COVID-19関連追加(2021630日)mRNAワクチンについてその19

BNT162b2ワクチンにおける高齢者の接種間隔について】

Parry H, et al. Extended interval BNT162b2 vaccination enhances peak antibody generation in older people. medRxiv. Posted, May 17, 2021. Preprint.

https://doi.org/10.1101/2021.05.15.21257017.

Objectives

標準的なBNT162b2ワクチン接種,または延長した間隔でのBNT162b2ワクチン接種の相対的な免疫原性を評価する.

Methods

Design:

2回目ワクチン接種から2週間後の免疫応答を,標準的な2回目ワクチン接種者または間隔を延長した2回目ワクチン接種者において,適切な時期にマッチしたサンプルを用いて比較する集団ベースのコホート研究.

Setting:

プライマリーケアネットワーク,バーミンガム,英国202012月〜20214月.

Participants:

80歳以上の172人.全員がBNT162b2ワクチン(Pfizer/BioNTech社)を標準的な3週間の接種間隔,あるいは間隔を延長したスケジュールで接種した.

Main outcome measures:

ピークの定量的スパイク特異的抗体および細胞性免疫応答を測定.

Results

Standard-interval and extended-interval vaccination regimens elicit strong antibody responses but peak values are 3.5-fold higher with the extended-interval regimen:

80歳以上のドナーで,BNT162b2ワクチンを2回接種した人を対象に解析した.99人では2回の接種は3週間間隔で行われ,これを「標準間隔」と呼ぶ73人では,2回の接種を1112週間間隔をおいて行っており,これを「延長間隔」と呼ぶ

標準間隔ワクチン群と延長間隔ワクチン群のそれぞれにおいて,2つのタイムポイントで血液サンプルが採取された.標準間隔コホートでは,2回目ワクチン接種後23週で1回目のサンプルを採取し,ワクチンブーストに対する「ピーク応答」を同定した.2回目のサンプルは,2回目ワクチン接種から89週間後に採取し,この期間における抗体および細胞応答の安定性を評価した(n= 79).

延長間隔コホートでは,1回目ワクチン接種後56週目に血液サンプルを採取し(n= 68),その後89週目に再び血液サンプルを採取した.この2回目のタイミングは,2回目ワクチン接種後23週間後であり,延長間隔コホート(n= 55)の「ピーク応答」を表していた(Figure 1).

Figure 1: Infographic of vaccination protocol and blood collection timepoints.

 

最初の研究では,ヌクレオカプシド特異的抗体を検出することで,参加者のSARS-CoV-2自然感染歴との関係を調べた.この抗体は,標準間隔ワクチンレジメンでは10人,延長間隔ワクチンレジメンでは5人のドナーに見られた.過去の感染はワクチン接種に対する免疫応答に大きな影響を与えるため,これらのドナーは主要解析から除外した.

 

標準間隔コホートでは,1回目と2回目の両方のタイムポイントで,スパイク特異的抗体が参加者の100%において検出された(それぞれn= 86, n= 79).延長間隔コホートでは,1回目ワクチン接種後56週の1回目のタイムポイントで参加者の91%62/68)が抗体を検出したが,ブーストワクチン接種後23週には100%になった.

我々は次に,両コホートにおける2つのタイムポイントにおける抗体応答の大きさを評価した.標準間隔群の抗体価は,2回目接種後に1138U/mlでピークに達し,その後の数週間で2.6倍に低下した(p< 0.0001)(Figure 2A延長間隔コホートでは,抗体価の中央値は1回目ワクチン接種後56週では17U/mlでしたが,2回目のブースト後には242倍の大幅な増加を示し,4030U/mlに達した(p< 0.0001)(Figure 2B.標準間隔と延長間隔コホートにおける抗体応答動態をFigure 2Cにグラフで示した.

2回目ワクチン接種後の抗体応答のピーク値を両コホートで比較すると,延長間隔群では4030U/mlであり,標準間隔群の1138U/mlに比べて3.5倍も高いことが明らかになったp=< 0.0001; Figure 2D

 

 

Figure 2: Extended-interval vaccination with BNT162b2 stimulates stronger peak spike-specific antibody responses.

 

Peak cellular responses are higher in donors within the standard-interval vaccine regimen:

次に,インターフェロン-γ(IFN-γ)ELISPOT解析を用いて,2つのコホートにおけるワクチン接種後のスパイク特異的T細胞応答を測定した.S1およびS2スパイクドメインからの2つのペプチドプールに対する細胞応答を,一晩の刺激(overnight stimulation)で測定した.両ウェルの値を集計し,スパイク特異的応答反応の合計値を算出した.

標準間隔コホートでは,2回目ワクチン接種後23週でドナーの60%53/89)において細胞応答が確認されたが,89週後にはドナーの15%12/79)にまで低下していた延長間隔コホートでは,1回目ワクチン接種後56週で細胞応答が確認されたのはドナーのわずか8%5/67)であったが,2回目ワクチン接種後23週目にはドナーの31%17/55)に上昇した(Figure 3C

標準間隔コホートにおけるスパイク特異的T細胞応答の大きさは,2回目ワクチン接種後23週で,72 spots/million PBMCでピークに達し,89週後に24 spots/million3倍に減少した(p< 0.0001)(Figure3A.一方,延長間隔コホートでは,1回目ワクチン接種後56週では8 spots/millionであり,2回目ワクチン接種後23週では20 spots/millionとその後2.5倍に増加した(p< 0.0001)(Figure 3B

2つのスケジュールにおける2回目ワクチン接種後の細胞応答のピーク中央値を比較すると,標準間隔で接種したドナーの方が高かった(72 vs 20 spots/million; p< 0.0001Figure 3D

細胞性免疫応答は,抗体産生を支え維持する上で重要な役割を果たしている.そこで我々は,標準間隔コホートにおいて,2回目ワクチン接種から2週間後の細胞性応答と,その後の89週間での抗体低下の程度との関係を評価した.その結果,S1およびS2特異的細胞応答(S1 and S2-specific cellular responses)と抗体価低下率との間に関連性は認められなかった(r= 0.01, p= 0.93

 

Figure 3: Standard interval vaccination with BNT162b stimulates a greater peak cellular response.

 

Discussion

間隔を延長したワクチン接種はいくつかの国で採用されており,良好な臨床効果を示している(4)本研究では,このアプローチにより,2回目のBNT162b2ワクチン接種後に,細胞応答のピーク値は低いものの,抗体応答のピーク値が向上することを示した

高齢者の2回目接種後の抗体ピーク値において,mRNAワクチンの接種間隔を延長した場合の影響については,これまで情報がなかった.興味深いことに,標準間隔接種に比べてピーク抗体価の中央値が3.5倍になることがわかった.かなりの割合のドナーで非常に高い抗体レベルが見られ,18,100U/mlまでの顕著な力価が得られた.これらの反応は,長期的な防御には心強いものであり,その後の数週間で大幅に減少することが予想されるものの,この高いベースラインが,より強固な長期的防御をもたらす可能性がある.

SARS-CoV-2の自然感染歴があると,ワクチン反応が強く促進され,標準間隔ワクチン群の10人のドナー(ヌクレオカプシド特異的抗体がみられた者)では,ピーク時の抗体応答の中央値が32,250U/mlに達していた注目すべきは,この値がその後の8週間で3.5倍に減少したことであり,これは感染していないコホートよりも減少率が大きいSupplementary Figure 1.このことから,感染していないドナーよりも抗体レベルが高い値でプラトーとなるかどうかを確認するためには,さらに長期的な追跡調査が必要である.自然感染歴のある延長間隔ワクチン分の5人のドナーのうち2人は2回目のタイムポイント時にサンプリングを行い,ピーク時の抗体応答は90,750U/mlであった.

 

 

Supplementary Figure 1: Dot plot to compare Spike-specific antibody responses by Roche platform in participants who were previously naturally exposed to SARS-CoV-2 and had obtained the BNT162b2 vaccine with a standard interval of 3 weeks apart (bleed time point 1 median 32250 U/ml: vs 9235 U/ml at bleed time point 2 median: p=0.002).

SARS-CoV-2に対する臨床的防御における細胞性免疫の重要性は,現在のところ明らかになっていない.我々の発見は,2回目のワクチンを早期に投与することで,細胞性免疫応答をより高めることができることを示唆している標準間隔接種と延長間隔接種で,なぜ抗体応答と細胞応答が異なる反応を示すのかは不明であるmRNAワクチンは,胚中心(germinal centre)を形成し,特に強い抗体応答誘導をもたらすが(11, 12),細胞性免疫誘導についてはあまり知られていない(13)

いずれのコホートにおいても,T細胞応答の割合と大きさは,若いコホートでの報告よりもやや低く,免疫老化の影響を反映している可能性がある(14)T細胞応答は,IFN-γ分泌という標準的な評価で測定されているが,これは,他の炎症性サイトカインを産生するスパイク特異的T細胞の存在を除外するものではなく,mRNAワクチン接種後に優先的に誘導される可能性があることに留意する必要がある(15)特に,T濾胞ヘルパー細胞誘導は,しばしば抗体誘導と相関する実際,SARS-CoV-2ワクチン接種後の細胞性免疫の役割の一つは,抗体の生成と維持をサポートすることであると考えられるが,2回目ワクチン接種後の細胞性応答の大きさが,標準間隔コホートにおける抗体応答の減衰率と関連していることを示唆する証拠は見つからなかった

mRNAワクチン接種後,6ヶ月間は抗体レベルがしっかりと維持され,43日目以降は半減期が52日であることが示されている(16).このことが,この期間に延長された臨床効果を反映している可能性が高い(17).今回の結果から,2回のmRNAワクチン接種の臨床効果は,接種間隔を延長することでさらに向上するのではないかという疑問が生じた.アデノウイルスベースのChAdOx1ワクチンの接種間隔を延長した場合,スパイク特異的抗体応答が2.3倍に増加し,ワクチン有効性が向上することが示されていることは注目に値する(18).この方法の潜在的なデメリットは,2回目の接種前の部分的な防御期間が延びてしまうことである.しかし,疫学的なデータによると,1回のワクチン接種で症候性Covid-19感染に対する強力な臨床的防御が得られることが示されており,この点は大きな懸念とはならないかもしれない(4, 19)このように,ワクチン接種期間を延長することで,SARS-CoV-2特異的抗体の「ベースライン」レベルが高くなるのであれば,その後の再接種の必要性を最小限に抑えることができるという点で検討に値するかもしれない

Conclusions

高齢者において,BNT162b2ワクチンを延長した間隔で接種することで、抗体応答ピーク値が3.5倍に増加することを示した.これにより,液性免疫が長期的に維持され,この強力なワクチンプラットフォームの臨床効果がさらに向上すると考えられる.

 

References

4) Bernal JL, Andrews N, Gower C, Stowe J, Robertson C, Tessier E, et al. Early effectiveness of COVID-19 vaccination with BNT162b2 mRNA vaccine and ChAdOx1 adenovirus vector vaccine on symptomatic disease, hospitalisations and mortality in older adults in England. medRxiv. 2021:2021.03.01.21252652.

13) Corbett KS, Flynn B, Foulds KE, Francica JR, Boyoglu-Barnum S, Werner AP, et al. Evaluation of the mRNA-1273 Vaccine against SARS-CoV-2 in Nonhuman Primates. N Engl J Med. 2020;383(16):1544–55.

14) Maue AC, Yager EJ, Swain SL, Woodland DL, Blackman MA, Haynes L. T-cell immunosenescence: lessons learned from mouse models of aging. Trends in Immunology. 2009;30(7):301–5.

15) Anderson EJ, Rouphael NG, Widge AT, Jackson LA, Roberts PC, Makhene M, et al. Safety and Immunogenicity of SARS-CoV-2 mRNA-1273 Vaccine in Older Adults. N Engl J Med. 2020;383(25):2427–38.

16) Doria-Rose N, Suthar MS, Makowski M, O’Connell S, McDermott AB, Flach B, et al. Antibody Persistence through 6 Months after the Second Dose of mRNA-1273 Vaccine for Covid-19. N Engl J Med. 2021.

17) Pfizer and BioNTech Confirm High Efficacy and No Serious Safety Concerns Through Up to Six Months Following Second Dose in Updated Topline Analysis of Landmark COVID-19 Vaccine Study 2021 [Available from:

https://www.pfizer.com/news/press-release/press-release-detail/pfizer-and-biontech-confirm-high-efficacy-and-no-serious.

18) Voysey M, Clemens SAC, Madhi SA, Weckx LY, Folegatti PM, Aley PK, et al. Single-dose administration and the influence of the timing of the booster dose on immunogenicity and efficacy of ChAdOx1 nCoV-19 (AZD1222) vaccine: a pooled analysis of four randomised trials. Lancet. 2021;397(10277).

19) Hall VJ, Foulkes S, Saei A, Andrews N, Oguti B, Charlett A, et al. Effectiveness of BNT162b2 mRNA Vaccine Against Infection and COVID-19 Vaccine Coverage in Healthcare Workers in England, Multicentre Prospective Cohort Study (the SIREN Study). Preprints with THE LANCET. 2021.