COVID-19関連追加(202162日)気道および血液の細胞性免疫の違い

【重篤COVID-19患者の気道および血液における細胞性免疫プロファイルの違い】

Saris A, et al. Distinct cellular immune profiles in the airways and blood of critically ill patients with COVID-19. Thorax. Accepted Feb 27, 2021.

http://dx.doi.org/10.1136/thoraxjnl-2020-216256.

Background

COVID-19の病態生理に関する知識は,ほとんどが血液中の免疫応答を調べた研究から得られたものである.我々は,重症COVID-19における肺の免疫応答を解析し,血液中の免疫応答と比較することを目的とした.

Methods

本研究は,集中治療室(ICU)にCOVID-19入院患者を対象とした観察研究である.気管支肺胞洗浄液(BALF)と血液から単核細胞(mononuclear cells)を精製し,スペクトルフローサイトメトリーで解析し,BALFと血漿中の炎症性メディエーターを測定した.

Findings

17人の患者から血液とBALFのペアサンプルを採取し,そのうち4人はICUで死亡した.BALFではマクロファージとT細胞が最も豊富な細胞で,T細胞はƴδT細胞受容体を発現した細胞の割合が高かった.肺では,CD4 T細胞とCD8 T細胞のどちらもエフェクターメモリー細胞が優位であり(それぞれ87.3%, 83.8%),これらの細胞は末梢血よりも高いレベルの枯渇マーカー(exhaustion markerprogrammad death-1を発現していた.ICUの長期入院(> 14日)は,末梢血における活性化T細胞の割合の減少と関連しており,BALFではさらに減少していたBALFではなく,血中のT細胞活性化は致死性COVID-19症例で高かった.炎症性メディエーターの増加は,血漿よりもBALFでより顕著であった.

 

 

Main

■Immune phenotyping in blood and bronchoalveolar lavage:

ペアのPBMCおよびBALFMCサンプルを,マニュアルゲート(Figure 1A, B)または染色強度(online supplemental Figures 4, 5)の色を重ねて,与えられたデータだけを頼りに(教師なし: unsupervised)でクラスター化した.CD3+T細胞は,その豊富さ(high abundance)と過剰な亜集団(plethora of subpopulations)を考慮して,解釈とより詳細な解析のために,原稿中では分けてクラスター化した.異なる細胞集団による系統マーカー,活性化マーカー,枯渇マーカーの発現をヒートマップで示した(Figure 1C, D).血中の単球と比較して,BALFMCsの単球様細胞(さらに単球様マクロファージ[Mo/MQs: monocyte-like macrophages]として描かれている)は,CD38CD1cCD141CD11bなどの分子の発現が全く異なっていた.Fas受容体(CD95)は,PBMCsBALFMCsの両方で,ナイーブT細胞サブセットを除くすべてのサブセットに高発現していた.末期T細胞枯渇マーカー(end-stage T cell exhaustion)であるCD57は,PBMCsでは(最終的に: terminally)分化したエフェクターメモリーT細胞(EM: effector memory3EM4TEMRARA+ effector memory T cells, 最終分化T細胞)CD4およびCD8 T細胞に発現していたが,BALFMCsではCD57の発現は低かった.このことは,BALF中のTEMRA CD8 T細胞は機能的なCD57-フェノタイプであるが,循環中には枯渇したCD57+ TEMRA CD8 T細胞が存在する17)ことを示唆しているかもしれない.

重症COVID-19症例におけるリンパ球減少の先行報告6)18)と同様に,末梢血リンパ球数は低かった: 0.880.74, 1.40)×106/Lmedian, IQR)(Table 1).全体的に,PBMCの細胞存在比率(cell frequencies)は正常範囲内であり19)-22),コントロールのPBMCsと同等であった(Figure 1E).しかし,BALFにおける細胞組成は患者によって大きく異なり,マクロファージとT細胞が最も豊富で,かつ変動していた(46.7±25.0 and 42.5±23.9%; mean±SD; Figure 1D).BALFCD4/CD8比は0.12.8で,BALFMCsdouble-negativeDN)αβT細胞(8.5±6.8%)とγδT細胞(22.2±17.7%; normal range 2-10% 23))の割合が非常に高かった(Figure 1F).循環している単球の分布は対照群と患者群で差がなかったが(Figure 1G),患者群の単球におけるhuman leukocyte antigen-DR isotypeHLA-DR)の発現は著しく低下していた(Figure 1H).驚くべきことに,BALFから分離した単球は,PBMC単球と比べてHLA-DRの発現パターンが大きく異なっていた(Figure 1H).患者では,すべての循環しているDCサブセットでHLA-DRの発現が低下していた(Figure 1I).

COVID-19に関連する一般的な炎症マーカー(すなわち,IL-6C-X-C motif chemokine[CXCL]-10/IP-10C-C motif ligand[CCL]-2/MCP-13)5)6)の血漿とBALFの両方におけるレベル,および抗ウイルス インターフェロン-α(IFN-α)の血漿レベルは、COVID-19患者が健常対照者と比較して有意に上昇していた(Figure 1K).興味深いことに,IL-6CCL-2/MCP-1IL-10レベルは(CXCL10/IP-10ではなく),血漿よりもBALFで高かった.すべての患者が,SARS-CoV-22つの主要な免疫原性タンパク質であるスパイクタンパク質のRBDとヌクレオカプシドタンパク質(N9)を標的とするIgG抗体反応を起こしていた(Figure 1K).

Figure 1: BALF predominantly comprises T cells and monocyte-derived and alveolar macrophages. PBMCs and BALFMCs isolated from patients with COVID-19 admitted to the ICU were measured using spectral flow cytometry (n=17) with the dotted line separating data obtained from PBMCs and BALFMCs.

 

T cell differentiation and phenotypes in PBMCs and BALFMCs:

CD95CD28CD27CCR7CD45RAを用いてT細胞を分化させると(詳細はonline supplemental Table 2),PBMCsではセントラルメモリーCD4 T細胞と最終分化CD8 T細胞(TEMRA)が多く見られた(Figure 2A, D).一方,BALFMCsでは,(最終分化)エフェクターメモリーT細胞が優位で,CD4 T細胞は主にEM2EM3であった(Figure 2A, D).血漿とBALFの両方で,インターロイキン(IL-4IL-17AIFN-ƴレベルはすべて検出限界未満かその前後であり(Figure 2I, J, IFN-ƴは検出限界未満)、T細胞の偏り(skewing)に関する結論は出なかった.granzyme Bレベルは,血漿とBALFの両方で,対照サンプルの値と比較して高度にアップレギュレートされており,患者ではBALFレベルが血漿レベルよりも高かった(Figure 2K).エフェクターCD8 T細胞は,主にTrmEM4TEMRAフェノタイプを持っていた.CD38およびHLA-DRの発現(gating strategy in online supplemental Figures 1, 2)によると,ナイーブおよび幹細胞様T細胞はどんな活性化も示さなかったが(データ未提示),他のT細胞サブセットでは顕著な活性化が観察された(Figure 2B, E).BALFにおける活性化T細胞は,PBMCsよりもさらに高いprogrammad death-1 PD-1)の発現を示した.PD-リガンド1(可溶性PD-L1)の分泌は,COVID-19患者のBALFと血漿の両方で有意に上昇していた.COVID-19患者では,T細胞の増殖と分化を刺激するIL-2IL-720)24),健常対照と比較して上昇しており,COVID-19BALFでは,COVID-19の血漿と比較してIL-2レベルが高かった.注目すべきことに,COVID-19患者では,血漿中のTNF関連アポトーシス誘導リガンド(TRAIL: TNF-related apoptosis-inducing ligand)が減少する一方で,BALF中のTRAILレベルは健常者と比較して上昇していた.

Figure 2: BALF T cells comprise predominantly effector memory CD4 and CD8 T cells and CD8 Trm. PBMCs and BALFMCs isolated from patients with COVID-19 admitted to the ICU were measured using spectral flow cytometry (n=17).

 

 

Correlation cell populations bronchoalveolar lavage with peripheral circulation:

リンパ球減少はCOVID-19で頻繁に報告される現象であり,肺へのT細胞の大移動または活性化によるアポトーシスが原因であると考えられている3)6)18).もし,リンパ球減少が特定のT細胞サブセットの大移動によって起こるのであれば,PBMCsにおける相対的T細胞数およびCD4/CD8比はBALFMCsと逆相関するはずである.しかし,血中とBALFの相対的T細胞数は全く相関を示さなかったが(rho= 0.01, p= 0.96),CD4/CD8比は血中とBALFの間で有意な相関を示した(rho= 0.65, p= 0.0071)(Figure 3A).CD4/CD8比はBALFで低く、BALFではCD8 T細胞が相対的に多く存在することを示している.免疫細胞の移動と末梢免疫システム vs 肺の免疫システムにおける洞察を得るために,PBMCサブセットをBALFMCサブセットと相関させた(Figure 3B).PBMCBALFMCを比較すると末梢CM CD4 T細胞の活性化状態は,従来の(conventionalT細胞と正の相関を示し,BALFMo/MQとは負の相関を示した(Figure 3C).これは活性化によってCM CD4 T細胞の増殖が誘発され,その後移動することでBALFT細胞数が多くなる(その結果,他の細胞が少なくなる)ことが原因と考えられる.さらに,末梢TregsBALFにおけるDN T細胞と負の相関を示した.これは、TregsによるFasを介したT細胞のアポトーシス誘導が障害され,DN T細胞が蓄積されることを示しているのかもしれない25)

Figure 3: Correlations between cell populations in PBMCs and BALFMCs. The bronchoalveolar and systemic immune response were compared by correlating αβ-T cells and CD4/CD8 in PBMC and BALFMC (A) and comparing plasma and BALF cytokine levels (B).

 

Influence of duration of ICU stay on bronchoalveolar and systemic immune responses:

ICU長期入院中の免疫システムの細胞組成の変化を調べるために,14日をカットオフとしたICU滞在期間に応じてサンプルを分類した(<14 days: n=9, 9days (812.5); >14 days: n=9, 18 days (1722.5); median (IQR))(患者の特徴についてはonline supplemental Table 4を参照).我々は,各グループにおいて1人の患者につき1つのサンプルのみを含めた(online supplemental Figure 3Bを参照).与えられたデータだけを頼りにした(unsupervised)クラスターでは,免疫細胞の組成,特にBALFにおけるT細胞にICU入院がが有意に影響していることが明らかになった(Figure 4).BALFT細胞の違いは主として,ICU入院期間が14日を超えるグループで複数のT細胞サブセットの活性化が低いことに起因していた: CD4 EM2 1.4±0.7% vs 14.3±4.5% of CD4 EM2),CD4 EM3 2.7±1.8% vs 39.1±9.6% of CD4 EM3),CD8 EM4 3.8±3.2% vs 47.3±11.6% of CD8 EM4),CD8 TEMRA 2.8±2.6% vs 27.7±9.8% of CD8 TEMRA)(Figure 4D).さらに,従来の(conventional)(すなわちαβ)T細胞は少なく(50.0±7.1% vs 21.5±6.6%),一方肺胞マクロファージ,Mo/MQs,そしてƴδ細胞の存在比率は,ICU長期入院後に高くなる傾向が見られた.14日を超えてICUに入院した後に分離したPBMCsも,全体的に活性化T細胞サブセットの存在比率が低い傾向を示したが,その差はBALFMCsに比べて顕著ではなかった.CXCL10/IP-10の血漿レベルはICU入院期間が長くなるほど低くなったが,BALFではICU入院はどのサイトカインレベルにも有意な影響を与えなかった(Figure 4E).IL-6CCL-2/MCP-1IL-2PD-L1granzyme BICU入院が延長しても安定していた.

 

 

Figure 4: Reduced T cell activation in both BALF and peripheral blood of patients with an ICU stay of >14days. samples were stratified based on moment of sampling in ≤14 days (n=8) and >14days (n=9).

 

Association of fatal COVID-19 with bronchoalveolar and systemic immune responses:

どのような免疫学的プロファイルが死亡率と関連するかを明らかにするために,患者を生存率に応じて層別化した(生存者13人,非生存者4人).末梢リンパ球数は生存者(0.85[0.74, 1.31]×106/L)と非生存者(1.53[0.69, 2.77]×106/L, p= 0.40)で差がなかった(その他の患者の特徴についてはonline supplemental Table 5を参照).サンプルは,それぞれICU入室後15.5日(12.5-17)または16日(9-22)(中央値(IQR))に採取された(supplemental Figure 3Cを参照).生存患者と死亡患者を別々にクラスタリングしたところ,BALFMCsCD3-およびCD3+のクラスターに大きな違いが見られた(Figure 5A, D).血中のさまざまなT細胞サブセットの活性化は,生存患者と比較して非生存患者で増加していた: CD4 EM432.7±4.3% vs 16.1±2.9%),CD4 EM335.3±6.0% vs 18.2±2.5%),CD8 TEMRA31.2±6.9% vs 17.3±2.6%)(Figure 5B).一方,非生存患者では,生存患者に比べてBALF中の異なるT細胞サブセットの活性化が低下する傾向が見られた: CD8 TEMRA2.9±2.8% vs 17.3±7.6%),CD4 Trm3.5±3.5% vs 11.8±6.0%),CD8 EM412.3±11.7% vs 27.3±10.3%),CD4 EM312.2±10.9% vs 23.3±8.3%)(Figure 5D).サンプル数が少ないことがネックであるが,死亡例のBALFでは,生存例と比較して形質芽細胞(plasmablasts)とƴδT細胞の存在比率が減少する傾向にあった.一方で,一部の死亡例では好塩基球の頻度が高かった(5.1±3.9% vs 0.6±0.1%).これは,ヒスタミン放出を刺激する可能性がある27)28),強いIgA反応26)およびCOVID-19における深い補体活性化25)を考えると,さらなる研究が必要かもしれない.非生存患者と生存患者の血漿およびBALFでは,IL-6CXCL10/IP-10CCL2/MCP-1,抗SARS-CoV-2 IgG抗体,granzyme BIL-2およびTRAILレベルに有意差はなかった.

Figure 5: Contrasting patterns of T cell activation in BALF and peripheral blood between survivors and non-survivors.

 

Discussion

科学界の多大な努力により,COVID-19に関する理解は大きく深まったものの正確な病態生理はまだ解明されていない.一部の研究では,免疫システムの過剰活性化が報告されているが,他の研究では,T細胞の枯渇,機能不全,および/またはアポトーシスが報告されている3)6)7)29)しかし,重要なことは,これらの初期の研究が血液中の免疫応答に限定されていたのに対し,SARS-CoV-2感染は肺に存在するという点である今回の研究では,ICUに入院したCOVID-19患者の免疫応答は血液とBALFから分離された免疫細胞の間には大きな違いがあり,非常に多様であることが示されたPBMCsBALFMCsの間で最も強い相関関係があったのは,末梢CM CD4 T細胞の活性化状態であり,これは通常のT細胞と正の相関を示し、BALFの単球様マクロファージとは負の相関を示した.COVID-19患者では,BALF中のマクロファージとT細胞の割合が大きく変化していた.COVID-19患者の血中T細胞は,過去に報告されているように30)31),コントロールと比較してエフェクターメモリーフェノタイプに偏っていたが(skewed),このエフェクターメモリーフェノタイプへの偏りは,BALFT細胞でより顕著であり,PD-1の発現も有意に高かった.これらの結果は,COVID-19の病態生理を完全に理解するためには,肺から細胞を採取することが重要であることを示している.

COVID-19患者では入院時に著しいリンパ球減少が見られたという過去の報告にもかかわらず3)6)18)32),我々の研究ではICU入院COVID-19患者のリンパ球減少は軽度であり,これは患者のあるサブセットにおいてはリンパ球数が回復すると報告されているように32),後期のサンプリングであったからかもしれない.重度のリンパ球減少は,活性化による細胞死やT細胞の感染部位への大移動が原因であると考えられている6).本研究で,末梢T細胞数とBALF中のT細胞数が逆相関していないことから,長期の重篤COVID-19患者のリンパ球減少は,T細胞の肺への大移動による可能性は低い.一方,末梢リンパ球減少の程度と相関することが知られているFas発現5)は,ナイーブT細胞を除く血中のすべてのT細胞で高かったことから,COVID-19におけるT細胞リンパ球減少の原因はアポトーシスである可能性が高いことが示唆される.これまでの報告と同様に6)7)31)33),今回の研究では,活性化した末梢血T細胞におけるPD-1の発現が高かったが,BALFMCsにおけるPD-1の発現はさらに高く,ほとんどのサンプルで95%を超える陽性率を示した.このことは,Fasの発現が低いことと相まって,気管支肺胞腔のT細胞は血中T細胞よりも枯渇しているが,Fasを介したアポトーシスに対する感受性は低い(less vulnerble)ことを示しているかもしれないし,あるいは単に最近活性化された多機能抗原特異的T細胞を反映しているのかもしれない(このT細胞も高いPD-1発現を示すことが示されている33)).

軽症患者においてCOVID-19を標的とした機能的な獲得免疫応答を誘導するためには,初期に(initially)ピークに達し,その後徐々に減少するバランスのとれたIFN応答が重要であることが示されている.しかし,重症患者では,発症後数週間にわたってIFNが存在しないか,あるいは持続的に高値を示した34)-36).我々は,血漿中のT型IFNレベルが持続的に高いことを確認したが,BALFレベルはすべて検出限界以下であった.循環している単球におけるHLA-DRの発現低下は,既に報告されているように34)36),効果的な獲得免疫応答を起こす能力をさらに阻害し,免疫抑制と関連している37)COVID-19患者では,循環している単球やDCsにおいてもHLA-DRの発現が低下していたが,BALFMCsではこのような発現低下は認められず,これらの細胞は抗原を提示する能力が十分にあることが示唆された.ウイルスに感染した細胞を排除するもう一つの潜在的なメカニズムは,TRAILを介したシグナル伝達によるアポトーシスの誘導である38)39)COVID-19患者のBALFではTRAILレベルが有意に上昇していたが,血漿では低下していた.TRAILシグナルの過剰活性化は慢性肺疾患の原因となり38)39),機械式換気を受けているCOVID-19患者の肺で高発現し,T細胞の肺への移動に重要な役割を果たしていると考えられるケモカインであるCCL20を誘導することから,TRAILレベルの歪み(distorted)がCOVID-19の病態生理を促進しているかどうかを調べることは価値があると考えられる.

CD8 Trm T細胞は最近,中等症疾患と関連しており,一方,炎症性Mo/MQは重篤症例でより多く存在していた13).しかし本研究では,CD8 Trmと生存率との正の相関は認められなかった.むしろ,致死的COVID-19ではMo/MQが少なかった.このような見解の相違については,使用した技術,サンプル数の少なさ,臨床比較の違い(すなわち,全COVID-19患者の重症度 vs 重症患者のみの死亡率),発症時期(入院後41013) vs ICU入院後130日)に関連したサンプリング時期など,複数の説明が考えられる.

COVID-19では、末梢血CD4およびCD8 T細胞がエフェクターメモリーフェノタイプに大きく分化することが報告されているが30)31),主要感染部位である肺におけるT細胞フェノタイプについてはほとんど知られていない.今回の研究では,BALFでの分化はさらに偏っており,BALFCD4 T細胞の89.6%CD8 T細胞の96.1%がエフェクターメモリーフェノタイプを持っていた.ICU入院期間が長くなると(つまり> 14日),血液とBALFの両方におけるT細胞の活性化が減少し,COVID-19においてT細胞が枯渇しているという示唆に一致している.しかし驚くべきことに,致死性COVID-19では肺におけるT細胞の活性化が減少したように見える一方で,末梢T細胞の活性化は増加していたEM3 T細胞の活性化も含まれていた)EM3 T細胞は細胞溶解活性(cytolytic activity)が高く,それに伴ってgranzyme Bの産生も多く41),未感染の対照群と比較すると,BALFと血漿の両方でgranzyme Bが増加しており,これはCOVID-19で観察されたような炎症誘発性組織傷害を引き起こす可能性がある.しかし,生存患者におけるT細胞の活性化は,主に肺に優位であり,末梢での活性化は限られているようであった.生存患者と非生存患者におけるT細胞の活性化の違いは,理論的にはT細胞の全身性活性化,あるいは致死性COVID-19症例では活性化T細胞が肺に移動できなかったことに起因すると考えられるが,これについてはさらなる調査が必要である

今回の研究では,末梢血と肺の両方で炎症マーカーや単核免疫細胞を調べることで,後期の重篤COVID-19患者の免疫応答を広範囲に把握することができた.さらに重要なことは,末梢血と肺のコンパートメントを詳細に比較した結果,免疫応答(T細胞の活性化や単球のHLA-DRの発現など)に大きな違いがあることが明らかになったことである.これは,末梢血細胞をCOVID-19の免疫応答全体の代用として使用する際に考慮しなければならない.さらに、これまでの研究では,COVID-19ではいわゆる全身性のサイトカインストームが起こることが報告されているが3)5)6),我々の研究では多くのサイトカインレベルは,血漿レベルよりもBALFレベルで高く,COVID-19の後期では全身性サイトカインストームではなく局所性サイトカインストームが起こっていることを示している.これはCOVID-19患者の肺を調査した数少ない他の研究とも一致している42).本研究は,政府の対策が導入された後,SARS-CoV-2感染症の発生率が急速に減少したため,サンプル数が比較的少なく、またサンプリング時期にばらつきがあるという限界があり,潜在的な交絡因子があるため,結論を出す際には注意が必要である.

Conclusions

ICUに入院したCOVID-19患者の肺における免疫組成は,末梢血とは大きく異なっていたBALFは主にマクロファージとT細胞で構成されており,特にICUでの長期入院後は炎症性単球様マクロファージとƴδT細胞の割合が高くなっていた.CD4およびCD8 T細胞は,PBMCsと比較すると,BALFで高いレベルのPD-1を発現していた.驚くべきことに,CD8 T細胞の活性化は末梢血よりもBALFの方が低かったCD4およびCD8 T細胞の活性化の低下は,特にBALF中の低下が,ICUの長期入院と関連し,一方,末梢T細胞の活性化(CD8 TEMRAおよび,CD4 EM3EM4)は死亡率と関連していた

 

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