COVID-19関連追加(2021410日)

変異株とワクチンその6(変異株の中和など)

NEJMよりCorrespondence 3編.

【中和に対する循環SARS-CoV-2変異株の感受性】

Wang GL, et al. Susceptibility of Circulating SARS-CoV-2 Variants to Neutralization. N Engl J Med. Apr 6, 2021. https://doi.org/10.1056/NEJMc2103022.

2つのSARS-CoV-2変異株(英国ではB.1.1.7,南アフリカではB.1.351)の出現により,これらの変異株が過去の感染やワクチン接種による免疫から逃避しうるのではないかという懸念が生じた.そこで,我々は,Wuhan-1参照株(野生型)D614G変異株B.1.1.7およびB.1.351変異株のスパイクタンパク質を含む,水胞性口内炎ウイルスベースのSARS-CoV-2疑似ウイルスを作製し,感染やワクチン接種による中和に対する耐性を調べた.組換えプロセスに関する詳細は,Supplementary Appendixに記載した.

我々は次に,Covid-19に感染してから5ヶ月後の患者34人から得た回復期血清と,中国で開発された不活化ウイルスワクチンBBIBP-CorVSinopharm1)またはCoronaVacSinovac2)2回目の接種を受けてから23週間後の被験者50人から得た血清を用いて,中和に対する疑似ウイルスの耐性を評価した(Table S1 in the Supplementary Appendix).我々はまず,野生型疑似ウイルスに対する血清中和抗体価を測定したところ,回復期の患者とワクチン接種者から得た血清の幾何平均力価(GMTs: geometric mean titers)は同程度であり(Figure 1A),BBIBP-CorVまたはCoronaVac1)2)2回接種しても抗体反応は低いことが示唆された.特に,中和力価が検出されなかったのは,回復期血清34サンプルのうち4サンプル,BBIBP-CorVの血清25サンプルのうち6サンプル,CoronaVacの血清25サンプルのうち4サンプルであった.

次に,D614GB.1.1.7B.1.351の各変異株に対する回復期血清およびワクチン血清の中和活性を,野生型疑似ウイルスと比較して評価した.回復期血清は,D614G疑似ウイルスを中和する効果が有意に高く(2.4; 95%CI, 1.9-3.0),B.1.1.7変異株を中和する効果は野生型ウイルスと同程度であったが,B.1.351疑似ウイルスを中和する効果は有意に低かった(0.5; 95%CI, 0.4-0.7)(Figure 1Bさらに,回復期血清30サンプルのうち9サンプルでは,B.1.351に対する中和が完全に失われていたBBIBP-CorVワクチン接種者の血清では,変異株に対する中和のGMTは野生型ウイルスに対するGMTと有意差はなかったが,血清20サンプルでB.1.351に対する中和が完全または部分的に失われていた(Figure 1CCoronaVacワクチン接種者の血清では,B.1.1.7に対する中和のGMT0.5; 95%CI0.3-0.7),およびB.1.351に対する中和のGMT0.3; 95%CI, 0.2-0.4)が顕著に減少したさらに,ほとんどの血清サンプルで,B.1.351に対する中和が完全にまたは部分的に失われていた(Figure 1D

この結果から,B.1.1.7は回復期血清やワクチン接種者血清の中和活性に対してほとんど抵抗性を示さないのに対し,B.1.351は野生型ウイルスに比べて回復期血清(2倍)とワクチン接種者血清(2.53.3倍)の両方の中和に対して抵抗性を示した.ワクチン接種者の血清サンプルのほとんどが中和を失っていたが,この結果は,回復期血清やメッセンジャーRNAワクチンやBBIBP-CorVワクチン接種者から得られた血清による中和に関する最近の他の研究結果と一致していた.

今回の調査結果は、ウイルスの持続的なモニタリングと,変異株が流通している地域でのワクチンの防御効果の評価の重要性を示している.

Figure 1: Neutralization of SARS-CoV-2 Pseudoviruses in Convalescent and Vaccinee Serum Samples.

https://www.nejm.org/na101/home/literatum/publisher/mms/journals/content/nejm/0/nejm.ahead-of-print/nejmc2103022/20210406/images/img_xlarge/nejmc2103022_f1.jpeg

 

References

1) Xia S, Zhang Y, Wang Y, et al. Safety and immunogenicity of an inactivated SARS-CoV-2 vaccine, BBIBP-CorV: a randomised, double-blind, placebo-controlled, phase 1/2 trial. Lancet Infect Dis 2021;21:39-51.

2) Zhang Y, Zeng G, Pan H, et al. Safety, tolerability, and immunogenicity of an inactivated SARS-CoV-2 vaccine in healthy adults aged 18-59 years: a randomised, double-blind, placebo-controlled, phase 1/2 clinical trial. Lancet Infect Dis 2021;21:181-192.

3) Huang B, Dai L, Wang H, et al. Neutralization of SARS-CoV-2 VOC 501Y.V2 by human antisera elicited by both inactivated BBIBP-CorV and recombinant dimeric RBD ZF2001 vaccines. February 2, 2021

https://www.biorxiv.org/content/10.1101/2021.02.01.429069v1. preprint.

4) Liu Y, Liu J, Xia H, et al. Neutralizing activity of BNT162b2-elicited serum — preliminary report. N Engl J Med. DOI: 10.1056/NEJMc2102017.

5) Wang P, Nair MS, Liu L, et al. Antibody resistance of SARS-CoV-2 variants B.1.351 and B.1.1.7. Nature 2021 March 8 (Epub ahead of print).

 

 

 

 

 

 

SARS-CoV-2変異株B.1.429およびB.1.351の中和】

Shen X, et al. Neutralization of SARS-CoV-2 Variants B.1.429 and B.1.351. N Engl J Med. Apr 7, 2021. https://doi.org/10.1056/NEJMc2103740.

カリフォルニア州で最初に確認されたSARS-CoV-2変異株B.1.429CAL.20Cまたは452R.V1とも呼ばれる)1)は,米国で急速に拡大しており,少なくとも25ヶ国で検出されている(最新情報はhttps://www.gisaid.org/hcov19-variants/).この変異株には、中和抗体の主要な標的となる3つのスパイク変異が含まれている; 1つの変異(L452R)は受容体結合モチーフ(receptor-binding motif)に、もう1つの変異(W152C)はN-末端ドメインスーパーサイト(N-terminal domain supersite)に位置している.これにより,ワクチンの有効性が損なわれ,再感染のリスクが高まる免疫逃避の可能が懸念されている.本研究では,回復期患者14人から採取した血清サンプルと,祖先スパイクに基づく2種類のワクチンであるmRNAワクチンmRNA-1273[Moderna]: 26人)2),および組み換えタンパク質ナノ粒子ワクチンNVX-CoV2373[Novavax]; 23人)3)のいずれかを接種した49人から採取した血清サンプルの中和活性を測定した3)mRNA-127サンプルは,中和力価が高,中,低を選択した.NVX-CoV2373サンプルは無作為に選択し,抗体価に基づいて事前に選択されたものではない.

すべての血清サンプルの中和活性を,B.1.429変異株と,南アフリカで最初に出現したB.1.35120H/501Y.V2VOCvariant of concern)に対して検査した.この中和活性を,血清サンプルにおいてD614G変異株に対して示した中和活性と比較した.その結果,B.1.429は回復期血清やワクチン接種者血清による中和に対して感受性が約23倍低く(1/21/3B.1.351は中和に対して感受性が914倍低い(1/91/14ことがわかった

我々は,D614Gスパイク変異を単独で(比較変異として),あるいはB.1.429S13I, W152C, L452R)およびB.1.351L18F, D80A, D215G, Δ242-244, R246I, K417N, E484K, N501Y, A701V)に見られる追加変異と組み合わせた疑似ウイルスを構築した.中和アッセイは,ACE2を過剰発現するよう安定して導入された293T細胞において,レンチウイルスベースのスパイク疑似ウイルスアッセイを用いて行った4)

B.1.429変異株は,回復期血清およびワクチン接種者血清によって中和され,50%阻害濃度(ID50: 50% inhibitory dilution)幾何平均力価は225495であった(Figure 1A, Table S1 in Supplementary Appendix 1回復期血清およびいずれかのワクチン接種者血清におけるB.1.429変異株に対するID50力価およびID80力価は,D614Gに対する力価よりも有意に低かった(P< 0.001)(Figure 1Aおよび1B, Table S2 in Supplementary Appendix 2B.1.429に対する幾何平均ID50力価は,回復期血清では,D614Gに対して3.1倍(range, 1.4-8.8)低く,mRNA-1273およびNVX-CoV2373ワクチン接種者血清では,D614Gに対してそれぞれ2.0および2.5倍(range, 0.7-8.6)低かった(Figure 1C, Table S1

B.1.351に対する幾何平均ID50値は,回復期血清では,D614Gに対して13.1倍低く,mRNA-1273およびNVX-CoV2373ワクチン接種者血清では,D614Gに対してそれぞれ9.7倍,14.5倍低かった(Figure 1CmRNA-1273ワクチン接種者血清によるB.1.351変異株の中和に関する今回の結果は,以前に報告された結果5)と一致している.

この研究でみられたB.1.429変異株に対する中和力価がやや低かった(modestly lowerことは,以前にmRNA-1273ワクチンとNVX-CoV2373ワクチン接種者から得た血清サンプルを用いて,同じアッセイでB.1.1.7変異株の中和を検査したときに認めた結果と同様である4)これらの結果と,これらのワクチンが示した高い有効性から,ワクチン誘発中和抗体は,B.1.429変異株に対しても有効である可能性が高いことが示唆されたB.1.351変異株で見られた耐性の大きさは,現在のワクチンに関してより大きな懸念となっている

 

 

Figure 1: Neutralization of B.1.429 and B.1.351 Pseudoviruses in Serum Samples Obtained from Convalescent Persons and Vaccine Recipients.

https://www.nejm.org/na101/home/literatum/publisher/mms/journals/content/nejm/0/nejm.ahead-of-print/nejmc2103740/20210408/images/img_xlarge/nejmc2103740_f1.jpeg

 

 

References

1) Zhang W, Davis BD, Chen SS, Martinez JMS, Plummer JT, Vail E. Emergence of a novel SARS-CoV-2 strain in southern California, USA. January 20, 2021

https://www.medrxiv.org/content/10.1101/2021.01.18.21249786v1. preprint.

2) Anderson EJ, Rouphael NG, Widge AT, et al. Safety and immunogenicity of SARS-CoV-2 mRNA-1273 vaccine in older adults. N Engl J Med 2020;383:2427-2438.

3) Keech C, Albert G, Cho I, et al. Phase 1-2 trial of a SARS-CoV-2 recombinant spike protein nanoparticle vaccine. N Engl J Med 2020;383:2320-2332.

4) Shen X, Tang H, McDanal C, et al. SARS-CoV-2 variant B.1.1.7 is susceptible to neutralizing antibodies elicited by ancestral spike vaccines. Cell Host Microbe 2021 March 05 (Epub ahead of print).

5) Wu K, Werner AP, Koch M, et al. Serum neutralizing activity elicited by mRNA-1273 vaccine. N Engl J Med. DOI: 10.1056/NEJMc2102179.

 

 

 

 

 

 

SARS-CoV-2 501Y.V2B.1.351)がもたらす交差反応性中和抗体反応】

Moyo-Gwete T, et al. Cross-Reactive Neutralizing Antibody Responses Elicited by SARS-CoV-2 501Y.V2 (B.1.351). N Engl J Med. Apr 7, 2021.

https://doi.org/10.1056/NEJMc2104192.

202010月に南アフリカで初めて確認されたSARS-CoV-2501Y.V2系統(B.1.351としても知られる)1)には,回復期患者やワクチン接種者の血漿,および一部のモノクローナル抗体に対する耐性を高める変異がある2)-4).しかし,501Y.V2に対する免疫応答は明らかではない.同様に,501Y.V2感染によって誘発された抗体が他の変異株と交差反応する能力も明らかではないが,そのような交差反応は,501Y.V2スパイクタンパク質をベースにした第2世代ワクチンが,オリジナルおよび新興SARS-CoV-2系統の感染を防御する能力に影響を与えるだろう5)

我々は,南アフリカで501Y.V2が出現した後に,ケープタウンのGroote Schuur病院に入院したCovid-19患者のコホートにおけるSARS-CoV-2感染症の特徴を調べた(Table S1 in the Supplementary Appendix).20201231日〜2021115日において患者89人から血液サンプルを採取し,このうち28人(31%)を無作為に選択し,SARS-CoV-2シーケンスを行ったところ,その全員が501Y.V2に感染していることが系統解析によって示された(Figure S1A).さらに,この時期,ケープタウン(Figure S1B)および南アフリカ全体での流行は,501Y.V2が感染者の90%を超えていた.本研究では,過去のSARS-CoV-2感染を報告した患者はいなかった.

我々はまず,これらの患者の501Y.V2スパイクタンパク質に対する結合および中和抗体反応を評価した.501Y.V2は,オリジナル変異株(D614G)と同様に,高力価の結合抗体および中和抗体を誘発した(Figure S2さらに,オリジナル変異株の受容体結合ドメイン(サブドメイン1のすべてを含む)およびスパイクタンパク質全体に対する結合抗体力価は,501Y.V2変異株の対応するタンパク質に対する結合抗体力価と高い相関性を示した46サンプルのうちの一部のサンプルを測定したところ,血漿サンプルでは501Y.V2のスパイクタンパク質に対する力価がオリジナル変異株のスパイクタンパク質に対する力価よりも高かったが(平均1.7倍),オリジナル変異株に対する結合抗体は高レベルのままであった(Figure S3

我々は以前,オリジナル変異株の感染者血漿では,オリジナル変異株に比べると,501Y.V2の中和が大幅に低いことを報告した(Figure 1A, S4A2)今回の研究では,逆の実験を行い,Groote Schuur病院の501Y.V2感染者コホートにおける血漿中和反応の,オリジナル変異株とブラジルで最初に報告された変異株である501Y.V3P.1)に対する交差反応性を評価したGroote Schuur病院の患者から採取した血漿57サンプルについて,501Y.V2とオリジナル変異株の両方を調べたところ,57サンプルのうち53サンプルでオリジナル変異株に対する中和活性が維持されており,幾何平均力価は20395%CI, 141-292)で,501Y.V2変異株に対する力価の約3分の1であった(Figure 1B, S5Aまた,501Y.V2感染がシーケンスで確認され,結合抗体が陽性であったドナー22人に限定して解析を行ったところ,同じパターンが見られた(Figure 1C最後に,我々は,10血漿サンプルサブセットを501Y.V3 P.1)変異株に対して検査したところ,この変異株の中和レベルは高く,501Y.V2よりも501Y.V3 P.1)に対して高い効力を示すサンプルもあったこれはこれらの変異株のN末端ドメインが非常に異なることに起因するかもしれない(Figure 1D

全体として,501Y.V2は,オリジナル変異株と501Y.V3P.1)の両方に対して強固な中和抗体反応を引き起こし,高い交差反応性を示すことがわかった.この結果から,501Y.V2のスパイクタンパク質を用いたワクチンは,SARS-CoV-2に対する交差反応性の中和抗体反応を誘発する有望な候補となり得ることが示された.

 

 

Figure 1: Cross-Reactivity of Neutralizing Antibody Responses.

https://www.nejm.org/na101/home/literatum/publisher/mms/journals/content/nejm/0/nejm.ahead-of-print/nejmc2104192/20210407/images/img_xlarge/nejmc2104192_f1.jpeg

 

 

References

1) Tegally H, Wilkinson E, Giovanetti M, et al. Emergence of a SARS-CoV-2 variant of concern with mutations in spike glycoprotein. Nature 2021 March 9 (Epub ahead of print).

2) Wibmer CK, Ayres F, Hermanus T, et al. SARS-CoV-2 501Y.V2 escapes neutralization by South African COVID-19 donor plasma. Nat Med 2021 March 2 (Epub ahead of print).

3) Wang P, Nair MS, Liu L, et al. Antibody resistance of SARS-CoV-2 variants B.1.351 and B.1.1.7. February 12, 2021

https://www.biorxiv.org/content/10.1101/2021.01.25.428137v3. preprint.

4) Cele S, Gazy I, Jackson L, et al. Escape of SARS-CoV-2 501Y.V2 from neutralization by convalescent plasma. Nature 2021 March 29 (Epub ahead of print).

5) Fontanet A, Autran B, Lina B, Kieny MP, Karim SSA, Sridhar D. SARS-CoV-2 variants and ending the COVID-19 pandemic. Lancet 2021;397:952-954.