COVID-19関連追加(2021617-2)変異株とワクチンその10

【スコットランドにおけるSARS-CoV-2デルタVOC: 人口統計,入院リスク,

およびワクチン有効性】

Sheikh A, et al. on behalf of Public Health Scotland and the EAVEUCollaborators. SARS-CoV-2 Delta VOC in Scotland: demographics, risk of hospital admission, and vaccine effectiveness. Lancet. June 14, 2021.

https://doi.org/10.1016/S0140-6736(21)01358-1.

2021519日,スコットランドでSARS-CoV-2優性株となったのは,デルタVOC(旧称インドVOCあるいはB 1.617.2)であった.以前はアルファVOC(旧称ケントVOCB.1.1.7あるいはS遺伝子陰性)が優勢株であったが,急速に入れ替わっている(appendix p1).

サンプルは,SARS-CoV-23つの標的遺伝子の存在を検査するThermoFisher's TaqPath RT-PCRを用いて解析した.S遺伝子陰性サンプルは,B.1.1.7(アルファVOC)のS遺伝子の69-70位に欠失があり,OR遺伝子とN遺伝子の少なくとも1つのcycle theresholdCt)値が30未満であった.S遺伝子陽性サンプルは,S遺伝子のCt値が30未満で、他の2つの遺伝子のCt値が有効であった.一方,弱いS遺伝子陽性サンプルは,S遺伝子のCt値が30以下だった.スコットランドのシーケンスデータによると,データが入手できる最新の日付である202141日〜528日までの間にシーケンスされたS遺伝子陽性例の97%がデルタバリアントであり,デルタバリアントの99%S遺伝子陽性であった

EAVE IIは,スコットランド全域を対象としたCOVID-19サーベイランスプラットフォームであり,COVID-19の疫学の追跡と予測,リスク層別化の情報提供,ワクチン有効性と安全性の調査に使用されている.

我々は,EAVE IIプラットフォームを使用してコホート解析を行い,COVID-19患者の人口統計プロファイル,COVID-19による入院リスクを調査し,S遺伝子陽性例のCOVID-19による入院の予防におけるワクチン有効性を推定した.我々はまた,SARS-CoV-2感染のリスクに対するワクチン有効性を推定するために,テストネガティブデザインを採用した5).この解析は,調査期間中にSARS-CoV-2PCR検査を受けたすべての人を対象とし,人口統計的および時間的共変量を調整した上で,スワブ検査時にワクチンを接種した人と,検査時にワクチンを接種しなかった人の陽性率を比較した.

COVID-19による入院とは,SARS-CoV-2陽性反応が出てから14日以内と定義した3)5).入院後2日以内に陽性反応が出た人も対象とした.入院3日目以降に陽性反応が出た人は除外した.院内感染のCOVID-19は除外した.

今回の解析では,症例の人口分布について,202141日〜66日までの期間を対象とした.202141日までに,スコットランドの人口の44.7%COVID-19ワクチンの1回接種を受け,7.6%2回接種を受けた.65歳以上の高齢者では,それぞれ91.2%15.9%であった.研究期間終了時(すなわち202166日)には,59.4%1回接種,39.4%2回接種を受けた; 65歳以上の高齢者ではそれぞれ91.7%88.8%であった.年齢,貧困(deprivation),ワクチンの種類による初回接種率の分布をappendixp1-2)に示した.

 

 

 

 

対象期間中に確認されたSARS-CoV-2感染者は19,543人で,そのうちCOVID-19で入院したのは377人であった; 感染者のうち7723人(39.5%)および入院患者134人(35.5%)は,S遺伝子陽性例であった(appendix p3

S遺伝子陽性例はすべての年齢層で発生しており,S遺伝子陰性例に比べて,59歳のS遺伝子陽性例の割合が高かった(appendix p2S遺伝子陽性例のわずかに逆の貧困格差(a slight inverse deprivation gradient with S gene-positive cases )が社会経済的に最も裕福な5分位に偏って認められた.ほとんどの症例(70%)には,基礎疾患としての合併症はなかった.S遺伝子陽性例の70%COVID-19ワクチン接種を受けていなかった(一方,S遺伝子陰性例の75%はワクチン接種を受けていなかった)

年齢,性別,貧困,時間的傾向,併存疾患を調整した上で,入院までの期間についてCox回帰解析を行ったところ,S遺伝子陰性例と比較して,S遺伝子陽性例はCOVID-19入院リスクが高いことがわかった: ハザード比(HR1.8595%CI 1.39-2.47COVID-19に関連する併存疾患(COVID-19 relevant comorbidities)の数が多いほど,COVID-19入院リスクが高まった(appendix p3).

 

 

 

 

全体として,強いワクチン有効性は,初回接種後少なくとも28日経過するまで明確に現れなかった(HR 0.32, 95%CI 0.22-0.46; appendix p3S 遺伝子陰性例では,ワクチン接種の効果(1回目または2回目の接種後少なくとも28日)は,ワクチン未接種と比較して入院リスクを減少させた(HR 0.28, 95%CI 0.18-0.43S遺伝子陽性例の入院リスクに対応するハザード比は0.3895%CI 0.24-0.58)で,交互作用のp値は0.19であることから,初めて陽性と判定された人における入院においては,ワクチン有効性に差があるという証拠はないと考えられる(appendix p4

病院症例だけではなく,集団コホート全体を考慮して,RT-PCRで確認されたSARS-CoV-2感染を予防するワクチン有効性を推定するテストネガティブ解析を行ったところ,ワクチンを接種していない人と比較して,2回目接種から少なくとも14日後では,BNT162b2PfizerBioNTechワクチン)は非常に優れた予防効果を示した: S遺伝子陰性例で92%95%CI 90-93S遺伝子陽性例で79%75-82であった.一方,ChAdOx1 nCoV-19OxfordAstraZenecaワクチン)による予防は,かなり高いものの,低下していた: S遺伝子陰性例で73%95%CI 66-78S遺伝子陽性例では60%53-66であった(appendix P6.これらの推定値は,年齢,スワブ採取時の時間的傾向,スプライン(spline)を用いた過去の検査回数に加えて,性別および貧困で調整した一般化加法ロジスティックモデルから得られた.ワクチン接種量における傾向とデルタ変異株の増加に対する傾向が存在したため,一般的な傾向による時間的調整では,これらの変化を十分に説明できない可能性がある.また,ワクチンを比較するための正式な有意差検定は行っていない.PfizerBioNTechワクチンでは,解析対象を検査時に症状を報告した人に限定すると,2回目接種後少なくとも14日間のワクチン有効性に同様の変化が見られたが,サンプルサイズの減少に伴い信頼区間が広くなった.OxfordAstraZenecaワクチンでは,S 遺伝子陰性のワクチン有効性が高いほど変化が大きくなった(appendix p7).これらの結果は,Public Health Englandが発表したデルタVOCのワクチン有効性6)と一致している.

 

 

要約すると,スコットランドにおけるデルタVOCは,主に若くて裕福なグループに見られることがわかったCOVID-19入院リスクは,デルタVOCはアルファVOCに比べて約2であり,特に5つ以上の関連する併存疾患があると入院リスクが増加したOxfordAstraZenecaワクチンとPfizerBioNTechワクチンは,デルタVOCSARS-CoV-2感染とCOVID-19入院リスクを低減するのに有効であったが,感染に対するこれらの効果は,アルファVOCと比較して低下しているようであった.この点についてワクチン間で比較するには,我々の検討における入院数が不十分であった.デルタVOCにおけるSARS-CoV-2感染予防効果は,OxfordAstraZenecaワクチンは,PfizerBioNTechワクチンよりも低いようであった.これらのデータの観察的性質を考慮すると,ワクチン有効性の推定は慎重に解釈する必要がある(Given the observational nature of these data, estimates of vaccine effectiveness need to be interpreted with caution.).

 

References

1) Simpson CR Robertson C Vasileiou E et al.

Early Pandemic Evaluation and Enhanced Surveillance of COVID-19 (EAVE II): protocol for an observational study using linked Scottish national data.

BMJ Open. 2020; 10e039097

2) Mulholland RH Vasileiou E Simpson CR et al.

Cohort profile: early pandemic evaluation and enhanced surveillance of COVID-19 (EAVE II) database.

Int J Epidemiol. 2021; (published online April 16.)

https://doi.org/10.1093/ije/dyab028

3) Vasileiou E Simpson CR Shi T et al.

Interim findings from first-dose mass COVID-19 vaccination roll-out and COVID-19 hospital admissions in Scotland: a national prospective cohort study.

Lancet. 2021; 397: 1646-1657

4) Simpson CR Shi T Vasileiou E et al.

First dose ChAdOx1 and BNT162b2 COVID-19 vaccines and thrombocytopenic, thromboembolic and haemorrhagic events in Scotland.

Nat Med. 2021; (published online June 9.)

https://doi.org/10.1038/s41591-021-01408-4

5) Lopez Bernal J Andrews N Gower C et al.

Effectiveness of the Pfizer-BioNTech and Oxford-AstraZeneca vaccines on covid-19 related symptoms, hospital admissions, and mortality in older adults in England: test negative case-control study.

BMJ. 2021; 373n1088

6) Bernal JL Andrews N Gower C et al.

Effectiveness of COVID-19 vaccines against the B.1.617.2 variant.

KHub. 2021; (published online May 24.) (preprint).

https://doi.org/10.1101/2021.05.22.21257658