COVID-19関連追加(202146日)

Oxford-AstraZenecaワクチンについてその4

当院関連ファイル:

202129日(参考文献3))

2021226日(参考文献46))

2021320日(参考文献49))

VOC 202012/01B.1.1.7)に対するChAdOx1ワクチンの効果】

Emary KRW, et al. Efficacy of ChAdOx1 nCoV-19 (AZD1222) vaccine against SARS-CoV-2 variant of concern 202012/01 (B.1.1.7): an exploratory analysis of a randomised controlled trial. Lancet. Published, Mar 30, 2021.

https://doi.org/10.1016/S0140-6736(21)00628-0.

Summary

Background

SARS-CoV-2の新しい変異株であるB.1.1.7が,202011月から英国でCOVID-19疾患の優位な原因として出現した.この変異株に対するアデノウイルスベクターワクチンであるChAdOx1 nCoV-19AZD1222)の有効性について,事後解析を行ったので報告する.

Methods

英国で実施された第2/3相ワクチン有効性試験に登録された,ChAdOx1 nCoV-19または髄膜炎菌結合型コントロール(MenACWY)ワクチン(meningococcal conjugate control vaccine)の接種を無作為に(1:1)割り付けられたボランティア(18歳以上)によって,週1回,そしてCOVID-19症状(咳,37.8℃以上の発熱,息切れ,嗅覚消失,味覚消失)を発症した場合に上気道スワブが提供された.スワブに対してSARS-CoV-2核酸増幅検査(NAAT)が実施され,陽性サンプルはCOVID-19 Genomics UK consortiumを通じてシーケンスされた.中和抗体反応は,B.1.1.7系統および非B.1.1.7系統(ビクトリア)に対するlive-virus microneutralisation assayを用いて測定された.有効性の分析には,2回目のワクチン接種から14日を超えてからスワブNAAT陽性であった血清陰性の参加者における症候性COVID-19が含まれた.参加者は,接種したワクチンに応じて分析された.ワクチンの有効性は,ロバストポアソン回帰モデルから得られた1-相対リスク(ChAdOx1 nCoV-19 vs MenACWY群)として計算された.この研究は継続中で,ClinicalTrials.govNCT04400838およびISRCTN15281137で登録されている.

Findings

有効性コホートの参加者は,2020531日〜1113日に募集され,202083日〜1230日にブースター接種を受けた.有効性に関する主要コホートの参加者8534人のうち,6636人(78%)が1855歳で,5065人(59%)が女性だった.2020101日〜2021114日の間に、520人の参加者がSARS-CoV-2感染症を発症した.試験期間中,これらの参加者からNAAT陽性の鼻腔/咽頭スワブを1466本採取した.このうち,311人の参加者から採取された401本のスワブのシーケンスに成功したワクチン誘導抗体による実験によるウイルス中和活性は,ビクトリア系統に比べると,B.1.1.7系統に対してより低かった(幾何平均比 8.9, 95%CI 7.2-11.0症候性NAAT陽性感染に対するワクチンの臨床的有効性は,B.1.1.7系統に対して70.4%95%CI 43.6-84.5),非B.1.1.7系統に対して81.5%67.9-89.4)であった

Interpretation

ChAdOx1 nCoV-19は,in vitroB.1.1.7変異株に対する中和活性が非B.1.1.7変異株に比べて低下したが,ワクチンはSARS-CoV-2 B.1.1.7変異株に対して有効性を示した

Main

Results

有効性コホートの参加者は,2020531日〜1113日に募集され,202083日〜1230日にブースター接種を受けた.有効性に関する主要コホートの参加者8534人のうち,6636人(78%)は1855歳で,5065人(59%)は女性,7863人(92%)は白人であった.5623人(66%)の参加者は,医療または社会福祉環境(health or social care setting)で働いていた(appendix p2).

2020101日〜2021114日において,520人の参加者がSARS-CoV-2感染症を発症した.試験期間中,これらの参加者からNAAT陽性の鼻腔/咽頭スワブを1466本採取した.これらのスワブのうち401本から塩基配列が得られ,これは311人に相当したこれらのうち219人は,主要有効性コホートの参加者で盲検解除前に発生したもので,そのうち147人が初発の症候性COVID-1953人が無症候性または症状不明であった(Figure 1

 

 

Figure 1: Flow diagram of swabs included in the analysis.

配列データが入手できた初発の症候性COVID-19症例では,147人のうち52人(35%)がB.1.1.7変異株95人(65%)が非B.1.1.7系統によるものであった無症候性あるいは症状不明症例も同様に分布しており,53人のうち19人(36%)がB.1.1.7変異株34人(64%)が非B.1.1.7系統によるものであった.非B.1.1.7系統症例の大半は,B.1.177が原因であった(Figure 2).B.1.1.7症例は,202011月下旬にロンドンのtrial sitesで初めて発生し,202012月〜20211月にかけて陽性スワブの割合が増加した(Figure 3

 

 

Figure 2: Consensus phylogeny of SARS-CoV-2 genomes identified in this study.

Clades are coloured by variant lineage and tips are coloured by vaccine allocation. Only genomes with at least 40% coverage are included (n=247). Lineages were assigned by Pangolin version 2.1.7 (lineages version 2021–02–12).

 

 

Figure 3: Weekly and cumulative number of B.1.1.7 and non-B.1.1.7 isolates identified in the UK trial between Oct 1, 2020, and Jan 14, 2021.

Bars show overall weekly case counts (left axis) and lines show cumulative case counts (right axis).

 

ChAdOx1 nCoV-19ワクチン効果は,B.1.1.7変異株による症候性COVID-19症例に対して70.4%95%CI 43.6-84.5),非B.1.1.7変異株による症候性COVID-19症例に対して81.5%67.9-89.4)であった1回の自己スワブで得られた無症候性または症状不明感染症例では,解析可能な症例数が少なく,CIsは広く,重複していたが,非B.1.1.7感染症例(69.7%, 33.0-86.3)の方がB.1.1.7感染症例(28.9%, 77.1-71.4)よりもワクチン有効性が高かった.対照的に,配列決定されなかった(5.6%, 42.3-37.3),または配列決定結果が得られなかった(−27.0%, 108.1-22.5)無症候性または症状不明感染症例では有効性は認められなかった.全体的な有効性は,B.1.1.7変異株に対して61.7%36.7-76.9その他の変異株に対して77.3%65.4-85.0であった(TableB.1.1.7変異株感染患者のベースラインの人口統計は,非B.1.1.7変異株感染患者と同様であり,プライム・ブースト間隔も同様であった(appendix pp2-4).

 

 

Table: Vaccine efficacy against B.1.1.7 and non-B.1.1.7 variants.

B.1.1.7変異株による初発の症候性COVID-19症例は,52人のうち36人(69%)がSD/SDワクチンを接種した参加者(SD/SD群)に,16人(31%)がLD/SDワクチンを接種した参加者(LD/SD群)に発生した.非B.1.1.7変異株による初発の症候性COVID-19症例は,SD/SD群で61人(64%),LD/SD群で34人(36%)と同様の分布を示した.B.1.1.7変異株に対するワクチンの有効性は,SD/SD群で66.7%95%CI 29.2-84.3),LD/SD群で77.9%22.5-93.7)であったB.1.1.7変異株では,SD/SD群では78.0%57.7-88.5),LD/SD群では87.2%63.7-95.5)であったSD/SD群またはLD/SD群で層別化した場合,無症候性感染や症状不明感染のロバストな比較に利用できる症例はほとんどなかった(appendix p5).

本研究のコホートの参加者で,COVID-19が原因で入院または死亡した者はいなかった

ChAdOx1 nCoV-19を接種した参加者のLighthouse Laboratoryスワブによる最小Ct値(ピークウイルス量のinverse proxy)は,対照ワクチンを接種した参加者(中央値20.2, 15.5-29.6, p< 0.0001; appendix p6)よりも高く,参加者のNAAT陽性期間も短かった(p<0.0001; appendix p7初発の症候性症例は,無症候性または症状不明症例よりもCt値が低く(中央値18.2[15.0-25.0] vs 29.7[21.6-33.5], 初発症候性 vs 無症候性, p< 0.0001; Figure 4),NAAT陽性期間が長かった(p< 0.0001; Figure 5.ほとんどの無症候性参加者(209人のうち169[81%])は,陽性スワブを1回のみであった.しかし,初発の症候性参加者では,NAAT陽性期間が長く,269人のうち陽性スワブが1回のみであったのはわずか56人(21%)であった.ChAdOx1 nCoV-19を接種した初発の症候性参加者は,対照ワクチン接種者よりもNAAT陽性期間が短かった(中央値1.0[IQR 1.0-2.0] vs 中央値2.0[IQR 1.0-3.0]B.1.1.7変異株症例の陽性週数は,非B.1.1.7変異株症例と差がなかった(p= 0.85; appendix p7

 

 

Figure 4: Minimum Ct values across all NAAT positive swabs.

Ct values from positive NAATs performed at Lighthouse Laboratories using a ThermoFisher TaqPath three-gene assay. Each datapoint represents one participant. For each participant, the minimum of the Ct value for the N gene and ORF1ab gene was taken for each NAAT positive swab, and the minimum across all swabs for the same participant was calculated as a proxy for maximum viral load. Low Ct values are associated with a higher viral load. The midlines of the boxes show medians and the outer bounds of the boxes show IQRs. Error bars show the most extreme point within 1.5×IQR above or below the 75th or 25th percentile. Ct=cycle threshold. NAAT=nucleic acid amplification test.

 

 

Figure 5: Length of the NAAT-positive period per participant.

Three primary symptomatic participants who received ChAdOx1 nCoV-19 remained NAAT positive for 8, 9, and 11 weeks, respectively, and one primary symptomatic participant who received the control vaccine remained NAAT positive for 11 weeks; these cases are not shown in the figure. NAAT=nucleic acid amplification test.

 

 

live-virus neutralisation assayn= 49)では,ChAdOx1 nCoV-19接種者血清(recipient sera)の中和力価は,Victoria系統と比較して,B.1.1.7系統では1/9倍であった(9倍低い)(幾何平均比8.9, 95%CI 7.2-11.0, Figure 6).

Figure 6: Live-virus microneutralisation antibody titres of sera against B.1.1.7 and a canonical non-B.1.1.7 strain (Victoria).

The geometric mean titre is 58 (95% CI 44–77) for B.1.1.7 and 517 (424–631) for Victoria. The geometric mean ratio (Victoria vs B.1.1.7) is 8·9 (95% CI 7·2–11·0). The midlines of the boxes show medians and the outer bounds of the boxes show IQRs. Error bars show the most extreme point within 1·5×IQR above or below the 75th or 25th percentile. Lines connect samples from the same participant collected at the same trial timepoint (n=49). ND50=titre at which 50% virus neutralisation is achieved.

 

三量体スパイクタンパク(trimeric spike)に対する総IgGを検出するELISAを用いて,我々は,過去に異なるChAdOx1ベクターワクチンを接種したことのある参加者は,ChAdOx1未接種者の接種後のすべての時点と同等の抗スパイク抗体価を示していたことを観察した(appendix pp9-10

Discussion

今回の結果から,ChAdOx1 nCoV-19ワクチン接種によって得られた実験における中和抗体価はB.1.1.7系統では低いが,症候性COVID-19に対する臨床的なワクチン効果はB.1.1.7変異株で70.4%95%CIの下限は43.6%)であることが示されたこれらの結果は,より低い中和抗体価でも十分な防御効果が得られること,あるいはワクチン接種者の疾患防御には他の免疫機構が関与している可能性を示唆している.この新しい変異株に対する有効性は,B.1.1.7が現在主流となっている地域で,すでにワクチンプログラムが進行中である場合には重要な知見となる.しかし,他の新しい系統7)8)で観察されたスパイクタンパク質のさらなる変異は,通常の抗体の中和作用からウイルスが逃避する可能性があることに留意する必要がある40)41).これは,ウイルスが自然免疫やワクチン誘導免疫に適応することで,感染伝播制御が一時的になる可能性を示している.

ChAdOx1 nCoV-19ワクチン接種者の血清の中和抗体活性をペアで比較したところ,B.1.1.7系統に対する活性は,正統としての非B.1.1.7系統(ビクトリア)に比べて低下していた.ビクトリア系統は、武漢で発生したオリジナル系統と系統樹的に類似しており,スパイクタンパクに1つの変異(S247R; Ser247Arg)しかない.Pfizer-BioNTech社のBNT162b2 mRNA接種者血清は,B.1.1.7を発現する水胞性口内炎ウイルス(VSV: vesicular stomatitis virus)あるいは武漢のオリジナル系統のスパイクタンパクを比較するpseudovirus assaysにおいて,中和活性に変化は示されなかった26)Moderna社のmRNA-1273ワクチン接種者血清は,B.1.1.7またはWuhan系統の完全長スパイクタンパク質を発現するVSVおよびレンチウイルスpseudovirusに対して同等の中和活性を示し42),この所見はlive neutralisation assayでも認められた43).しかし,coronavirus neutralisation assay では,BNT162b2およびChAdOx1 nCoV-19ワクチン接種者血清は,ビクトリア系統と比較してB.1.1.7に対する中和活性が1/2.0-3.3に低下する(2.0-3.3倍に低下)ことが示されており44),今回の結果と一致している.標準化された方法がない中で,疑似ウイルスと活性化ウイルス(live virus)を用いた中和抗体測定で明らかに異なる結果が得られたことは,ウイルス中和データの解釈に注意を払う必要がある.異なるワクチンで免疫付加された人の血清を,同じin-vitro試験法で並行して比較するためのさらなる研究が必要である.

B.1.1.7ウイルスに対する生中和活性(live neutralising activity)の測定値が大幅に低下したにもかかわらず,本ワクチンはB.1.1.7変異株によるCOVID-19に対して強い防御効果を示し,95%CIの下限値はWHOが推奨する30%の閾値を超えていた45).過去に発表されたデータ3)46)と同様に,その大部分はB.1.177系統による非B.1.1.7株に対しても防御効果が示された.

解析可能なサンプル数は,B.1.1.7と非B.1.1.7変異株の間で有効性にわずかな差があるかどうかを判断するための研究の検出力としては十分ではなかった; したがって,有効性が11%低下したとは断定できない.B.1.1.7変異株に対する有効性が10%低下したという同様の結果は,アジュバントスパイクタンパクワクチンであるNovavax NVX-CoV2373について,より少ないシーケンス数から報告されている4).このワクチンも,Wu-1参照スパイク遺伝子配列に基づいている.これらの結果が正式な解析で確認されれば,祖先のスパイクタンパクによって誘発された免疫応答は,B.1.1.7系統に対して高度な交差防御を提供するという我々の発見を裏付けることになる.この示唆は心強いもので,初期に循環していたウイルス系統に基づく現在開発中のワクチン(mRNAワクチンや不活化ワクチンを含む)も,B.1.1.7に対して防御効果がある可能性があることを示している.ChAdOx1 nCoV-19は,202114日から英国の国家予防接種プログラムに導入されているが,その間,B.1.1.7が主流の循環系譜となっている13).初期の国家ワクチン効果データでは,ChAdOx1 nCoV-19の単回接種により,症候性疾患とCOVID-19関連入院の両方から防御されることが示されており47),今回発表された知見と一致している.今回の研究では,南アフリカで確認されたB1.351系統で初めて報告されたE484KGlu484Lys)スパイク変異の証拠を持つ参加者はいなかったE484K変異は,mRNAワクチン血清の中和能力を低下させると考えられている48)暫定的なデータによると,他の祖先スパイクワクチンと同様に,ChAdOx1 nCov-19は,この変異を持つウイルス系統によって引き起こされる上気道感染症に対する臨床効果が低いことが示唆されている49)E484KChAdOx1 nCov-19の中和活性および有効性に与える影響については,現在さらなる研究が進行中である.

前臨床段階のCOVID-19ワクチン研究では,中和抗体の発現が,その後の活性化ウイルスチャレンジからの防御に関連することが示唆されている50).防御の相関の正式な指標がないため,ワクチン開発者はワクチン接種後の中和抗体価を有効性の代用として測定してきた.ChAdOx1 nCoV-19B.1.1.7系統に対する防御効果を持つという今回の結果から,症候性感染を防ぐために必要な中和抗体の絶対量はより低いレベルであることが示唆されているのかもしれない

ChAdOx1 nCoV-19による防御には,異なる免疫機構が関与している可能性もある.動物モデルでは,抗体依存性補体沈着と抗体依存性ナチュラルキラー細胞活性化がチャレンジからの防御に関連している51)我々はこれまでに,2回のChAdOx1 nCoV-19ワクチン接種後に,回復者血清と同じレベルである,抗体依存性単球貪食作用,抗体依存性好中球貪食作用,抗体依存性ナチュラルキラー細胞活性化を強力に引き起こされることを明らかにした29).これらの機能を惹起する抗体は、中和抗体が結合するエピトープとは異なるスパイク蛋白質の構造を認識して結合する相補性決定領域を持っている可能性があり,B.1.1.7に対して観察された臨床効果を説明することができる.

T細胞応答は、COVID-19の臨床的回復に関連しており52),我々は以前,ChAdOx1 nCoV-19がスパイク特異的T細胞を生成し,プライミングワクチン接種後14日目にピークに達することを報告した34)我々は,ワクチンで誘発されたT細胞が最も頻繁に認識するペプチドプールは,S1ドメインのアミノ酸311-430および101-200にまたがっており,B.1.1.7で見られる変異の影響を受けないことを以前に示したこれらの知見は,ChAdOx1 nCoV-19に対する細胞性免疫応答は,中和活性とは無関係に新しい変異株に対して持続するという示唆を裏付けるものである.現在,B.1.1.7スパイクペプチドに対するワクチン由来のT細胞クローンの交差反応性をさらに評価中である.

B.1.1.7変異株のシーケンスされたスワブによる無症候性感染に対するワクチンの有効性は70%と高かった.これは,我々の以前に発表したNAAT陽性率のみに基づく推定値27%3)よりも高く,シークエンスが行われなかった無症候性症例(6%)やシークエンスの結果が得られなかった症例(−27%)よりも大幅に高い有効性を示した.シーケンスできなかったサンプルの中には,NAATアッセイにおける低レベルのプレート汚染やアンプリコン汚染によって生じた偽陽性サンプルが含まれている可能性がある.このような偽陽性は,絶対的なウイルス量が非常に少ない,またはRNAが分解されているような真陽性サンプルとともに,有効性が−27%のカテゴリーに入ると考えられる.サンプル中のウイルスの存在を確認するためにシークエンスを使用した場合の,無症候性疾患に対する有効性に関するこの対照的な結果は注目に値するものであり,NAAT偽陽性の結果が有効性の推定値を変える可能性を示している.今回の研究では,自宅で自己スワブを行った参加者から採取した200,000本以上の鼻腔/咽頭スワブをNAATで検査した.コミュニティ検査で使用されたLighthouse Laboratories社の偽陽性率は不明だが,過去に行われた他のRNAウイルスのRT-PCR検査に基づいた初期の推定値では,0.84.0%とされている53).この研究では,シーケンスされたスワブから得られた無症候性感染に対する有効性の高い推定値は,偽陽性の結果に影響される可能性が低く,したがって,より信頼性が高いかもしれない.しかし,無症候性感染症に対する有効性が高くなったのは,ワクチン接種者の真陽性サンプルのウイルス量が少なく,これらのサンプルのシークエンスが難しくなったために,本研究のワクチン群の数が少なくなり,無症候性感染症に対するワクチンの有効性が高くなった可能性もある.このバイアスが,ウイルス量が多い初発の症候性症例に影響を与える可能性は低いだろう

診断用スワブにNAATで検出されたウイルスRNAが存在していても,感染伝播できる活性化ウイルスではない可能性がある.感染性に関連する正確なCt閾値の決定は,RT-PCRプラットフォーム,サンプルの種類,遺伝子ターゲットの違いにより複雑だが,Ct値の高いサンプルから活性化ウイルスが回収される確率は低くなるようだ54)-56).これまでの研究では,症候性と無症候性感染者では,ウイルス量に差がないことが示されている54)57)今回の研究では,症状を報告していない者は,症状のある者よりもウイルス量が少なく,NAAT陽性期間も短かった.この知見は,無症候性感染者は症候性感染者よりも二次感染伝播の原因となる頻度が低いという発表データと一致している58)ChAdOx1 nCoV-19ワクチン接種群のNAAT陽性スワブのウイルス量は,対照群のウイルス量よりも統計的に有意に低かった.ChAdOx1 nCoV-19の単回接種により,NAAT陽性者が64%減少したという最近の解析結果46)と合わせて考えると,NAAT陽性ワクチン接種者であっても,NAAT陽性ワクチン未接種者よりもウイルスを伝播する可能性が低いことが示唆される.これらの結果は,ワクチンが循環している変異株と適度に一致している場合には,パンデミックコロナウイルスを抑制するための手段としての集団ワクチン接種を強く支持するものである.

202012月以降,世界各国の規制当局は,COVID-19対策戦略の一環として,いくつかのCOVID-19ワクチンの緊急使用を承認している.ワクチンを接種する人口の割合が増えると,免疫回避を可能にする変異の選択が起こり,新しい系統に由来する抗原での再接種が必要になるかもしれない.また,アデノウイルスワクチンベクターを繰り返し接種することで,抗ベクター免疫が生成され,病原体の導入遺伝子に対する反応が阻害されるのではないかという懸念もある.我々は以前,抗ChAdOx1ベクター抗体が抗スパイク抗体反応やスパイク特異的T細胞応答に影響を与えないことを示した34)今回の研究では,ChAdOx1 nCoV-19を接種する少なくとも1年前に,スパイク以外の導入遺伝子に対するChAdOx1ベクターワクチンを過去に接種した人は,スパイクタンパクに対する結合抗体反応がChAdOx1未接種の人と同様であることを示した.しかし,例えば同じアデノウイルスベクターを毎年接種した場合のトランスジーン反応への影響は不明であり,異なるワクチンプラットフォームを用いた異なるプライム・ブースト戦略が必要になるかもしれない.

Limitation: COVID-19パンデミックの際に,複数の臨床サンプルを処理する検査室の物流上の制約により,すべての陽性スワブサンプルから配列を得ることができなかったため,解析はシーケンス可能であったもので決定された.また入院や死亡例がなかったため,これらに関してのワクチンの有効性はわからない.

検査における人為的なエラー,検査室間でのデータ照合の品質管理の不備がデータの信憑性に影響を与えた可能性があるが,ほとんどの場合,数週間にわたって同一人物から複数のスワブが採取されたため,宿主内マイナーバリアント(in-host minor variants)の裏付けが可能となり,特定の参加者との配列の関連性が確実になった.

さらに,COVID-19 Genomics UKのいくつかの研究室では,Ct値が高い(30以上)サンプルのシーケンスが定期的に行われていなかったため,無症状の参加者に多く見られた低ウイルス量サンプルの系統を評価することができなかった.

Conclusions

SARS-CoV-2は,ウイルスの変異や免疫・適応における選択により,新たな系統が出現することは避けられない.ここでは,ChAdOx1 nCoV-19ワクチンが,新たなB.1.1.7系統による症候性疾患に対する防御効果を持つことを示しているまた,ChAdOx1 nCoV-19ワクチン接種によって,ウイルス排出期間とウイルス量が減少するため,感染伝播が減少する可能性があり,疾患リスクがある集団を防御するためにこのワクチンを継続的に使用することが支持される

 

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