COVID-19関連追加(2021626日)

mRNAワクチンについてその18mRNAワクチン接種者血漿のワクチン抗原)

mRNA-1273ワクチン接種者の血漿中に検出された循環SARS-CoV-2ワクチン抗原】

Ogata AF, et al. Circulating SARS-CoV-2 Vaccine Antigen Detected in the Plasma of mRNA-1273 Vaccine Recipients. Clinical Infectious Diseases, ciab465. May 20, 2021.

https://doi.org/10.1093/cid/ciab465.

Abstract

mRNA-1273ワクチンを2回接種した13人の参加者から採取した縦断的な血漿サンプルにおいて,SARS-CoV-2タンパク質を測定した.13人のうち11人は,初回ワクチン接種後1日目にして,検出可能なレベルのSARS-CoV-2タンパク質を示した検出可能なSARS-CoV-2タンパク質クリアランスは,IgGおよびIgA産生と相関していた

Main

INTRODUCTION

COVID-19に対するメッセンジャーRNAmRNA)ワクチンは,米国で広く展開されており,感染および重篤疾患に対する防御を誘導する効果が高い1)202012月,米国食品医薬品局は,100μg28日間隔で2回接種するmRNA-1273ワクチン(ModernaTX, Inc)に対して緊急使用許可(EUA)を承認した.mRNA-1273は,SARS-CoV-2スパイク抗原(膜貫通型アンカーとS1-S2開裂部位を持つ)をエンコードする2)mRNA-1273ワクチン接種者において,スパイクタンパク質に対する結合抗体および中和抗体が誘発されたというデータがあり,それゆえスパイクタンパク質が産生され,免疫応答が誘発されたと推測されている2)-5)しかし,これらの研究では,mRNA-1273ワクチンから翻訳(translation)によってスパイクタンパク質が直接産生されたことを示す重要なデータが得られておらず,ワクチンのメカニズムを完全に理解することはできない

今回我々は,mRNA-1273ワクチンを接種した参加者の血漿中に,循環しているSARS-CoV-2タンパク質が存在することを示す証拠を得た.Brigham and Women's Hospitalの医療従事者13人におけるmRNA-1273ワクチンの抗原および血清データを報告する.SARS-CoV-2抗原スパイク(S1-S2ユニット),S1,ヌクレオカプシド,およびSARS-CoV-2スパイク,S1,受容体結合ドメイン(RBD),ヌクレオカプシドに対する抗体IgGIgAIgMの検出には,既述6)7)の超高感度single-molecule arraySimoaassaysを用いた.Simoa assaysは検出限界が非常に低いため,ワクチン接種後の初期段階で抗原や抗体の産生を検出することができ,2回ワクチン接種によるレベルの変化を定量化することができる.

MATERIALS AND METHODS

202012月〜20213月にかけて,Brigham and Women's Hospitalにおいて,SARS-CoV-2感染歴のない18歳以上の医療従事者13人を対象に前向きパイロット試験を実施した.試験デザインの詳細はSupplementary Materialsを参照.SARS-CoV-2抗原と抗体は,Supplementary MaterialsMethods, Figure S1, Table S2, S4)に記載されているように,single-molecule array assaysを用いて測定した.

RESULTS

1回目接種から129日後,2回目接種から128日後の1013 timepointsにおいて,13人の参加者から血漿を採取した.性別のバランスは均等で,年齢の中央値は24歳,さまざまな人種や民族の参加者が含まれていた(Supplemental Table S1).COVID-19感染歴を報告した参加者はいなかった.

SARS-CoV-2抗原および抗体の時間的プロファイリングは,以前より報告されているSimoa assaysを用いて行い6)7),各参加者の抗原産生と免疫応答をモニターするための15のマーカーに関するデータを得た(Supplemental Figure S2 to S14).スパイク,S1,ヌクレオカプシドのSimoa antigen assaysは,パンデミック前の健常者,パンデミック前の呼吸器感染症患者,COVID-19陰性患者,COVID-19陽性患者の血漿で検証されている7).その中で著者らはCOVID-19陽性患者の64%からS1Nを検出し,そしてS1レベルは疾患重症度と有意に関連していた.ここで我々は,mRNA翻訳(mRNA translation)を調べるために,抗原S1スパイクを測定した(一方,ヌクレオカプシド抗原はネガティブコントロールとした)(Figure 1A, B, C, Supplemental Table S5RNA-1273ワクチンは,初回100μg接種後に,11人の参加者の血漿中に検出可能なレベルのS1抗原を産生し,13人のうち3人の血漿中にスパイク抗原が検出された.ヌクレオカプシド抗原は,予想通り,両方の接種後で,すべての参加者で検出されないか,バックグラウンドレベルであった

S1抗原は,ワクチン接種後1日目という早い段階で検出され,1回目接種から平均5日後にピークレベルが検出されたFigure 1AS1の平均ピークレベルは,68pg/mL±21pg/mLであった.すべての参加者のS1は減少し,14日目には検出されなくなった13人のうち12人は,予想通り,0日目には抗原は検出されなかった.しかしながら,1人は0日目にS1が検出されたが,可能性として他のヒトコロナウイルスとの交差反応によるものか,あるいはワクチン接種時に無症状で感染していたためと考えられる.スパイクタンパク質は,13人のうち3人において1回目接種から平均15日後に検出された.スパイクの平均ピークレベルは62pg/mL±13pg/mLであった.2回目ワクチン接種後,S1およびスパイクは検出されず,両抗原とも56日目まで検出されなかった1人(参加者#8)では,2回目接種から1日後の29日目にスパイクが検出され,そして2日後には検出されなくなった.

スパイク,S1RBD,ヌクレオカプシドに対する血漿抗体IgGIgAIgMを測定した.0日目に測定した抗体レベルは、COVID-19感染歴のない各参加者のベースラインレベルを表している.13人の参加者全員において,予想通り,スパイクとS1,そしてRBDに対するIgGレベルは1回目接種後に増加したが,ヌクレオカプシドに対するIgGは経時的に変化しなかったFigure 1D, E, F; 各参加者のデータはSupplemental Figures S2-S14に示す)IgAは早期の中和活性に関与しており,したがって,短命(short-lived)の可能性があるIgA応答8)を標的とすることは極めて重要である.Simoa assaysでは,1回目接種後にスパイク,S1RBDに対するIgAの増加が検出されたSupplemental Figure S2-S159人の参加者(参加者#3, #4, #5, #7, Figure 1G)は,初回接種から14日目までに,S1およびスパイクに対する測定可能なIgGレベルを示した4人の参加者(参加者#1, #6, #10, #13, Supplemental Figure S2, S7, S11, and S14)は,IgG-S1およびIgG-スパイク応答が遅延しており,1回目接種から28日目まで増加しなかったそれにもかかわらず,すべての参加者が2回目接種後にIgG-S1のさらなるブーストを示した

Figure 1: Time Course of SARS-CoV-2 Antigen and Antibody Levels after mRNA-1273 Vaccination. Data from 13 participants. All participants received the mRNA-1273 injection on days 1 and 28, where circle and triangle data points represent antigen levels post the first and second injections, respectively. (A) S1, (C) spike, and (C) nucleocapsid levels shown were measured using Simoa assays. The dotted line shows the sample limit of detection, calculated as described in the methods. IgG levels against (D) S1, (E) spike, and (F) nucleocapsid shown were measured using Simoa assays and reported in units of normalized Average Enzymes per Bead (AEB). Sample limit of detection in unit of AEB was 0.006 for IgG-S1, 0.0044 for IgG-spike, and 0.0129 for IgG-Nucleocapsid. (A-F) Bars represent the average concentration from participants on that day, and error bars represent the standard deviation, and individual data points are overlayed. Each data point is the average of duplicate measurements. (G) S1, spike, IgG-S1, and IgG-spike data for individual participants #3, #4, #5, and #7. Hollow and solid data points represent levels post the first and second injections, respectively. Each data point represents the average of duplicate measurements, and error bars are the standard deviation.

 

DISCUSSION

本研究では,11人の参加者が1回目接種後の血漿中にS1抗原を検出したが,ヌクレオカプシド濃度はすべての参加者で有意ではなく,検出されたS1は自然感染ではなくワクチン接種に由来することが確認されたS1の存在は,エンコードされたmRNA-1273スパイクタンパク質の性質によるものと考えられ,このスパイクタンパク質には,開裂可能なS1S2部位があり,スパイク三量体からS1を放出することができる2).我々は,S1タンパク質の放出は,mammalian cell proteasescirculating proteasesを介した開裂(cleavage)の結果起こると仮定した.S11日から5日の間に増加していることから,ワクチン接種直後からmRNA翻訳(mRNA translation)が始まっていると考えられる興味深いことに,S1が産生されてから平均8日後にスパイクタンパク質が13人のうち3人に出現しているようだ.完全スパイクタンパク質のSimoa antigen assaysは,検出のためにS1S2の両方のサブユニットに抗体が結合する必要があるように設計されており,その結果,開裂したスパイクタンパク質は検出されない.さらに,ワクチン接種を受けた参加者の血漿中のスパイクタンパク質濃度は,我々のアッセイの検出限界以下である可能性もある.我々は,ワクチン接種の数日後に起こるであろうT細胞活性化によって引き起こされる細胞性免疫応答が,スパイクタンパク質を提示している細胞を直接殺すことにつながり,そしてさらにスパイクが血流中に放出される9)という仮説を立てた.遊離S1が放出され,その後,intactなスパイクタンパク質が検出されるメカニズムはまだ不明であり,さらなる研究が必要である.

我々はさらに,抗原の結果を支持するための,大規模試験2)-5)10)-12)で行われた血清学的研究と一致する抗体データを提示する.ここでは,Simoa serological assaysは,ワクチン接種後の早い段階で抗体の産生を特定し,各参加者の抗体動態をプロファイリングするのに十分な感度を有している.S1,スパイク質,RBDに対するIgGおよびIgAは,すべての参加者においてS1産生後に増加したヌクレオカプシドに対するIgGおよびIgAの有意な増加は見られず,ヌクレオカプシドにとってのmRNAを含まないワクチンに特異的な免疫応答であることが確認された.すべての参加者において,S1およびスパイクに対するIgGの増加は,2回目接種によるS1またはスパイクタンパク質の減少に直接対応していた.抗体レベルと抗原レベルの間に見られた逆相関は,血漿中の抗原レベルが高い重症COVID-19患者は,抗体の産生に伴い抗原クリアランスを示したという,SARS-CoV-2自然感染を調査した過去の研究と一致している7).我々のSimoa antigen assaysでは,抗原-抗体免疫複合体(antigen-antibody immune complexes)は検出できない.S1タンパク質はほとんどの参加者に存在するが,血清データによると,一部の参加者は14日目までに抗体レベルの初期増強を示す一方で,28日目まで増強を示さない参加者もいる.このような抗体動態の違いは,過去の無症候性感染により早期に抗体が産生されたことで説明できる可能性があり,これは最近,血清反応陽性の参加者で実証されている10).ここで我々は,14日目までにIgGスパイクレベルが増加した他のすべての参加者と比較して,IgG-スパイクのベースラインレベルが高い2人の参加者(参加者#3, #4)を観察している.

今回の研究の限界は,サンプルサイズが小さいことと,健常若年成人を登録したことによるバイアスの可能性であり,これは一般人口を代表するものではないかもしれない.また今後の研究では,中和抗体と共に抗原産生動態を調べる必要がある.とはいえ,mRNA-1273ワクチンによるスパイクおよびS1タンパク質の産生が全身で検出されたという証拠は重要であり,これまでのワクチン研究では報告されていない.この発見の臨床的な関連性は不明であり,さらに検討されるべきである.これらのデータは,初回ワクチン接種後のS1抗原産生は1日目までに検出され,接種部位および関連する局所リンパ節を超えて存在することを示している.また,IgGおよびIgA免疫応答の誘発は,ワクチン接種後5日目という早い時期に検出され,スパイクおよびS1抗原の全身循環でのクリアランスに関連している.

 

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