COVID-19関連追加(202153日)mRNAワクチンについてその10

(がん患者に対するBNT162b2

【がん患者に対するCOVID-19ワクチンBNT162b21回投与と2回投与の

安全性と免疫原性: 前向き観察研究の中間解析】

Monin L, et al. Safety and immunogenicity of one versus two doses of the COVID-19 vaccine BNT162b2 for patients with cancer: interim analysis of a prospective observational study. Lancet Oncology. Apr 27, 2021.

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Background

がん患者におけるSARS-CoV-2に対するワクチンの有効性と安全性プロファイルは不明である.我々の目的は,がん患者におけるBNT162b2Pfizer-BioNTech)ワクチンの安全性と免疫原性を評価することである.

Methods

Study design and participants:

我々は,がん患者を対象とした前向き縦断観察研究を行った.2020128日〜2021218日において,英国,ロンドンの3つの病院(Guy's & St Thomas' NHS Trust, King's College Hospital, Princess Royal University Hospital)を受診し,がんの診断が判明している患者で,BNT162b2ワクチンの接種が可能な患者をスクリーニングし,SOAP-02試験への参加を打診した(appendix p25).参加者は書面によるインフォームドコンセントを得た.また、同じ3つの病院から優先的に健常対照者(ほとんどが医療従事者)のコホートを組み入れたが,がん患者(ほとんどが高齢者)の対照コホートとしてではなく,本研究におけるワクチンの免疫原性と安全性を,BNT162b2を投与した健常コホートの他の研究5)15)16)と比較しやすくするためである.本研究は,参加機関の機関審査委員会の承認を得ている(IRAS ID 282337, REC ID 20/HRA/2031).

Procedures:

2020128日〜1229日の間にワクチンを接種した参加者には,BNT162b230μg21日間隔で2回筋肉内投与し,それ以降にワクチンを接種した患者には、30μg1回のみ投与し,12週間後にフォローアップのブーストを計画した.血液サンプルは,ワクチン接種前(タイムポイント1初回ワクチン接種後3週目(タイムポイント2初回ワクチン接種後5週目(タイムポイント3; appendix p6に採取された.可能であれば,10日ごと,あるいはCOVID-19症状を認めた場合には,鼻咽頭リアルタイムRT-PCRrRT-PCR)スワブ検査を行った.

Outcome:

主要評価項目(coprimary endpointsは,がん患者におけるBNT162b2単回接種後のSARS-CoV-2Sタンパク質に対するseroconversion,および21日後のワクチンブーストがseroconversionに与える影響であった

副次評価項目は,各ワクチン接種後の安全性T細胞応答SARS-CoV-2武漢株およびVOCであるB.1.1.7(ケント)変異株の中和である21日目にブースト接種しなかった試験参加者に対しては,遅延ブースト後にフォローアップ血液サンプリングが予定されている.

Results

151人のがん患者(固形がん95人,血液がん56人)と54人の健常対照者が登録された(Table 1).2021319日までに得られたサンプルとデータを基に,がん患者へのワクチン接種の安全性と免疫原性の中間データ解析を行った(Table 2).免疫原性解析からSARS-CoV-2に曝露(抗体seroconversionまたはrRT-PCR COVID-19スワブテスト陽性のいずれかで検出)した患者17人を除外した.

 

 

Table1: Clinical characteristics of patients with cancer and healthy controls.

Table 2: Overall study population and available number of samples for assessment of each study outcome.

3つのコホートにおけるワクチン1回接種後約21日目S IgG抗体価が陽性であった割合は,健常対照者34人のうち32人(94%, 95%CI 81-98),固形がん患者56人のうち21人(38%, 26-51),血液がん患者44人のうち8人(18%, 10-32)であった(Table 3

S IgG抗体の最大力価は最小力価の約100倍であったが、抗体力価の中央値は各コホートでほぼ同様であった(Figure 1A).このように,健常対照者とがん患者の主な違いは,反応の大きさではなく,反応が得られなかったことであった; 実際,反応を閾値を超える(> 70単位),閾値以下(25-70単位),検出限界未満(25単位未満)に分けてみると,閾値を超えていた固形がん患者21人の年齢分布は,検出限界未満に分類された患者17人の年齢分布とほぼ同じであった(appendix pp10-11).

Table 3: Immunogenicity of BNT162b2 vaccine.

 

 

Figure 1: Serological response to COVID-19 vaccine BNT162b2.

 

seroconversionの機能的意義は,2020年の大半の期間に英国で流行したSARS-CoV-2 Wuhan株(野生型,またはEngland 2020/02/407073と呼ばれる),またはSOAP-02研究22)期間中に高い流行を示したスパイク変異株VOC B.1.1.7Kent)のいずれかによる感染の中和によって評価した.最近報告された中和アッセイ17)18)19)を用いて調べたところ,血液がんの1人を除くすべてのレスポンダーが,野生型株を中和できたことが占めされた(Figure 1C逆に、固形がんの3人のレスポンダーは,VOC B.1.1.7株の変異体を中和することができなかった; さらに,健常対照者では,VOC B.1.1.7株に対する中和力価は,野生株よりも有意に低い値(p= 0.0010)であった(Figure 1C; appendix pp10-11.抗S IgG抗体価と中和は,健常対照者と固形がん患者で顕著な相関を示したが(Figure 1D),血液がん患者ではseroconversionが少なかったため,このコホートでの比較は困難であった.

以上のことから,30μgBNT162b2の単回接種では,ほとんどのがん患者でseroconversionを誘導することはできなかった.がん患者,特に免疫原性の低い血液がん患者の免疫不全については一般的に想定されているが,レスポンダーあるいは非レスポンダーの血液中のB細胞数あるいはT細胞数との間には有意な相関関係は認められなかった(appendix pp10-11).

T細胞ワクチン応答を評価するために行ったfluorospot assaysでは,健常対照者のうち、17人中14人(82%)が反応し(Table 3),IFNγ産生細胞もIL-2産生細胞も示さなかったのは3人だけだった(Figure 2A, S2-reactive IL-2 plot< 7にある3つの青い点; appendix pp12-13).bivariate representationでは,seroconversionT細胞応答との間に強い相関関係があることが示され,健常対象者の血清非レスポンダーでT細胞応答を示したのは1人だけで,健常対象者の血清レスポンダーでT細胞応答を示さなかったのは3人であった(Figure 2B).

Figure 2: T-cell response to COVID-19 vaccine BNT162b2.

Figure 2-2:

 

固形がん患者において,31人のうち22人(71%)がT細胞応答(おそらくはseroconversionより高い免疫有効性)を示した(Table 3, Figure 2A).ELISAT細胞応答によって測定されたサンプルは,腫瘍の種類と治療法について比較的バランスが取れていたが,ELISAで測定された53人のうち9人(17%)が化学療法を受けていたのに対し,T細胞応答で測定された53人のうち5人(9%)が化学療法を受けていた(appendix pp12-13).血清レスポンダーのうち1人だけがT細胞応答を示さなかったのに対し,血清非レスポンダーのうち8人がT細胞応答を示した(Figure 2B).T細胞応答のダイナミックレンジは幅広く(0> 300),健常対照者と同様であった(Figure 2A

血液がん患者において,18人のうち9人(50%)にS2ペプチドに反応するIFNγ産生T細胞またはIL-2産生T細胞,あるいはその両方が認められた(これはまたseroconversionに比べて高い免疫有効性)(Table 3, Figure 2A).しかし,T細胞応答のダイナミックレンジは,健常対照者や固形がん患者に比べて常に低かった(Figure 2A注目すべきは,CEF/CEFT recall responsesの頻度と強さが3つのコホートすべてで定量的に類似していたため,T細胞の能力(T-cell competence)を欠いた血液がん患者であることは理由にはならないことである(Figure 2AELISAT細胞応答を測定した患者は,がんの種類と治療法で再びバランスが取れていた(appendix pp12-13; しかし,T細胞応答を示した患者9人のうち8人は,血清非レスポンダーであった(Figure 2A, 2B).この結果は,ワクチンのT細胞免疫有効性が血清免疫有効性よりも高いという仮説を支持しているように見えるかもしれないが,測定された血液がん患者では,RBDに反応するT細胞かSに反応するT細胞がほとんど見られないことに注目した(Figure 2AS2への反応性(その配列は高度に保存されており,風邪コロナウイルスではわずかな変化しかない)は,RBDへの反応性よりもSARS-CoV-2への特異性が低いことを考えると,血清陰性の血液がん患者における低レベルのT細胞応答性は,ワクチンによって誘導されたものではなく,風邪コロナウイルスに対する既存のT細胞応答性を反映している可能性がある

以上のことから,30μgBNT162b2をプライミング接種することで,健常対象者と固形がん患者の大部分にS2RBDに対するT細胞応答が誘導されたが,がん患者の多くは血清非レスポンダーであったS2依存性またはRBD依存性IFNγ応答は,seroconversionよりは弱いものの,野生型SARS-CoV-2の中和と相関した.そしてVOC B.1.1.7株の中和とは有意な相関を示さなかったFigure 2C

次に,30μgBNT162b2を用いたブーストにより,ワクチン接種に対する一次応答にpositiveの影響があるかどうかを検討した.そこで,21日目にブーストを行ったコホートと行わなかったコホートに分け,タイムポイント3(初回接種から5週間後、ブーストを行ったコホートはブースト接種から14日後)で比較した.繰り返しになるが,タイムポイント3では,タイムポイント2と比較して,特にブースト接種をしなかった患者の血液採取に若干の減少が見られた(Table 1,; appendix p4).

次に,30μgBNT162b2を用いたブーストにより,ワクチン接種に対する一次応答にpositiveの影響があるかどうかを検討した.そこで,21日目にブーストを行ったコホートと行わなかったコホートに分け,タイムポイント3(初回接種から5週間後、ブーストを行ったコホートはブースト接種から14日後)で比較した.繰り返しになるが,タイムポイント3では,タイムポイント2と比較して,特にブースト接種をしなかった患者の血液採取に若干の減少が見られた(Table 1,; appendix p4).それにもかかわらず,固形がん患者19人のうち18人(95%)がタイムポイント3でブースト後血清陽性となり,その中には8人のde novo seroconversionも含まれていたFigure 3A一方,ブーストしなかった患者33人のうち,血清陽性となったのは10人(30%)のみで,これは固形がん患者における単回接種後の3週目の血清陽性率38%と同様であった(Table 3; Figure 3A.実際,Fisher's exact testにより,固形がん患者のタイムポイント3 vs タイムポイント2の免疫状態に対するブースト接種の有無の影響は有意であった(p< 0.0001).さらに,ブースト接種によってIgG抗体価が有意に上昇した(p= 0.030)のに対し,ブーストしなかった患者のタイムポイント3における抗S IgG抗体価は,タイムポイント2と同程度か,やや低かった(Figure 3A).健常対象者では,ブースト接種した12人のうち12人(100%)が血清反応を示した(Table 3).ブースト接種を受けなかった者の中で,1人が顕著に抗体価が高かったが,ほとんどの健常対照者の抗S IgG力価は,タイムポイント2とタイムポイント3の間の2週間で同程度か低下する傾向にあった(Figure 3A).

Figure 3: Comparison of single dose versus prime–boost with COVID-19 vaccine BNT162b2.

 

政府の方針変更前にブーストの対象となっていた血液がん患者はわずか6人であった.このうち5人が分析され,そのうち3人(60%)が血清陽性であった(Table 3; Figure 3A).逆に,ブーストを行わなかった36人のうち4人(11%)がタイムポイント3で血清陽性となり(Table 3),タイムポイント2とタイムポイント3の間で抗S IgG抗体価の顕著な低下が見られた(Figure 3A).固形がん患者では,ブーストによる抗S IgG抗体価への大きな影響は,野生型およびB.1.1.7株の両方を中和する能力の増加に反映されており,これは健常対照者の結果と同様であった(Figure 3B, 3Cブースト後にseroconversionが得られた血液がん患者3人は,両方のウイルス株を中和することができたが(Figure 3B, 3C),ブースト接種を受けた人数が少なすぎたため,より詳細な結論を導き出すことはできなかった

IFNγ分泌T細胞の測定からも,ブースト接種の定量的な影響が明らかになった健常対照者3人,固形がん患者16人,血液がん患者4人にブースト接種を行い,T細胞の反応性を調べたところ,固形がん患者2人と血液がん患者1人だけが,SARS-CoV-2ペプチド反応性IFNγ産生T細胞を示さなかった(Figure 3D-Eさらに,ブースト接種により,血液がん患者1人と固形がん患者4人にT細胞応答の獲得が認められた対照的に,ブースト接種しなかった健常対照者と固形がん患者の一般的な傾向は,タイムポイント2とタイムポイント3の間でT細胞応答が変化しないか,一般的に低下することであった(たとえば,RBDペプチドIFNγ応答; Figure 3D: 逆に,タイムポイント2で血清陰性であった健常対照者のうち,タイムポイント3T細胞の反応性を示したのは2人だけであった(Table 3.対照的に,CEFおよびCEFT細胞の反応は,ブースト接種に関係なく,タイムポイント2からタイムポイント3までほぼ同じであった(Figure 3F).ブースト接種を受けた少数の血液がん患者では,ブースト接種後にIFNγ分泌細胞の増加が観察された(Figure 3D-Eブースト接種を行ったかどうかにかかわらず,タイムポイント2T細胞応答がなかった患者がタイムポイント3までにT細胞応答を獲得した例はなかった

がん患者のほとんどが初回のワクチン接種後に血清反応を示さなかったことから,反応性の低さに関連する可能性のある要因,すなわち悪性腫瘍の種類,治療,ベースラインの免疫表現型を分析した.ワクチンコホートの不均一性により,いくつかの領域で統計的検出力が低下したが(appendix pp7-8に,がんのサブタイプ別のタイムポイント2およびタイムポイント3での特異的な反応の詳細が記載されている),血液がんで最も一般的な表現型を構成する血清非レスポンダーが,B細胞,T細胞および骨髄細胞の悪性腫瘍患者に均等に分布していることがわかった(appendix pp14-15固形がんについても,非レスポンダーは,呼吸器がんと皮膚がんに若干の偏りがあるものの,腫瘍の種類にかかわらずほぼ同様に分布していた(appendix pp14-15.非レスポンダーは,免疫チェックポイント阻害薬を併用した化学療法を含むがん治療後15日以内のワクチン接種者にもやや多く観察された(appendix pp14-15).免疫チェックポイント阻害薬の単独投与を受けている固形がん患者8人のうち,初回接種後21日目に血清反応を示したのはわずか3人(38%)であった(appendix pp14-15).

がん患者,特に化学療法を受けている患者の多くは,細胞性免疫応答や抗体産生を減弱させる可能性のある高用量の全身性ステロイド薬を定期的に投与される24)ステロイド治療を受けている血液がん患者における非レスポンダー率は,ステロイド治療を受けていない患者と比較して有意差は認めなかったが(appendix pp14-15),血清非レスポンダー率はステロイド治療を受けている固形がん患者で有意に高かった(appendix pp14-15また,この解析は有意性を示すには検出力不足だったが,ワクチン接種後15日以内に化学療法を受けた患者15人において,チェックポイント阻害薬も投与されていた5人のうち,高用量デキサメタゾンも同時投与されていた患者10人が,タイムポイント2で血清非レスポンダーであった(appendix pp14-15

上述の通り,17人はSARS-CoV-2曝露が疑われたため,主要な比較対象から除外された.この少数の者は,主要なコホートで説明したダイナミックレンジにおいて,かなりの不均一性が見られ,血清反応やT細胞応答が一様に強かったわけではない(appendix pp16-17).

 

これらのワクチンの忍容性は高かった(Figure 4; BNT162b21回目接種後のがん患者140人のうち75人(54%),2回目接種後のがん患者31人のうち22人(71%)では,毒性は報告されなかった.同様に,1回目接種後の健常対照者40人のうち15人(38%),2回目接種後の16人のうち5人(31%)でも毒性は報告されなかった.1回目接種後7日以内の注射部位の痛みが,最も多く報告された局所反応であった(がん患者65人のうち23[35%]; 健常対照者25人のうち12[48%]).ワクチンに関連した死亡は報告されなかった.1回目と2回目接種後,中等度の症状を報告したがん患者は,健常対照者と比較して明らかに少なかった(Figure 4B, 4C).免疫チェックポイント阻害薬の投与歴のあるがん患者1人が,初回接種から3週間後に肝機能検査値の異常を認め,入院を余儀なくされた(グレード4: 命を脅かす可能性; 救急部受診あるいは入院)が,原因は不明である.また,血液がん患者と固形がん患者の安全性プロファイルに違いはなかった.安全性のモニタリングは,ワクチンブースト後18ヶ月間継続される.

 

 

Figure 4: Local and systemic effects reported within 30 days after injection of COVID-19 vaccine BNT162b2 in patients with cancer and healthy controls.

 

 

Discussion

我々の知る限り,COVID-19ワクチンの安全性と免疫原性について,免疫不全の患者,特にがんと診断されている患者を対象にした報告はこれが最初である.SARS-CoV-2BNT162b2 mRNAワクチンは,がん患者において,炎症性免疫応答を増強すると予想される免疫療法を受けている患者であっても,概ね良好な忍容性を示した.しかし,単回投与(30μg)の3週間後には,免疫原性は低く、ワクチン1回接種後約21日目の抗S IgG抗体価が陽性だった割合は固形がん患者では38%,血液がん患者では18%であり,その後2週間経っても同様であった.しかし重要なことに,固形がん患者では,21日目にブースト接種を受けた後,2週間以内に測定された各免疫学的指標が大幅に改善された.この改善には,進行期のがん患者や,免疫チェックポイント阻害薬を投与されている患者,あるいはその両方の患者のseroconversionも含まれていた.しかし,今回の中間解析では,血液がん患者のうちブースト接種を受けた患者数が少なく,そのブーストの影響を評価するには不十分だった.

この結果は,季節性ワクチンを接種したがん患者で報告されているワクチン有効性の低さ10)11)12)と一致しており,BNT162b2の単回接種では,ほとんどのがん患者が完全あるいは部分的に免疫的に防御されていないことを意味している.免疫不全患者は,SARS-CoV-2の持続感染率が高く7)13)14),新たなウイルス変異株の出現における重要なリザーバーとなりうる25)26)という我々や他の研究者の見解を踏まえると,この発見は特に懸念される.このような観点から,がん患者やその他の高リスクグループにおけるBNT162b2の投与間隔を12週間とする現在の英国の方針は,特定の集団では反応が劣る可能性があることを認識している2021212日に英国政府が発表したアップデートに沿って再評価されうる6).また,免疫不全患者を対象に,さらに繰り返しブーストを行った場合の免疫原性を検討する追加試験も必要である.

COVID-19に対する防御の相関関係はまだ完全には定義されていないが,ワクチンの免疫原性には中和抗体と抗原特異的T細胞が必要であると広く想定されている27)28)

我々の結果では,BNT162b2の単回投与により,90%を超える健常対照者にSARS-CoV-2S反応性サイトカイン産生T細胞,中和IgG,またはその両方が誘導され,このワクチンの他の有効性データと一致していると思われる16).しかし,永続性のある免疫記憶などの変数が測定されていないため,この知見は必ずしも健常対照者においてブーストの影響が無視できないことを意味するものではない.さらに,何人かの研究参加者において,ブースト接種によってVOC B.1.1.7株の中和が改善されたことは注目に値する.これは,不完全な免疫保護の下でVOCが出現する可能性についての私たちの懸念に密接に関連している(germane)可能性がある.

血液がん患者は,SARS-CoV-2感染による有害事象のリスクが高いことが報告されており29),このような脆弱性を考慮すると,できるだけ早くこの集団を保護することが急務である.そのため,この集団では単回接種に対する免疫反応が極めて低いことが特に懸念される.今回の中間解析では,これらの患者における21日目のブーストの影響を評価するには十分な検出力がなかったが,免疫防御を誘導するための対策を早急に強化する必要があることは明らかである.このような対策が導入されるまでは、特にこの集団には,ワクチン接種後もフィジカルディスタンスを置く,衝立を設置するといったCOVID-19関連の対策を遵守するよう促す必要がある.さらに,英国のがん患者にはワクチン接種の優先度がレベル4に設定されていたが,リスクのある専門職ではない介護者や直近の社会的接触者には優先度が設定されていなかった.今後のパンデミック対策では,感染拡大やVOCの出現リスクを抑えるためにも,これらのグループを優先すべきであると考える.

免疫原性データとは無関係に,ワクチン接種後21日目以降に新たなスワブ陽性反応が出なかったことが,ワクチン有効性の高さを示す証拠であるとも言える.さらに,SARS-CoV-2感染は,完全に防御されていない患者に実際にブーストを与えているのではないかとも考えられている30).我々の研究では,過去にSARS-CoV-2に感染した疑いのある17人がすべてワクチンに対して強い反応を示したわけではなく,また,S2特異的T細胞反応性を持つ血液がん患者の何人かがRBDに対するT細胞反応性を獲得しなかったことから,これらの見解は根拠のないものと考えている.したがって,我々は,英国の方針が変更された時点では,がん患者において予定されていた21日目のブーストから12週間遅れのブーストに変更することのリスクに関する情報は得られなかったと結論する.臨床的に極めて脆弱なグループとその周囲の人々を優先する代わりに,一般集団における初回接種ワクチンカバレッジを最大化するという決定は,これらのグループにおけるSARS-CoV-2感染のリスクを高めるという代償をもたらしたかもしれない.

この研究の限界は,宿主の免疫反応性に異なる影響を与える特定の患者サブグループ(例えば,異なる治療法を受けている患者)におけるワクチンの免疫原性を区別するには検出力不足であることです.同様に,年齢,性別,民族,併存症をマッチさせたがんではない対照群や,ワクチンを接種していないがん患者の対照コホートも同時には存在しなかった.さらに,ワクチン接種キャンペーンが社会的に行われていたため,便宜的なサンプリングであったため,研究のエンドポイントに関するデータポイントが欠落することは避けられなかった.低出力の研究に内在するバイアスを克服するためには,サブグループにおけるワクチン反応を評価するための大規模な共同研究が必要である.さらに,複数の統計的比較は,偽陽性の結果を増幅させる可能性があることを認識しているが,これらはほとんどが探索的な分析であり,必要に応じて必ずp値の調整を行った.このような限界はあるが,本研究で観察されたがん患者におけるBNT162b2ワクチンの単回投与の免疫有効性の低さは,広範囲の固形がんと治療を受けた患者において21日目のブーストが大きなプラス効果をもたらすことと同様に,非常に明らかである.血液がん患者に対するブーストの影響については,今後の追跡調査により明らかになるだろう.

 

 

Interpretation

がん患者では,BNT162b2ワクチンの1回接種では有効性が低い固形がん患者では,1回目接種後21日目にワクチンブーストを行うと,2週間以内に免疫原性が有意に上昇した.これらのデータは,がん患者には早期(21日目)にBNT162b2ワクチンの2回目接種を優先的に行うことを支持するものである.

 

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