COVID-19関連追加(2021426日)mRNAワクチンについてその9

【イングランドにおける医療従事者のCOVID-19ワクチン接種カバレッジとBNT162b2 mRNAワクチンの有効性(SIREN: 前向き多施設コホート研究】

Hall VJ, et al. COVID-19 vaccine coverage in health-care workers in England and effectiveness of BNT162b2 mRNA vaccine against infection (SIREN): a prospective, multicentre, cohort study. Lancet Apr 23, 2021.

https://doi.org/10.1016/S0140-6736(21)00790-X.

Summary

Background

BNT162b2 mRNAワクチンとChAdOx1 nCOV-19アデノウイルスベクターワクチンは,202012月からイングランドで急速に展開されている.我々は,両ワクチンのカバレッジに関連する要因を明らかにすることを目的とした.そして定期的な無症候性検査を受けている医療従事者コホートにおけるBNT162b2 mRNAワクチンの効果を記録した.

Methods

SIREN studyは,イングランドの公的資金で運営されている病院に勤務するスタッフ(18歳以上)を対象とした前向きコホート研究である.参加者は,フォローアップ期間の開始時に,陽性コホート(抗体陽性または感染歴[過去に抗体検査やPCR検査が陽性であったことを示す])と陰性コホート(抗体陰性で過去に陽性反応がなかった)のいずれかに割り当てられた.ベースラインの危険因子は登録時に,症状の状態は2週間ごとに収集され,そしてワクチン接種の状況はNational Immunisations Management Systemとの連携とアンケートにより収集された.参加者は2週間に1回の無症候性SARS-CoV-2 PCR検査,および月に1回の抗体検査を受けたそしてSIREN以外のすべての検査(症状のある検査を含む)が把握された

※SIREN studyでは14日ごとに無症候性PCR検査を行っており,また多くの参加者が週2回のラテラルフロー検査を受けてPCRを確認していることから,この期間の感染はほとんど検出されたと考えられる.この規模の医療従事者コホートをこれ以上頻繁に検査することは,実行可能ではなく,リソースの有用な活用ではないと考えられる.

本分析のためのデータカットオフは202125日であり,追跡期間は2020127日〜202125日である.主要アウトカムは,ワクチンカバレッジ分析では”ワクチン接種を受けた参加者”(ワクチン接種歴のバイナリ変数; 2つのワクチン接種データソースのうち少なくとも1つで記録された少なくとも1回のワクチン接種で示される),ワクチン効果分析では”PCR検査で確認されたSARS-CoV-2感染”であった.ワクチンカバレッジに関連する因子を特定するために,混合効果ロジスティック回帰分析を行った.ポアソン分布を用いたpiecewise exponential hazard mixed-effects modelshared frailty-type model)を用いてハザード比を算出し,ワクチン未接種者とワクチン接種者の感染までの期間を比較し、PCR陽性の全感染症(無症候性および症候性)に対するBNT162b2ワクチンの影響を推定した.本試験はISRCTNに登録されており,番号はISRCTN11041050で現在進行中である.

Findings

104施設(すべてイングランド)の23,324人の参加者が本解析の対象基準を満たし,登録された.対象者の年齢中央値は46-1歳(IQR 36.0-54.1)で,19,692人(84%)が女性であった.解析期間開始時に8203人(35%)が陽性コホートに,15,121人(65%)が陰性コホートに割り付けられていた.総追跡期間は2暦月,1,106,905人日(ワクチン接種者396,318人日,未接種者710,587人)であった.ワクチンカバレッジは202125日時点で89%,そのうち94%BNT162b2ワクチンを接種していた.より低いカバレッジは有意に,過去の感染,性別,年齢,民族(黒人,アジア系,少数民族),職業(助産師,ポーター,警備員,団地で働く者(in estates)),Index of Multiple Deprivationスコア(貧困層)と関連していた追跡期間中,ワクチン未接種コホートでは新規感染が977に認められ,発生密度は1万人日あたり14であった; ワクチン接種コホートでは,初回接種後21日以上経過してからの新規感染が71例(発生密度は1万人日あたり8例),そして2回目の接種後7日経過してからの新規感染が9例(発生密度は1万人日あたり4例)であったワクチン未接種コホートでは,PCR陽性検査日の14日以前に543人(56%)が典型的なCOVID-19症状を認め,140人(14%)が無症候性であったのに対し,ワクチン接種コホートでは,29人(36%)が典型的なCOVID-19症状を認め,15人(19%)が無症候性であったBNT162b2 ワクチンの単回接種では,試験集団において,1回目の接種から21日後に70%95%CI, 55-852回目の接種から7日後に85%74-96のワクチン効果が認められた

Figure 1: Number of vaccinated SIREN participants by dose, manufacturer, and day, Dec 8, 2020 to Feb 5, 2021 (n=20641).

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Figure 2: Adjusted hazard ratios at post-vaccination intervals in the (A) full cohort (n=23324) and (B) negative cohort (n=15121), Dec 7, 2020 to Feb 5, 2021.

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ワクチン接種者は1回目接種直後(03日目)に感染リスクが低下した49日目には有意な効果は見られず10日目以降は感染に対する実質的な防御効果が高まり,21日後にはプラトーに達したFigure 2).2回目の接種後も同様のパターンが認められた

→0-3日目でリスクが低下した理由を免疫応答では説明がつかない)

Interpretation

今回の結果から,BNT162b2ワクチンは,生産年齢の成人における症候性および無症候性感染を予防できることがわかったこのコホートは,流通している優勢変異株がB1.1.7であったときに接種されており,この変異株に対する有効性を示している

調査期間中のイングランドでは,202012月初旬以降,南東部,ロンドン,イングランド東部で,20211月初旬までにはすべての地域で(ヨークシャーとハンバーが最後の地域),Pillar 2の検査室での陽性反応が50%以上を占めるというB.1.1.7変異株が優勢であったことを考えると,BNT162b2B1.1.7変異株に対して有効であることが示唆される.

 

 

 

 

 

 

【スコットランドにおけるCOVID-19ワクチンの初回大規模接種の展開とCOVID-19による入院の中間報告: 全国プロスペクティブコホート研究】

Vasileiou E, et al. Interim findings from first-dose mass COVID-19 vaccination roll-out and COVID-19 hospital admissions in Scotland: a national prospective cohort study. Lancet. Apr 23, 2021.

https://doi.org/10.1016/S0140-6736(21)00677-2.

Summary

Background

BNT162b2 mRNAPfizer-BioNTech)とChAdOx1 nCoV-19Oxford-AstraZeneca)のCOVID-19ワクチンは,第3相臨床試験で疾患に対する高い有効性が示され,現在,英国をはじめとするいくつかの国の国家予防接種プログラムで使用されている.これらのワクチンの実際の効果を研究することは緊急の課題である.我々は,これらのCOVID-19ワクチンの初回接種の大規模展開とCOVID-19による入院との関連を調査した.

Methods

本研究では,Early Pandemic Evaluation and Enhanced Surveillance of COVID-19-EAVE IIデータベースを用いた前向きコホート研究を行った.このデータベースは,940の一般診療所に登録されているスコットランドの540万人(人口の約99%)を対象に,ワクチン接種,プライマリケア,リアルタイム逆転写PCR検査,入院患者の記録をリンクさせたものである.過去に陽性と判定された者は解析から除外した.時間依存型Coxモデルと逆傾向重みを用いたポアソン回帰モデル(Poisson regression models with inverse propensity weights)を用いて,初回接種後のCOVID-19による入院に対する有効性(1-adjusted rate ratioと定義)を推定した.

Results

2020128日〜2021222日までの調査期間中に,合計1,331,993人がワクチンを接種した。ワクチン接種者の平均年齢は65.0歳(SD 16.2)だった.1回目のBNT162b2 mRNA接種は,接種後2834日目のCOVID-19入院の減少について,91%95%CI 85-94)のワクチン有効性と関連していた同じ時間間隔でのChAdOx1接種のワクチン有効性は88%95%CI 75-94)であったCOVID-19による入院に対する複合ワクチン有効性の結果は,解析対象を80歳以上の高齢者に限定しても同様であった(接種後2834日目で83%, 95%CI 72-89

 

 

Figure 1: COVID-19 vaccine uptake.

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Figure 2: COVID-19 hospital admissions over time by age group.

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Figure 3: COVID-19 hospital admissions by age group from September, 2020, to February, 2021.

黒の点線は,ワクチン接種の開始(2020128日)を,青の点線は,20201226日と202115日の2回のロックダウンを表している.曲線は,入院に一般化加法ポアソンモデル(generalised additive Poisson model)を当てはめて得られたものである.

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Interpretation

スコットランドでは,BNT162b2 mRNAワクチンとChAdOx1ワクチンの初回接種が,COVID-19による入院リスクの大幅な低下と関連していた.観察された効果の一部は,残存している交絡因子による可能性が残っている(ロックダウンやスコットランドの予防接種プログラム概念と運用方法など).

 

 

 

 

 

 

【妊娠中の人におけるmRNA Covid-19ワクチンの安全性に関する中間調査結果】

Shimabukuro TT, et al. Preliminary Findings of mRNA Covid-19 Vaccine Safety in Pregnant Persons. N Engl J Med. Apr 21, 2021.

https://doi.org/10.1056/NEJMoa2104983.

Abstract

Background

米国では,多くの妊娠中の人がメッセンジャーRNAmRNACovid-19ワクチンを接種しているが,妊娠中の安全性に関するデータは限られている.

Methods

20201214日〜2021228日まで,”v-safe after vaccination health checker”サーベイランスシステム,v-safe pregnancy registry,およびVaccine Adverse Event Reporting SystemVAERS)のデータを用いて,妊娠中の人におけるmRNA Covid-19ワクチンの初期安全性の特徴を明らかにした.

Results

16歳から54歳までの35,691人のv-safe参加者の妊娠を確認した.注射部位の痛みは,妊娠中の女性の方が非妊娠中の女性よりも頻繁に報告され,頭痛,筋肉痛,悪寒,発熱の報告は少なかった(Figure 1v-safe妊娠レジストリ(v-safe pregnancy registry)に登録された3958人のうち,827人が妊娠を完了し,そのうち115人(13.9%)が流産し,そして712人(86.1%)が生児を出産した(ほとんどが妊娠第3期にワクチンを接種した参加者).新生児に関連した有害転帰には,早産(9.4%),在胎週数に対して体格が小さい(3.2%)などがあったが,新生児死亡は報告されなかった.直接的な比較はできないが,Covid-19ワクチンを接種して妊娠を完了した人の妊娠および新生児の有害事象の割合は,Covid-19パンデミック以前に実施された妊娠中の女性を対象とした研究で報告された発生率と同様であったVAERSに報告された221例の妊娠関連有害事象のうち,最も頻繁に報告された事象は自然流産(46例)であった.

 

 

Figure 1: Most Frequent Local and Systemic Reactions Reported in the V-safe Surveillance System on the Day after mRNA Covid-19 Vaccination.

https://www.nejm.org/na101/home/literatum/publisher/mms/journals/content/nejm/0/nejm.ahead-of-print/nejmoa2104983/20210421/images/img_xlarge/nejmoa2104983_f1.jpeg

 

 

Conclusions

中間調査報告では,mRNA Covid-19ワクチンを接種した妊娠中の人に明らかな安全性シグナルは確認されなかった.しかし,母体,妊娠,乳児の転帰を知るためには,妊娠初期にワクチンを接種した多数の女性の追跡調査を含む,より長期的な追跡調査が必要である.