COVID-19関連追加(2021421-2

mRNAワクチンについてその8

当院関連ファイル:

202149

COVID-19感染歴有/無別におけるBNT162b2ワクチンを1回接種3週間後の

介護施設入居者のスパイク抗体レベル】

Blain H, et al. Spike Antibody Levels of Nursing Home Residents With or Without Prior COVID-19 3 Weeks After a Single BNT162b2 Vaccine Dose. JAMA. Apr 15, 2021.

https://doi.org/10.1001/jama.2021.6042.

最近の研究では,免疫応答が正常な(immunocompetentSARS-CoV-2血清陽性成人が免疫を獲得するためには,メッセンジャーRNAワクチンを2回ではなく1回だけ接種すればよいことが示唆されているが1)2),これらの研究には高齢者は含まれていない.介護施設で暮らす高齢者は,COVID-19の重症化リスクが高く,ワクチンに対する免疫応答は,健康な若年層とは異なる可能性がある.

我々は,COVID-19感染歴有/無の介護施設入居者を対象に,BNT162b2Pfizer-BioNTech社)ワクチンを単回接種した後のIgG抗体レベルを比較した.

Methods

20203月〜6月の間,我々はCOVID-19アウトブレイクに直面している3)フランス・モンペリエの介護施設入居者を対象に調査を行った.入居者がCOVID-19を発症すればすぐに,欧州老年医学会の推奨する検査方法4)に従い,新規症例が診断されなくなるまで,すべての入居者に対して鼻咽頭ぬぐい液を用いた逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)検査を繰り返し行った.

アウトブレイクから6週間後,すべての入居者に血液検査を行い,SARS-CoV-2のヌクレオカプシド(N)タンパク質3)に対するIgG抗体レベルを調べた6つの介護施設のすべての入居者に,20211月に初回のワクチン接種を行ったその3週間後,すべての入居者のSARS-CoV-2のスパイク(S)タンパク質とNタンパク質に対するIgG抗体レベルを定量的に評価したSARS-CoV-2受容体結合ドメイン(RBD)に対するIgG抗体レベルは,SARS-CoV-2 IgG II Quantアッセイ(Abbott Diagnostics社)を用いて定量化した.結果は,1mlあたりの任意単位(AU: arbitrary units)で表した(陽性閾値: 50AU/mL, 上限値: 40 000AU/mL).SARS-CoV-2 Nタンパク質に対するIgG抗体レベルは,SARS-CoV-2 IgGアッセイ(Abbott Diagnostics社)を用いて検出した.結果は、シグナル/カットオフ比(Abbott Alinity; Abbott Diagnostics社)で表した(陽性閾値: シグナル/カットオフ比0.8).

COVID-19感染歴のある入居者とない入居者において,SARS-CoV-2SおよびNタンパク質に対するIgG抗体レベルを,2-sided Wilcoxon Mann-Whitney検定を用いて比較した.統計的有意性の閾値は5%とした.

 

Results

入居者102人において,60人はSARS-CoV-2感染(COVID-19)歴がなく36人は20206月にRT-PCR結果が陽性かつ血清SARS-CoV-2 N-protein IgGが陽性6人はRT-PCR結果が陽性あるいは血清SARS-CoV-2 N-protein IgGが陽性であった.20206月にRT-PCRの結果が陽性かつ血清SARS-CoV-2 N-protein IgGが陽性であった36人のうち,26人が20211月〜2月に血清反応を維持していた(72.2%

COVID-19感染歴のある入居者36全員1回のワクチン接種後に血清S-protein IgG陽性となったのに対し,COVID-19未感染の入居者60人のうち29人(49.2%血清陽性であったCOVID-19感染歴のある入居者の血清S-protein IgG中央値40,000AU/mL以上(IQR, 22,801-40,000AU/mLであったのに対し,COVID-19未感染の入居者では48.0AU/mLIQR, 14.0-278.0AU/mLであった(P <0.001; Table

20204月にRT-PCR陽性だった入居者1人は,20206月と20211月に血清N-protein IgG陰性が確認された; この入居者は血清S-protein IgGレベルは強固であった(≧40,000AU/mL).入居者5人は,20204月にRT-PCRが繰り返し陰性であったにもかかわらず,20206月に血清N-protein IgGが陽性であった.これらの5人全員の血清S-protein IgGレベルは高かった(中央値, 40,000AU/mL; IQR, 40,000-40,000AU/mL).RT-PCRが陽性あるいは血清N-protein IgG陽性であった入居者6人の血清S-protein IgGレベルは,COVID-19未感染の60人よりも有意に高く(P< 0.001),RT-PCR陽性かつ血清N-protein IgG陽性であった36人とは統計的に有意差は認めなかったP= 0.26; Figure

Discussion

この暫定研究では,RT-PCRの結果に基づいてCOVID-19と診断されたことのある介護施設の入居者では,BNT162b2ワクチン単回接種でも十分に高レベルのS-protein IgG抗体が得られることが示唆された.これは,過去にCOVID-19と診断された医療従事者(SARS-CoV-2 IgGを使用して診断)において報告されたスパイク三量体に対するIgGと中和抗体価に基づく結果2)と一致している.

2回目のワクチン接種の直前にS-protein IgG抗体レベルを測定することは,感染歴が不明な人に2回目の接種が必要かどうかを判断するのに有用である.これにより,既感染者の反応原性(reactogenicity)に関連する起こりうる有害事象を抑制し,貴重なワクチン用量を節約することができる.本研究の限界は,サンプル数が少なく,一般化できない可能性があることと,neutralization assaysを用いていないことである.

 

 

Table: Demographic Characteristics and Seroconversion Level of 96 Residents by COVID-19 Status During Past 7 to 10 Months.

 

Figure: Levels of IgG Antibody Against the SARS-CoV-2 Spike (S) Protein After a Single Dose of Vaccine in Nursing Home Residents.

 

 

References

1) Wise  J.  Covid-19: people who have had infection might only need one dose of mRNA vaccine.   BMJ. 2021;372(n308):n308. doi:10.1136/bmj.n308

2) Saadat  S, Tehrani  ZR, Logue  J,  et al.  Binding and neutralization antibody titers after a single vaccine dose in health care workers previously infected with SARS-CoV-2.   JAMA. Published online March 1, 2021. doi:10.1001/jama.2021.3341

3) Blain  H, Gamon  L, Tuaillon  E,  et al.  Atypical symptoms, SARS-CoV-2 test results and immunisation rates in 456 residents from eight nursing homes facing a COVID-19 outbreak.   Age Ageing. Published online February 23, 2021. doi:10.1093/ageing/afab050

4) Blain  H, Rolland  Y, Schols  JMGA,  et al.  August 2020 interim EuGMS guidance to prepare European long-term care facilities for COVID-19.   Eur Geriatr Med. 2020;11(6):899-913. doi:10.1007/s41999-020-00405-z

 

 

 

 

 

 

【過去に自然感染した医療従事者のSARS-CoV-2抗体反応】

Anichini G, et al. SARS-CoV-2 Antibody Response in Persons with Past Natural Infection. N Engl J Med. Apr 14, 2021. https://doi.org/10.1056/NEJMc2103825.

SARS-CoV-2感染歴のある人にワクチンを接種すべきかどうかは明らかになっていない.過去にSARS-CoV-2に感染したワクチン接種者が,過去に感染していないワクチン接種者よりも有意に高い抗体反応を示した研究はわずかしかない1)-4).我々は,感染歴のある38人(男性9人,女性29人)(感染からワクチン接種までの平均期間は111日)を含む医療従事者100人を登録し,観察的コホート研究を行った.これらの感染歴のある者の平均年齢は35.1歳(95%CI, 31.7-38.6)であった.また,過去に感染していない者は62人(男性25人,女性37人)であり,平均年齢は44.7歳(95%CI, 41.0-47.6)であった.

両群の被験者はともに,メッセンジャーRNAワクチンであるBNT162b2PfizerBioNTech社)を接種した.血清サンプルは,感染歴のある被験者からは1回目接種の10日後に,未感染の被験者からは2回目接種の10日後に採取した.その後,全被験者に対して,化学発光微粒子免疫測定法(chemiluminescence microparticle immunoassay)を用いて,特異的抗SARS-CoV-2スパイクIgGの存在をスクリーニングした.

循環型抗スパイクIgG抗体価circulating anti-spike IgG antibody)は,感染歴のある被験者サンプル(平均20,120arbitrary units/ml; 95%CI, 16,400-23,800)と,未感染の被験者サンプル(平均22,639arbitrary units/ml, 95%CI, 19,400-25,900)との間に有意な差は認められなかった(中央値はFigure 1Aに示す).循環型抗スパイクIgG抗体が検出されなかったのは,感染歴のある被験者1人のみであった; その被験者はSARS-CoV-2の自然感染に対して抗体反応を示さなかった.

また,同じ血清サンプルを用いて,特異的抗SARS-CoV-2中和抗体の存在についても分析した.その結果,感染歴のある被験者血清サンプル(幾何平均値569, 95%CI, 467-670)と未感染の被験者血清サンプル(幾何平均値118, 95%CI, 85-152)では,中和抗体レベルに差が観察された(中央値はFigure 1Bに示す)既感染者と未感染者の力価には,年齢や性別による大きな違いはなかった(データは示していない)

既感染者は,感染からワクチン接種までの経過時間に応じて,3群に分類された: 12ヶ月(8人),2ヶ月を超える〜3ヶ月(17人),3ヶ月を超える(12人).なお,循環型抗スパイクIgG抗体が検出されなかった既感染者は,この分類に含まれなかった.循環型IgG抗体の平均力価は,自然感染後12ヶ月で接種した群と2ヶ月を超える〜3ヶ月で接種した群で異なっていた(平均値, 15,837arbitrary units/ml[95%CI, 11,265-20,410] vs 21,450arbitrary units/ml[95%CI, 15,377-27,523])(中央値をFigure 1Cに示す); しかし,被験者数が限られていたため,真の差別化はできないまた,感染後2ヶ月を超える〜3ヶ月未満で接種した群と,感染後3ヶ月を超えて接種した群の間には,さらなる有意差は認められなかった(平均値, 21,090arbitrary units/mL[95%CI, 14,702-27,477]

3群の違いは,中和抗体レベルに関してより明らかで,幾何平均力価は,感染後12ヶ月後に接種した被験者では43795%CI, 231-643),感染後2ヶ月を超える〜3ヶ月後に接種した被験者では55995%CI, 389-730),感染後3ヶ月を超えて接種した被験者では69495%CI, 565-823)となった(中央値はFigure 1Dに示す)これらの知見は,感染後3ヶ月以上経過してからワクチンを接種した場合にブースター反応がより効果的であることを示しているが,決定的な結論を出すには十分な情報が得られていない

この研究で最も注目すべき点は,過去に感染していない被験者に2回目のワクチンを接種した後の中和抗体価が,感染歴のある被験者に1回だけワクチンを接種した後の中和抗体価よりも有意に低かったことである.中和抗体価が宿主のウイルス伝播能力にどのように影響するかは不明である.これらの知見は,SARS-CoV-2感染歴のある者のSARS-CoV-2に対する液性応答は,2回目の接種を受けた未感染者の液性応答よりも大きいことを示す証拠となる.

Figure 1: Immune Response in Participants with or without Previous SARS-CoV-2 Infection.

https://www.nejm.org/na101/home/literatum/publisher/mms/journals/content/nejm/0/nejm.ahead-of-print/nejmc2103825/20210413/images/img_xlarge/nejmc2103825_f1.jpeg

 

 

References

1) Wise J. Covid-19: people who have had infection might only need one dose of mRNA vaccine. BMJ 2021;372:n308-n308.

2) Manisty C, Otter AD, Treibel TA, et al. Antibody response to first BNT162b2 dose in previously SARS-CoV-2-infected individuals. Lancet 2021;397:1057-1058.

3) Saadat S, Tehrani ZR, Logue J, et al. Binding and neutralization antibody titers after a single vaccine dose in health care workers previously infected with SARS-CoV-2. JAMA 2021 March 1 (Epub ahead of print).

4) Krammer F, Srivastava K, Alshammary H, et al. Antibody responses in seropositive persons after a single dose of SARS-CoV-2 mRNA vaccine. N Engl J Med 2021;384:1372-1374.