COVID-19関連追加(2021623日)オリパラに関してCOVID-19と熱中症

【東京におけるCOVID-19と熱中症:

 2020年夏季オリンピック・パラリンピック東京大会に関して】

Shimizu K, et al. COVID-19 and Heat Illness in Tokyo, Japan: Implications for the Summer Olympic and Paralympic Games in 2021.

International Journal of Environmental Research and Public Health. Mar 31, 2021.

https://doi.org/10.3390/ijerph18073620.

Abstract

2020年夏季オリンピック・パラリンピック東京大会は,COVID-19のパンデミックにより,202179月に延期された.COVID-19は大勢が集まるイベントの記念碑的な健康上の脅威として浮上しているが,熱中症は医療サービスを維持する上で大きな健康上の脅威になりうることを認識しなければならない.我々は,20203月〜9月までの東京において,COVID-19入院患者数と救急医療の東京ルール(the Tokyo rule for emergency medical care)を検討し,そして夏季(2016年〜2020年)の東京における熱中症による週ごとの救急搬送数と日ごとの最高湿球黒球温度(WBGT: Wet Bulb Globe Temperature)の週平均を調査した熱中症による救急搬送のピークは,2020年のCOVID-19再増加(resurgence)と重なり,熱中症患者とWBGTの増加が確認されている.パンデミック時の大規模集客イベントの意思決定には,確固たる科学を尊重することが重要であり,COVID-19に対する科学的根拠に基づく対策や実施が必要となる.早急な再考と十分な対策がなければ,東京におけるCOVID-19と熱中症の二重の負担が医療提供体制を圧迫し,2021年夏季オリンピック・パラリンピック競技大会の期間中,必要不可欠な医療サービスを維持することが困難になると考えられる.

 

湿球黒球温度(しっきゅうこっきゅうおんど、wet-bulb globe temperatureは,酷暑環境下での行動に伴うリスクの度合を判断するために用いられる指標である.1954年にアメリカ海兵隊新兵訓練所で熱中症のリスクを事前に判断するために開発された.日本の環境省では,暑さ指数(WBGT)と称している.人体の熱収支に影響の大きい気温,湿度,日射量,輻射熱,風速を反映しており,湿球温度 (Tw),黒球温度 (Tg),乾球温度 (Td)の値を使って計算する.

軍隊のほか,高温となる労働環境や運動環境等での熱中症を予防するために国際的に利用されており,ISO 7243JIS Z 8504などとして規格化されている.日本の気象庁と環境省は,2020年からWBGT33 ℃以上になると予報された場合に熱中症警戒アラートを発表している(ただし,2020年は関東甲信地方のみ).(wikiより)

東京都福祉保健局HPより: 救急医療の東京ルール: 救急医療機関や救急車の不足,夜間対応病院の混雑など,救急医療の現場には,さまざまな問題が生じています.たとえば,東京では年間約69万人が救急搬送されており,その多くは速やかに運ばれています.その一方で,受入先の医療機関がスムーズに決まらず,搬送困難になる事例も約6600件程度発生しています.あなたの家族,そしてあなた自身の「もしも」のときに,救急医療の現場が混雑していたら….こうした問題に対し,都民の皆様のより大きな安心を実現するための取組として,東京都では,次の3つを「救急医療の東京ルール」として定め,推進しています.〜

 

Results

Figure 1は,20203月〜9月の東京におけるCOVID-19入院患者数(左軸)と,救急医療の東京ルールによる影響を受けた人数(右軸)を示している.COVID-19パンデミックの初期段階では,COVID-19入院者数は3月中旬以前には100人未満だったのが,5月上旬には最大で2974人と劇的に増加した.COVID-19入院患者数が急増する前は,東京ルールによる搬送数は1日あたり2040人であったが,4月上旬になって急速に増加を始めた.412日には,1日あたりの東京ルールによる搬送数が初めて100件を超え,5月上旬にピークを迎えた.COVID-19入院数の減少傾向に伴い,1日あたりの東京ルールによる搬送数も減少に転じ,6月中旬にはついに20件を切った.日本が,20207月からのCOVID-19再増加に直面すると,COVID-19入院数は8月に再び1600人を超えるまでに増加した.この間,東京ルールによる搬送数は,8月上旬から中旬にかけて徐々に増加し,811日(第33週)に93件,816日(第34週)に101件と急激に増加しており,熱中症による入院患者が増加した時期に一致している.

 

 

Figure 1: Number of coronavirus disease 2019 (COVID-19) admissions and Tokyo rule for emergency medical care in March–September 2020. Yellow bars illustrate the number of COVID-19 admissions, and the blue line presents the trend in the Tokyo rule for emergency medical care. Please note that the number of COVID-19 admissions before 11 May included patients isolated at designated accommodations or home, and the number of hospitalized COVID-19 patients before 5 March was not published on the dashboard [11].

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熱中症による救急搬送数を年度別,年齢層別に集計したものをTable 1にまとめた.調査期間中の救急搬送の累計件数は,2016年の1789件から2018年の6269件へと増加し,その後2020年の4862件へと減少している.65歳以上の熱中症搬送の割合は増加傾向にあり,2019年と2020年には65歳以上が搬送全体の半数以上を占めている.入院が必要となった患者の割合,すなわち全搬送のうち中等症,重症,死亡例の累積割合は,2016年の38.1%から2019年に42.0%2020年に42.7%と変化し,2019年以降は重症,死亡例が全搬送の5%前後を占めるようになっている.

Table 1:

 

 

Figure 2は,20162020年の東京における熱中症による救急搬送数(左軸)と日ごとの最大WBGTの週平均(右軸)を,週と状況別に示したものである.週ごとの熱中症による救急搬送数は,2016年〜2017年は500件未満に抑えられていたが,2018716日〜22日(第29週),2019729日〜84日(第31週),2020810日〜16日(第33週)は1500件を超えて増加した.救急搬送が過密になったのは,最近の3年間では,2018716日〜812日(第2932週),2019729日〜818日(第3133週),202083日〜30日(第3235週)の約34週間であった.周囲の状況については,日ごとの最大WBGTの週平均が31℃を初めて超えたのは,2018年の716日〜22日(第29週)と730日〜85日(第31週)であった.その後,2019729日〜818日(第3133週),202083日〜30日(第3235週)に31℃を超えて上昇し,2020810日〜16日に最大33.5℃に達した.

Figure 2: Number of emergency transportations due to heat illness by disposition and weekly averages of daily maximum Wet Bulb Globe Temperature (WBGT) in Tokyo in 2016–2020. Yellow indicates the number of heat illness patients requiring admission, or confirmed dead, while green shows mild cases of patients who did not need admissions. The red line shows the trend in the weekly averages of daily maximum WBGT. Gray-shaded areas represent the variation of daily maximum WBGT in each week.

References

11) Tokyo Metropolitan Government. COVID-19: The Information Website. Available online: https://stopcovid19.metro.tokyo.lg.jp/en/ (accessed on 12 October 2020).