COVID-19関連追加(202149日)mRNAワクチンについてその6

SARS-CoV-2感染後のBNT162b2ワクチン1回接種後における

変異株に対する中和反応】

Lustig Y, et al. Neutralizing Response against Variants after SARS-CoV-2 Infection and One Dose of BNT162b2. N Engl J Med. April 7, 2021.

https://doi.org/10.1056/NEJMc2104036.

BNT162b2ワクチンは,Covid-19に対して95%の有効性があることが示されている1).これまでイスラエルでは,SARS-CoV-2の既感染者に対する2回接種のワクチンプロトコルは承認されていない; しかし,現在,1回接種が検討されている.

中国の武漢で初めて確認されたオリジナルウイルスに加え,英国(B.1.1.7),南アフリカ(B.1.351),ブラジル(P.1)において新しい変異株がここ数ヶ月間で検出されている2).ワクチン接種を受けた人,あるいはオリジナルウイルスまたはB.1.1.7変異株に過去に感染した人のサンプルでは,他の変異株よりも,B.1.351変異株に対する中和活性が有意に低いことが示された3)4).本研究では,過去にSARS-CoV-2に感染した人を対象に,BNT162b2ワクチン1接種することで,B.1.1.7B.1.351P.1の各変異株に対する中和活性が高まるかどうかを検討した.

過去にSARS-CoV-2に感染した医療従事者6人の血清18サンプルを対象に,オリジナルウイルス(sublineage B.1)およびB.1.1.7B.1.351P.1の各変異株を用いたmicroneutralization assayを実施した(各患者から3時点においてサンプルを採取した: 自然感染から112週間後ワクチン接種直前ワクチン接種から12週間後)(Table S1 in the Supplementary Appendix).医療従事者6人はいずれも女性(3267歳)である; 彼女たちは,診断当時のSARS-CoV-2シーケンスにてオリジナルウイルス(sublineage B.1)サブリネージュB.1)の既感染がわかっている.第1時点のサンプルは,オリジナルウイルス,B.1.1.7P.1に対して中和活性を持ち,幾何平均力価はそれぞれ45625671であったが,B.1.351に対してはほとんど中和活性を持たず,幾何平均力価は8であった.第2時点では,オリジナルウイルス,B.1.1.7P.1B.1.351に対して,幾何平均力価はそれぞれ8140367であった.特筆すべきは,3時点の幾何平均力価が,オリジナルウイルスとB.1.1.7P.1B.1.351の各変異株でそれぞれ9195819228961625であったことであり,つまり,ワクチン接種後の力価は接種直前の力価の,それぞれ114倍,203倍,81倍,228倍であったFigure 1, Table S2

今回の研究では,小規模なコホートにおいて,1回のワクチン接種で,試験したすべての変異株に対する中和活性が大幅に向上し,各変異株について患者間で同様の力価が検出されたことが示された.この結果は,既感染者であっても,試験した変異株に対する抗体反応が増加するという付加的なメリットがあることから,ワクチン接種の重要性を強調するものである.本研究の限界としては,女性のみの小規模なコホートであること,T細胞応答の評価が行われていないことなどが挙げられる.しかし,6人全員がワクチン接種に対して同様の反応を示したことは,今回の結論を裏付けるものだと考えている.さらなる研究では,既感染者と未感染者において,懸念される変異株(VOC)に対する中和活性に対する2回目のワクチン接種の効果を調べることができるだろう.

Figure 1: Neutralizing Response against the Original Virus and Variants after SARS-CoV-2 Infection and One Dose of the BNT162b2 Vaccine.

https://www.nejm.org/na101/home/literatum/publisher/mms/journals/content/nejm/0/nejm.ahead-of-print/nejmc2104036/20210407/images/img_xlarge/nejmc2104036_f1.jpeg

References

1) Baden LR, El Sahly HM, Essink B, et al. Efficacy and safety of the mRNA-1273 SARS-CoV-2 vaccine. N Engl J Med 2021;384:403-416.

2) Fontanet A, Autran B, Lina B, Kieny MP, Karim SSA, Sridhar D. SARS-CoV-2 variants and ending the COVID-19 pandemic. Lancet 2021;397:952-954.

3) Liu Y, Liu J, Xia H, et al. Neutralizing activity of BNT162b2-elicited serum — preliminary report. N Engl J Med. 10.1056/NEJMc2102017.

4) Wang P, Nair MS, Liu L, et al. Antibody resistance of SARS-CoV-2 variants B.1.351 and B.1.1.7. February 12, 2021

https://www.biorxiv.org/content/10.1101/2021.01.25.428137v3.preprint.

 

 

 

 

 

 

SARS-CoV-2 mRNAワクチンを単回接種後の血清反応陽性者の抗体反応について】

Krammer F, et al. Antibody Responses in Seropositive Persons after a Single Dose of SARS-CoV-2 mRNA Vaccine. N Engl J Med 2021; 384:1372-1374. April 8, 2021.

https://doi.org/10.1056/NEJMc2101667.

SARS-CoV-2スパイクメッセンジャーRNAmRNA)ワクチン(BNT162b2[Pfizer]およびmRNA-1273[Moderna]1)2回接種によるCovid-19の既往のない人における症候性SARS-CoV-2感染症の予防効果は高いことが示されている2)3).我々は,Covid-19の既往がある人の初回ワクチン接種に対する反応はどうなるのかと考えた.

我々は,既存のSARS-CoV-2免疫が証明されているか否かにかかわらず,2020年にmRNAワクチンを初回接種した研究参加者110における抗体反応の限定的なスナップショットを提供するために,現在実施中の機関審査委員会承認のPARISProtection Associated with Rapid Immunity to SARS-CoV-2)縦断研究を利用した(全体の平均年齢40.0[range, 24-68; 60歳以上8%]血清陰性者67[女性64%], 平均年齢41.3; 血清陽性者43[女性59%], 平均年齢41.4歳)(Table S1 in the Supplementary Appendix: Pfizer社製ワクチンは88Moderna社製ワクチンは22が接種したSARS-CoV-2スパイクIgGは,既に報告されているtwo-step enzyme-linked immunosorbent assayを用いて測定し,AUCarea under the curve)で表した4)5)

初回接種後に繰り返しサンプリングを行ったところ,血清陰性者の大部分は,接種後912日以内にSARS-CoV-2 IgG反応が変動し,相対的に低値を示した(接種前のAUC中央値: 1[67]; 04日目: 1[12]; 58日目: 1[22]; 912日目: 439[13]; 1316日目: 1016[18]; 1720日目: 1037[21]; 2127日目: 1293[19]; そして2回目の接種後3316[36])(Figure 1A).一方,初回ワクチン接種前にSARS-CoV-2抗体を持っていた血清陽性者は,ワクチン接種後数日のうちに急速に均一で高い抗体価を獲得した(接種前のAUC中央値: 90[43]; 04日目: 133[7]; 58日目: 14,208[15]; 912日目: 20,783[8]; 1316日目: 25,927[20]; 1720日目: 11,755[4]; 2127日目: 19,534[14]; そして2回目の接種後22,509[19])(Figure 1A).

既存のSARS-CoV-2免疫のあるワクチン接種者の抗体価は,初回ワクチン接種後の同時期における既往のないワクチン接種者の抗体価の1045倍(例えば,1316日目で25倍)であり,既往のないワクチン接種者の2回目接種後の抗体価の中央値を6倍以上上回っていた.2回目のワクチン接種後には,既存の免疫を持たないワクチン接種者の抗体価は3倍に上昇したが,2回目のワクチン接種を受けた既感染者では抗体価の上昇は認められなかったPfizer社とModerna社のワクチンの初回接種後の抗体反応の動態には,実質的な違いは見られなかった(Figure S1).今回の解析は便宜的なサンプルであり,すべての参加者が追加したすべての時間間隔で抗体分析用の生物試料を提供できたわけではない.継続的な追跡調査により、これらの初期の免疫応答の違いが長期にわたって維持されるかどうかが明らかになるだろう.

さらに,参加者230人(平均年齢39.2[range, 22-70; 60歳以上8%; 血清陰性者148[女性70%]; 血清陽性者82[女性64%])を対象に,初回ワクチン接種後の局所反応,注射部位関連反応,全身反応の頻度を比較した(Figure 1B).全体として,両ワクチン(Pfizer156, Moderna74人)において,入院に至る副作用は認めなかった.PARIS調査に参加した230人のうち159人(69%)が、初回ワクチン接種後に何らかの副作用があったことを報告した(血清陰性回答者の46%, 血清陽性回答者の89%最も多かったのは,注射部位の局所的な症状(痛み,腫脹,紅斑)で,接種時の血清陽性/陰性にかかわらず同じ頻度で発生し,接種後数日以内に自然に消失した既存の免疫を持つワクチン接種者は,既存の免疫を持たないワクチン接種者よりも高い頻度で全身性の副作用(頻度の低い順に,疲労,頭痛,悪寒,筋肉痛,発熱,関節痛)が認められた(Figure 1B.今回は便宜的なサンプルを使用し,データが得られた参加者のみを対象としたため,初回だけでなく2回目のワクチン接種後に発生した副作用を含めた全データを評価できるまでは注意が必要である.

本研究では,mRNAワクチンを1回接種すると,血清陽性者では迅速な免疫反応が起こり,接種後の抗体価は,血清陰性者の2回接種後と同等かそれ以上であった.mRNAワクチンを1回接種することで,血清陽性者を効果的に防御できるかどうかは,今後の検討が必要である.

 

 

Figure 1: Immunogenicity and Reactogenicity of SARS-CoV-2 RNA Vaccines.

https://www.nejm.org/na101/home/literatum/publisher/mms/journals/content/nejm/2021/nejm_2021.384.issue-14/nejmc2101667/20210405/images/img_xlarge/nejmc2101667_f1.jpeg

 

References

1) Krammer F. SARS-CoV-2 vaccines in development. Nature 2020;586:516-527.

2) Polack FP, Thomas SJ, Kitchin N, et al. Safety and efficacy of the BNT162b2 mRNA Covid-19 vaccine. N Engl J Med 2020;383:2603-2615.

3) Baden LR, El Sahly HM, Essink B, et al. Efficacy and safety of the mRNA-1273 SARS-CoV-2 vaccine. N Engl J Med 2021;384:403-416.

4) Stadlbauer D, Amanat F, Chromikova V, et al. SARS-CoV-2 seroconversion in humans: a detailed protocol for a serological assay, antigen production, and test setup. Curr Protoc Microbiol 2020;57(1):e100-e100.

5) Stadlbauer D, Tan J, Jiang K, et al. Repeated cross-sectional sero-monitoring of SARS-CoV-2 in New York City. Nature 2021;590:146-150.

 

 

 

 

 

 

SARS-CoV-2既感染者におけるBNT162b2 mRNAワクチンに対する抗体反応】

Ebinger, J.E., Fert-Bober, J., Printsev, I. et al. Antibody responses to the BNT162b2 mRNA vaccine in individuals previously infected with SARS-CoV-2. Nat Med (2021). Published, Apr 1, 2021.

https://doi.org/10.1038/s41591-021-01325-6.

Abstract

BNT162b2Pfizer-BioNTechmRNAワクチン接種者のコホート(n= 1,090)において,1回接種後のSARS-CoV-2既感染者(n= 35)のスパイク特異的IgG抗体レベルおよびACE2抗体結合阻害反応は,2回接種後の未感染者(n= 228)の反応同様であることが確認された.ワクチン接種後の症状は,既感染者では1回目の接種後に顕著であったが,2回目の接種後には群間で同様の症状が認められた.

Figure 1: IgG(S-RBD) antibody response to mRNA SARS-CoV-2 vaccination in individuals with and without prior SARS-CoV-2 infection.

群間比較には,多重検定未調整のtwo-sided Wilcoxon testsを用いた.(1)ベースラインでの未感染者(n= 903)と既感染者(n= 78)(P< 0.001),(21回目の接種後での未感染者(n= 490)と既感染者(n= 35)(P< 0.001),(32回目の接種後での未感染者(n= 228)と既感染者(n= 11)(P< 0.001),(41回目の接種後での未感染者(n= 228)とベースラインでの既感染者(n= 11)(P< 0.001),(52回目の接種後での未感染者(n= 228)と1回目の接種後での既感染者(n= 35)(P= 0.92).

figure1

 

 

 

 

 

 

mRNA-1273ワクチンの2回目接種後,抗体は6ヶ月間持続する】

Doria-Rose N, et al. Antibody Persistence through 6 Months after the Second Dose of mRNA-1273 Vaccine for Covid-19. N Engl J Med. April 6, 2021.

https://doi.org/10.1056/NEJMc2103916.

Moderna社のmRNA-1273ワクチンの第3相試験の中間結果では,Covid-19に対する予防効果は94%であった1).防御の持続性は現在のところ不明である.我々は,進行中の第1相試験2)-4)に参加している健常成人33人を年齢によって層別し,100μg2回目接種から180日後(209日目)のmRNA-1273誘発性結合抗体および中和抗体について記載する

209日目時点で,すべての年齢層で抗体活性は高いままであったSARS-CoV-2 スパイク受容体結合ドメインに対する酵素結合免疫吸着法(ELISA: enzyme-linked immunosorbent assay2)を用いて測定した結合抗体の幾何平均エンドポイント力価(GMTs: geometric mean end-point titers)は,1855 : 92,45195%CI, 57,148-149,562; 5670: 62,42495%CI, 36,765-105,990; 71歳以上: 49,37395%CI25,171-96,849)であった.ほぼすべての参加者が,pseudovirus neutralization assay2)では,50%阻害濃度(ID50: 50% inhibitory dilutionGMTsはそれぞれ8095%CI, 40-135),5795%CI, 30-106),5995%CI, 29-121)であり,検出可能な活性を示した.より感度の高いlive-virus focus-reduction neutralization mNeonGreen test4)では,すべての参加者が,ID50 GMTsはそれぞれ40695%CI, 286-578),17195%CI, 95-307),13195%CI, 69-251)であり,検出可能な活性を示した.これらのGMTsは,18歳〜55歳の参加者に比べると,5670歳(P= 0. 02)および71歳以上(P= 0.004)ではより低かったFigure 1, Supplementary Appendix

全参加者の43日目以降の結合抗体半減期の推定値は,経時的に安定した減衰率を仮定した指数関数的減衰モデルを用いて算出した場合は52日(95%CI46-58),経時的に減衰率が低下すると仮定したべき乗則(power-law)モデル(119日目)を用いて算出した場合は109日(95%CI, 92-136)であった.2つのモデルにおける中和抗体半減期の推定値は,pseudovirus neutralizationでは69日(95%CI, 61-76)と173日(95%CI, 144-225),live-virus neutralizationでは68日(95%CI, 61-75)と202日(95CI, 159-272)であった.また,ΔAICcchange in Akaike information criterion, corrected for small sample size)によって測定したところ,結合と中和については,それぞれ指数関数的減衰モデルとべき乗則モデルが最もよく適合した(Supplementary Appendix).これらの結果は,Covid-19回復患者における発症後8ヶ月間の観察結果5)と一致している.

ワクチンの効果に最も相関する抗体価や検査法は現在のところわかっていないが,mRNA-1273誘発抗体は,3つの異なる血清学的検査法で検出されたように,2回目の接種から6ヶ月間持続した.現在進行中の研究では,6ヶ月以降の免疫応答をモニタリングするとともに,新たに出現したウイルス変異株に対する活性の期間と範囲を拡大するためのブースター接種の効果を調べている.今回のデータは,抗体の持続性を示しており,Covid-19パンデミックに対処するためにこのワクチンを使用することを支持する.

Figure 1: Time Course of SARS-CoV-2 Antibody Binding and Neutralization Responses after mRNA-1273 Vaccination.

https://www.nejm.org/na101/home/literatum/publisher/mms/journals/content/nejm/0/nejm.ahead-of-print/nejmc2103916/20210405/images/img_xlarge/nejmc2103916_f1.jpeg

 

References

1) Baden LR, El Sahly HM, Essink B, et al. Efficacy and safety of the mRNA-1273 SARS-CoV-2 vaccine. N Engl J Med 2021;384:403-416.

2) Jackson LA, Anderson EJ, Rouphael NG, et al. An mRNA vaccine against SARS-CoV-2 — preliminary report. N Engl J Med 2020;383:1920-1931.

3) Widge AT, Rouphael NG, Jackson LA, et al. Durability of responses after SARS-CoV-2 mRNA-1273 vaccination. N Engl J Med 2021;384:80-82.

4) Anderson EJ, Rouphael NG, Widge AT, et al. Safety and immunogenicity of SARS-CoV-2 mRNA-1273 vaccine in older adults. N Engl J Med 2020;383:2427-2438.

5) Dan JM, Mateus J, Kato Y, et al. Immunological memory to SARS-CoV-2 assessed for up to 8 months after infection. Science 2021;371(6529):eabf4063-eabf4063.