COVID-19関連追加(202168日)抗凝固薬のACTION試験

当院HP関連ファイル:

20201219

Dダイマー濃度の上昇を伴うCOVID-19入院患者に対する治療的抗凝固療法と

予防的抗凝固療法の比較(ACTION: 非盲検,多施設共同,無作為化,対照試験】

Lopes RD, et al. Therapeutic versus prophylactic anticoagulation for patients admitted to hospital with COVID-19 and elevated D-dimer concentration (ACTION): an open-label, multicentre, randomised, controlled trial. Lancet. June 4, 2021.

https://doi.org/10.1016/S0140-6736(21)01203-4.

Introduction

初期のデータでは,COVID-19は他の呼吸器感染症に比べて,血栓性合併症のリスクが高く,そのイベントの程度が大きいことが示されている1)2).さらに,COVID-19では,血栓症,播種性血管内凝固症候群,サイトカインストームが,より重篤な進行や転帰の悪化と関連している1)2)3).内皮機能障害,過剰凝固性(hypercoagulability),および凝固活性化と関連した血栓炎症状態(thromboinflammatory state)は,微小血管および大血管の血栓症のリスクを高めることにつながる1)2)3)4).しかし,このような状況下で発生する血栓イベントの短期的および長期的な臨床的な影響は,まだ解明されていない5)

COVID-19の血栓性合併症には動脈および静脈イベントが含まれ,微小血管血栓症はCOVID-19患者に見られるびまん性肺傷害の原因となっている可能性がある1)2)3)4).また,Dダイマー濃度は,この集団における血栓イベントおよび出血イベントの両方のマーカーとして同定されており,よりリスクの高い患者を特定できると考えられている3)6)

COVID-19入院患者の血栓予防に関する現在の推奨事項は,同様の医療状態(medical conditions)における既存のエビデンスに基づいている7)8)9).観察研究では,抗凝固療法を行わない場合と比較して,治療的抗凝固療法と予防的抗凝固療法の両方を行うことで,院内死亡率が低下し,挿管が減少する可能性が示唆されている10).これらの観察結果から,COVID-19入院患者の治療法として,治療的抗凝固療法が検討されている.しかし,抗凝固薬の種類や投与量,治療期間など,最適な治療法はまだわかっていない10)11)

リバーロキサバン(®イグザレルト)は,広く使用されている経口の第Xa因子直接阻害薬で,さまざまな臨床適応(clinical indications)において血栓予防が推奨されている12)13)Dダイマー濃度の上昇を伴うCOVID-19入院患者の合併症予防に治療的抗凝固療法が有効であるかどうかを評価するために,我々は,治療的抗凝固療法と予防的抗凝固療法の有効性と安全性を比較する無作為化比較試験を実施した.

Methods

AntiCoagulaTlon cOroNavirusACTION)試験の理論的根拠とデザインは,過去に発表されている14).我々は,ブラジルの31施設で,pragmaticpragmatic clinical trial: 実際的臨床試験),非盲検(盲検判定あり),多施設共同無作為化対照試験を実施した.Dダイマー濃度の上昇を伴うCOIVD-19で入院し,無作為化前に最大14日間COVID-19症状があった患者(18歳以上)を,治療的抗凝固療法または予防的抗凝固療法のいずれかに無作為に割り付けた(1:1).治療的抗凝固療法は,安定した患者には院内でリバーロキサバン20mgまたは15mg11回)を経口投与したあるいは臨床的に不安定な患者には初回にエノキサパリン(クレキサン)(1mg/kg12回)または未分画ヘパリン(抗Xa濃度が0.3-0.7IU/mLになるように)を静脈内投与し,その後30日目までリバーロキサバンを投与した予防的抗凝固療法は,標準的な院内におけるエノキサパリンまたは未分画ヘパリンを用いた主要有効性アウトカムは,死亡までの期間入院期間30日目までの補助酸素投与期間であり,これらを階層的に解析し,intention-to-treat集団において,win ratio method(比率> 1は,治療的抗凝固療法群の方が良好な結果であることを反映する)を用いて解析した主要安全性アウトカムは,30日目までの大出血または臨床的に関連のある非大出血であった.本試験は,ClinicalTrials.govNCT04394377)に登録されており,完了した.

Participants:

COVID-19 の確定診断を受けた入院患者で,無作為化14日前までに症状がありD-ダイマー濃度が上昇していた(地域の検査機関で正常基準範囲の上限を超えていた)患者を対象とした.試験への参加には,患者の入院の有無にかかわらず,臨床現場で使用されている特定の検査(RT-PCR,抗原検査,またはIgM検査)に基づき,無作為化14日前までに採取したサンプルでCOVID-19を確認する必要があった.除外基準は,抗凝固療法の正式な適応,リバーロキサバンやヘパリンの禁忌,出血のリスクが高い状態などであった.COVID-19以外の適応で治療的抗凝固療法を受けた患者であっても,抗凝固療法の使用時間が48時間未満で,試験参加時に中止できる場合は対象とした.完全な適格性基準はappendix p6に記載されている.

Procedures:

臨床的に安定している患者には,治療的抗凝固療法を行うために,リバーロキサバンを1120mgの用量で経口投与した.クレアチニンクリアランスが3049mL/minの患者やアジスロマイシンを服用している患者には,1115mgに減量して投与した.COVID-19に関連した重篤疾患,生命を脅かす状態,機械式換気や昇圧剤が必要な状態,または経口薬を服用できない状態(治験責任医師による評価)にある患者は,臨床的に不安定な状態にあるとみなされた.不安定な状態の患者には,エノキサパリンを1mg/kg12回皮下投与するか,未分画ヘパリンを目標抗Xa濃度(0.3-0.7IU/mL)またはそれに対応する目標活性化部分トロンボプラスチン時間(平均正常値の1.5-2.5倍)を達成する量で静脈内投与した.腎機能障害や播種性血管内凝固症候群のある患者には未分画ヘパリンが選択された.これらの患者が安定してきたら,経口リバーロキサバン(20mgまたは15mg,上記)に移行した.治療的抗凝固療法群のすべての患者は,同じ用量のリバーロキサバンで30日目まで治療を継続した.

予防的抗凝固療法を割り付けられた患者は,入院中にエノキサパリンまたは未分画ヘパリンによる標準的な静脈血栓塞栓症の予防を行い,担当医の判断で予防期間の延長を受けることができた(appendix p7).このグループの患者は、決定的な臨床適応(例えば,客観的に確認された深部静脈血栓症)が生じた場合,あるいは,血栓塞栓症の疑いが臨床的に高く,確認検査ができない場合には,治験責任医師の判断で,治療的抗凝固療法を受けることができた.その他の臨床治療は,現行のガイドラインと地域の標準治療に基づいて,担当医の判断で行われた.本試験では、抗凝固剤を比較するのではなく、2つの抗凝固戦略を検証したため、クロスオーバーは,患者が予防的抗凝固療法から治療的抗凝固療法に変更した場合(またはその逆)にのみ考慮され,同一試験群内での異なる薬剤間では,プロトコールでは認められたが,考慮されなかった.

ベースライン評価には,人口統計特性,危険因子,病歴および検査データが含まれた.入院中,データは毎日収集された.退院後,試験結果を評価するために30日後,安全性に関する追加情報を得るために60日後に電話による経過観察が行われた.

服薬アドヒアランスは,各群のプロトコールで推奨されている抗凝固療法の期間に応じて算出した: 治療群では30日後,予防群では入院中.両群における入院中のアドヒアランスの解析は,毎日の訪問に基づいて行われ,治療群における退院後のアドヒアランスの解析は,錠剤数に基づいて行われた.臨床転帰や有害事象(出血など)の発生により試験治療を中断した日数は,最終的なアドヒアランスの計算には含めなかった.

Results

2020624日〜2021226日までに,ブラジルの31施設で3331人の患者をスクリーニングし,615人を無作為に割り付けた(治療的抗凝固療法群に311[50%],予防的抗凝固療法群に304[50%]Figure 1).治療群の患者1人(< 1%)は,同意を撤回したため追跡調査ができなくなり,主要解析には含まれなかった.試験に参加したすべての患者がCOVID-19陽性であることが確認された; 患者1人(< 1%)は,試験結果は陰性であったがCOVID-19の可能性が高かったため,主要intention-to-treat分析に含めた.その他のプロトコール逸脱については,以下: 7人(1%)(治療群で6[2%],予防群で1[< 1%])が無作為化の72時間より前にDダイマー濃度の評価を受けた; 12人(2%)(すべて治療的抗凝固療法群)は,48時間を超えるアジスロマイシン併用で,15mgではなく20mgのリバーロキサバンを投与された.アジスロマイシンとリバーロキサバン20mgの併用日数は,最大で6日(2人)であった.これら12人の患者に出血事象は認められなかった.

 

 

Figure 1: Trial profile.

 

ベースライン特性は群間でバランスがとれていた(Table 1; appendix p8).全体では,平均年齢は56.6歳(SD 14.3),368人(60%)が男性で,平均BMI30.3kg/m2SD 6.0であった.ベースライン時に460人(75%)の患者が補助酸素療法を受けており,39人(6%)が臨床的に不安定な状態にあった.ベースライン時の薬剤使用に関するデータは,appendix p9に記載されている.症状発現から入院までの期間の中央値は8.0日(IQR 6.0-10.0),入院から無作為化までの期間の中央値は2.0日(1.0-3.0)であった

 

 

Table 1: Baseline characteristics and medications.

 

Appendix p9: Medication use at baseline.

 

全体として,治療的抗凝固療法群の全例と予防的抗凝固療法群の304人のうち303人(> 99%)が,試験プロトコールに従って抗凝固療法を受けた(appendis p10).治療群では,29人(9%)が最初にエノキサパリンを投与され(中央値11[IQR 7-14]),1人(< 1%)が未分画ヘパリンを投与された.この30人には,無作為化時には安定していたものの,試験薬の初回投与前に不安定になった7人が含まれていた.治療群の残りの280人(90%)にはリバーロキサバンが投与され,そのうち214人(76%)には1120mg66人(24%)には1115mgが投与された.予防的抗凝固療法群で抗凝固療法を受けた患者のうち,256人(84%)はエノキサパリン,47人(16%)は未分画ヘパリンで開始された.残りの患者は同日に退院したため,ヘパリンは投与されなかった.38人(13%)は退院後も延長して予防的投与された.30日の平均アドヒアランスは,治療群で94.8%SD 15.2),予防群で99.5%6.2)であった(appendix p10).

全体として,治療的抗凝固療法群の全例と予防的抗凝固療法群の304人のうち303人(> 99%)が,試験プロトコールに従って抗凝固療法を受けた(appendix p10).治療群では,29人(9%)が最初にエノキサパリンを投与され(中央値11[IQR 7-14]),1人(< 1%)が未分画ヘパリンを投与された.この30人には,無作為化時には安定していたものの,試験薬の初回投与前に不安定になった7人が含まれていた.治療群の残りの280人(90%)にはリバーロキサバンが投与され,そのうち214人(76%)には1120mg66人(24%)には1115mgが投与された.予防的抗凝固療法群で抗凝固療法を受けた患者のうち,256人(84%)はエノキサパリン,47人(16%)は未分画ヘパリンで開始された.残りの患者は同日に退院したため,ヘパリンは投与されなかった.38人(13%)は退院後も延長して予防的投与された.30日の平均アドヒアランスは,治療群で94.8%SD 15.2),予防群で99.5%6.2)であった(appendix p10).

死亡までの期間,入院期間,30日までの補助酸素投与期間についての階層解析では,群間に統計的な差はなかった.win数は,治療群で2889934.8%),予防群で3428841.3%)であった(win ratio 0.86[95%CI 0.59-1.22], p= 0.40; Figure 2, appendix p11).総ties数は1983723.9%)であった.

 

 

Figure 2: Primary outcome analysis.

(A) Hierarchical win ratio analysis of death, duration of hospitalisation, and duration of oxygen use (primary outcome) through 30 days. (B) Cumulative mortality curves through 30 days in the two study groups. (C) Number of wins by group for individual components of the primary outcome.

 

主要アウトカムの個々の構成要素について,治療的治療群と予防的治療群の勝率の合計は,主要解析結果と一致しており,死亡までの期間,入院期間,補助酸素投与期間には両群間で差は認めなかった(Figure 2B, C).また,30日目の8点式順序尺度(Table 2; 7日目,15日目,30日目の疾患進行; 30日目終了時の侵襲的機械式換気の期間についても,両群間で差は認めなかった(appendix p12).

Table 2: 30-day efficacy and safety outcomes.

 

30日目の時点で,個々の血栓イベント発生率は両群間で有意な差はなく(Table 2; appendix p12),静脈血栓塞栓症,心筋梗塞,脳卒中,全身性塞栓症,四肢,あるいは主要有害事象の複合イベントも同様であった(RR 0.75[95%CI 0.45-1.26], p= 0.32).

ISTHが定義した主要安全性アウトカムである大出血または臨床的に関連する出血は,治療的抗凝固療法を受けた26人(8%)と予防的抗凝固療法を受けた7人(2%)に発生した(RR 3.64 [95%CI 1.61-8.27], p= 0.0010; Table 2).

致命的な頭蓋内出血は,治療群でエノキサパリン投与中の臨床的に不安定な患者に1件発生した(appendix p13).あらゆる出血は,治療的抗凝固療法を受けた患者36人(12%)と予防的抗凝固療法を受けた患者9人(3%)に発生した(RR 3.92 [95%CI 1.92-8.00], p< 0.0001).結果は,他の出血スコアを用いて評価しても一貫していた(appendix p1316).最初の出血イベント(あらゆる種類の出血)は,両群ともほとんどの患者が病院で発生した(最初のイベントの66%が病院で発生した).最初の出血イベントが発生するまでの期間の中央値は,治療群では11.0日(95%CI 5.0-14.5),予防群では14.0日(9.0-22.0)であった.臨床的に不安定な23人の患者が治療的抗凝固療法群に割り付けられ,ヘパリンによる治療が開始された(エノキサパリン22人,未分画ヘパリン1人).このうち,12人はリバーロキサバンに移行する前に死亡した; 10人はリバーロキサバンに移行してリバーロキサバン服用のまま退院した; 1人はリバーロキサバンに移行したがリバーロキサバン服用で退院しなかった.これら23人の臨床的に不安定な患者における出血の発生率は,appendix p14に記載されている.試験薬に対するアレルギー反応は,治療的抗凝固療法に割り付けられた患者では2人(1%),予防的抗凝固療法に割り付けられた患者では3人(1%)に認められた.

死亡,血栓イベント,大出血または臨床的に重要な非大出血の複合的な正味の臨床的利益(net clinical benefit)は,群間で統計的に有意差はなかった(RR 1.17 [95%CI 0.82-1.66], p= 0.45).

主要アウトカムの結果は,サブグループ間で一貫していた(Figure 3).臨床的に安定している患者と臨床的に不安定な患者の間でも(appendix p18-19),COVID-19検査で確認されなかった患者を除いた解析(appendix p15),死亡を2値エンドポイント(binary endpoint)と仮定した解析(appendix p16)でも,同様の結果が得られた.最後に,未分画ヘパリンまたはエノキサパリンを投与された予防群の患者において,試験アウトカムに差は認めなかった(appendix p17).

 

 

Figure 3: Subgroup analysis.

*Clinically unstable was defined as the presence of a COVID-19-related critical illness with an immediately life-threatening condition that would typically lead to intensive care unit admission. † Mild disease includes cases not meeting the criteria for classification as moderate or severe disease; moderate disease was characterised by an oxygen saturation <94%, pulmonary infiltrates >50%, or a partial pressure of oxygen to fractional concentration of oxygen in inspired air ratio <300; and severe disease was defined as respiratory failure, haemodynamic instability, or multiple organ dysfunction.

 

 

Discussion

COVID-19 が確認され,Dダイマー濃度が上昇した入院患者を対象とした非盲検多施設共同無作為化対照試験において,リバーロキサバン20mg/日(臨床的に不安定な患者にはエノキサパリン1mg/kg12回)による30日間の治療的抗凝固療法は,ヘパリンによる院内予防的抗凝固療法と比較して,死亡までの期間,入院期間,補助酸素投与期間についての階層解析の結果,臨床転帰の改善にはつながらなかったリバーロキサバンまたはエノキサパリンを用いた30日間の抗凝固療法は,院内予防的抗凝固療法と比較して,大出血または臨床的に重要な非大出血の発生率が高かった

COVID-19パンデミックを考慮すると,転帰を改善する治療を特定することは非常に重要である22)23)ACTION試験では,COVID-19の診断を確定するために,一般的な臨床検査を含む実用的なアプローチを採用した.ACTION試験では,COVID-19の診断を確認するために,一般的な臨床検査を用いた実用的なアプローチが採用された.これらの検査の高い特異度に加え,試験対象者の高い事前検査確率により,COVID-19の診断が偽陽性となる可能性は極めて低く,また臨床現場での試験結果の外部検証が容易になると考えられた.本試験の治療群で使用された主要な抗凝固薬であるリバーロキサバンが選択されたのは,包括的な心血管プログラム(cardiovascular programme)で研究され,様々な臨床環境で静脈および動脈血栓イベントのリスクを低減することが示されたからである12)13)24)25)26).リバーロキサバンがCOVID-19の合併症を軽減するかどうかを確認するためには,広く使用されていること,良好な毒性プロファイル,および使いやすさを考慮して,よくデザインされた無作為化臨床試験が必要であった.

COVID-19入院患者へのヘパリンによる治療的抗凝固療法の使用に関する無作為化データでは、さまざまな結果が示されている27)28).集中治療室に入院している重症患者では,治療的または中間的な用量の抗凝固療法を行っても,予防的用量と比較して効果は得られなかった27)29).我々の研究では,臨床的に不安定な患者を対象とした少数のグループを対象としており,本研究の結果は,この集団を対象とした過去の無作為化データと一致していた.これらの結果とは対照的に,他の研究の暫定結果では,中等症COVID-19患者は,Dダイマー濃度にかかわらず,ヘパリンによる院内治療的抗凝固療法が有益であることが示唆されている28).しかし,これらの結果はピアレビュー誌に掲載されていない暫定的なものであり,報告された時点では血栓や出血のアウトカムが完全に判定されていないため,この戦略のリスクとベネフィットのバランスの評価は確かではない.無作為化試験が完了し,発表された1つの試験では,中間用量の抗凝固療法の戦略は,予防的抗凝固療法よりも優れていなかったが,この有益性の欠如が,治療的抗凝固療法よりも低い用量だったことで説明できるかどうかは,依然として不明である29).我々の研究では,リバーロキサバンを用いた治療的抗凝固療法は,臨床転帰を改善せず,出血を増加させた.ACTION試験における臨床的に安定した患者と他の研究の暫定報告との間で結果が異なったのは,各試験で使用された抗凝固薬の種類によって説明できるかもしれない.とはいえ,抗凝固療法による血栓イベントの発生率と出血の増加率が同様であることは,臨床現場の医師にとって重要な知見であり,COVID-19患者を治療する際の意思決定に役立つかもしれない.ACTION試験において,過去の試験のヘパリンおよびその誘導体と比較してリバーロキサバンの効果が認められなかった理由として最も考えられるのは,直接的かつ選択的な第Xa因子阻害薬であるリバーロキサバンが,ヘパリンが持つ可能性のある多面的効果を共有していないことである.複数の凝固プロテアーゼを阻害するヘパリンは,他にも抗炎症作用や抗ウイルス作用を持つ可能性があり,その中にはCOVID-19に特異的なものもあるかもしれない30).また,ACTION試験ではコルチコステロイドが多く使用されているため,リバーロキサバンの抗炎症作用が不足している可能性の影響を弱めているかもしれないが,これらの患者にとってヘパリンによる追加的な炎症抑制効果の可能性が完全になくなるわけではない.COVID-19における呼吸器系の悪化に寄与する肺微小血管血栓症は,主に第Xa因子阻害ではなく,主にトロンビン直接阻害またはアンチトロンビン活性化によって防ぐことができる可能性がある.さらに,治療用抗凝固薬の投与経路(経口投与と皮下投与)が研究間で異なっていたことも,結果の違いを少なくとも部分的には説明しているかもしれない.COVID-19入院患者は,経口抗凝固薬の吸収が正常ではなく,効果が不規則に変化する可能性があり,これも試験間で異なる結果の一因となる可能性がある.我々は,他のCOVID-19における治療用経口抗凝固薬の無作為化臨床試験が完了していることを知らない.その意味で,今回の結果は臨床現場にとって重要であり,COVID-19入院患者に対して,直接作用型第Xa因子阻害薬であるリバーロキサバンを治療用量で日常的に使用しても,ヘパリンを用いた従来の血栓予防と比較して,臨床的なメリットは得られないことを示唆している

ACTION試験には限界がある.非盲検デザインは,特に臨床イベントの確認に関して,バイアスのリスクがある.また,試験終了時の服薬状況は,対面での医療評価ではなく,電話で患者が行ったピルカウントで評価された.それにもかかわらず,主要な複合階層的アウトカムには,死亡,入院日数,補助酸素投与日数という客観的な情報しか含まれなかった.また,無症候性患者に対する虚血性イベントの定期的なスクリーニングは行われなかった.しかし,バイアスのリスクをさらに低減するために,標準的な定義を用いた副次アウトカムの盲検判定プロセスがあり,また,定期的な現場でのトレーニングとモニタリング,検査値,有害事象の報告,不明な死因,抗血栓療法の変更などに基づいた敏感なトリガー(sensitive triggers)を用いて,関連するイベントが見逃されないようにした.また,退院後に発生した臨床イベントについては,指標となる入院中に同じイベントが発生した場合と同様に,医療記録や臨床検査結果などの資料を収集し,中央での盲検判定のために処理した.また,本試験では,主要な抗凝固療法はリバーロキサバンであり,エノキサパリンによる抗凝固療法を受けていた患者は少数であり,無作為化時に臨床的に不安定だった患者のサブグループに含まれていた.したがって,外部妥当性(external validity)に関しては,本研究の結果は主に,症状発現から14日以内にCOVID-19が確認され,Dダイマー濃度が上昇し,治療的抗凝固療法の臨床適応がない,臨床的に安定した入院患者に対するリバーロキサバンの使用に適用される.重篤患者を対象とした試験は以前にも報告されており27)29)COVID-19外来患者を対象とした抗凝固療法の研究も進行中である.

Conclusions

Dダイマー濃度が上昇したCOVID-19入院患者において,安定した患者にはリバーロキサバン,不安定な患者にはエノキサパリンを用いた導入院内治療的抗凝固療法を行い,その後リバーロキサバンを30日間投与しても,院内予防的抗凝固療法と比較して,臨床転帰は改善せず,出血も増加したしたがって,経口抗凝固療法のエビデンスに基づく臨床適応がないCOVID-19入院患者では,治療用量のリバーロキサバンやその他の直接経口抗凝固薬の使用は避けるべきである.現在進行中の臨床試験では,COVID-19患者における他の抗血栓療法レジメンの有効性と安全性が検討される.

 

References

1) Iba T Levy JH Connors JM et al.

Coagulopathy of coronavirus disease 2019.

Crit Care Med. 2020; 48: 1358-1364

2) Ackermann M Verleden SE Kuehnel M et al.

Pulmonary vascular endothelialitis, thrombosis, and angiogenesis in COVID-19.

N Engl J Med. 2020; 383: 120-128

3) Gungor B Atici A Baycan OF et al.

Elevated D-dimer levels on admission are associated with severity and increased risk of mortality in COVID-19: a systematic review and meta-analysis.

Am J Emerg Med. 2021; 39: 173-179

4) Jiménez D García-Sanchez A Rali P et al.

Incidence of VTE and bleeding among hospitalized patients with coronavirus disease 2019: a systematic review and meta-analysis.

Chest. 2021; 159: 1182-1196

5) Roberts LN Whyte MB Georgiou L et al.

Postdischarge venous thromboembolism following hospital admission with COVID-19.

Blood. 2020; 136: 1347-1350

6) Al-Samkari H Karp Leaf RS Dzik WH et al.

COVID-19 and coagulation: bleeding and thrombotic manifestations of SARS-CoV-2 infection.

Blood. 2020; 136: 489-500

7) Moores LK Tritschler T Brosnahan S et al.

Prevention, diagnosis, and treatment of VTE in patients with coronavirus disease 2019: CHEST Guideline and Expert Panel Report.

Chest. 2020; 158: 1143-1163

8) Cuker A Tseng EK Nieuwlaat R et al.

American Society of Hematology 2021 guidelines on the use of anticoagulation for thromboprophylaxis in patients with COVID-19.

Blood Adv. 2021; 5: 872-888

9) Spyropoulos AC Levy JH Ageno W et al.

Scientific and Standardization Committee communication: clinical guidance on the diagnosis, prevention, and treatment of venous thromboembolism in hospitalized patients with COVID-19.

J Thromb Haemost. 2020; 18: 1859-1865

10) Nadkarni GN Lala A Bagiella E et al.

Anticoagulation, bleeding, mortality, and pathology in hospitalized patients with COVID-19.

J Am Coll Cardiol. 2020; 76: 1815-1826

11) Frydman GH Streiff MB Connors JM Piazza G

The potential role of coagulation factor Xa in the pathophysiology of COVID-19: a role for anticoagulants as multimodal therapeutic agents.

TH Open. 2020; 4: e288-e299

12) Spyropoulos AC Ageno W Albers GW et al.

Rivaroxaban for thromboprophylaxis after hospitalization for medical illness.

N Engl J Med. 2018; 379: 1118-1127

13) Spyropoulos AC Ageno W Albers GW et al.

Post-discharge prophylaxis with rivaroxaban reduces fatal and major thromboembolic events in medically ill patients.

J Am Coll Cardiol. 2020; 75: 3140-3147

14) Lopes RD de Barros e Silva PGM Furtado RHM et al.

Randomized clinical trial to evaluate a routine full anticoagulation strategy in patients with coronavirus infection (SARS-CoV-2) admitted to hospital: rationale and design of the ACTION (AntiCoagulaTlon cOroNavirus)–Coalition IV trial.

Am Heart J. 2021; (published online April 20.)

https://doi.org/10.1016/j.ahj.2021.04.005

15) Kaatz S Ahmad D Spyropoulos AC Schulman S

Definition of clinically relevant non-major bleeding in studies of anticoagulants in atrial fibrillation and venous thromboembolic disease in non-surgical patients: communication from the SSC of the ISTH.

J Thromb Haemost. 2015; 13: 2119-2126

16) Mehran R Rao SV Bhatt DL et al.

Standardized bleeding definitions for cardiovascular clinical trials: a consensus report from the Bleeding Academic Research Consortium.

Circulation. 2011; 123: 2736-2747

17) WHO

COVID-19 therapeutic trial synopsis.

https://www.who.int/publications/i/item/covid-19-therapeutic-trial-synopsis

Date: Feb 18, 2020

Date accessed: February 17, 2021

18) US Centers for Disease Control and Prevention

Interim clinical guidance for management of patients with confirmed coronavirus disease (COVID-19).

https://www.cdc.gov/coronavirus/2019-ncov/hcp/clinical-guidance-management-patients.html

Date: Feb 16, 2021

Date accessed: April 1, 2021

19) Pocock SJ Ariti CA Collier TJ Wang D

The win ratio: a new approach to the analysis of composite endpoints in clinical trials based on clinical priorities.

Eur Heart J. 2012; 33: 176-182

20) Dong G Qiu J Wang D Vandemeulebroecke M

The stratified win ratio.

J Biopharm Stat. 2018; 28: 778-796

21) Cavalcanti AB Zampieri FG Rosa RG et al.

Hydroxychloroquine with or without azithromycin in mild-to-moderate COVID-19.

N Engl J Med. 2020; 383: 2041-2052

22) Fanaroff AC Califf RM Harrington RA et al.

Randomized trials versus common sense and clinical observation: JACC review topic of the week.

J Am Coll Cardiol. 2020; 76: 580-589

23) Lopes RD Fanaroff AC

Anticoagulation in COVID-19: it is time for high-quality evidence.

J Am Coll Cardiol. 2020; 76: 1827-1829

24) Patel MR Mahaffey KW Garg J et al.

Rivaroxaban versus warfarin in nonvalvular atrial fibrillation.

N Engl J Med. 2011; 365: 883-891

25) Eikelboom JW Connolly SJ Bosch J et al.

Rivaroxaban with or without aspirin in stable cardiovascular disease.

N Engl J Med. 2017; 377: 1319-1330

26) Guimarães HP Lopes RD de Barros E Silva PGM et al.

Rivaroxaban in patients with atrial fibrillation and a bioprosthetic mitral valve.

N Engl J Med. 2020; 383: 2117-2126

27) National Institutes of Health

NIH ACTIV trial of blood thinners pauses enrollment of critically ill COVID-19 patients.

https://www.nih.gov/news-events/news-releases/nih-activ-trial-blood-thinners-pauses-enrollment-critically-ill-covid-19-patients

Date: Dec 22, 2020

Date accessed: April 1, 2021

28) National Heart, Lung, and Blood Institute

Full-dose blood thinners decreased need for life support and improved outcome in hospitalized COVID-19 patients.

https://www.nhlbi.nih.gov/news/2021/full-dose-blood-thinners-decreased-need-life-support-and-improved-outcome-hospitalized

Date: Jan 22, 2021

Date accessed: April 1, 2021

29) INSPIRATION Investigators

Effect of intermediate-dose vs standard-dose prophylactic anticoagulation on thrombotic events, extracorporeal membrane oxygenation treatment, or mortality among patients with COVID-19 admitted to the intensive care unit: the INSPIRATION randomized clinical trial.

JAMA. 2021; 325: 1620-1630

30) Buijsers B Yanginlar C Maciej-Hulme ML de Mast Q van der Vlag J

Beneficial non-anticoagulant mechanisms underlying heparin treatment of COVID-19 patients.

EBioMedicine. 2020; 59102969

 

Supplementary applendix