COVID-19関連追加(202165日)変異株とワクチンその8

BNT162b2ワクチンによるSARS-CoV-2VOC B.1.617.2およびB.1.351に対する

中和抗体活性】

Wall EC, et al. Neutralising antibody activity against SARS-CoV-2 VOCs B.1.617.2 and B.1.351 by BNT162b2 vaccination. Lancet. June 3, 2021.

https://doi.org/10.1016/S0140-6736(21)01290-3.

インドで最初に検出されたSARS-CoV-2 B.1.617.2 Variant of ConcernVOC1)は,2020年後半にCOVID-19の第2波とともに英国で出現したB.1.1.72)を急速に駆逐し,現在,英国で優位になっている.現在ライセンスされているCOVID-19ワクチンのB.1.617.2に対する有効性は不明である; B.1.617.2は,201912月に中国の武漢で初めて検出された野生型SARS-CoV-2と比較してスパイクタンパク質に12の変異があるものの,VOCsappendix p2)あるいは中和抗体(NAbs)からの逃避に通常関連するACE2受容体結合ドメインの501または484のアミノ酸位置に変異がない.

B.1.617.2によるワクチン誘発性NAb逃避を明らかにし,以前の株と活性を比較して,人口に基づいたワクチン有効性に関する既存の推定値と比較するために,我々は,20211月に英国ロンドンのUniversity College London HospitalFrancis Crick Instituteが着手したLegacy studyの初期解析を行い,前向きに募集したスタッフボランティアのワクチン接種に対する血清反応を追跡した(appendix p6).臨床コホート,ウイルス培養条件,遺伝子配列,中和アッセイなどの方法,および統計解析についての詳細な説明は,appendix p8に記載した.このLegacy studyは,London Camden and Kings Cross Health Research Authority Research and Ethics committeeIRAS number 286469)で承認され,University College Londonがスポンサーとなっている.

High-throughput live-virus SARS-CoV-2 neutralisation assay(性能データはappendix p3)を用いて,250人の参加者(年齢中央値42[IQR 33-52])を対象に,BNT162b2ワクチン1回目接種(n= 149; 初回接種後の中央値30[IQR 23-38])または2回目接種(n= 159; 2回目接種後の中央値28[IQR 21-37])後の5種類のSARS-CoV-2株に対するNAb力価(NAbTs)を測定した: オリジナルのスパイク配列を持つ株(野生型); 2020年に英国で発生した第1波時に分離されたAsp614Gly変異を持つ株(D614G; およびVOCs B.1 .617.2B.1.3512020年後半に南アフリカで最初に検出),B.1.1.7である.

BNT162b22回接種したところ,参加者全員にELISAで検出される抗野生型スパイク抗体が検出され,159人の参加者のうちB.1.617.2に対するNAb活性が欠如していた6人(3%),B.1.351に対するNAb活性が欠如していた9人(5%)を除く全員に,試験した3種類のVOCsを含むすべての株に対するNAb活性が認められた(appendix p2).血清NAbTsは,野生型と変異株の間(appendix p2; RS> 0.82, p< 2×10-16),およびVOC間(B.1.617.2 vs B.1.351: RS= 0.85, p< 2×10-16)でよく相関していた.しかし,NAbTは,B.1.617.2に対しては,野生型に比べて5.8倍減少し(95%CI 5.0-6.9B.1.1.7に対する減少(2.6 vs 野生型, 95%CI 2.2-3.1よりも有意に減少しており,B.1.351に対する減少(4.9 vs 野生型, 95%CI 4.2-5.7と同様の減少であった

Figure:

注目すべきことに,すべての変異株において,年齢の上昇NAbTの低下と有意に相関し(appendix p2; -0.33<RS<-0.27; 2.2×10-5<p<5.6×10-4),一方,性別やBMIでは相関が見られなかった(appendix p4BNT162b22回目接種後,時間経過とともにNAbTは減少した: BNT162b22回目接種から816週間後に追加研究における参加者(n= 14)は,すべての変異株に対するNAbTが有意に減少したappendix p2; 0.0002<p<0.0134野生型,D614GB.1.1.7に対する最終的なNAbTは,我々のアッセイの定量範囲内(IC50> 40)にとどまったが,2人の参加者のVOCsであるB.1.617.2およびB.1.351に対するNAbTsは,BNT162b22回目接種から約3ヶ月後の受診時に40を下回った

人口カバー率を最大化するため,英国はBNT162b22回接種の間隔を延長した.このことは,親SARS-CoV-2株やB.1.1.7変異株に対する防御には限定的な影響を与えたかもしれないが,他のVOCsからの防御に与える潜在的な影響については十分に理解されていない。BNT162b21回接種のみでは,VOCsの中和が著しく異なることがわかった(appendix p2: ELISAで抗スパイク抗体が陽性となった186人のうち177人(95%)は,野生型(IC50中央値68[IQR 42-140])およびD614GIC50中央値71[IQR 46-111])に対して検出可能なNAb反応を示したが,すべてのVOCsに対するNAbTsの中央値は定量的な検出限界を下回った.NAbTs3つのグループ(IC50[< 40],中[40-256],高[> 256])に層別化し,順序ロジスティック回帰によって野生型に対する分布の変化の有意性を評価したところ,より有益な情報が得られた(appendix P2).186サンプルのうち,野生型に対してNAbTが低かったのは39サンプル(21%)に過ぎなかったが,この割合はB.1.1.7に対しては50%p= 1.7×10-6),さらにB.1.351に対しては75%p< 3×10-16),B.1.617.2に対しては68%p< 5×10-16)にまで上昇した注目すべきことに,B.1.351p= 3.7×10-4)およびB.1.617.2p= 1.2×10-5)の力価の低下は,B.1.1.7と比較しても有意であり,1回接種で現在のB.1.1.7株に比べてB.1.617.2株に対するNAb活性が低下していることが確認された注目すべきことに,NAbTsが低い参加者は,中程度または高い反応を示した参加者よりも年齢が高い傾向にありappendix p2),ロジスティック回帰分析では,BNT162b21回接種した後のNAbTsの低下には,株によらず年齢が重要な要因であることが示唆された(appendix p7; p= 0.006

これらのデータは,B.1.617.2の増加に関する疫学的データと合わせて,このVOCは,B.1.351のようにワクチン有効性が低下し,B.1.1.7よりも伝播性が高まるという2つの課題を抱えている可能性がある.このような変化の影響を予測することは困難である: 我々が観察したNAbTの減少が,ワクチンを接種した集団においてワクチン有効性にどの程度の影響を与え,疾患重症度を増加させるのかを正確に評価することは,特にこのプロセスに寄与する複数の要因,例えば長寿命の液性免疫(long-lived humoral immunity3)などを考慮すると,依然として困難である.

しかし,最近のNAbとワクチン有効性に関するデータ解析4)では,SARS-CoV-2の初期株に対する防御の相関を確立することが試みられており,このモデルを背景にすると,我々のデータは,BNT162b22回接種した参加者のほとんどがB.1.617.2感染と関連疾患から保護される可能性を示唆しており,これは,定量的RT-PCR検査におけるS-gene target failure検出率に基づいた英国におけるB.1.617.2に対するワクチンの有効性を推測した暫定データ5)と一致する.B.1.617.2の症例数が増加し,シーケンスで確認されたB.1.617.2の症例の割合が増加していることに加え,WHOの国際基準やリファレンスパネルが普及して検査室間でのNAbTsが標準化されていることから,今後数ヶ月のうちにワクチン有効性の推定値が改善され,防御の相関をより正確にモデル化できるようになると我々は期待している.

しかし,BNT162b22回接種した場合,一般的に健康で比較的若く,最近ワクチンを接種した,ほとんどが単一民族である我々のコホートは,SARS-CoV-2変異株に対するNAb活性の合理的なベストシナリオを示していることを強調しておきたい.実際,ワクチン有効性の絶対条件に関わらず,NAbTsのピーク値はVOC B.1.617.2B.1.351に対して,それ以前の変異株に対するNAbTsと比較して大幅に減少している.そしてその結果,個人または亜集団レベルでのワクチン有効性は,ウイルス株以外の要因(appendix p5)で発生するNAbTsの低下に対して感受性がより高くなり,ワクチンと対象集団の他の組み合わせで観察されたワクチン有効性の失敗6)を理解するための基礎を提供することになる.

我々のデータは,単回接種者の場合,B.1.617.2B.1.351VOCsに対するNAbTsB.1.1.7に比べて有意に低いことが示しており,単回接種でもワクチンを接種しない場合に比べてかなり高い防御効果が得られるものの,単回接種者はこれらのSARS-CoV-2変異株に対する防御力が低い可能性があることを示唆している.これらのデータは,B.1.617.2の蔓延という観点から,2回目接種を遅らせることで得られる,より広い集団への接種率と2回目接種後の個人のNAbTの増加という利点7)を,短期的な有効性の低下と比較する必要があることを示唆している.世界的に見ても,今回のデータは,すべての国ができるだけ早く2回接種を受けられるように,ワクチンの供給を増やす必要があることを示している.

長期的に見ると,年齢の上昇BNT162b22回目接種からの時間はどちらも,B.1.617.2およびB.1.351に対するNAb活性の低下と有意に相関していることがわかったこの2つの要因は,免疫状態の低下や併存疾患などの既存の要因や,ワクチン接種に対する地域特有の反応(geographic-specific responses to vaccination)とは無関係であり,COVID-19の重症化のリスクが最も高い英国の集団(すなわち,高齢で,より早期にワクチンを接種した集団)に特徴的である

結果として,B.1.617.2やその他の同様のNAb耐性株が流行する地域でNAbsを最高レベルに維持するためには,英国のJCVI優先グループや他国の同様のグループ,および今回調査したBNT162b2接種者のコホートよりもワクチンによって誘発されたNAbTsが低いグループに対して,さらなるブースター免疫(理想的には新興VOCを広範に中和するNAbを誘導する修正ワクチンを使用する)が必要となる可能性が高いと考えられる.

 

 

References

1) Public Health England

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Date: May 27, 2021

Date accessed: June 2, 2021

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https://virological.org/t/preliminary-genomic-characterisation-of-an-emergent-sars-cov-2-lineage-in-the-uk-defined-by-a-novel-set-of-spike-mutations/563

Date: Feb 4, 2021

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3) Turner JS Kim W Kalaidina E et al.

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7) Parry H Bruton R Stephens C et al.

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https://doi.org/10.1101/2021.05.15.21257017

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