COVID-19関連追加(202141日)mRNAワクチンについてその5

BNT162b2ワクチン接種によるSARS-CoV-2ウイルス量の減少】

Levine-Tiefenbrun M, et al. Initial report of decreased SARS-CoV-2 viral load after inoculation with the BNT162b2 vaccine. Nature Medicine. Mar 29, 2021.

https://doi.org/10.1038/s41591-021-01316-7.

Abstract

COVID-19ワクチンは,個々のワクチン接種者を実質的に防御するだけでなく,ブレイクスルー感染におけるウイルス量を減少させ,それによってその後の感染伝播をさらに抑制する可能性がある.今回,BNT162b2 mRNAワクチン接種後にSARS-CoV-2検査結果が陽性であった現実世界のデータセットを解析した結果,ワクチンの初回接種から1237日後に発生した感染では,ウイルス量が大幅に減少していることがわかった.このウイルス量の減少は,感染力の低下を示唆しており,ウイルスの拡散に対するワクチンの効果をさらに高めるものと考えられる.

Main

最近承認されたBNT162b2 COVID-19 mRNAワクチンは,2回目の接種後7日からPCRで確認された症候性疾患に対して約95%の有効性をもって防御し,さらに1回目の接種後12日からある程度の早期防御効果がある1)2).今後,各国が競って多くの国民にワクチンを接種することによって,ウイルスの基本再生産数が減少することが期待されている.ウイルスに感受性がある人の数を減少させることでこの効果を得ることができる.また,ウイルス排出量を減少させ,感染力を低下させることができるかもしれない3)-7).しかし,COVID-19ワクチン接種後の感染におけるウイルス量におけるワクチン接種の効果は,現在のところ不明である8)

2021211日時点で,イスラエルのMaccabi Healthcare ServicesMHS)は,速やかなワクチンの全国展開の一環として,100万人を超える会員にワクチンを接種している.MHS会員のSARS-CoV-2検査は,MHS中央検査室で行われることが多く,ワクチン接種後の感染を追跡する機会となっている.本研究では,20201221日〜2021211日においてMHS中央検査室で実施されたワクチン接種後の定量的逆転写PCRRT-qPCR)検査(Allplex 2019-nCoV assay, Seegene社)陽性結果から,3つのSARS-CoV-2遺伝子,すなわちENRdRpのデータを後ろ向きに収集して解析した(患者4,938, Table 1.この研究期間は,COVID-19検査の陽性率が高く安定していたことが特徴であり(Extended Data Figure 1),流行の波が続いていることを示していた.

 

 

Table 1: Study population.

感染サイクル閾値(Ct: cycle threshold)を経時的に解析したところ,平均ウイルス量は1回目のワクチン接種から12日後に大幅に減少しており,これはワクチンによる防御が早期に開始されること1)に一致するワクチン接種後の各日に確認されたワクチン接種後感染の平均Ctを算出したところ,RdRp遺伝子(Figure 1)とNおよびE遺伝子(Extended Data Figure 2)では,1回目のワクチン接種21日目以降にサンプルを採取した全ての患者は2回目の接種は初回から21日目に行っている)から1237日後に採取した陽性サンプルのCt値が,ワクチン接種後11日目に採取した陽性サンプルのCt値よりも高いことがわかった(3遺伝子ともP< 10-19, Mann-Whitney U-test.この2つの期間で算出された平均Ct値の差は,RdRp1.7±0.2E1.6±0.2N1.4±0.2であった.

 

 

Figure 1: Decreased SARS-CoV-2 viral load after 12 d post-vaccination.

ワクチン接種後に陽性となったRdRp遺伝子のCt値の平均値を,サンプルを採取したワクチン接種後の日(post-vaccination day)ごとにプロットした.21日目の破線は2回目を接種したことを示す.各日の陽性検査数を下に示した(計4,938人において).黒のエラーバーと緑またはマゼンタは平均値の標準誤差を示す.2937日目については,各ドットは連続した3日間の平均値を示す.E遺伝子およびN遺伝子については,Extended Data Figure 2を参照のこと.

figure1

次に,これらのワクチン接種後感染のCt値を,ワクチン未接種者の陽性結果のCt値と比較した.すべての検査は,MHS会員のもので,中央検査室で実施された.ウイルス量が年齢や性別と関連している可能性があることを考慮し9),年齢層,性別,サンプリング日の範囲を一致させて,ワクチン未接種患者の陽性反応の対照群を作成した(Methods).ワクチン接種後111日目の陽性結果(感染)(3,050人)を,人口統計および日付でマッチさせた同規模の対照群と比較したところ,RdRp遺伝子のCt値の分布(Figure 2a, Extended Data Figure 4a),遺伝子NおよびECt値の分布(Extended Data Figure 3a, 4a)には有意差は認めなかった.しかし,ワクチン接種後1237日目の感染(1,888人)のCt値の分布を,人口統計でマッチしたワクチン未接種の対照群の感染(1,888人)と比較したところ,ワクチン接種者のCt値が有意に増加していることが確認された(RdRp遺伝子についてはFigure 2b, N遺伝子およびE遺伝子についてはExtended Data Figure 3b; Mann-Whitney U-test, P< 10-103遺伝子とも); Extended Data Figure 4b, c最後に,すべての感染(ワクチン接種後とマッチさせたワクチン未接種者, 9,876人)について,年齢,性別,ワクチン接種を考慮した多変量線形回帰モデルを適用したところ,感染サンプリングの1221日前のワクチン接種では,Ct回帰係数が1.51N遺伝子)〜1. 76RdRp遺伝子)であり,さらに感染サンプリングの22-37日前のワクチン接種では1.90N遺伝子)から2.16RdRp遺伝子)の範囲とより高かった(RdRp遺伝子についてはFigure 2c, N遺伝子とE遺伝子についてはExtended Data Figure 61Ct単位の差は,サンプルあたりのウイルス粒子数の2倍にほぼ相当することから,これらのCtの差は,ワクチン接種者のウイルス量が2.84.5倍減少したことを意味する

Figure 2: Comparison of SARS-CoV-2 viral loads among vaccinated and unvaccinated patients.

figure2

 

ウイルス量は,感染からの時間経過だけでなく,COVID-19の症候性疾患との関連が示されてきた9)-12).ワクチン接種者の無症候性および/または長期感染や持続的なウイルス排出における可能性のあるバイアスを減らすために,多変量線形回帰分析を繰り返し,COVID-19検査の紹介が記録されている患者に限定した(ワクチン接種者783人と,人口統計でマッチした同数のワクチン未接種対象者).線形回帰モデルでは,これらを,有症候性COVID-19感染者と主に接触追跡を目的としたその他の理由で検査を受けた者に分類した(01, 無症候性と症候性).その結果,症候性疾患は確かにCt値の低下と相関しており,症候性感染で調節しても,ワクチン接種とCtの関連性は残存していることがわかった(しかし,紹介に基づく検査(referral-based)のサンプルサイズが小さいため,有意性は低い; Extended Data Figure 7).

この結果は,ワクチン接種後12日以上経過した感染では,検査時のウイルス量が有意に減少しており,ウイルス排出量や伝染力,疾患重症度13)に影響を与える可能性があることを示しているこの報告は,無作為化比較試験ではなく,観察研究に基づいており,いくつかの関連する限界がある.第一に,ワクチン接種者は,行動,検査を受ける傾向,一般的な健康状態など,観察されたウイルス量に影響を与える可能性のある点で,人口統計的にマッチした対照群と異なる可能性がある.第二に,異なるウイルス量に関連する可能性のある異なるウイルス変異株が,集団の異なる部分に影響を与える可能性がある.第三に,各患者の最初の陽性結果のみを対象とすることで,長期にわたって残存する低ウイルス量の感染の影響を最小限にすることを試みたが,今回観察された関連性,特にワクチン接種後の早い時期における関連性が,予防接種前の感染伝播イベント9)-12)から続く感染を反映している可能性がある.したがって,平均的なウイルス量は,ワクチン接種後の感染伝播がより強く濃縮されるようなワクチン接種後の長い時期にも変化し続けるかもしれないし,ワクチン接種者の行動の変化(特にワクチン接種証明書の取得時)によっても変化するかもしれない.第四に,ワクチンは症候性疾患を防御することを考慮すると,ワクチン接種後の検査では,ウイルス量が少ないことを特徴とする無症候性キャリア症例が濃縮されている可能性があるが,症候性疾患を調整してもワクチン接種と低ウイルス量との関連性は維持されていることに留意する(Extended Data Figure 7).最後に,鼻腔内のウイルス量と口腔内のウイルス量は区別されず,ウイルスの活性化(virus viability)も考慮していないため,潜在的な感染力をより適切に評価できない.さらに,SARS-CoV-2のヒトにおける感染量(infectious dose)は現時点では不明である.今後,接触者追跡データやウイルスの活性化,ゲノミクスなど,より広範で長期的なデータセットが蓄積されれば,感染力に対するワクチンの効果や,ウイルス変異株や曝露者の行動への依存度を,より正確に定量化できるようになるだろう.とはいえ,少なくとも今回観察されたワクチンによるウイルス量の減少は,ウイルス拡散に対するワクチン効果の疫学モデルを細かく調整するのに役立つだろう.

 

 

References

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13) Pujadas, E. et al. SARS-CoV-2 viral load predicts COVID-19 mortality. Lancet Respir. Med. 8, e70 (2020).

 

 

 

 

 

 

【医療従事者,救急隊員,その他のエッセンシャルおよびフロントラインワーカーにおけるBNT162b2およびmRNA-1273 COVID-19ワクチンによるSARS-CoV-2感染予防効果の中間推定値】

Thompson MG, Burgess JL, Naleway AL, et al. Interim Estimates of Vaccine Effectiveness of BNT162b2 and mRNA-1273 COVID-19 Vaccines in Preventing SARS-CoV-2 Infection Among Health Care Personnel, First Responders, and Other Essential and Frontline Workers — Eight U.S. Locations, December 2020–March 2021. MMWR Morb Mortal Wkly Rep. ePub: 29 March 2021. DOI:

http://dx.doi.org/10.15585/mmwr.mm7013e3.

メッセンジャーRNAmRNABNT162b2Pfizer-BioNTech)およびmRNA-1273ModernaCOVID-19ワクチンは,無作為化プラセボ対照第3相試験において,症候性COVID-19の予防に有効であることが示されている; しかし,これらのワクチンが無症候性および症候性のSARS-CoV-2COVID-19の原因ウイルス)感染を予防する上での有益性(特に現実世界において投与された場合)については十分に理解されていない20201214日〜2021313日において,米国の8ヶ所で,医療従事者,救急隊員,その他のエッセンシャルおよびフロントラインワーカーを対象とした前向きコホート(HEROES-RECOVER)を用いて,CDCは,症状の有無にかかわらず毎週ルーチン,およびCOVID-19関連疾患と一致する症状が現れた時点で,SARS-CoV-2検査を実施した.過去のSARS-CoV-2感染がない参加者3,950人のうち2,479 人(62.8%)が推奨されるmRNA ワクチンを2回接種し,477 人(12.1%)が1回のみ接種した.ワクチン未接種の参加者では,1,000人日あたり1.38SARS-CoV-2感染がRT-PCRによって確認された.一方,完全接種者(2回目の接種後14日以上)では1,000人日あたり0.04部分接種者(1回目の接種後14日以上,そして2回目の接種前)では1,000人日あたり0.19の感染が報告された.感染予防のためのmRNAワクチンの有効性は,study siteを調整した結果,完全接種で90%95%CI, 68%-97%),部分接種で80%95%CI, 59%-90%)と推定された.以上の結果から,公認のmRNAワクチンは,症状の有無にかかわらず,現実世界で働く成人を対象としたSARS-CoV-2感染予防に有効であることが示された.COVID-19ワクチンの接種は,全ての対象に推奨される.

Table 1: Characteristics of health care personnel, first responders, and other essential and frontline workers with reverse transcription–polymerase chain reaction (RT-PCR)–confirmed SARS-CoV-2 infections and percentage receiving one or more doses of a messenger RNA (mRNA) COVID-19 vaccine — eight U.S. locations, December 14, 2020–March 13, 2021.

 

 

Table 2: Person-days, SARS-CoV-2 infections, and vaccine effectiveness among health care personnel, first responders, and other essential and frontline workers, by messenger RNA immunization status — eight U.S. locations, December 14, 2020–March 13, 2021