COVID-19関連追加(2021415-2

L452R変異株について

【細胞性免疫を回避し,ウイルスの感染性を高める新たなSARS-CoV-2変異株】

Motozono C, et al. An emerging SARS-CoV-2 mutant evading cellular immunity and increasing viral infectivity. bioRxiv. Posted Apr 5, 2021.

https://doi.org/10.1101/2021.04.02.438288.

Summary

世界中に壊滅的な打撃を与えているSARS-CoV-2パンデミックでは,自然に複数の変異を獲得する多くの変異株が出現している.新たな変異は、感染性や免疫抵抗性などのウイルス特性に影響を及ぼす可能性がある.自然発生のSARS-CoV-2変異株の液性免疫に対する感受性は最近研究されているが,ヒト白血球抗原(HLA: human leukocyte antigen)拘束性細胞性免疫に対する感受性はまだ研究されていない.最近,SARS-CoV-2Sタンパク質受容体結合モチーフ(RBM: receptor binding motif; 残基438-506)に存在する少なくとも2つの自然発生的な置換,L452RY453Fが,2つの主要な変異株,B.1.427/429L452R)とB1.1.298Y453F)で確認された我々は,SARS-CoV-2スパイクタンパク質の受容体結合ドメイン(RBD)にこの2つの変異L452RB.1.427/429)とY453FB.1.298)が,HLA-24拘束性細胞性免疫から逃避しうることを示したこれらの変異は,ウイルスの受容体であるACE2との親和性を強め,特にL452R変異はタンパク質の安定性およびウイルスの感染性を高め,ウイルスの複製を促進する可能性がある.これらのデータは,HLA拘束性細胞性免疫がウイルスフェノタイプの進化に影響を与える可能性を示唆しており,細胞性免疫からの逃避はSARS-CoV-2パンデミックのさらなる脅威となりうる.

HLA-A24は,日本(日本人, 対立遺伝子頻度= 0.364, n= 1,550)やマレーシア(マレーシア人, 対立遺伝子頻度= 0.361, n=1,974)などの東アジア・東南アジア諸国で比較的高頻度に見られCOVID-19確定症例と死亡率は,これまでのところ欧州諸国や米国に比べて相対的に低い(202142日時点).

 

 

https://www.biorxiv.org/content/biorxiv/early/2021/04/05/2021.04.02.438288/F1.large.jpg?width=800&height=600&carousel=1

 

 

 

 

 

 

【サンフランシスコの地域密着型検査センターのゲノムサーベイランスで検出された

スパイクL452R変異株による家庭内二次発病率の推定値】

Peng J, et al. Estimation of secondary household attack rates for emergent spike L452R SARS-CoV-2 variants detected by genomic surveillance at a community-based testing site in San Francisco. Clinical Infectious Diseases, ciab283, Mar 31, 2021.

https://doi.org/10.1093/cid/ciab283.

Key findings

・カリフォルニア州サンフランシスコの地域密着型検査センターおよび家庭内接触者からSARS-CoV-2のゲノム配列を回収し,解析した.系統分析を用いて,ウイルス株(n= 846)を西海岸で循環している株(B.1.427およびB.1.429またはその他の株に分類した.家庭内二次発病率と感染の相対リスクを推定した(年齢,民族,世帯規模,密度で調整).

202011月〜20211において,スパイクタンパク変異S13IW152CL452Rを持つ,VOCvariants of concern)すなわちSARS-CoV-2変異株B.1.427およびB.1.429の有病率が15.7%から54.4%に増加した

家庭内曝露後における感染の調整相対リスク(aRRは,B.1.429では,”non-West Coast variants”(B.1.427B.1.429以外ウイルス株)と比較して,わずかに高かった(0.36 vs 0.29, RR= 1.28, 95CI: 1.00-1.64

SARS-CoV-2 RT-PCRにおけるcycle thresholdsCt)の中央値は,B.1.427B.1.429およびnon-West Coast variants感染者の間で同様であり(Figure有症状者の比率も同様であった(60.9% vs 64.3%

SARS-CoV-2の感染リスクがある地域住民を対象としたサンプルでは,B.1.427およびB.1.429変異株の有病率が3ヶ月間で急激に上昇した.フィジカルディスタンスやマスク着用などの予防策を維持することで,懸念されるいくつかの新しいSARS-CoV-2変異株の感染リスクの上昇を抑えることができる.ゲノムシーケンスは,これらの新たな変異株を検出し,その特徴を明らかにして,国民の行動に役立てることができる.

 

 

Figure: B.1.427B.1.429,およびnon-West Coast variantsの高品質な全ゲノムが回収された鼻腔ぬぐい液サンプルのSARS-CoV-2 RT-PCR Ct.箱とその中の水平線は,四分位範囲と中央値を示す.

RT-PCR Ct values for nasal swab samples

 

 

 

 

 

 

 

COVID-19関連追加(2021415-2L452R変異株について 

430日追記しました

【スパイクL452R SARS-CoV-2変異株の伝播,感染性,そして中和】

Deng X, et al. Transmission, infectivity, and neutralization of a spike L452R SARS-CoV-2 variant. Cell. Apr 15, 2021.

https://doi.org/10.1016/j.cell.2021.04.025.

Summary

米国西部のカリフォルニア州の44郡から採取した2,172サンプルの鼻腔上咽頭ぬぐい液を対象に,ウイルス全ゲノム配列解析を行い,新たなSARS-CoV-2変異株を同定した.2つの系統を示すB.1.427B.1.429と命名されたこの変異株は20205月に出現した.そして20209月〜20211月にかけて,シーケンスされた症例では0%から50%を超えて増加しており,循環している野生株と比較して18.624%の感染性の増加を示した.この変異株は,スパイクタンパク質にL452R置換を含む3つの変異を有している.また,B.1.1.7B.1.351P.1変異株に共通するN501Y変異を持つ疑似ウイルスに比べて減少はしたもののin vivoでのB.1.427およびB.1.429ウイルス排出が2倍に増加し,細胞培養や肺オルガノイド(lung organoids)のL452R疑似ウイルス感染も増加した抗体中和アッセイでは,回復期患者とワクチン接種者の中和力価がそれぞれ4.06.7倍,2.0倍に低下したカリフォルニア州では感染性の強い変異株が流行しており,抗体中和力価の低下が見られたため,さらなる調査が必要である.

 

 

Graphic abstract

 

 

 

 

 

 

 

COVID-19関連追加(2021415-2L452R変異株について 

623日追記しました

1つ目のプレプリントの正式アクセプト(Cell HostMicrobe).

SARS-CoV-2スパイクのL452R変異株は細胞性免疫を回避し,感染性を高める】

Motozono C, …, Sato K, et al. SARS-CoV-2 spike L452R variant evades cellular immunity and increases infectivity. Cell Host Microbe. June 15, 2021.

https://doi.org/10.1016/j.chom.2021.06.006.

Highlights

SARS-CoV-2スパイクRBML452RおよびY453F変異が出現した

L452RおよびY453F変異がHLA-A24拘束性細胞性免疫から逃避する

L452Rは,ウイルスの感染性と膜融合性(fusogenicity)を高め,ウイルス複製を促進する

Summary

SARS-CoV-2には,自然に生じた変異を持つ多くの変異株が存在する.これらの変異は,感染性や免疫抵抗性などのウイルスの特性に影響を及ぼす可能性がある.自然に発生したSARS-CoV-2変異株の液性免疫に対する感受性は調査されているが,ヒト白血球抗原(HLA: human leukocyte antigen)拘束性細胞性免疫に対する感受性はほとんど調査されていない.今回我々は,SARS-CoV-2スパイクタンパク質の受容体結合ドメイン(RBD: receptor-binding domain)に最近出現した2つの変異,L452RB.1.427/429およびB.1.617)とY453FB.1.1.298)が、HLA-A24拘束性細胞性免疫からの逃避をもたらすことを明らかにした.これらの変異は,宿主の侵入受容体であるACE2への親和性を強化する.特にL452R変異は,スパイクの安定性,ウイルスの感染性,ウイルスの定着性を高め,それによってウイルスの複製を促進する.これらのデータは,HLA拘束性細胞性免疫がウイルスフェノタイプの進化に影響を与える可能性および,SARS-CoV-2パンデミックのさらなる脅威は,細胞性免疫からの逃避であることを示唆している.

 

 

Graphical Abstract

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