COVID-19関連追加(2021310日)

季節性ヒトコロナウイルスとの関連その3

当院HP関連ファイル:

2020916-2

2021210

COVID-19重症度が低い経過は,季節性コロナウイルスOC43およびHKU1

HCoV OC43HCoV HKU1)に対する抗体レベルの上昇と関連する】

Dugas M, et al. Less severe course of COVID-19 is associated with elevated levels of antibodies against seasonal human coronaviruses OC43 and HKU1 (HCoV OC43, HCoV HKU1). International Journal of Infectioius Disease. Feb 22, 2021.

https://doi.org/10.1016/j.ijid.2021.02.085.

Highlights

重篤COVID-19患者は,抗HCoV OC43-NPレベルが有意に低かった

重篤COVID-19患者ではまた,抗HCoV HKU1-NPレベルが有意に低かった

季節性コロナウイルスの先行感染は重篤COVID-19に対する防御になるかもしれない

Abstract

COVID-19の臨床経過は非常に異質(heterogeneous)である: ほとんどの感染者は外来で管理できるが,かなりの割合の患者は集中治療を必要とし,その結果,高い致死率となっている.我々は,季節性コロナウイルスの先行感染がCOVID-19重症度に与える影響を評価するために,バイオマーカー研究を行った.COVID-19感染が確認された患者60人(年齢30-82 ; 男性52, 女性8人)を対象とした: 重篤患者19人,重症または中等症患者16人,外来患者25人.初診時の重篤患者の抗HCoV OC43-NP抗体(p= 0.016)およびHCoV HKU1-NP抗体(p= 0.023)レベルは,他のCOVID-19患者と比較して有意に低かった我々の結果は,季節性コロナウイルスの先行感染が疾患の重症の経過に対する防御をもつかもしれないことを示している

 

Methods

Materials and Methods:

ドイツ,ミュンスター大学病院のコロナプラズマプロジェクト(現地倫理委員会承認: AZ 2020-220-f-S)およびCOVID-19バイオマーカー研究(現地倫理委員会承認: AZ 2020-210-f-S)の一環として,RT-qPCRによりCOVID-19感染が確認された患者60人の血清サンプルを解析した.患者の年齢中央値は58歳(range, 30-82),男性52人,女性8人が含まれていた.外来患者は,入院患者の年齢と性別を一致させるために手動で選択した.インフォームドコンセント後,最初に患者に接した時に血清を採取した.年齢中央値はそれぞれ,外来患者58歳(男性22, 女性3人),重篤入院患者58歳(ICU: 男性17, 女性2人),重症〜中等症入院患者55歳(非ICU: 男性13, 女性3人)であった.重篤患者は侵襲的人工呼吸またはECMO療法を受けている; 重症患者はoxygen insufflationを受けている; 中等症患者はoxygen insufflationを受けずにその他の理由で入院した場合と定義した.全入院患者の入院期間(LoS: length of stay)中央値は10日(range, 2-55)であった; 死亡例は3人であった.

Antibody measurement:

季節性コロナウイルスおよびSARS-CoV-2に対する抗体は,Mikrogen GmbH, Neuried, Germany immunostrip assay recomLine SARS-CoV-2 IgGを用いて測定した.季節性コロナウイルスについては,このアッセイでは,HCoV 229ENL63OC43およびHKU1のヌクレオカプシドタンパク質(NP:nucleocapsid protein)に対するIgG抗体を測定した.SARS-CoV-2に関しては,S1サブユニットおよび受容体結合ドメイン(RBD: receptor binding domain)に対するNP特異的抗体およびスパイクタンパク(S)特異的抗体が測定された.測定は,ミュンスター大学病院ウイルス学研究所臨床ウイルス学部門において,メーカーのガイドラインに基づいて行った.精度と信頼性を検証するために,希釈シリーズと反復抗体測定(2回繰り返し)を実施した.陰性と陽性コントロールが分析された.

Data processing and analysis:

抗体レベルは,製造元のガイドラインに従って,immunstripsのカットオフバンドを内部基準として,順序値(ordinal values)として目視で決定した.個々のコロナウイルス特異的バンドの結果は,非検出可能(−),カットオフ未満(±),カットオフ強度あり(+),カットオフ以上(above cutoff)(++),および非常に強いシグナル強度(+++)として順序尺度で評価した.さらに,個々のimmunstripsのカットオフバンドのシグナル強度を内部基準として,ImageJversion 153, 64bit-Version for windows)を用いて,相対的な抗体レベルを定量的に決定した.結果は,カットオフバンドシグナル強度に対するHCoV特異的バンドシグナル強度比として表された.この解析には,immunostrip assayからの標準化写真を使用した.人口統計データ,治療の種類,および入院期間は、ミュンスター大学病院の病院情報システム(ORBIS from Dedalus Healthcare Group)からMedical Data Integration CenterMeDIC)によって抽出された.順序値と数値はWilcoxon検定を用いて解析した.数値の相関はSpearman相関で評価した。両側p0.05は有意であると考えられた.

Results

バンドシグナル強度(band intensities)の視覚的決定によると,HCoV OC43およびHKU1特異的IgG抗体レベルは,他のすべての患者と比較して,重篤COVID-19入院患者で有意に低かったOC43ではp= 0.016; HKU1ではp= 0.023; Wilcoxon test with ordinal measurement dataFigure 1では,重篤COVID-19患者のHCoV IgG抗体レベルの順序を他のCOVID-19患者と比較して示した.患者ごとにある時点(入院後0, 3, 8, 14日目)での血清サンプルは,患者14人について利用可能であった.HCoV OC43およびHKU1抗体レベルに関しては,経時的な変化を示す証拠はなかった(supplemental Figure 1)ため,これらの実験パラメータは,back-boosting(すなわち,SARS-CoV-2と交差反応する抗体を産生する細胞が増殖する)(Shrock et al. 2020)によるバイアスはない.同様の結果は,densitometric antibodyレベルによって得られた(supplemental Figure 2).

Figure 1:

 

COVID-19患者における風土病としてのコロナウイルスに対する抗体の潜在的な臨床的影響をさらに評価するために,LoSlength of stay)とHCoVs OC43およびHKU1抗体レベルの相関を解析した(Figure 2).抗体価が低い患者では入院期間が長くなる傾向がみられた

Figure 2:

 

Supplemental Figure 3は,初診時のSARS-CoV-2 IgG抗体測定結果を示したものである.一般的に,重篤患者は中等症〜重症入院患者や外来患者に比べてSARS-CoV-2 IgG抗体レベルが高かった

Discussion

最近,いくつかのグループが,未曝露者におけるSARSCoV-2に対するT細胞ベースの免疫交差反応性を報告している(Grifoni et al., 2020; Le Bert et al., 2020; Mateus et al., 2020).公衆衛生の観点から,重篤COVID-19患者の割合が相対的に高いことによって,このパンデミックの重要な問題,すなわち医療システムの過負荷が提起されている.もし,既知の病原体の先行感染がCOVID-19の経過に影響するならば(例えば,集中治療が必要な患者の割合を減少する),これはパンデミックを克服するための要因になる可能性がある.SARS-CoV-2感染前に重症化リスクがある人を特定することによって,適切な予防措置をとれる可能性がある.注目すべき点として,これはワクチン戦略にも関連する可能性がある.

このバイオマーカー研究では,抗体レベルとして測定される過去の季節性コロナウイルス感染とCOVID-19重症度における潜在的な関係を評価したHCoVs OC43およびHKU1抗体レベルの上昇は,集中治療の必要性の低さと関連していることが示されたさらに,入院期間の短縮傾向が観察された.我々の知見は,電子カルテデータに基づく最近の研究(Sagar et al. 2020)と一致している.より高いレベルの季節性コロナウイルスに対する抗体は,アクティブな免疫システムにとっての単なるサロゲートマーカーであるという議論があるかもしれない.しかし,HCoVs OC43およびHKU1はベータコロナウイルスであり,したがって,HCoVs 229EまたはNL63よりもSARS-CoV-2に近い関連性があるこれは,過去のHCoVs OC43およびHKU1への曝露は,過去のHCoVs 229EまたはNL63への曝露よりも,COVID-19重症度とより強い関連があるという我々のデータと一致している考えられる説明としては,季節性ベータコロナウイルスへの事前に曝露することによって,SARS-CoV-2に対するT細胞ベースの免疫応答を促進するということが考えられる.これらの知見の背景にある分子機構を明らかにするためには,さらなる研究が必要である.

SARS-CoV-2抗体に関しては,逆のパターンが検出された: 重篤患者は,他の患者と比較してSARS-CoV-2 NPRBD,およびS1抗体の中央値が高いことが示された.同様の結果が最近報告された(Kowitdamrong et al. 2020).したがって,我々のコホートにおける3群(外来,非ICUICU)における抗体レベルおよび液性免疫応答をマウントする能力に関する一般的なバイアスについての証拠はない.

Limitation: 限られた症例数の単施設後ろ向き研究であり,”関連性(association)”は”因果関係(causation)”ではないしかし,HCoV OC43およびHKU1特異的抗体レベルの影響が,わずか60人の患者で集中治療の必要性に関して統計的に有意になったことは注目に値する.したがって,これらの知見は,より大規模な患者集団を有する他の施設で検証されるべきである.前向き設定(prospective setting)(例えば,医療従事者やスーパーマーケットの従業員のように多くの人と接触しているリスクグループ)において,HCoV OC43およびHKU1特異的抗体レベルの欠如により,COVID-19重症化リスクがある人を特定できるかどうかを検証すべきである.脆弱な人の特定は,現在のパンデミックの段階では,予防策を導き、ワクチン戦略を設計するための重要な優先事項である.

Conclusion

季節性コロナウイルス,特にHCoV OC43およびHKU1に対する既存の抗体レベルの上昇は,COVID-19の重症化が少ないことと関連している.さらなる研究により,この知見を検証し,SARS-CoV-2感染前に重症化するリスクのある人を特定する可能性を探るべきである.