COVID-19関連追加(2021324日)変異株とワクチンとその4

ワクチンの効果についてNEJMよりCorrespondence 4報,変異株とワクチンについてNatureより1報.

【カリフォルニア州の医療従事者におけるワクチン接種後のSARS-CoV-2感染】

Keehner J, et al. SARS-CoV-2 Infection after Vaccination in Health Care Workers in California. N Engl J Med. Mar 23, 2021. https://doi.org/10.1056/NEJMc2101927.

 

202011月までに行われたmRNAワクチンの第3相臨床試験のデータによると,症候性SARS-CoV-2感染の予防効果は,mRNA-1273ワクチン(Moderna)の2回目の投与から14日後に94.1%1)BNT162b2ワクチン(Pfizer)の2回目の投与から7日後に95%であった2).これらの試験結果が発表されて以降,世界的にCovid-19の急増が指摘され,感染性が高まったSARS-CoV-2変異株が出現している.そして,FDAFood and Drug Administration)はこれら2つのmRNAワクチンの緊急使用許可を出し,全米でワクチン接種が開始された.

ワクチン接種キャンペーンの開始以降,1回または2回のワクチン接種を受けた人で,Covid-19の発症が報告されている3)カリフォルニア大学サンディエゴ校(UCSD)とカリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)の両医療機関では,20201216日に医療従事者へのワクチン接種を開始したUCSDでは,122日に,症状のある人に対する検査の閾値を低く設定したことに加えて,無症状の医療従事者に対して,鼻腔ぬぐい液のポリメラーゼ連鎖反応(PCR)アッセイによる検査を毎週実施することを義務付けたUCLAでは,1226日,無症状の医療従事者を対象に,鼻腔ぬぐい液を用いたPCRアッセイによる任意の検査プログラムを導入した.このプログラムにより,ワクチン接種後の無症候性SARS-CoV-2感染の検出率が向上した.

プールされたデータは、UCSDUCLAの従業員健康電子記録システムから非識別化された形式で入手された4).機関審査委員会の承認の免除を得た.

20201216日〜202129日までに,合計36,659人の医療従事者が1回目のワクチン接種を受け,そのうち28,184人(77%)が2回目のワクチン接種を受けた.ワクチンを接種した医療従事者のうち,接種して少なくとも1日後にSARS-CoV-2陽性反応を認めた人は379人だった.そして大部分(71%)は1回目の接種後2週間以内に陽性反応を認めた.2回のワクチン接種を受けた医療従事者のうち,37人が陽性となり,このうち22人は2回目の接種後17日で陽性反応を認めた.2回目の接種から814日後に陽性反応を認めた医療従事者は8人のみで,15日以上後に陽性反応を認めた医療従事者は7人であった(Table 1).29日時点で,UCSDでは5455人,UCLAでは9535人の医療従事者が2回目の接種を2週間以上前に受けている; この結果は陽性率0.05%に相当する

 

 

Table 1: New SARS-CoV-2 Infections among Vaccinated Health Care Workers from December 16, 2020, through February 9, 2021.

https://www.nejm.org/na101/home/literatum/publisher/mms/journals/content/nejm/0/nejm.ahead-of-print/nejmc2101927/20210322/images/img_large/nejmc2101927_t1.jpeg

我々のコホートでは,ワクチン接種後にSARS-CoV-2が陽性となる絶対リスク(absolute riskは,UCSDの医療従事者では1.19%UCLAの医療従事者では0.97%であり,これらのリスクは,mRNA-1273ワクチン1)BNT162b2ワクチン2)の臨床試験で報告されたリスクよりも高かった.このようにリスクが高い理由としては,我々の施設では無症状および有症状の人を対象とした定期的な検査が可能であったこと,ワクチン接種キャンペーン中に南カリフォルニアで感染者が急増したこと5),臨床試験参加者と我々のコホートに含まれる医療従事者との間の人口統計的特性の違いなどが考えられる.医療従事者は,臨床試験参加者よりも若く,SARS-CoV-2曝露リスクが全体的に高かった.さらに,初期の両ワクチン臨床試験の報告締切日は,今回の急増よりもかなり前であり,そしてBNT162b2ワクチン試験では無症状の人の検査は含まれておらず2)mRNA-1273ワクチン試験では2回目の接種前に無症状の人のスクリーニングが1回だけ行われた1)

2回目の接種から14日後に陽性反応を認めることは稀であり,これらのワクチンの有効性が臨床試験のセッティング以外でも維持されていることを示唆しているこれらのデータは,ワクチン接種率が高い環境であっても,大規模な集団免疫が成立するまでは,公衆衛生上の緩和策(マスク,フィジカルディスタンス,日常的な症状のスクリーニング,定期的な検査)を継続することが極めて重要であることを示している

 

References

1) Baden LR, El Sahly HM, Essink B, et al. Efficacy and safety of the mRNA-1273 SARS-CoV-2 vaccine. N Engl J Med 2021;384:403-416.

2) Polack FP, Thomas SJ, Kitchin N, et al. Safety and efficacy of the BNT162b2 mRNA Covid-19 vaccine. N Engl J Med 2020;383:2603-2615.

3) Dagan N, Barda N, Kepten E, et al. BNT162b2 mRNA Covid-19 vaccine in a nationwide mass vaccination setting. N Engl J Med. DOI: 10.1056/NEJMoa2101765.

4) Reeves JJ, Hollandsworth HM, Torriani FJ, et al. Rapid response to COVID-19: health informatics support for outbreak management in an academic health system. J Am Med Inform Assoc 2020;27(6):853-859.

5) Dong E, Du H, Gardner L. An interactive web-based dashboard to track COVID-19 in real time. Lancet Infect Dis 2020;20:533-534.

 

 

 

 

 

 

【テキサス州ダラスのある医療機関における

SARS-CoV-2ワクチンの効果に関する初期の証拠】

Daniel W, et al. Early Evidence of the Effect of SARS-CoV-2 Vaccine at One Medical Center. N Engl J Med. Mar 23, 2021. https://doi.org/10.1056/NEJMc2102153.

 

BNT162b2ワクチン(Pfizer-BioNTech)およびmRNA-1273ワクチン(Moderna)の2種類のmRNAワクチンの緊急使用許可は,Covid-19パンデミックに対応する取り組みにおいて重要なマイルストーンとなった.これらのFDAの措置は,臨床試験の素晴らしい結果に基づいて行われたが,認可以降わずか数週間の経過で,SARS-CoV-2感染および関連疾患の伝播に対するワクチンの全体的な効果を明らかにする現実的な証拠が得られた.

ここでは,テキサス州保健サービス局の指示に従って,ワクチンのphase 1a試験を行ったフロントラインの従業員を対象とした20201215日に開始されたプログラムに関するテキサス大学サウスウェスタン・メディカルセンター(UTSW)のデータを報告する.ワクチン接種の取り組みを開始した時期は,テキサス州北部でSARS-CoV-2の新規感染者数が急速に増加した時期と重なっている.この感染拡大により,この地域ではこれまでで最大の感染者数となり,医療システムが逼迫した.

ワクチン接種キャンペーンの最初の31日間で,UTSWの従業員23,234人の59%がいずれかのmRNAワクチンの1回目の接種を受け,30%2回目の接種を受けた.20201215日〜2021128日において,ワクチン接種の適格者であった従業員23,234人のうち,合計350人(1.5%が新たにSARS-CoV-2に感染したことが確認されたFigure 1Aに示すように,感染した人の割合はワクチン接種状況によって異なりワクチン未接種の従業員8969人のうち234人(2.61%; 95%CI, 2.29-2.96部分的にワクチンを接種した従業員6144人のうち112人(1.82%; 95%CI, 1.50-2.19完全にワクチンを接種した従業員8121人のうち4人(0.05%; 95%CI, 0.01-0.13感染が確認された(すべてのペアワイズ比較でP< 0.01

Figure 1Bに示すように,19日以降,UTSWの全従業員における実際のPCR検査陽性数は,同時期に救急外来を受診しPCR検査を受けた患者における,実際に増加しているSARS-CoV-2陽性率1)に基づいて予測された陽性数よりも一貫して低かった

 

 

Figure 1: Early Results of SARS-CoV-2 Vaccination.

パネルAは,20201215日〜2021128日において,SARS-CoV-2ワクチン接種の適格者であるテキサス大学サウスウェスタン・メディカルセンター(UTSW)の従業員23,234人のうち,新たにSARS-CoV-2に感染した人の割合を,ワクチン接種状況によって層別して示している.ワクチン接種状況は,1215日以降に最初のSARS-CoV-2陽性反応が出た時点で判断し,1215日〜128日までに感染が検出されなかった場合は,128日のワクチン接種状況を用いた.𝙸バーは95%信頼区間を示す.パネルBでは,ワクチンを接種しなかった場合,増加すると予測された陽性検査数を示す(黒線).斜線部分は95%信頼区間を示す.実際の陽性検査数(黒点)は,19日(青線)以降(従業員へのワクチン接種開始から25日後)に減少した.

https://www.nejm.org/na101/home/literatum/publisher/mms/journals/content/nejm/0/nejm.ahead-of-print/nejmc2102153/20210322/images/img_xlarge/nejmc2102153_f1.jpeg

ワクチン接種による従業員の予防効果は劇的であった隔離あるいは検疫された従業員数が90%を超えて減少したことが確認された(Figure S2 in the Supplementary AppendixUTSWにおけるSARS-CoV-2ワクチン接種の現実世界での結果は,従業員の感染率が著しく減少した.この減少により,最も必要とされるときの労働力が保たれた.

24日までphase 1aにおいて約70%の従業員がワクチンを接種し,35日までphase 1aにおいて78%の従業員がワクチンを接種した.ワクチンへのアクセスに障害がない場合でも,ワクチンを躊躇すること(vaccine hesitancy)が重要な課題であることは明らかである.平常を取り戻すためのワクチン接種の効果を最大限に発揮させるためには,経験から得られた洞察に基づいて,このような躊躇の要因に対処することが不可欠である.

 

References

1) Ceylan Z. Estimation of COVID-19 prevalence in Italy, Spain, and France. Sci Total Environ 2020;729:138817-138817.

 

 

 

 

 

 

【イスラエル,エルサレムの医療従事者におけるBNT162b2 mRNAワクチンの効果】

Benenson S, et al. BNT162b2 mRNA Covid-19 Vaccine Effectiveness among Health Care Workers. Mar 23, 2021. N Engl J Med. Mar 23, 2021.

https://doi.org/10.1056/NEJMc2101951.

 

世界各地でCovid-19が急増し,緊急かつ集中的な医療が必要となっていることが,医療システムや病院に大きな負担をかけている.医療従事者は,地域社会でも職場でも,患者へのケアを行う際にCovid-19曝露リスクが高い1)Covid-19に関連した医療従事者の隔離は,医療サービスにさらなる負担をかけている.ワクチンが導入されて以来,医療従事者へのワクチン接種を優先することが提唱されており,現実世界における医療従事者に対するワクチンの有効性に関するデータが出始めている.

我々は,エルサレムに2つのキャンパスを持ち,従業員6680人を抱えるハダサ・ヘブライ大学医療センター(HHUMC)の医療従事者を対象にワクチンの有効性を調査した.エルサレムはイスラエルの中でもCovid-19の発生率が高い都市の一つである2)HHUMCでは現在,通常業務に加えて,8つの専用病棟でCovid-19患者の治療を行っている.安全な病院環境を構築するため,HHUMCは全職員を対象にSARS-CoV-2の積極的かつ定期的なスクリーニングプログラムを確立した3)流行開始から2021131日までに,医療従事者6680人のうち689人(10.3%)が感染したが,そのほとんどが地域社会でのCovid-19への曝露によるものであった; 医療従事者の発生率の傾向はエルサレムにおける人口集団と同様であった(Figure S1

Figure S1:

 

20201220日より,21日間隔で2回接種するPfizerBioNtech社製のワクチン4)の接種を開始した8週間以内に,1220日までの過去に感染していなかった医療従事者6252人のうち5297人(84.7%)がワクチンを接種した1回目のワクチンを接種し,21日目までに感染していなかった医療従事者のほとんど(98.9%)が2回目のワクチンを接種した.我々は,医療従事者のワクチン接種状況と,医療従事者の間で発生した感染に関するデータを収集した.ワクチンを接種した医療従事者において,1回目の接種以降のCovid-19の週ごとの発生率は,2週目以降に顕著に減少した; 感染の発生率はその後も劇的に減少し,4週目以降は低い水準で推移したTable 1, Figure S2

Table 1: Incidence of Covid-19 among Vaccinated HCWs at HHUMC.

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Figure S2:

20209月以降,Covid-19に感染していない確率(probabiliry of being free from Covid-19)は,2回接種の開始(commencement)まで着実に低下しており、その後は接種した医療従事者の感染が大幅に減少したFigure S3.なお、Covid-19の発生率を算出するために用いた分子は,強制または任意検査で感染が検出された患者数であった; ワクチン接種を受けた医療従事者全員を対象とした系統的な検査は行われなかった.そのため,いくつかの陽性例を見逃しているかもしれない.

Figure S3:

Covid-19の発生率が高い地域社会の病院で実施された我々の研究では,医療従事者にBNT162b2ワクチンを接種した結果,B.1.1.7変異株の急増が症例の最大80%まで認められた場合でも,ワクチンの2回接種によって新規Covid-19症例が大幅に減少した5).これらの知見は,医療従事者に広く効果的なワクチンを接種することで,地域社会でSARS-CoV-2の感染率が高い場合でも,安全な環境を提供できることを示唆している.

 

References

1) Bandyopadhyay S, Baticulon RE, Kadhum M, et al. Infection and mortality of healthcare workers worldwide from COVID-19: a systematic review. BMJ Glob Health 2020;5(12):e003097-e003097.

2) Ministry of Health of Israel. Official COVID-19 data site

(https://data.gov.il/dataset/covid-19.)

(In Hebrew.)

3) Oster Y, Wolf DG, Olshtain-Pops K, Rotstein Z, Schwartz C, Benenson S. Proactive screening approach for SARS-CoV-2 among healthcare workers. Clin Microbiol Infect 2021;27:155-156.

4) Polack FP, Thomas SJ, Kitchin N, et al. Safety and efficacy of the BNT162b2 mRNA Covid-19 vaccine. N Engl J Med 2020;383:2603-2615.

5) Ministry of Health of Israel. COVID-19 research reports. 2021

(https://www.gov.il/BlobFolder/reports/research-report-n219-post-lockdown-guidelines/he/research-report_research-report-n219-post-lockdown-guidelines.pdf.)

(In Hebrew.)

 

 

 

 

 

 

mRNAワクチン単回接種後の抗体反応】

Bradley T, et al. Antibody Responses after a Single Dose of SARS-CoV-2 mRNA Vaccine. N Engl J Med. Mar 23, 2021. https://doi.org/10.1056/NEJMc2102051.

 

現在,SARS-CoV-2に対するメッセンジャーRNAmRNA)プラットフォーム技術を用いた2つのワクチンが,FDAから緊急用として承認されている(mRNA-1273Moderna)およびBNT162b2Pfizer))1)2).これらのワクチンの第3相試験では,34週間の間隔で2回接種することにより,症候性感染を防ぐことにおいて90%を超える効果が示された.これらの臨床試験は,主にSARS-CoV-2の感染歴のない被験者を対象としている.米国では,2,600万例を超えるCovid-19が記録されており,最近の研究では高い血清陽性率が観察されている3).したがって,SARS-CoV-2の感染歴がある人のワクチン接種に対する免疫応答を定義する必要がある.

本研究では,ワクチン接種の3060日前にSARS-CoV-2感染が検査によって確認された医療従事者36人と,SARS-CoV-2感染歴のない医療従事者152人を対象に,BNT162b2 SARS-CoV-2 mRNAワクチンのベースライン時と初回接種後3週間後の抗体レベルを測定した(Table S1.ワクチン接種者のサンプルは,Children's Mercy Kansas Cityでの臨床研究の一環として入手したもので,その使用はChildren's Mercyの機関審査委員会で審査・承認された.参加者は,研究情報レターを読み,質問をする機会が与えられた後,自ら登録したため,書面によるインフォームド・コンセントの要件は免除された.

Table S1: Study participant demographics.

我々は,multiplex bead-binding assayMilliplex SARS-CoV-2 Antigen Panel 1 IgGMillipore)を用いて,SARS-CoV-2スパイクタンパク質サブユニットS1およびS2,スパイク受容体結合ドメイン,ヌクレオカプシドタンパク質に対するIgGレベルを測定したところ,1回目のワクチン接種後,両群ともにすべてのスパイクタンパク質サブユニットに対する抗体価が上昇したが,ワクチン抗原ではないヌクレオカプシドタンパク質に対する抗体価は上昇しなかった(Figure 1A, S1, S2).ベースライン時にSARS-CoV-2感染歴のない参加者のうち6人が,最近感染した参加者の抗体レベルと一致していた(サブユニットS1の蛍光強度中央値が1000以上); この6人は診断されていない感染者だったかもしれない.これらの参加者を別のグループ(”未診断”)に分けて分析したところ,3週目の血清検査の結果は最近感染した参加者の結果と似ていた.1回目のワクチン接種後,最近感染した参加者は,S1S2,および受容体結合ドメインに対する抗体価が,感染歴のない参加者よりも高かった(Figure 1A, Table S2

Figure 1: Antibody Response to SARS-CoV-2 mRNA Vaccine.

https://www.nejm.org/na101/home/literatum/publisher/mms/journals/content/nejm/0/nejm.ahead-of-print/nejmc2102051/20210322/images/img_xlarge/nejmc2102051_f1.jpeg

Figure S1: Intensity of quality control beads for multiplex binding assay.

Figure S2: Magnitude of change of antibody binding in each individual at week 3 from baseline.

 

Table S2: 95% Confidence interval of median of binding antibody responses.

SARS-CoV-2受容体結合ドメインとヒト宿主受容体アンジオテンシン変換酵素2ACE2)との結合をブロックする抗体を測定することで,血中の潜在的なSARS-CoV-2中和抗体を間接的に検出できるFDA承認のin vitroアッセイを使用した(SARS-CoV-2 Surrogate Virus Neutralization Test Kit, Genscript)(Figure 1B).予想通り,ベースラインでは,ブロック抗体は,SARS-CoV-2の感染歴がないグループでは検出されず,最近感染したグループと未診断グループでは様々なレベルで検出されたその結果,一次免疫(primary immunization)後のブロック抗体のレベルは,血清陽性参加者(最近感染したグループと未診断グループ)の方が血清陰性参加者(感染歴のないグループ)よりも高かった(ブロックされた結合の割合の95% CI: 感染歴なし, 49.6-66.2%; 最近の感染, 96.0-97.0%)(Figure 1B

単回ワクチン接種から3週間後,SARS-CoV-2に最近感染した人あるいは血清反応陽性の人は,感染歴のない人に比べて,SARS-CoV-24つの抗原に対する抗体レベルが高く,中和特性を持つ抗体のレベルも高いことがわかった.しかし,抗体反応の持続時間やその他の防御免疫の指標となりうるものについては,さらなる調査が必要である.ヒトにおけるSARS-CoV-2ワクチンの防御力の免疫学的相関関係がなければ,ワクチン接種後の防御免疫を正確に測定することはできず,効果的な予防接種プログラムのバリエーションに関して信頼性のある推奨はできない.

 

References

1) Baden LR, El Sahly HM, Essink B, et al. Efficacy and safety of the mRNA-1273 SARS-CoV-2 vaccine. N Engl J Med 2020;384:403-416.

2) Polack FP, Thomas SJ, Kitchin N, et al. Safety and efficacy of the BNT162b2 mRNA Covid-19 vaccine. N Engl J Med 2020;383:2603-2615.

3) Lumley SF, O’Donnell D, Stoesser NE, et al. Antibody status and incidence of SARS-CoV-2 infection in health care workers. N Engl J Med 2020;384:533-540.

 

 

 

 

 

 

COVIDの稀な反応がバリアントプルーフワクチンの鍵となるかもしれない】

Ewen Callaway. Rare COVID reactions might hold key to variant-proof vaccines. Nature. Mar 19, 2021. https://doi.org/10.1038/d41586-021-00722-8.

Illustration of COVID-19 coronavirus spike proteins

An illustration of the spike proteins that the SARS-CoV-2 virus uses to break into human cell membranes.

 

一部の人は,コロナウイルスの様々な種類のウイルスを阻止できる免疫応答を示す

抗体の成熟(maturation

 

Penny Mooreは,南アフリカで発見されたコロナウイルス変異株が免疫システムを回避できることを最初に示した科学者の一人である.このウイルス学者は,B.1.351と名付けられた変異株に感染した人々の免疫応答を検査した時,より厳しいニュースを予想していた.

しかし,彼女のチームは希望の光を見出した: B.1.351の感染によって,新旧の変異株を防ぐfend off, かわす,受け流す,寄せ付けない,そして離す)抗体が惹起された.国立感染症研究所とウィットウォータースランド大学(ヨハネスブルグ)に所属するMooreは,”これは驚きだった”と語る.

今月,bioRxivに投稿されたこの発見は,−過去,現在,そしておそらくは未来−,コロナウイルスの変異株にワクチンが対応できる可能性を示唆する最近の一連の研究に加わるものである.

ニューヨークのロックフェラー大学のウイルス学者Paul Bieniaszは,”現在流通している変異株に対処するワクチンを入手することは非常に解決できる問題である”と述べている.“その解決策はすでにあるかもしれない”

2020年末に,南アフリカの研究者がB.1.351を特定した.現在,同国の症例の大半を占めており,世界中に広がっている.この変異株が科学者たちの注目を集めたのは,今年初めに南アフリカで発生した第1波ですでに大きな被害を受けていた場所におけるアウトブレイクと関連していたことと、通常はSARS-CoV-2を無効にする一部の抗体の能力を鈍らせる変化を持っていたからである.

1月,Mooreとダーバンにあるアフリカ・ヘルス・リサーチ・インスティテュートのAlex Sigalによる研究は、B.1.351に対する初期の不安をかき立てた2)3).この研究では,B.1.351が第一世代ウイルスに感染した多くの人が持つウイルスを遮断する抗体を回避することが示された.その数週間後,臨床試験の結果,このウイルスはNovavax4)Johnson & Johnson社が開発したワクチンの効果を低下させ,AstraZeneca社のワクチンによって得られる防御効果の大部分を失わせる可能性があることが明らかになった5)

Pseudovirus’ surprise:

Mooreは,B.1.351に感染すると強力な免疫応答が引き起こされることを期待していたが,この変異株が他の株よりも免疫システムから見えにくい可能性にも目を向けていた.そこでMooreのチームは,B.1.351に感染して入院したことのある89人の抗体を分析した.研究チームは,SARS-CoV-2のスパイクタンパク質を使って細胞に感染する改良型HIVである’疑似ウイルス(pseudovirus'を用いて,感染を遮断する抗体の能力を測定した.

心強いことに,B.1.351に感染して回復した人は,それ以前に流通していた変異株に感染した人と同じくらい多くの抗体を作っていた.これらの抗体は,B.1.351変異を持つ疑似ウイルスを良好に遮断した.Mooreは,この抗体は他の株も遮断したことに驚いたの中には,B.1.351が置き換わった株に似たものやB.1.351といくつかの共通の変異をもち,ブラジルで発見されたP.1と呼ばれる免疫を回避する変異株が含まれていたSigalのチームも先月,同様の結果を報告した3)

心強いことに,B.1.351に感染して回復した人は,それ以前に流通していた変異株に感染した人と同じくらい多くの抗体を作っていた.これらの抗体は,B.1.351変異を持つ疑似ウイルスを良好に遮断した.Mooreは,この抗体は他の株も遮断したことに驚いた.その中には,B.1.351が置き換わった株に似たものやB.1.351といくつかの共通の変異をもち,ブラジルで発見されたP.1と呼ばれる免疫を回避する変異株が含まれていた.Sigalのチームも先月,同様の結果を報告した3)

この結果は,B.1.351のような変異株に対応できるワクチンを開発する取り組みを後押しするものである.先週,B.1.351変異株の遺伝子配列に基づいて改良されたModerna社のアップデートワクチンが初めて試験参加者に接種されたPfizer社,BioNtech社を含む他の開発者も,B.1.351の遺伝子配列に基づくワクチンの臨床試験を計画している.Mooreは,”それらのワクチンが少しでも良い結果を出す可能性は十分にあると思う”,と述べている.

様々なコロナウイルス変異株は,異なる免疫応答を引き起こす可能性があり,研究者たちはその多様性の全貌を明らかにし始めている.フランシス・クリック研究所(ロンドン)の免疫学者George Kassiotisとユニバーシティ・カレッジ・ロンドンのウイルス学者Eleni Nastouliの研究によると,英国で急速に広まっているB.1.1.7変異株の感染で産生される抗体は,B.1.351やそれ以前の変異株に対して効果が乏しいようである6)

なぜB.1.1.7が狭い範囲の免疫応答しか引き起こさないのか,その理由は明らかではない.この変異株に対しては,既存のワクチン(2019年末に中国の武漢で出現したウイルスをベースにしたもの)で対応できるが,研究者たちは,B.1.351をベースにしたワクチンがB.1.1.7にも対応できるかどうかを早急に見極める必要がある,とKassiotisは言う.もしそうでなければ,将来のワクチンは,季節性インフルエンザ(皮下)注射(jab)と同様に,複数の変異株に対して同時に免疫を惹起する必要があるかもしれない.

Vaccine resilience:

コロナウイルス変異株に対処するための方法は,ワクチンの再設計だけが必要という訳ではない.研究者たちは,時に幅広い防御を可能にする(感染による)自然免疫を模倣するような既存のワクチンをより回復させる(resilient)ための他の要因を特定している.例えば,Bieniaszらは,COVID-19から回復した人の中には,時間経過とともに,多様なコロナウイルス変異株を遮断する能力を持つ抗体が作られることを発見した7)

抗体を産生するB細胞は,自然淘汰(natural selection)されることで,標的により強く結合する抗体を作るように進化する.これは成熟(maturationと呼ばれるプロセスである.Bieniaszらは,感染から回復した人から数ヶ月間隔でB細胞を分離し,個々の抗体の能力が,その抗体をつくるB細胞の系統の成熟に伴ってどのように変化するかを調べた

いくつかの例では,”成熟した(matured)”抗体は,より初期の抗体が認識できなかったB.1.351を含むコロナウイルス変異株を認識したまた,あるタイプの成熟した抗体は,遠く離れた関係にある(distantly related)コロナウイルスを中和できたBieniaszは,”選択プロセスを経て成熟した抗体反応ほど,変異株に上手く対応できる”と語る.

このような抗体を誘発するワクチンを作る方法は明らかではない.抗体が認識する抗原と呼ばれるウイルス分子が体内に留まると,成熟が起こる.”このプロセスを促進するには,抗原をできるだけ持続させる必要がある”,Bieniaszは言う.ワクチンにアジュバント(ワクチン効力を高める異物)を配合することは,これを達成する一つの方法かもしれない.

何百万人もの人々に投与されてきたワクチンの中には,すでに変異株に対して”回復した(resilient)”免疫応答を引き起こすものがあるかもしれない3月に発表された別のプレプリントにおいて,ワシントン州シアトルで長期にわたって行われているCOVID-19研究では,SARS-CoV-2に感染したことのある被験者が,mRNAワクチンを1回接種した後,B.1.351および以前に循環していた変異株を中和できる抗体を大量に産生したことが報告されている8)また,2回のワクチン接種を受けた人でも,通常よりもはるかに高いレベルの抗体を産生していた

シアトルのフレッドハッチンソンがん研究センター(FHCRC)の免疫学者で,その研究を共同で主導したLeonidas Stamatatosは,1回のワクチン接種によって,多様な変異株を認識できる既存の抗体のレベルが高まったのではないかと考えている.COVID-19に罹患していない人においてこの反応を模倣する方法は明らかではない1つの可能性としては,感染からワクチン接種までの期間が数ヶ月あったことが挙げられ,最初の2回のワクチン接種から6ヶ月または1年後に他のワクチンを接種すれば(another vaccine dose),その効果を再現できるだろう,研究を共同主導したFHCRCの免疫学者Andy McGuireは述べる.

変異株に対する幅広い免疫応答を示すことによって,最近のデータから,多くの研究者は,ワクチンが幅広い変異株を防御できるようになると用心深く楽観的に(cautiously optimistic)考えている.メリーランド州シルバー・スプリングにあるウォルター・リード陸軍研究所に勤務するヘンリー・M・ジャクソン軍事医学振興財団のウイルス学者であるMorgane Rollandは,”より良いワクチンへの道に関する,非常に良いニュースだと思う”と述べている.

また,このウイルスが同じ免疫逃避変異(the same immune-evading mutations)を繰り返しているという事実は,スパイクタンパク質の変化能力が限られていることを意味するのではないか,とRollandは付け加える

しかし,Mooreはそうは考えていない十分な時間があれば,”ウイルスは免疫応答から逃避する能力をもつと私は信じている”,とMooreは述べる.”我々は,世界の感染者数を減らして、ウイルスが逃避する機会が少なくなるようにしなければならない”.

 

References

1) Moyo-Gwete, T. et al. Preprint at bioRxiv https://doi.org/10.1101/2021.03.06.434193

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