COVID-19関連追加(2021630-3mRNAワクチンについてその21

(ワクチンと顔面神経麻痺,COVID-19とベル麻痺)

当院HP関連ファイル:

202153-2(顔面神経麻痺について)

【ワクチンと顔面神経麻痺について】

Shemer A, et al. Association of COVID-19 Vaccination and Facial Nerve Palsy

A Case-Control Study. JAMA Otolaryngol Head Neck Surg. Published online June 24, 2021.

https://doi.org/10.1001/jamaoto.2021.1259.

Abstract

Importance

末梢性顔面神経(ベル)麻痺は,BNT162b2Pfizer-BioNTech社)COVID-19ワクチンの可能性のある副作用として報告され,広く示唆されている.イスラエルは現在,国民一人当たりのワクチン接種率でトップの国であり,BNT162b2ワクチンのみを使用しており,イスラエルの全住民は国のデジタルヘルス登録システムのメンバーであることが義務付けられている.これらの要因により,有害事象の早期解析が可能となる.

Objective

BNT162b2ワクチンが急性発症の末梢性顔面神経麻痺のリスク増加と関連しているかどうかを調べる.

Design, Setting, and Participants

この症例対照研究は,202111日〜228日まで,イスラエル中央部にある三次紹介センターの救急部で行われた.顔面神経麻痺で入院した患者と,その他の理由で入院した対照患者を,年齢,性別,入院日でマッチさせた.

Exposures

最近BNT162b2ワクチン接種.

Main Outcomes and Measures

急性発症の末梢性顔面神経麻痺の患者における最近のBNT162b2ワクチンへの曝露に対する調整済みオッズ比.ベル麻痺患者がBNT162b2ワクチンに曝露された割合を群間で比較し,ワクチンへの曝露に関する未調整オッズ比(raw odds)と調整済みオッズ比を算出した.また、過去数年間の顔面神経麻痺患者の全体数との二次比較を行った.

Results

調査期間中に顔面神経麻痺で入院した患者は37人で,そのうち22人(59.5%)が男性で,平均年齢(SD)年は50.9歳(20.2)であった.最近ワクチンを接種した患者(21[56.7%])では,ワクチン接種から麻痺発生までの平均時間(SD)は,1回目接種から9.3日(4.2[range, 3-14]2回目接種から14.0日(12.6[range, 1-23]であった.年齢,性別,入院日が同一の74人のマッチドコントロール(2:1の比率)では,最近ワクチンを接種した者は44人(59.5%)と同程度であった.曝露の調整オッズ比は0.8495%CI, 0.37-1.90; P= 0.67)であった.さらに,先行する年の同時期(20152020年)の顔面神経麻痺の入院数を解析したところ,相対的に安定した傾向が見られた(平均値[SD], 26.8[5.8]; 中央値, 27.5 [range, 17-35]).

Table 1: Characteristics of Patients With New-Onset Peripheral Facial Nerve Palsy After Recent Vaccination With the BNT162b2 (Pfizer-BioNTech) Vaccine.

 

Table 2: Distribution of Vaccinated and Nonvaccinated Patients Among Cases With New-Onset Peripheral Facial Nerve Palsy and Matched Controls.

 

 

Table 3: Facial Nerve Palsy Cases in January and February 2021 and During the Same Period in the 6 Preceding Years.

 

Conclusions and Relevance

今回のケースコントロール解析では,最近のBNT162b2ワクチン接種と顔面神経麻痺リスクとの間に関連性は認められなかった

 

 

 

 

 

 

 

COVID-19とベル麻痺について】

(1)Tamaki A, et al. Incidence of Bell Palsy in Patients With COVID-19. JAMA Otolaryngol Head Neck Surg. Published online June 24, 2021.

https://doi.org/10.1001/jamaoto.2021.1266.

COVID-19患者は,ベル麻痺(BP)などの多くの耳鼻咽喉科疾患を呈することがある.ベル麻痺は,突然発症する片側の末梢性顔面神経麻痺である.COVID-19に関連した末梢性顔面神経麻痺については,いくつかの症例報告やシリーズがある1).また,米国食品医薬品局(FDA)がいくつかのCOVID-19ワクチンの緊急使用を承認して以来,ワクチン接種に関連したベル麻痺が報道されている2).このような懸念は,ワクチンの信頼性を損ない,COVID-19ワクチンをためらう人々の気持ちを悪化させる可能性がある.我々は,大規模な健康調査ネットワークデータを用いて,COVID-19患者 vs ワクチン接種を受けた人におけるBPの発生率を推定した.

Methods

データは,世界の41の医療機関から収集され,世界的な連合研究ネットワークであるTriNetXを介してアクセスされた.202147日にクエリ(データベースへの問い合わせ)を行い,COVID-19と診断された患者(202011日〜20201231日)のうち,COVID-19の診断から8週間以内にBPの診断コードがあった患者となかった患者を特定した.これらの患者のうち,BPの既往がある患者を特定した.ワクチン接種を考慮して,クエリは202111日〜2021331日までに限定した.TriNetXを用いてBPをアウトカムとして評価し,ワクチン接種していないCOVID-19患者63,551人を,COVID-19ワクチン接種を受け,COVID-19感染歴がない患者とマッチングした.

Results

本研究では,COVID-19患者348,088人が特定された.これらの患者のうち,284人(0.08%)が初回のCOVID-19診断から8週間以内にBPと診断された.これらの患者のうち153人(53.9%)はBPの既往がなく,131人(46.1%)はBPの既往があった(Figure).全体では,COVID-19診断を受ける前にBPの既往があった患者は1525人(0.44%)で,COVID-19診断から8週間以内のBP再発率は8.6%となった.COVID-19患者とワクチン接種者(n 63,551)をマッチングした結果,COVID-19患者はワクチン接種者と比較して,BPの診断を受ける相対リスクが6.895%CI= 3.5-13,206.0, P< 0.001)と増加していた

Figure: Participant Flow Chart.

 

Discussion

BPの年間発症率は人口100,000人あたり1530人である3)また,BP1回の発症がある人における再発率は8%と推定されている.麻痺のメカニズムは,ウイルス,虚血,および/または免疫介在性と考えられている.COVID-19BPを発症するメカニズムは,微生物抗原と神経抗原の間の神経免疫学的プロセスに起因する分子模倣(molecular)であると考えられている4)2つのCOVID-19ワクチンの第3相試験では,73,868人の被験者(36,930人がワクチンを接種)から8人のBPが報告された5)6)ワクチン接種群では7人が発症しており,100,000人あたり19人の発症率となるFDAは,COVID-19ワクチン接種とBPとの間の因果関係を判断するには十分な証拠がないとしている.この分野は継続的な監視が必要である.

今回の解析では,COVID-19患者においてBPの発生率が高いことがわかった(0.08%これは,COVID-19患者100,000 人あたり約82人に相当するCOVID-19診断時に過去にBPを発症した患者におけるBP再発率は8.6%であった今回の解析では,COVID-19患者のBPリスクは,COVID-19ワクチン接種を受けた患者と比較して,統計的に有意に高いことがわかったこのデータから,COVID-19患者ではBPの発生率が高くこの発生率はCOVID-19ワクチンを接種した人におけるBPの発生率の報告を上回っていることが示唆された

この研究はレトロスペクティブであることや分析期間が限られていることなどの限界がある.COVID-19COVID-19ワクチンのBPに対する関係を明らかにするには,さらなる長期的な解析が必要である.我々は,今回のResearch Letterを発展させて,より徹底した長期的な解析を行う予定である.

References

1) Goh  Y, Beh  DLL, Makmur  A, Somani  J, Chan  ACY.  Pearls & oy-sters: facial nerve palsy in COVID-19 infection.   Neurology. 2020;95(8):364-367.

2) Ozonoff  A, Nanishi  E, Levy  O.  Bells palsy and SARS-CoV-2 vaccines.   Lancet Infect Dis. 2021;21(4):450-452.

3) Tiemstra  JD, Khatkhate  N.  Bells palsy: diagnosis and management.   Am Fam Physician. 2007;76(7):997-1002.

4) Nepal  G, Rehrig  JH, Shrestha  GS,  et al.  Neurological manifestations of COVID-19: a systematic review.   Crit Care. 2020;24(1):421.

5) Polack  FP, Thomas  SJ, Kitchin  N,  et al; C4591001 Clinical Trial Group.  Safety and efficacy of the BNT162b2 mRNA COVID-19 vaccine.   N Engl J Med. 2020;383(27):2603-2615.

6) Baden  LR, El Sahly  HM, Essink  B,  et al; COVE Study Group.  Efficacy and safety of the mRNA-1273 SARS-CoV-2 vaccine.   N Engl J Med. 2021;384(5):403-416.