COVID-19関連追加(2021522-2)リツキシマブのCOVID-19への影響

【リツキシマブを投与された炎症性リウマチおよび筋骨格系疾患患者におけるCOVID-19アウトカム: コホート研究】

Avouac J, et al. COVID-19 outcomes in patients with inflammatory rheumatic and musculoskeletal diseases treated with rituximab: a cohort study. Lancet Rheumatology. Mar 25, 2021.

https://doi.org/10.1016/S2665-9913(21)00059-X.

Summary

Background

リツキシマブはリンパ球B細胞やB細胞性リンパ腫細胞に発現しているCD20抗原に結合する,抗ヒトCD20ヒト・マウスキメラ抗体からなるモノクローナル抗体である.リツキシマブを投与されている炎症性リウマチおよび筋骨格系疾患患者では,リツキシマブを投与されていない患者と比較して,COVID-19の経過が好ましくない可能性が様々な観察から示唆されている.我々は,炎症性リウマチおよび筋骨格系疾患患者において,リツキシマブによる治療が重症COVID-19アウトカムと関連するかどうかを調査することを目的とした.

Methods

今回のコホート研究では,フランスのRMD COVID-19コホートのデータを解析した.このコホートは,18歳以上の炎症性リウマチおよび筋骨格系疾患患者で,COVID-19が強く疑われる,または確認された患者を対象としている.主要エンドポイントは,リツキシマブを投与した患者(リツキシマブ投与群)と、リツキシマブを投与しなかった患者(リツキシマブ非投与群)のCOVID-19重症度とした.重症疾患とは,集中治療室への入院を必要とするもの,または死亡に至るものと定義した.副次目的は,死亡数と入院期間の解析とした.潜在的な交絡因子(年齢,性別,動脈性高血圧,糖尿病,喫煙状況,BMI,間質性肺疾患,心血管疾患,がん,副腎皮質ステロイドの使用,慢性腎不全,基礎疾患[関節リウマチ vs その他])を調整するために,inverse probability of treatment weighting propensity score methodIPTW法)を用いた.オッズ比,ハザード比およびそれらの95%CIは,2つの母集団の平均差をそのSDで割ることにより,効果量として算出した.本研究は,ClinicalTrials.govNCT04353609に登録されている.

Results

2020415日〜20201120日において1090人の患者(平均年齢55.2[SD 16.4])のデータが収集された; 734人(67%)が女性,356人(33%)が男性だった.1090人の患者のうち,137人(13%)が重症COVID-19を発症し,89人(8%)が死亡した.潜在的な交絡因子を調整した結果,リツキシマブ投与群の63人では,リツキシマブ非投与群の1027人に比べて,重症疾患がより頻繁に観察され(効果量3.26, 95%CI 1.66-6.40, p= 0.0006),入院期間が著明に長くなった(0.62, 0.46-0.85, p= 0.0024

注目すべきことに,重症患者は,軽症または中等症患者と比較して,より最近のリツキシマブ静注を行っていたまた,リツキシマブを最後に投与してからCOVID-19の最初の症状が出るまでの期間は,重症患者では有意に短かったFigure

Figure: Distribution (Tukey's box plot) of time between last infusion of rituximab according to disease severity and vital status.

Boxes show the 25th, 50th, and 75th, and whiskers indicates values outside the lower and upper quartile with a length equal to 1·5 IQR. p values for comparison (Kruskal-Wallis for comparison between disease severity and Mann-Whitney U test for comparison between alive and deceased patients) are reported; p=0·0018 for either post-hoc comparison of severe disease group with moderate or mild disease group (calculated using Dunn's test). Five patients with missing data were excluded.

 

コホートの1090人の患者のうち89人(8%)が死亡した.リツキシマブ群63人のうち13人(21%)が死亡したが,リツキシマブ非投与群1027人のうち死亡したのは76人(7%)であった.潜在的な交絡因子で調節した結果,死亡リスクはリツキシマブ投与群で有意に増加しなかった(効果量1.3295%CI 0.55-3.19, p= 0.53

傾向スコアマッチング法による調整では,リツキシマブ投与群が非投与群に比べて死亡リスクが高いことが示されたため(効果量2.43, 95%CI 1.10-8.43, p= 0.028),この結果は慎重に受け止める必要があるしかし,この知見は,リツキシマブ非投与サブグループを対照とした場合には確認されなかった(効果量2.16, 95%CI 0.99-4.69, p= 0.051もう1つの考慮すべき点は,死亡患者では,COVID-19の最後のリツキシマブ静注から最初の症状が出るまでの間隔が,生存者よりも有意に短かったことである(Figure

重症COVID-19に伴い,入院期間は,調整方法によらず,リツキシマブ投与群がリツキシマブ非投与群およびサブグループよりも著明に長くなった

Discussion

今回の結果は,リツキシマブ療法が重症COVID-19(本研究ではICUへの入院または死亡と定義)と関連することを示した先行研究を支持するものであったさらに,リツキシマブ非投与群に比べてリツキシマブ投与群では入院期間の延長が認められ(中央値9 vs 13日),morbidity,死亡率、および潜在的な感染症関連の後遺症のリスクが高まった.このより不良のアウトカムが,リツキシマブそのものに関係しているのか,それともこの薬で治療される特定の集団に関係しているのかを判断することが重要な関心事である.実際リツキシマブは,CTDconnective tissue disorders),血管炎,全身性合併症(特に間質性肺疾患)を伴う関節リウマチなど,予後不良リスクが高いとされるリウマチ性疾患に使用されるのが一般的である.さらに,リツキシマブを投与されている患者プロファイル(高齢,男性,併存疾患の頻度が高い,副腎皮質ステロイドの使用)は,重症COVID-19のリスク増加と関連している.注目すべきは,2つの補完的な方法で主要な関連交絡因子を調整した後も,リツキシマブと重症COVID-19との強い関連性が維持されていたことであり,重症COVID-19患者では,中等症や軽症患者に比べて,リツキシマブを最後に投与してからCOVID-19の最初の症状が出るまでの時間が有意に短く,薬剤による直接的な関与が示唆された.さらに,この関連性は,リツキシマブが治療の選択肢として認められる疾患を持つ患者サブグループを解析した後も保たれた.

リツキシマブ投与群では,リツキシマブ非投与群に比べて死亡患者が多かったが,IPTW傾向スコア法により潜在する交絡因子を調整すると,死亡リスクは有意に増加しなかった.この結果は,フランスのRMDコホートや一般集団ですでに観察されているように6),関連する併存疾患が死亡リスクに及ぼす影響を強調している.注目すべきは,傾向スコアマッチング法による調整すると,リツキシマブ投与群がリツキシマブ非投与群に比べて死亡リスクが高いことが観察されたことだが,リツキシマブが治療選択肢として認められる患者のサブグループに焦点を当てた解析では確認されなかった

今回の結果は,自然免疫系21)T細胞22)が初期の抗ウイルス応答に最も重要である(paramount)にもかかわらず,B細胞も重要である(crucial)という概念を支持している.したがって,長期間にわたるリツキシマブ投与は,B細胞の枯渇による抗体産生の低下と,ウイルスクリアランスの低下に関連している可能性があり,ウイルス複製を中和するための抗体反応のプライミングが障害されるかもしれない23)24)リツキシマブをはじめとするB細胞枯渇剤(B cell-depleting agents)は,重症化の原因となるサイトカインストームを軽減することはできないうえ,感染後の防御的な抗体免疫を根本的に阻害するかもしれない.この過程は,B細胞が枯渇した患者において,SARS-CoV-2に対する血清反応が陰性または遅延することを特徴とする,拡大型(extended)または非定型(atypicalCOVID-19症例を説明できるかもしれない25)-28).血清反応の陰性や遅延は,今後のCOVID-19ワクチン接種についても問題となる可能性があり,COVID-19ワクチン接種におけるリツキシマブの影響についてのさらなる研究計画が必要とされる.

COVID-19パンデミック時のリツキシマブ投与患者の今後の管理に影響を及ぼす可能性は,関節リウマチ患者において,持続的な寛解または低い疾患活動性が得られた場合には,リツキシマブの投与を延期することである.CTDや血管炎患者では,疾患の再発や悪化,重篤な臓器障害のリスクが高まる可能性があることを考えると,リツキシマブの投与を延期することはより困難だと思われる.リツキシマブ投与前のSARS-CoV-2検査,リツキシマブ投与中のグルココルチコイド減量の検討(despite SmPC labelled requirement),リツキシマブ投与後数日間は接触を避けるために実施されている対策に厳密に従うように患者に指示することなど,追加の防護策が提案されている9)

今回の結果は,観察解析から得られたものであり,よく知られたlimitationがある: @測定値または未測定の変数による交絡の可能性があり,傾向スコアによる調整を行っても除外することはできない.A傾向スコアの計算を含め,いくつかの共変量に欠損データが存在する.欠損データを適切に処理するために多重代入法(multiple imputations29)を用いたが,欠損データが推定値にバイアスをもたらす可能性を除外することはできなかった.主要目的および副次目的のための正式なサンプルサイズの計算を最初に行わなかったため,有意差を検出するための十分な統計的検出力がない可能性がある.複数の対象疾患(ANCA関連血管炎,全身性硬化症,間質性肺疾患を伴う関節リウマチなど)を有する患者の数が少なすぎたため,個別に解析することができなかった.B活動性または非常に活動性の高い炎症性リウマチおよび筋骨格系疾患患者は,より強い(heavily)治療を受ける傾向がある.また,疾患活動性に関する情報を得ることができなかったため,リツキシマブで確認された高い頻度が適応症によって混同されている可能性を除外できない.C民族,過去の治療歴(シクロホスファミドなど),リツキシマブの投与量と投与期間,関連する低ガンマグロブリン血症の有無に関するデータがない.

Conclusions

フランスのCOVID-19 RMDコホート解析では,炎症性リウマチおよび筋骨格系疾患患者において,投与された生物学的製剤の種類に応じて,有害な臨床アウトカムのリスクが異なる可能性が示唆されている.その中でも,リツキシマブは炎症性リウマチおよび筋骨格系疾患患者において,特にCOVID-19の重症リスクとなる他の併存疾患がある場合には,特に慎重に投与する必要があるだろう

 

 

References

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