侵襲的人工呼吸への進行の発生率(22.5% vs 28.4%; 率比, 0.77; 95%CI, 0.60-0.98),死亡または侵襲的人工呼吸への進行の発生率(12.2% vs 17.2%; 率比, 0.69; 95%CI, 0.50-0.95)は,併用群の方が対照群よりも低かった

 

 

Table 3: Additional Secondary Outcomes.

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SAFETY OUTCOMES:

グレード3または4の有害事象が発現したのは併用群207人(40.7%),対照群238人(46.8%)であった(Table S11).グレード3または4の有害事象のうち,25件が併用療法に関連していると治験責任医師が判断し,28件が対照群に関連していると判断した(Table S10).全患者の少なくとも5%に発現したグレード3または4の有害事象で最も多かったのは,高血糖,貧血,リンパ球減少,急性腎障害であった(Table S10).これらの有害事象の発生率は,2つの治療群で同程度であった.静脈血栓塞栓症の重篤または非重篤な有害事象が報告された患者の割合は,併用群と対照群で同程度であった(それぞれ21[4.1%], 16[3.1%]; , 1.0%ポイント; 95%CI, 1.3-3.3).

重篤な有害事象は併用群で81人(16.0%)に発現し,そのうち6件が試験製品(trial product)に関連していると考えられた(Table S7).重篤な有害事象は対照群で107人(21.0%)に発現し,うち5件が試験製品に関連していると考えられた.群間の差は−5.0%ポイント(95%CI, 9.8-0.3; P= 0.03)であった.すべての重篤な有害事象,すべての有害事象,致死的アウトカムを伴う重篤な有害事象,および試験製品の中止に至った有害事象の発生率は,いずれも併用群は対照群に比べて低かった.全体として,新規感染症の重篤または非重篤な有害事象の発生率は,併用群(30[5.9%])が対照群(57[11.2%])に比べて低かった(差, 5.3%ポイント, 95CI, 8.7-1.9; P= 0.003).無作為化後にグルココルチコイドを投与された患者は,投与されなかった患者に比べて,重篤または非重篤な新規感染症の発生率が高かった(223人のうち56[25.1%] vs 793人のうち44[5.5%]).

Discussion

この無作為化二重盲検プラセボ対照試験の結果,Covid-19肺炎入院患者に対する抗炎症薬バリシチニブと抗ウイルス薬レムデシビルの併用療法は,レムデシビル単独療法よりも安全で優れていることが示された併用療法の有益な効果は,主要アウトカムである回復までの時間が1日短縮されたことと,主要な副次アウトカムである順序尺度で評価される臨床状態の改善がより大きくなったことの両方で認められたACTT-2では2群間の死亡率の差を検出するパワーはなかったが,解析によると,生存率と死亡までの時間の両方で併用療法が有利であった.これらの臨床的有用性は,年齢,性別,民族,人種を超えて観察され,症状の持続期間や登録時の重症度に関係なく観察された.この試験に登録されたヒスパニック系またはラテン系の患者の割合が高いことは,マイノリティである人種や民族の入院発生率が高い14)というパンデミックの不均衡な影響を反映している.

併用治療の有益性は,ベースラインの順序スコアが5(補助酸素)または6(高流量酸素または非侵襲的人工呼吸)の患者で最も明らかであり,そのうちの回復までの時間の中央値は,プラセボ群よりも併用群の方がそれぞれ1日および8日早かったベースラインの順序スコアが6の患者で併用治療を受けた患者は,15日目の臨床状態の改善が対照群のおおむね2倍であった(オッズ比, 2.2; 95%CI, 1.4-3.6.バリシチニブ+レムデシビルを投与された患者の回復が早かったことから,併用療法が院内感染,血栓症,院内薬剤投与エラー(errors in hospital drug administration)の病院関連リスクを低下させる効果がある可能性が示唆された.また,回復が早まることで医療システムの負担も軽減され,症例が急増した際に重要となるキャパシティの増加につながる可能性があると考えられる.

さらに,併用療法では酸素の新規使用の差が−17.4%ポイント(22.9% vs 40.3%),機械式換気またはECMOの新規使用の差が−5.2%ポイント(10.0% vs 15.2%)のように,患者のケアに直接関連する臨床的な有益性が示された実際,死亡または侵襲的人工呼吸への進行のオッズは,併用群の方が対照群よりも31%低く(ハザード比, 0.69; 95%CI, 0.50-0.95),併用群は対照群よりも新たに機械式換気を受けた日数が11日少なかった

JAK阻害薬の使用による免疫抑制,二次感染,血栓症の懸念にもかかわらず,バリシチニブの追加は有害事象や血栓塞栓イベントの有意な高発現率とは関連していなかった.実際,バリシチニブ+レムデシビルを投与された患者では,レムデシビル単独投与の患者と比較して,有害事象,試験薬の中止に至る有害事象,重篤な有害事象,致死的アウトカムを伴う重篤な有害事象,感染症関連の有害事象の発生率が有意に低かった.バリシチニブで有害事象の発生率が一貫して低かったのは,バリシチニブによる,炎症惹起性肺傷害の軽減,リンパ球数の改善,抗ウイルス作用,またはそれに関連した回復時間の短縮と臨床的改善の早さが関係している可能性があり,これらすべてが院内感染のリスクを低減させた可能性がある.現在進行中の別の試験では,バリシチニブの効果に関する詳細な情報が得られる可能性がある(ClinicalTrials.gov number, NCT04421027).まとめると,我々の結果と,バリシチニブが薬物-薬物相互作用の少ない経口薬であること,安全性プロファイルが良好であることを含むバリシチニブの特徴は,低-中所得国での使用に適している.

Covid-19治療の無作為化評価(RECOVERY)試験15)では,Covid-19患者を対象にデキサメタゾンによる生存期間における有意な有益性(機械式人工呼吸を受けている患者で最も顕著であり,入院期間は1日短くなった)が示された.バリシチニブとデキサメタゾンには重要な生物学的差異があり,ACTT-2試験とRECOVERY試験にはデザインの違いがある.デキサメタゾンは半減期が長く,グルココルチコイド受容体に作用し,広汎経路アプローチにより炎症を軽減する(一方で,たとえ短期間投与でも,免疫抑制,病院に関連した感染,消化管出血,高血糖,神経筋力低下と関連する)16)バリシチニブは半減期が短く,標的となる重要な経路に作用して炎症を抑制する一方で,免疫抑制が少なく生物学的冗長性(biologic redundancy)を最小限に抑え,そして抗ウイルス活性を有する可能性がある3)2つの試験はデザインが異なるため,直接比較することはできない.RECOVERY試験では対照群の死亡率が高く,ACTT-2試験では対照群の死亡率が低かったことから,これらの試験は同じ患者集団に一般化できない可能性があることが示唆されている.バリシチニブ+レムデシビルとデキサメタゾン+レムデシビルの無作為化二重盲検プラセボ対照head-to-head比較試験を行って初めて,これら2つのアプローチにおける有効性と安全性の違いが完全に理解されることになるだろう

 

CONCLUSIONS

バリシチニブとレムデシビルの併用療法は,レムデシビル単独療法に比べて,特に高流量酸素または非侵襲的機械式換気を受けている患者において回復時間を短縮し、臨床状態の改善を促進する点で優れていたこの併用療法は,より少ない重篤な有害事象と関連していた

 

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