COVID-19関連追加(202151日)感染後の中和抗体の動態

SARS-CoV-2中和抗体反応動態と免疫期間: 縦断研究】

Chia WN, et al. Dynamics of SARS-CoV-2 neutralising antibody responses and duration of immunity: a longitudinal study. Lancet Microbe. Mar 23, 2001.

https://doi.org/10.1016/S2666-5247(21)00025-2.

Background

SARS-CoV-2に対する結合抗体に比べ,中和抗体の減衰率(waning rates)が異なるという研究結果がある.患者個人レベルでの中和抗体の減衰率が,免疫の持続性に与える影響はいまだ明らかではない.本研究では,中和抗体の減衰とIgGアビディティ(avidity: 抗原と抗体の結合力の総和)の成熟のピークレベルと動態を経時的に調査し,これを臨床パラメータ,サイトカイン,T細胞応答と相関させることを目的とした.

Methods

我々は,COVID-19回復患者を対象に,発症後180日目までの縦断研究を行い,以前に検証されたsurrogate virus neutralisation testを用いて中和抗体レベルの変化をモニターした.また,異なる回復段階における抗体アビディティおよびその他の免疫マーカーの変化を測定し,臨床的特徴と相関させた.機械学習アルゴリズムを用いて,中和抗体レベルの経時的変化を5つのグループに分類し,中和抗体媒介性免疫の寿命(longevity)を予測した.

Results

517人の患者に研究への参加を呼びかけ,そのうち288人が外来での追跡調査と連続した血液サンプルの採取に同意した.164人の患者が追跡調査を受け,分析に必要な血液サンプル,すなわち入院治療中および退院後の症状発現後180日までの間に,合計546の血清サンプルが採取された(appendix pp7-12).各タイムポイントでのサンプル数の内訳は以下の通りである: 発症後14日目に64サンプル,発症後21日目に39サンプル,発症後28日目に127サンプル,発症後60日目に30サンプル,発症後90日目に158サンプル,発症後180日目に128サンプルであった.164人のうち42人(26%)が女性で,年齢は中央値44歳(IQR 34.5-56; range 21-74)であった.患者164人のうち72人(44%)が少なくとも1つの併存疾患を有しており,47人(29%)が高血圧症,27人(16%)が糖尿病であった.164人のうち34人(21%)は発症時に無症状であった.SARS感染歴が記録されている患者はいなかった.

回帰線の傾きおよびサンプルが有意な閾値である30%阻害を超えたかどうかに基づいて(Figure A),中和抗体の動態の5つの特徴的なパターンを以下のように特定した: 陰性: サンプリング期間において,30%阻害レベルの中和抗体を獲得できなかった人(164人のうち19[12%]; 急速な減衰: 初期(症状発現後20日前後)に様々なレベルの中和抗体を獲得したが,180日未満で血清反応陰性になった人(164人のうち44[27%]; 緩やかな減衰: 症状発現後180日の時点で中和抗体陽性のままだった人(164人のうち46[28%]; 持続: 中和抗体のピークレベルは様々であるが,中和抗体減衰が最小限であった人(164人のうち52[32%]; 遅延性反応: 回復期後半(発症後90日以上)に中和抗体の予期せぬ増加を示した少数の人(164人のうち3[2%]).これらのサンプルの分類は,症状発現後28日目,症状発現後90日目,症状発現後180日目の中和抗体レベルを評価するために,決定木(decision tree)を用いて決定することができた(appendix p4).

Figure 1: Longitudinal dynamics of neutralising antibodies.

(A) Neutralising antibody level, measured by percentage inhibition of sVNT readings. (B) Linear regression model of each grouping for neutralising antibody level. Dashed lines represents 30%, 50%, and 80% of sVNT percentage inhibition. (C) Group mean of IgG avidity percentage is connected at days 14, 21, 30, 90 and 180. Since each patient blood sample was taken at a different timepoint in practice, we marked the mean days post-symptom onset of the samples within the same group but the definition of the time groups remains 14, 21, 30, 90, and 180 days post-symptom onset. Each point represents a single patient. sVNT=surrogate virus neutralisation test.

Figure thumbnail gr1

各グループの特徴をより明確にするために,線形回帰分析を適用して各グループの変化の傾きを図示した(Figure 1B).グループ234では,いずれも一般的な減衰傾向を示していたが,減衰速度(すなわち変化の傾き)が大きく異なっていた.その結果,症状発症後180日目の中和抗体レベルが大きく異なり,急速な減衰を示したグループではほぼすべてのサンプルで20%未満の阻害,緩やかな減衰を示したグループでは40%以上の阻害,持続を示したグループでは80%以上の阻害が認められた

5番目の遅延性反応を示したグループでは,回復期に中和抗体の異常な上昇が認められた.この所見のメカニズムと意義は不明である.このグループの患者3人のうち2人(67%)が肺炎で入院したが,補助酸素を必要とした患者はなく,1人はレムデシビルで治療された.退院後,遅延性反応グループの患者2人(67%)は,発熱や急性呼吸器感染を報告しなかった.そして1人(33%)は,3回の喘息増悪を報告した.遅延性反応グループの患者の中には,既知のCOVID-19患者や,シンガポールのCOVID-19患者の大半を占める移民労働者との接触を報告した人はいなかった.サンプル数が3人と非常に少ないため,今回の研究ではこれらの患者はさらなる分析から除外されたが,今後,このカテゴリーでより多くのサンプルが見つかった場合には,追跡調査を行う予定である.

IgGの成熟(すなわち,アビディティの増加)が我々の観察において役割を果たしている可能性がある.全サンプルを対象にアビディティ計測を実施したところ,3つの重要な知見が得られた(Figure 1C).第一に,受容体結合ドメイン(RBD)結合IgG抗体のアビディティレベルは,すべての患者グループにおいて,中和抗体のレベルおよび減衰率相関していた第二に,陰性グループ急速な減衰を示したグループ緩やかな減衰を示したグループでは,第一期(発症後1530日目)の方が第二期(発症後31180日目)よりも急速に上昇する抗体価の変化の二相性が認められた第三に,持続を示したグループでは,アビディティは非常に早い時期(症状発生後1530日目)に高いレベルに達し,二相性の変化はあまり顕著ではなかった

COVID-19患者の抗体減衰パターンとサイトカイン濃度が相関しているかどうかを調べるために,症状発現後30日目と180日目の血漿中のサイトカインおよびケモカイン濃度をプロファイリングした(appendix p5).発症後180日目の後期回復期において,炎症惹起性サイトカイン(pro-inflammatory cytokines)(IFN-γ, IL-12p70, IL-17A),炎症惹起性ケモカイン(IP-10),成長因子(ヒト成長因子[human growth factor])の濃度が,他のすべてのグループと比較して,持続を示したグループで高かったこの結果は,症状発症後180日目において,炎症惹起性サイトカインであるIFN-γ,IL-12p70IL-17Aの濃度が他のすべてのグループと比較して低かった陰性グループの患者とは対照的であったまた,IL-6濃度については,異なるグループ間で差はなかった(データは示していない)

180日目に各グループから無作為に選んだ23サンプルのサブセットについて,SMNPORF3aORF7/8タンパク質のペプチドに反応したT細胞を検査し,T細胞免疫と異なる抗体動態との間に相関関係があるかどうかを調べた.その結果,2つの観察結果が得られた(appendix p6).第一に,各グループのすべての患者は,発症後180日目で実質的な特異的T細胞(specific T-cells)を維持しておりT細胞応答は多特異的(multi-specific)であり,ほとんどのドナーはNPMSに反応するT細胞を持っていた第二に,T細胞免疫にはグループ間で明確な差はなく,これまでの知見と一致していた6)22)

4つのグループを相互に比較すると,年齢,併存疾患の有無,ベースラインの症状,検査,臨床転帰に関して有意差を認め,また抗体を持続して保有しているグループは,抗体が減衰あるいは陰性であった他の3つのグループと比較すると,有意差が認められた(Table 1その結果,抗体陰性グループから持続を示したグループへの明確な段階的進行が認められ,抗体を持続して保有している患者高齢で,高血圧や糖尿病などの併存疾患が多かった

Table 1:

 

 

 

我々が観察した人口統計的な違いは,抗体持続グループの患者はより臨床転帰が悪かった(肺炎,補助酸素,ICU入室,機械式換気など)ことから,おそらくは疾患重症度の増加と関連していた.発熱,咳嗽,呼吸困難,リンパ球数減少,CRP増加,LDH増加など,重症度の上昇を反映した症状や検査結果が,持続グループにより多く認められたまた,陰性グループ(19人のうち11[58%]は,持続グループ(52人のうち3[6%])に比べて,無症状者の割合が多かった

患者70人については,定量PCRの結果としてウイルス量のデータが得られた.そして,このサブグループでは,ベースラインの入院時の最も早い鼻咽頭PCRにおけるCt値は抗体反応と関連していなかったが(データは示されていない),サンプルの種類(鼻咽頭スワブ,中咽頭スワブ,喀痰など)が異なるため,このデータには限界がある

年齢,性別,併存疾患の有無を考慮した多変量解析モデルでは,疾患重症度のみが抗体持続と独立して関連しており,軽症と比較して,中等症では5.2095%CI 1-83-16-7)、重症では30.310.0-107.9)の調整オッズ比が得られた(Table 2

 

 

Table 2:

 

中和抗体の寿命(日数)は,異なるグループと個人の線形モデルの傾きと切片によって算出した.異なる設定の一般化線形モデルを適用し,異なるグループのAUCareas under the curve)を比較した.ガウス分布は,陰性サンプルを除くすべてのグループで最も低い赤池情報量基準を示したが、そのグループは長寿予測(longevity prediction)には使用されなかった(データは示されていない).急速に減衰を示したグループ,緩やかな減衰を示したグループ,持続を示したグループの中和抗体陽性日数(neutralising antibody positive daysの中央値は,それぞれ96201580であった(Figure 2A; appendix pp7-12.各グループ内の個人の中和抗体陽性日数には大きなばらつきが認められた.持続グループの中和抗体寿命は,中和抗体陽性期間最小値は326日,最大値は14,881日を超えて予測されたため、寿命のばらつきが最も大きかった.モデリングと実際のデータの相関性を検証するために,症状発現後270日のサンプリングが可能な患者56人を使用した.予測値と実際の270日後のデータのピアソン相関は0.84で,中和抗体寿命予測アルゴリズムの強固性(robustness)と有効性が示された(Figure 2B

 

 

Figure 2: Prediction of neutralising antibody longevity using linear regression modelling for different groups.

(A) Violin plots and box plots showing neutralising antibody positive days. p-value was calculated by Wilcoxon signed-rank test with the persistent group as the reference. For each group, the 0th, 25th, 50th, 75th, and 100th percentile are marked. (B) Correlation of predicted sVNT inhibition percentage compared with actual sVNT inhibition percentage for a subset of the returning cohort at 270 days post-symptom onset. sVNT=surrogate virus neutralisation test.

 

Figure thumbnail gr2

我々は,持続反応グループと遅延性反応グループの一部の患者では,急性疾患から回復した後,何ヶ月も抗体レベルが上昇していることを観察した.この上昇は,これらの患者の予測モデリングに影響を与えた.というのも、モデリングは下降トレンドラインを想定して作成されており,その結果,抗体の寿命(50万日を超える)を無限に予測することになったからである.

我々は,このコホート研究を拡大し,疾患の回復から17年後に募集した合計20人のSARS生存者を対象とした(appendix p13回収された人の90%は,surrogate virus neutralisation testの阻害が30%を超えていたこの中和抗体の減衰動態パターンは,SARS-CoV-2から回復した患者の持続グループで予測されたものと同様である

Interpretation

中和抗体の動態は,COVID-19患者の個人差が大きく,抗体のピーク値や中和抗体の減衰,寿命も異なることを示したまた,中和抗体の持続性と,COVID-19の重篤な臨床症状および高レベルの炎症惹起性サイトカインおよびケモカインとの間に関連性があることがわかったまた一部の患者では,中和抗体の減衰パターンにかかわらず,SARS-CoV-2特異的T細胞が検出された.長期的な防御免疫と防御に対応する中和抗体レベルに関する重要な臨床的疑問に答えるためには,中和抗体が持続している場合としていない場合のCOVID-19回復患者の再感染に関する臨床的・疫学的研究が必要である.この意味で、ワクチン接種を受けた人を対象とした同様の大規模コホート研究や縦断的研究を実施し,免疫動態・寿命を調べることが重要である.

 

References

6) Le Bert N Tan AT Kunasegaran K et al.

SARS-CoV-2-specific T cell immunity in cases of COVID-19 and SARS, and uninfected controls. Nature. 2020; 584: 457-462

22) Reynolds CJ Swadling L Gibbons JM et al.

Discordant neutralizing antibody and T cell responses in asymptomatic and mild SARS-CoV-2 infection. Sci Immunol. 2020; 5eabf3698

 

 

 

 

 

 

 

【ヒトにおけるSARS-CoV-2感染に対する中和抗体反応の動態と相関関係】

Vanshylla K, et al. Kinetics and correlates of the neutralizing antibody response to SARS-CoV-2 infection in humans. Cell Host Microbe. Apr 28, 2021.

https://doi.org/10.1016/j.chom.2021.04.015.

Highlights

SARS-CoV-2回復者の中和抗体には幅広いバリエーションがある.

∼3%の人がSARS-CoV-1の交差反応を伴う強力な抗体反応を示した.

高齢症候性重症は,高いレベルのSARS-CoV-2中和を予測する.

血清とIgGの中和半減期(serum and IgG neutralization half-lives)はそれぞれ14.7週間と31.4週間だった.

Summary

抗体に基づくSARS-CoV-2免疫を理解することは,COVID-19パンデミックを克服し,ワクチン接種戦略に役立てるために重要である.本研究では,主に軽症COVID-19であった963人を対象に,10ヶ月間のSARS-CoV-2抗体の動態を評価した.2,146サンプルを調査した結果,94.4%の人にSARS-CoV-2抗体が検出され,82%が血清中和(serum neutralization),79%IgG中和(IgG neutralization)を示した.SARS-CoV-2抗体中和レベルが非常に高かったのは約3%であり,これらのエリート(elite)中和者はSARS-CoV-1のクロス中和IgGも保有していた.多変量統計モデルにより,年齢症候性感染疾患重症度性別(男性)SARS-CoV-2中和活性を予測する重要な因子であることが明らかになった感染から10ヶ月後,13%の人にウイルスのスパイクタンパク質に対する反応性の低下が認められた中和活性の半減期は,血清では14.7週間精製IgGpurified IgG)では31.4週間であり,長期的に安定したIgG抗体反応であることがわかった今回の結果は,初期のSARS-CoV-2中和抗体反応には幅広いスペクトラムがあることを示しており,ほとんどの人が軽症COVID-19感染後10ヶ月間,持続的に抗体を維持していた

 

 

Graphical Abstract

https://marlin-prod.literatumonline.com/cms/attachment/def3b241-1b10-43f9-941f-c9e70be1cd49/fx1_lrg.jpg