COVID-19関連追加(2021416日)

Johnson & Johnson/Janssenワクチンの血栓について

Ad26.COV2.Sワクチン後の血栓性血小板減少症】

Muir KL, et al. CORRESPONDENCE. Thrombotic Thrombocytopenia after Ad26.COV2.S Vaccination. N Engl J Med. Apr 14, 2021.

https://doi.org/10.1056/NEJMc2105869.

SARS-CoV-2スパイク糖タンパク質をコードする組換えチンパンジーアデノウイルスベクターであるChAdOx1 nCoV-19ワクチン(Oxford-AstraZeneca社)の接種後に血栓症および血小板減少症が報告されている1)2).現在までのところ,このような反応は,Covid-19に対する他のワクチンでは認められていない.我々は,SARS-CoV-2スパイク糖タンパク質をコードする組換えアデノウイルス血清型26型ベクターであるAd26.COV2.Sワクチン(Johnson & Johnson/Janssen社)を接種した患者に,自己免疫性ヘパリン起因性血小板減少症3)に類似した,重度の血小板減少症と播種性血管内凝固を伴う広範な血栓症が発生した症例を報告する

既往症のない48歳の白人女性が,3日間続く倦怠感と腹痛を訴えて救急外来を受診した.別の病院での初期評価では,軽度の貧血および重度の血小板減少が認められた(血小板数, 13,000/m3).末梢血塗抹標本では,時折みられる破砕赤血球(schistocytes)と血小板数の著しい減少が認められた.さらに,フィブリノゲン値の低下(89mg/dl[基準範囲, 220-397]),活性化部分トロンボプラスチン時間(aPTT)の延長(41[基準範囲, 25-37]),dダイマー値の著しい上昇(117.5mg/l[基準範囲, <0.5])が認められ,播種性血管内凝固症候群(DIC)様状態であることが示唆された.腹部および骨盤コンピュータ断層撮影(CT)により,広範囲の脾静脈血栓症が認められた.

この患者は当院に転院した.鼻咽頭ぬぐい液を用いたRT-PCR検査では,SARS-CoV-2RNAは検出されなかった.新たに発症した頭痛の報告を受けて実施した頭部CTでは,右横静脈洞および直静脈洞を含む脳静脈洞血栓症が認められた.未分画ヘパリンの投与が開始されたが,この治療にもかかわらず,血栓症は進行し,脳のMRIおよびMR venographyによって出血性梗塞を伴った進行性の血栓症が認められた.再度のCT血管造影では,右肝静脈と脾静脈に新しい血栓が認められた.

さらに問い合わせたところ,患者は発症14日前にAd26.COV2.Sワクチンを接種していたことが判明したlatex-enhanced immunoassayによる血小板第4因子(PF4-ヘパリンに対する抗体のスクリーニング検査は陰性であった.しかし,酵素結合免疫吸着法(ELISA)によるPF4-ポリアニオンに対する抗体は強陽性であった(2.550光学密度単位[正常範囲上限, 0.399].ヘパリンをアルガトロバンに変更した。さらに,静注用免疫グロブリン(理想体重1kgあたり1g[患者は体重112kg, 身長168cm])を2日間投与した.この治療により,5日間で血小板数が30,000/m3から145,000/m3に増加した.本報告時点では,患者は重篤な状態である.

最近の研究では,Greinacher1)(この患者に関して貴重な助言をしてくれたTheodore Warkentinもそのグループの一人)が,ワクチン起因性血小板減少症は,PF4を認識し,Fcγ受容体を介して血小板を活性化するIgG抗体と関連していることを発見した.免疫グロブリンの静注による血小板活性化の抑制は,自己免疫性ヘパリン起因性血小板減少症の治療における有効性と同様の傾向があった4)

なお,Ad26.COV2.Sワクチンの臨床評価の間,25歳の男性が接種後19日目から症候性横静脈洞血栓症を発症したことが話題になった症例調査や専門家の意見では,この事象はワクチンとは無関係とされていたが5),今回の患者の臨床経過を考慮すると,この所見は再評価が必要かもしれないChAdOx1 nCov-19ワクチンとAd26.COV2.Sワクチンは,メッセンジャーRNAベースのPfizerBioNTech社やModerna社のワクチンとは異なり,非複製型アデノウイルスベクターベースのDNAワクチンである.今回の症例は,まれではあるが,ワクチン起因性免疫性血栓性血小板減少症の発生は,アデノウイルスベクターワクチンが関係している可能性が示唆している.

 

References

1) Greinacher A, Thiele T, Warkentin TE, Weisser K, Kyrle PA, Eichinger S. Thrombotic thrombocytopenia after ChAdOx1 nCov-19 vaccination. N Engl J Med. DOI: 10.1056/NEJMoa2104840.

2) Schultz NH, Sørvoll IH, Michelsen AE, et al. Thrombosis and thrombocytopenia after ChAdOx1 nCoV-19 vaccination. N Engl J Med. DOI: 10.1056/NEJMoa2104882.

3) Greinacher A, Selleng K, Warkentin TE. Autoimmune heparin-induced thrombocytopenia. J Thromb Haemost 2017;15:2099-2114.

4) Warkentin TE. High-dose intravenous immunoglobulin for the treatment and prevention of heparin-induced thrombocytopenia: a review. Expert Rev Hematol 2019;12:685-698.

5) Zhang R, Hefter Y. FDA review of efficacy and safety of the Janssen COVID-19 vaccine emergency use authorization request, February 26, 2021

https://www.fda.gov/media/146267/download.

 

 

 

 

 

 

COVID-19関連追加(2021416日)Johnson & Johnson/Janssenワクチンの血栓について に418日追記しました

Ad26.COV2.Sワクチン接種後の血栓性血小板減少症について-メーカーからの回答】

Sadoff J, et al. Thrombotic Thrombocytopenia after Ad26.COV2.S Vaccination — Response from the Manufacturer. N Engl J Med. Apr 16, 2021.

https://doi.org/10.1056/NEJMc2106075.

Muir1)によって,SARS-CoV-2に対するAd26.COV2.Sワクチン(Johnson & Johnson/Janssen社)を接種した患者において、重度の血小板減少および播種性血管内凝固を伴う脳静脈洞血栓症(CVST: cerebral venous sinus thrombosis)を含む血栓症が発生したことが報告された.我々Janssen社製Ad26.COV2.Sワクチンの臨床試験プログラムに参加した75,000人を超える被験者(うち約50,000人が有効なワクチンを接種)のうち,ワクチン接種者に血小板減少症を伴うCVST1例発生した.外部の臨床専門家と協議した結果、明確な因果関係は認められず、データ・安全性監視委員会は試験の再開に同意した.その後,このワクチン接種者は,事象発生時に血小板第4因子(PF4)に対する抗体を有していたことが判明し,Muirらによる症例報告と同様の所見が得られた.承認後のファーマコビジランスプログラムの一環として,Janssen社の進行中の安全性監視では,Muirらが記載した症例を含む,ワクチン接種後714日目に発生した血小板減少症を伴うCVST6症例の報告を受けた.2021413日,米国食品医薬品局(FDA)および米国疾病対策予防センター(CDC)は,状況のさらなる調査を可能にし,血小板減少を伴うCVSTの診断,治療,報告に関する医師のガイダンスを提供するため,米国におけるAd26.COV2.Sのワクチン接種の一時停止を推奨した2).これらの症例は,2021414日時点で,全世界で720万人を超えるAd26.COV2.Sワクチン接種者の中から報告された3).したがって,報告率は100万回接種で1回未満だが,症例が過少報告されている可能性もある.

現時点では,これらの事象とAd26.COV2.Sワクチンとの間の因果関係を証明する証拠は不十分である.CVSTは非常に稀な疾患であり4),これまでのところ,Ad26.COV2.Sワクチン接種者に報告された事象は,公表されているバックグラウンドにおける発生率(10万人年あたり0.21.57)の範囲内で発生している4)5).血小板減少に関連したCVSTの発生率は不明であり,FDAおよびCDCは極めて低いと考えている2)ことに留意する必要がある.

Muirらは,アデノウイルス(Ad)ベクタープラットフォームを用いたCovid-19ワクチンが,血栓性血小板減少症の発生に関係している可能性を示唆した.GreinacherらおよびSchultzらによる最近の報告では,ChAdOx1 nCoV-19ワクチン(Oxford-AstraZeneca社)によるワクチン接種が、まれに血栓性血小板減少症を引き起こす可能性があると結論づけている.ChAdOx1 nCoV-19ワクチンとAd26.COV2.Sワクチンで使用されているベクターとスパイク(S)タンパク質の挿入は本質的に異なっている.Ad26.COV2.SワクチンはヒトのAd26ベースのベクターを使用しているのに対し,ChAdOx1 nCoV-19ワクチンはチンパンジーのアデノウイルスベースのベクターを使用している.Ad26AdDに由来し,細胞内受容体としてCD46と結合することができるのに対し,ChAdOx1 nCoV-19AdEに由来し,細胞内受容体としてCoxsackie and adenovirus receptorCAR)およびおそらく他の分子を使用する.このように,これら2つのベクターは異なる宿主細胞受容体を使用し,異なる系統的および生物学的特性を有すると考えられている.さらに,Ad26.COV2.Sワクチンの導入遺伝子は,膜結合型SARS-CoV-2 Sタンパク質(2つのプロリン置換によりプレフュージョン・コンフォメーションが安定化)をコードしているが,このSタンパク質は,おそらくfurin切断部位をノックアウトした結果,S1を排出しないものであり,ChAdOx1 nCoV-19ワクチンにコードされている未修飾Sタンパク質とは異なっている.したがって,これら2つのアデノウイルスベクターCovid-19ワクチンは,全く異なる生物学的効果を持つ可能性がある.Covid-19ワクチン接種者観察された血栓性血小板減少症を明らかにするには,さらなる証拠が必要である.

我々は,専門家や規制当局と緊密に連携してデータを評価し,この情報を医療従事者や一般の方々にオープンに伝えることを支援している.

 

References

1) Muir K-L, Kallam A, Koepsell SA, Gundabolu K. Thrombotic thrombocytopenia after Ad26.COV2.S vaccination. N Engl J Med. DOI: 10.1056/NEJMc2105869.

2) Food and Drug Administration. Joint media call: FDA & CDC to discuss Janssen COVID-19 vaccine. YouTube. April 13, 2021

https://www.youtube.com/watch?v=_ELXnGYgsJY.

3) Centers for Disease Control and Prevention. COVID-19 vaccinations in the United States. 2021

https://covid.cdc.gov/covid-data-tracker/#vaccinations.

4) Capecchi M, Abbattista M, Martinelli I. Cerebral venous sinus thrombosis. J Thromb Haemost 2018;16:1918-1931.

5) European Network of Centres for Pharmacoepidemiology and Pharmacovigilance. ACCESS background incidence rates of embolic and thrombotic events following immunisation with COVID-19 vaccines. March 19, 2021

http://www.encepp.eu/phact_links.shtml.