新型コロナウイルス感染症まとめver3-2202177日)ADEについて

当院HP関連ファイル:

2021526日(増強抗体による非古典的ADE

202169日(重症デング疾患におけるADE

ADESARS-CoV-2ワクチンと治療】

Lee, W.S., Wheatley, A.K., Kent, S.J. et al. Antibody-dependent enhancement and SARS-CoV-2 vaccines and therapies. Nat Microbiol 5, 1185–1191 (2020).

https://doi.org/10.1038/s41564-020-00789-5.

Main

抗体ベースのワクチンや治療薬の潜在的なハードルとして,抗体依存性増強(ADE: antibody-dependent enhancement)によってCOVID-19重症度を悪化させるリスクがある.ADEは,RSウイルス9)10)や麻疹11)12)などの他の呼吸器ウイルスを含む,様々なウイルス感染症の重症度を高める可能性がある.呼吸器感染症におけるADEは,サイトカインカスケードや細胞介在性免疫病理(cell-mediated immunopathology)など,抗体を介さないメカニズムを含む、より広いカテゴリーである”呼吸器疾患増強(ERD: enhanced respiratory disease)に含まれる(Box 1.ウイルス複製の促進によって引き起こされるADEは,デングウイルス13)14)や猫伝染性腹膜炎ウイルス(FIPV: feline infectious peritonitis virus15)など,マクロファージに感染する他のウイルスでも観察されている.さらに,SARS-CoVMERS-CoVでは,in vitroおよびin vivoADEERDが報告されている.ADECOVID-19の免疫病理にどの程度寄与しているのか,活発に研究されている.

この展望では,SARS-CoV-2におけるADEのメカニズムの可能性を議論し,ワクチンや治療薬のリスク軽減のためのいくつかの原則を紹介する.また,COVID-19の病態におけるADEの関連性を明らかにするために,どのような種類の研究が考えられるかを紹介し,新たなデータがどのように臨床介入に影響を与えるかを検討する.

Box 1:

ERD:

ERDは,医療介入(特にワクチン)に伴う呼吸器ウイルス感染症の重篤な臨床症状を示す.自然感染でも同様の症状が現れることがあるため,前臨床試験や臨床試験では,介入群とプラセボ群の重症度の分布を比較することで,ERDが検出される.ERDは,FcR依存性抗体活性および補体活性化(すなわちADE)だけでなく,組織細胞死,サイトカインの放出,局所免疫細胞の活性化など,抗体に依存しない幅広い分子メカニズムと関連している可能性がある.

ADE:

ADEは,関与する分子メカニズムに基づいて2つの異なるタイプに大別される.

@増強された感染を介したADEADE via enhanced infection:

標的細胞への高い感染率は,Fc-FcR相互作用を介した抗体依存性様式で起こる.感染増強によるADEは,単球やマクロファージなどのFcγRIIa発現細胞への抗体依存性感染を検出するin vitroアッセイを用いて測定されるのが一般的である.しかし,in vitro ADE試験の結果と臨床的有用性との関連性は,直接観察されるというよりは,暗示されることが多い.デングウイルスは,感染の増強による臨床的ADEの最も優れた記録例である.

A増強された免疫活性を介したADE:

抗体依存性様式において,Fc介在性エフェクター機能および過剰な免疫複合体形成によって,疾患増強や免疫病理が引き起こされる.疾患増強に関連する抗体は,しばしば非中和抗体である.このタイプのADEは,通常,免疫病理や炎症マーカーを含む疾患の悪化を検出することによってin vivoで調べられており,呼吸器ウイルス感染症との関連が最も明確になっている.RSVや麻疹は,増強された免疫活性化を介したADEの例としてよく知られている.

 

ERDおよびADE(前述の第2のタイプ)は,重篤な疾患を引き起こす特定の分子メカニズムではなく,症状の有病率や疾患重症度などの臨床データによって特定されることが多い.免疫システムが異なる組織間に複雑なフィードバックループが存在するため,たとえADEERDを裏付ける臨床データが明確であっても,ヒトや動物を用いた研究でADEERDの分子メカニズムを決定的に解明することは(不可能ではないが)非常に困難である.ADEおよびERDの追跡には,多くの異なる測定法やアッセイが用いられており,それらは、特定のウイルス,前臨床および/または臨床プロトコル,採取された生物学的サンプル,使用されたin vitro技術に基づいて変化する可能性がある.

 

呼吸器系ADEは,ERDの特定のサブセットである.

 

Mechanisms of ADE:

ADEは,ウイルス感染症において2つの異なるメカニズムで起こることが報告されている: すなわち,Fcγ受容体IIaFcγRIIa)発現食細胞への抗体介在性ウイルス取り込みの促進によって,ウイルス感染および複製が増加する場合と,過剰な抗体Fc介在性エフェクター機能あるいは免疫複合体形成によって,炎症や免疫病理が促進される場合である(Figure 1, Box 1).いずれのADE経路も,非中和抗体あるいは中和レベル以下の抗体がウイルス抗原に結合しても,感染を阻止したり除去したりすることができない場合に起こりうるADEは,in vitroアッセイ(食細胞における感染のFcγRIIa介在性増強に関連する第1のメカニズムでは最も一般的),免疫病理学,肺病理学など,いくつかの方法で測定することができる.食細胞へのFcγRIIa介在性エンドサイトーシスを介したADEは,in vitroで観察することができ,ヒトのデングウイルス16)やネコのFIPV15)など,マクロファージ親和性(macrophage-tropic)ウイルスについて広く研究されている.このメカニズムでは,非中和性抗体がウイルスの表面に結合し,ビリオンをマクロファージに直接輸送し,その後マクロファージがビリオンを内部に取り込み増殖的に感染する.異なるデング血清型に対する多くの抗体は交差反応性を示すが非中和性であるため,異種株による二次感染はウイルス複製を増加させ,より重篤な疾患を引き起こす可能性があり,最近のデングワクチン試験で報告されたように大きな安全性リスクにつながる.他のワクチン試験では,FIPVSタンパク質に対して免疫賦活させた猫や,抗FIPV抗体を受動的に注入した猫は,FIPVに曝露させた(challenge)際の生存率が対照群に比べて低かった17).非中和抗体,あるいは中和レベル以下の抗体は,肺胞および腹膜マクロファージへの侵入を増強し18),これが感染を播種させ,疾患転帰を悪化させると考えられた19)

Figure 1: Two main ADE mechanisms in viral disease.

Fig. 1

a, For macrophage-tropic viruses such as dengue virus and FIPV, non-neutralizing or sub-neutralizing antibodies cause increased viral infection of monocytes or macrophages via FcγRIIa-mediated endocytosis, resulting in more severe disease. b, For non-macrophage-tropic respiratory viruses such as RSV and measles, non-neutralizing antibodies can form immune complexes with viral antigens inside airway tissues, resulting in the secretion of pro-inflammatory cytokines, immune cell recruitment and activation of the complement cascade within lung tissue. The ensuing inflammation can lead to airway obstruction and can cause acute respiratory distress syndrome in severe cases. COVID-19 immunopathology studies are still ongoing and the latest available data suggest that human macrophage infection by SARS-CoV-2 is unproductive. Existing evidence suggests that immune complex formation, complement deposition and local immune activation present the most likely ADE mechanisms in COVID-19 immunopathology. Figure created using BioRender.com.

 

呼吸器病原体に最もよく例示される第2ADEメカニズムでは,Fc介在性エフェクター機能は,観察可能な肺病理結果をもたらす強力な免疫カスケードを開始することにより,呼吸器系疾患を増強することがありうる20)21).単球,マクロファージ,好中球,樹状細胞,ナチュラルキラー細胞などの局所そして循環自然免疫細胞のFc介在性活性化は,ウイルス感染細胞やdebrisを除去する効果があるにもかかわらず,免疫活性化の調節不全(dysregulated immune activation)を引き起こす可能性がある.RSVや麻疹などのマクロファージ親和性がない呼吸器ウイルスの場合,非中和抗体は,気道組織に沈着する免疫複合体を形成し,サイトカインおよび補体経路を活性化することによって,ADEおよびERDを誘発し,その結果として,炎症,気道閉塞を引き起こし,重症の場合は急性呼吸窮迫症候群を引き起こすことが示されている10)11)22)23)RSVと麻疹によるADEのこれらの先行研究は,既知のCOVID-19臨床症状と多くの類似点がある.例えば,COVID-19SARSでは、補体カスケードの過剰活性化が炎症性肺傷害の原因となることが示されている24)25).最近行われた2つの研究では,COVID-19患者のSおよびRBD特異的免疫グロブリンGIgG)抗体は,Fcドメイン内のフコシル化レベルが低いことが明らかになった26)27).この親和性の高さは,より強固なFcγRIIIa介在性エフェクター機能を介して28)29),有益な場合もあるが,デングウイルスに対する非中和IgG抗体がアフコシル化されていると,より重篤な疾患転帰と関連していた30)Larsenらはさらに,COVID-19と急性呼吸窮迫症候群の両方を発症した患者のS特異的IgGは,無症候性あるいは軽症の感染症を発症した患者と比較して,フコシル化のレベルが低いことを示している26)SARS-CoV-2特異的抗体のフコシル化レベルの低下がCOVID-19の免疫病理に直接寄与しているかどうかは,まだ明らかになっていない.

重要なことは,SARS-CoV-2がマクロファージに増殖的に感染することは示されていないことである31)32)したがって,COVID-19病態に関連する最も可能性の高いADEメカニズムは,抗体-抗原免疫複合体が形成され,肺組織における免疫カスケードの過剰な活性化であることが,入手可能なデータから示唆されている(Figure 1

Evidence of ADE in coronavirus infections in vitro:

ADEは,ヒト免疫不全ウイルス(HIV33)34),エボラ出血熱35)36),インフルエンザ37),フラビウイルス38)など,多くのウイルスについてin vitroで十分に報告されてきたが,in vitroにおけるヒトコロナウイルスのADEの関連性についてはあまり明らかになっていない.いくつかの研究では,SARS-CoVMERS-CoV ビリオンが,in vitroにおいてFcRを発現した単球やマクロファージに取り込まれる量が増加することが示されている32)39)40)41)42)Yipらは,FcγRIIaと抗S血清抗体を介して,マクロファージへSARS-CoVS発現疑似ウイルスの取り込みが増強されることを発見した32).同様に,Wanらは,MERS-CoVRBDに対する中和モノクローナル抗体(mAb: monoclonal antibody)が,FcγRIIaをトランスフェクトしたマクロファージや各cell linesへのビリオンの取り込みを増加させることを示した39)(トランスフェクション: 核酸を細胞内へ導入する過程).しかし,抗原特異的抗体が食細胞への取り込みを促進するという事実は,インフルエンザをはじめとするウイルス除去を行うために,単球やマクロファージがFcγRIIaを介した抗体依存性の食作用を媒介できることから,驚きに値しない43).重要なのは,感染したマウスのマクロファージが,SARS-CoVの抗体介在性のクリアランスに寄与したことである44)MERS-CoVはマクロファージに増殖的に感染することが確認されているが45),マクロファージへのSARS-CoV感染は成功せず(abortive),抗体依存性に取り込まれた後の炎症誘発性サイトカイン(pro-inflammatory cytokine)の遺伝子発現プロファイルを変化させない41)42).これまでの知見では,マクロファージがSARS-CoV-2感染の増殖的宿主であることは否定的である(argue against31)32)

ADE in human coronavirus infections:

ヒトのコロナウイルス感染症におけるADEの決定的な役割は確立されていない.SARS患者におけるADEの懸念は,セロコンバージョンおよび中和抗体反応が臨床的重症度および死亡率と相関していることが明らかになったときに初めて提起された46)COVID-19患者においても同様の結果が報告されており,SARS-CoV-2に対する抗体価が高いことと重症疾患の関連が報告されている47).一つの単純な仮説として,重症COVID-19患者の抗体価が高いのは,ウイルス量が多いために抗原への曝露がより多く,より曝露時間が長くなっているからだと考えられている48)49).しかし最近の研究では,上気道へのウイルス排出は、無症候性COVID-19患者と症候性COVID-19患者の間で区別できないことが示された(ref. 50).症候性患者は、より高い抗SARS-CoV-2抗体価を示し,上気道からウイルスをより早く除去した.これは,抗体価は単にウイルス量が多いことに起因するという単純な仮説と矛盾する.他の研究では,抗SARS-CoV-2 T細胞応答は,軽症でも無症候性感染でも高レベルで見られることが示されている51)52).これらのデータを総合すると,強いT細胞応答は幅広い臨床症状の患者に見られるが,強い抗体価(strong antibody titres)は重症COVID-19とより密接に関連していることが示唆される.重要な注意点(caveat)として,ウイルス排出量は下気道ではなく上気道で測定されたことが挙げられる50).重症COVID-19の肺病変には下気道がより重要であると考えられるが,SARS-CoV-2のウイルス排出量が上気道と下気道でどの程度相関しているのかは明らかではない.

SARS-CoV-2の新規感染に対する宿主反応だけでなく,COVID-19患者のADEを媒介する、他のヒトコロナウイルス株に対する既存の抗体の可能性も懸念される53).ヒト集団に常在するコロナウイルス株(HKU1OC43NL63229Eなど)によって誘発される抗体は,ウイルスが中和されていない状態でSARS-CoV-2の交差反応性認識を促進することで,理論的にはADEを媒介する可能性がある.予備データによると,季節性ヒトコロナウイルス株に高い反応性を示したSARS-CoV-2ナイーブドナーの抗体は,SARS-CoV-2のヌクレオカプシドとS2サブユニットに対して低いレベルの交差反応性を示すことがわかった(ref. 54).このような交差反応性抗体が,SARS-COV-2の臨床的ADEに寄与するかどうかは,まだ明らかになっていない.

Risk of ERD for SARS-CoV-2 vaccines:

SARS-CoV-2ワクチンの安全性に対する懸念は,当初、SARS-CoVワクチンを接種した動物がウイルス感染後に免疫病理の増強あるいはERDを示したマウス研究によって高まった55)56)57)58).観察された免疫病理は,Th2細胞に偏った反応55)と関連しており,主にヌクレオカプシドタンパク質に対するものであった56)58).重要なことは,ヌクレオカプシド特異的免疫血清を受動的に移しても,曝露したマウスに免疫病理が観察されなかったことである56).これは,移された血清の量では、増強された疾患が再現されなかったことを裏付けている.SARS-CoVMERS-CoVの不活化全ウイルスまたはウイルスベクターベースのワクチンを用いた同様の研究では,ウイルス曝露後に免疫病理が観察され59)60)61)Th2サイトカインに偏った反応55)や肺への過剰な好酸球浸潤57)と関連していた.合理的なアジュバントの選択は,Th1細胞に偏った反応を確実にすることで,ワクチン関連のERDリスクを大幅に軽減することができる.ミョウバン,CpGAdvax(デルタイヌリン[delta inulin]ベースのアジュバント)のいずれかで製剤化されたSARS-CoVワクチン候補では,ミョウバンによるTh2に偏った反応がマウスの肺好酸球性免疫病理を引き起こしたのに対し,Advaxでは免疫病理を伴わない防御と,よりバランスのとれたTh1/Th2応答が誘導されることがわかった62)Hashemらは,MERS-CoV S1を発現させたアデノウイルス5ウイルスベクターを接種したマウスは,防御効果があるにもかかわらず,ウイルス曝露後に肺病変を示すことを報告した.重要なのは,分子アジュバントとしてCD40Lを含めることで,Th1応答が増強され,ワクチンに関連する免疫病理が予防されたことである63)

ヒトワクチンによるERDは、接種群とプラセボ群を統計的に比較するのに十分な感染イベントが発生する大規模な第2相・第3相の有効性試験で初めて観察されることになるだろう.COVID-19ワクチンの安全性プロファイルは,特に免疫病理を引き起こす可能性が理論的に高いと思われるワクチン(不活化全ウイルス製剤やウイルスベクターなど)については,ヒトでの有効性試験中にリアルタイムで注意深く観察する必要がある64)65)

Risk of ADE for SARS-CoV-2 vaccines:

SARS-CoV動物モデルにおけるワクチン誘発性ADEの証拠は相反するものであり,安全性の懸念の可能性をもたらしている.Liuらは,SARS-CoV Sタンパク質を発現させた修飾ワクシニア・アンカラウイルスベクターで免疫性を与えたマカクは,曝露後のウイルス複製が減少する一方で,抗S IgGが炎症性マクロファージの肺浸潤を増強し,ワクチンを接種していない動物と比較して重篤な肺傷害を引き起こすことを明らかにした66).さらに彼らは,ウイルス除去に先立って抗S IgGが存在すると,マクロファージ創傷治癒反応が炎症誘発性反応に偏ることを示した.別の研究でWangらは,SARS-CoV Sタンパク質の4つのB細胞ペプチドエピトープでマカクに免疫性を与えたところ,3つのペプチドがマカクをウイルス曝露から防御する抗体を誘発した一方で,ペプチドワクチンの1つがin vitroで感染を増強する抗体を誘発し,in vivoではより重篤な肺病理を引き起こすことを明らかにした67)

一方Luoらは,中和抗体価が低いと生体内での感染が増強されるかどうかを調べるために,不活化ワクチンによる免疫賦活後9週間が経過し,中和抗体価が防御レベルよりも低下した時点でアカゲザルにSARS-CoVを曝露した68).免疫が与えられたマカクのほとんどがウイルス曝露後に感染したが,プラセボ対照群に比べてウイルス価は低く,肺病変レベルは高くなかった.同様にQinらは,不活化SARS-CoVワクチンがカニクイザルをウイルス曝露から防御し,中和抗体価の低いカニクイザルでも肺の免疫病理を増強させないことを示した69).ハムスターを用いた研究では,in vitroにおいてFcγRIIを介してB細胞へのウイルス侵入が増強されたにもかかわらず,組換えSARS-CoV Sタンパク質を接種した動物はウイルス曝露から防御され,肺病変の増強は見られなかった70)

このように,動物モデルを用いたSARS-CoV免疫研究では,防御効果,免疫病理,ADEの可能性の観点から,採用したワクチン戦略に応じて大きく異なる結果が得られている.にもかかわらず,Sタンパク質に対する中和抗体を誘発するワクチンは,感染や疾患の拡大を示す証拠はなく,SARS-CoV曝露から動物を確実に防御する71)72)73)SARS-CoV-2に対するヒトでの免疫戦略は,高い中和抗体価を誘導することで,ADEのリスクを最小限に抑えながら成功する可能性が高いことを,これらのデータは示唆している例えば,S特異的中和抗体を誘導できるサブユニットワクチンは,ADEのリスクが低いはずである(特に,非中和エピトープの提示を減らすために,プレフュージョン構造で安定化されたSに対して8).このような最新の免疫原(immunogen)設計アプローチは,非中和抗体に関連する免疫病理の可能性を軽減するはずである.

病的(pathologicADEERDを引き起こすリスクが高い理論上のワクチンには,不活化ウイルスワクチンが含まれる不活化ウイルスワクチンは,非中和抗原ターゲットおよび/または非中和構造におけるSタンパク質が含まれている可能性があり,他の呼吸器病原体で観察されたよく知られたメカニズムを介して追加の炎症を引き起こす可能性のある,多数の非防御性抗体ターゲットが提供される.しかし,不活化SARS-CoV-2ワクチンの最近の評価では,マウス,ラット,アカゲザルで強力な中和抗体が産生され,アカゲザルでは病変増強を示すことなく,用量依存的な防御効果が得られたことは心強い74).シリアンハムスターはアカゲザルモデルよりもヒトCOVID-19免疫病理をより忠実に再現していると考えられるため,今後はシリアンハムスターモデルでのワクチン研究を進めることで,重要な前臨床データ(preclinical data)が得られるかもしれない75)

ADE and recombinant antibody interventions:

SARS-CoV-2 Sタンパク質に対するmAbの発見は急速に進んでいる.最近のB細胞スクリーニングと抗体発見の進歩により,ヒト回復期ドナー76)77)や免疫賦活された動物モデル78)から,また以前に同定されたSARS-CoV抗体79)を再設計することによって,強力なSARS-CoV-2中和抗体を迅速に分離することが可能になった.今後数週間から数ヶ月の間に,さらに多くの強力な中和抗体が同定される予定であり,20207月にはいくつかのヒト臨床試験が進行中である.ヒトでの臨床試験は,単一mAbとカクテルの両方について,予防と治療の両方の用途で構成される予定である.また,一部のヒト臨床試験では,ADEリスクをさらに低減するために,FcRノックアウト変異を取り入れている80).前臨床試験データでは,中和閾値を大幅に上回る用量の強力な中和mAbであれば,ADEのリスクは低いことが示唆されており,このようなmAbは,感染あるいは疾患を増強させることなく,マウスやシリアンハムスターをSARS-CoV-2感染から防御する81)82)mAb濃度が防御のための閾値以下に減衰した期間では,ADEのリスクが高まる可能性がある(これは,デング熱におけるADEの重要な臨床的証拠となった歴史的な母子データに一致する83)).この防御濃度以下の範囲は,mAb投与後,初期投与量の大部分が体内から排出される数週間から数ヶ月後に発生すると考えられる.注目すべきことに,SARS-CoV-2曝露に先立ち,RBD特異的中和mAbを低用量投与したシリアンハムスターでは,対照動物に比べて体重減少の傾向が見られた82)(その差は統計的には有意ではなく,低用量投与の動物は対照動物に比べて肺のウイルス量が少なかったが).また,非中和抗体が疾患を増強するかどうかを調べるために,SARS-CoV-2に対する非中和mAbをハムスターモデルの感染前または感染後に投与することもできる.また,感染後のさまざまな時点でmAbを受動的に投与することで(例えば,感染のピーク時にウイルス量が多い場合など),免疫複合体の形成および沈着が疾患や肺の免疫病理の増強につながるかどうかを調べることができる.もし中和または非中和mAbADEが懸念される場合は,これらの抗体のFc部分にFcR結合を無効にする変異を加えて設計することができる80).動物実験では,マウスのA型およびB型インフルエンザ感染症84)85)や,マカクのシミアンHIV感染症86)87)に関する過去の研究と同様に,Fc介在性エフェクター機能がSARS-CoV-2感染症の予防,治療,悪化に重要であるかどうかを知ることができる.動物モデルにおいて,ヒトmAbを試験する際の重要な注意点は,ヒト抗体のFc領域は,ヒトのFcRと同じようには動物のFcRと相互作用しない可能性があることである88)ADEの前臨床試験に使用する抗体は,可能な限り,Fcエフェクター機能を適切にモデル化するために,種をマッチさせたFc領域が必要だろう.

ADE and convalescent plasma interventions:

回復期血漿(CP: convalescent plasma)療法は,有効な抗ウイルス治療薬がない中,多くのウイルスアウトブレイク時に重症患者の治療に用いられてきた.CP療法は,分子レベルで定義された医薬品が発見され,評価され,大規模に生産されるまでの間,治療のための迅速な解決策を提供することができる.CP抗体は,理論的にはADEを介して疾患を増悪させる危険性があるが,SARS-CoVおよびMERS-CoVアウトブレイクにおける症例報告では,CP療法は安全であり,臨床転帰の改善と関連していることが示されている89)90)SARSアウトブレイク時に行われた最大規模の研究では,香港におけるSARS患者80人の治療が報告されている91).プラセボ対照群はなかったが,CPに関連した副作用は検出されず,感染初期に治療を受けた患者の退院率は高かった.重症COVID-19患者を対象としたいくつかの小規模な研究や,5,000人のCOVID-19患者を対象とした研究では,CP療法は安全で,疾患転帰を改善する可能性があることが示されているが,その効果は軽度のようだ97).しかし,これまでのほとんどの研究は非対照であり,多くの患者が抗ウイルス薬やコルチコステロイドなどの他の薬剤でも治療を受けていたため,CP療法が回復に寄与したかどうかを判断することは困難である.また,重症COVID-19患者はすでにSARS-CoV-2に対する高い抗体価を獲得している可能性があるため,重症患者におけるCP療法の潜在的なメリットも不明である(refs. 47,98)CPは,背景に危険因子を持つ者,フロントラインの医療従事者,COVID-19感染者と接触する者など,高リスク集団への予防的使用が提案されている99).確立された呼吸器感染症と比較して,初期のウイルス感染に関連する抗原量はより低いので,予防的使用のためのCPは,治療的使用と比較して,さらにADEリスクは低いかもしれない.組み換えmAbについて前述したように,また過去のデングウイルスの母子感染のデータに示されているように,CPの予防的使用におけるADEの理論上のリスクは,血清中和抗体価が防御レベル以下に低下する投与後の数週間で最も高くなる.CP試験におけるADEリスクは,組換えmAb試験よりも定量化が難しいと思われる.なぜなら,正確なCPの組成は,治療を受けた患者や治療プロトコルによって大きく異なるためである.特に,血漿プーリングを行わずに,患者とレシピエントの11のプロトコルで実施されるCP試験では,そのような傾向が見られる.

CPの治療や予防における潜在的なADEのリスクを軽減するために,血漿ドナーを事前にスクリーニングし,中和力価が高いことを確認することができる.また,提供されたCPから抗S抗体または抗RBD抗体を精製して中和抗体を濃縮し,他のSARS-CoV-2抗原に対する非中和抗体によって引き起こされるADEリスクを回避することも可能である.動物モデルを用いた投与に関する研究は,予防的および治療的使用の両方において,十分に管理された環境でCPのリスクを明らかにするのに役立つ.現在,CPの主要な動物実験(特にシリアンハムスターを使用し,抗体のFc領域を一致させたハムスター由来のCPを使用するのが理想的)と,ヒトの臨床における安全性と有効性の結果が同時に出てきている.これらの前臨床および臨床データは,ADEのリスクプロファイルを,輸血関連急性肺傷害96)100)を含む,ヒトのCPで起こりうる他の既知の重篤な有害事象と比較して断定するのに役立つだろう.

Conclusion

ADEは,SARSMERS,およびRSVや麻疹を含むその他のヒト呼吸器ウイルス感染症で観察されており,SARS-CoV-2ワクチンや抗体ベースの介入にADEの現実的なリスクがあることを示唆している.しかし臨床データは,ヒトCOVID-19病理におけるADEの役割をまだ完全には確立していない.免疫療法によるADEリスクを低減するためには,ADEを引き起こす可能性の高い低濃度の非中和抗体ではなく,高用量の強力な中和抗体を誘導または投与することが必要である.

今後は,動物および臨床データからADEのサインを評価し,臨床的にADEが認められた場合には,ADEに関連する安全性のリスクと介入効果のバランスをとることが重要となる.現在進行中の動物実験およびヒトの臨床試験によって,COVID-19ADEのメカニズムに関する重要な洞察が得られるだろう.このような証拠は,COVID-19の世界的な負担を軽減するために必要となる大規模な医療介入において,製品の安全性を確保するために切実に必要とされる.

 

References

省略.

s41564-020-00789-5.pdf

 

 

 

 

 

 

新型コロナウイルス感染症まとめver3-2202177日)ADEについて 

728日追記しました

【ヒト単球由来マクロファージ感染および抗体を介したSARS-CoV-2感染の増強を示す

証拠はない】

García-Nicolás O, V’kovski P, Zettl F, Zimmer G, Thiel V and Summerfield A (2021) No Evidence for Human Monocyte-Derived Macrophage Infection and Antibody-Mediated Enhancement of SARS-CoV-2 Infection. Front. Cell. Infect. Microbiol. 11:644574. Apr 12, 2021.

https://doi.org/10.3389/fcimb.2021.644574.

Introduction

現在の状況では,SARS-CoV-2に対する中和抗体がないため,ウイルスは人間の間で急速に広がっている.世界的なワクチン接種キャンペーンは,最終的にパンデミックを抑制する可能性があり,最近ではワクチン接種プログラムが開始されている.しかし懸念されるのは,ワクチン接種がSARS-CoV-2感染の抗体依存性増強(ADE: antibody-dependent enhancement)を促進し,疾患増強に関連する可能性である(Lee et al., 2020)

感染のADEの基本的なメカニズムは,ビリオン-抗体複合体(virion-antibody complexes)と,マクロファージのような免疫細胞が発現するFcγRFc gamma receptors. Fc gamma 受容体)との相互作用に基づいているビリオン-抗体複合体がFc受容体に結合すると,受容体を介したエンドサイトーシスによって細胞内に取り込まれ,細胞に感染する可能性がある(Taylor et al., 2015).我々の研究を開始した時点では,この可能性について推測や警鐘を鳴らしていたにもかかわらず,SARS-CoV-2ADEを具体的に取り上げたデータは発表されていなかった(Lee et al., 2020; Rogers et al., 2020).この点を考慮して,本研究では,回復期COVID-19患者の免疫血清がSARS-CoV-2の感染を増強し,ヒトマクロファージによる炎症惹起性サイトカイン(pro-inflammatory cytokines)産生の分泌を促進するかどうかを調べることを目的とした.そのため,ヒトコロナウイルス229EHCOV-229E),中東呼吸器症候群コロナウイルス(MERS-CoV),SARS-CoVSARS-CoV-2の感染に対するヒトマクロファージの感受性と,これらの細胞の炎症性サイトカイン反応について比較研究を行った.SARS-CoVおよびSARS-CoV-2による感染のADEの可能性を,COVID-19患者の回復期免疫血清を用いて検討した.

Methods

※一部翻訳

Antibody-Dependent Enhancement of Infection:

今回の研究では,過去に報告された研究で得られたCOVID-19回復期患者の血清コレクションを採用した(Zettl et al., 2020).これには,SARS-CoV-2に対する広範な中和力価(ND50 <1:10; 1:20; 1:160; 1:240; 1:2560)を有する血清が含まれる.これらの血清のADEの可能性を検査するために,異なる血清希釈液(1:10; 1:100; 1:1000; 1:10000)を,1TCID50/cellMOIに対応する同量のウイルス懸濁液(SARS-CoVまたはSARS-CoV-2)と37℃で30分間インキュベートした.その後,ウイルス/血清混合物をヒトマクロファージまたはVero E6細胞に添加し,37℃,5CO2環境下で30分間インキュベートした.細胞をPBS3回洗浄した後,新鮮培地を加えた.感染のADEのコントロールとして,マクロファージにおけるJEVの感染のADEを誘導する能力が高いことが知られている免疫されたブタ血清を採用した(Garcia-Nicolas et al., 2017).血清(JEV Laosにとっての1:160ND50)を血清希釈し(1:10; 1:100; 1:1000; 1:10000),1TCID50/cellMOIJEV Laos37℃で30分間インキュベートした.コントロールとしてブタナイーブ血清を含めた.その後,ウイルス/血清混合物をhMDMに加え,37℃で30分間インキュベートした後,洗浄し,新鮮培地を加えた.37℃で24時間インキュベートした後,フローサイトメトリーによりウイルスの感染性を測定した.

Results

Visualization of Coronavirus Replication by Immunolabeling of dsRNA:

dsRNAは,コロナウイルス複製時に二重膜小胞(double-membrane vesicles)内に存在する複製中間体(replication intermediate)であることを考慮すると(Wolff et al, 2020)

コロナウイルスに感染した細胞は,ウイルスタンパク質に対する抗体ではなく、dsRNAに対する抗体によって特異的に検出される可能性がある.この目的のためにdsRNAの免疫標識の適性を評価するために、SARS-CoVまたはSARS-CoV-2のいずれかを 1 TCID50/mlMOIMultiplicity of Infection.多重感染度.ウエル中の培養細胞に対するウイルス粒子の比率.細胞1個に対するウイルスの数)で感染させたVero E6細胞をdsRNANタンパク質で二重染色し,免疫蛍光顕微鏡またはフローサイトメトリーで解析した(Figure 1).dsRNA染色では,Nタンパク質の標識と同程度に免疫蛍光顕微鏡で感染細胞を識別することができたが(Figure 1A, B),フローサイトメトリーでは、Nタンパク質を標識した場合にのみ機能した(Figure 1A).この実験により,dsRNAを免疫標識することで,ウイルスタンパク質を特異的に認識する抗体がなくても,異なるコロナウイルスに感染した細胞を免疫蛍光顕微鏡で識別できることが示された.一方,Nタンパク質の標識とフローサイトメトリーを併用することで,SARS-CoVまたはSARS-CoV-2に感染した細胞を効率的に検出することができる.

 

 

Figure 1: Determination of SARS-CoV and SARS-CoV-2 infected hMDM by immunolabeling for dsRNA and N protein. Vere E6 cells were infected with SARS-CoV and SARS-CoV-2 at MOI 1 TCID50/cell, and after 24 hpi dsRNA and N protein were labeled with specific antibodies. The nuclei were stained with DAPI. Then positive cells for dsRNA and N were quantified either by flow cytometry or immunofluorescence microscopy (A). In (B) example of representative images acquired by fluorescence microscopy is shown. The scale bar represent 40 µm. The data are from three independent experiments. Statistically significant differences between the conditions are indicated by asterisks (ns indicates non-statistical differences, *p < 0.05, **p ≤ 0.002 and ****p ≤ 0.0001).

 

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Human Coronaviruses Differ in Their Ability to Infect hMDM:

HCoV-299EMERS-CoVSARS-CoVSARS-CoV-21 TCID50/cellMOIhMDMhuman monocyte derived macrophages)に感染させると,dsRNA免疫染色の観点から,風邪ウイルスHCOV-229Eには高い感受性を示し,高病原性コロナウイルスMERS-CoVには低い感受性を示し,SARS-CoVSARS-CoV-2には抵抗性を示した(Figure 2A, B).細胞培養上清中の感染性ウイルス粒子数を定量化したところ,HCOV-229EMERS-CoVのみがhMDMで効率よく複製された(Figure 2C).HCoV-229Eは感染hMDM比率がより高かった(32.79% ± 18.79 SD)が,MERS-CoVに感染したマクロファージの細胞培養上清で最も高いウイルス力価が認められた(Figure 2C).ただし,HCOV-229Eの至適温度は33℃であるが,すべての実験は37℃で行われたことを考慮する必要がある(Dijkman et al., 2013).SARS-CoVおよびSARS-CoV-2のウイルス力価は,mock controlと比較して統計的に有意な差はなかった.いくつかのウェルで検出されたバックグラウンドシグナルは,接種したウイルス粒子がhMDMの表面に結合したままで,細胞を洗浄しても除去されなかったためと考えられる.

Figure 2: Susceptibility of hMDM to different human coronaviruses. Human MDM were inoculated with different coronaviruses (hCoV-229E, MERS-CoV, SARS-CoV-1 and SARS-CoV-2) using an MOI of 1 TCID50/cell. Mock-infected cells were included as controls. After incubating the cells for 1.5 hours, the inoculum was removed, the cells washed, and fresh medium added. At 24 hpi, dsRNA in the cells was detected with a specific antibody and nuclei were stained with DAPI; the scale bar represents 40 µm. (A) The percentage of dsRNA-positive hMDM was calculated for 10 fields per condition (B). In (C) virus titers are shown. The same experiment was repeated with hCoV-229E, SARS-CoV-1 and SARS-CoV-2, and infected cells were quantified at 24, 48 and 72 hpi (D). The relative number of total hMDM per well was calculated taking as reference the number of cells at 24 hpi (E). The data from three independent experiments run in triplicates are shown in each panel. Statistically significant differences between the conditions are indicated by different superscript letters in (B, C) (p < 0.05), and by asterisks in (D, E) (****p ≤ 0.0001).

 

 

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我々はさらに,48hpiおよび72hpi時点で、SARS-CoVおよびSARS-CoV-2へのhMDMの感染性を調べた.HCoV-229EhMDMに効率よく感染したが,SARS-CoVSARS-CoV-2もいずれの時点でもhMDMに感染することはできなかった(Figure 2D).さらに,SARS-CoVおよびSARS-CoV-2ではなく,HCOV-299Eのみの感染hMDMが有意な細胞数の減少を示し,ウイルスによる細胞変性効果を示唆している(Figure 2E).

Human MDM Produce Cytokines Following Infection With HCoV-229E:

HCoV-229Eに感染したhMDMは,(MERS-CoVSARS-CoVSARS-CoV-2には感染せず),そしてTNFを分泌し,低レベルのIFN-βとIL-6を分泌した(Figure 3).また,IL-1β分泌を誘導したコロナウイルスはなかった.ウイルスRNAが自然免疫応答を誘導する可能性を考慮して,我々は,dsRNA陽性細胞の割合,ウイルス力価,分泌されるサイトカインレベルにおける相関関係を調べた.その結果,感染細胞の割合と分泌されるサイトカインレベルの間には明確な関連性が認められたが,ウイルスの力価とは関連性がなかった(Table 1).

 

Figure 3: Human MDM immune response after coronavirus infection. Human MDM were inoculated with different coronaviruses (hCoV-229E, MERS-CoV, SARS-CoV-1 and SARS-CoV-2) as described before. Mock-infected cells or cells treated with LPS or poly I:C served as controls. After 24 hpi TNF (A) IFN-β (B) and IL-6 (C) were determined in the cell culture supernatants. The data from three independent experiments run in triplicates are shown. Different superscript letters indicate a significant difference (p < 0.05) between the conditions.

 

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Table 1:

 

Human MDM Express SARS-CoV-2 Receptor ACE2 but No or Low Levels of TMPRSS2:

まず,hMDMSARS-CoV-2による感染に抵抗性を示すことから,ウイルスの細胞受容体であるACE2と,スパイクタンパク質のタンパク質分解活性化に関与するセリンプロテアーゼであるTMPRSS2の発現レベルを評価した(Hoffmann et al., 2020; Shang et al., 2020).そのため,分化後のhMDMにおいて,細胞のACE2TMPRSS2の二重免疫標識を行い,フローサイトメトリーでその発現を評価した(Figure 4).ACE2TMPRSS2をトランスフェクトしたA549細胞をpositive controlとして用いた.この実験により,hMDMACE2TMPRSS2をトランスフェクトしたA549細胞(29.8% ± 3.55SD; Figure 4A)に匹敵する高レベルのACE233.3% ± 8.25SD; Figure 4A)を発現していることがわかった.一方,TMPRSS2陽性hMDMの割合は、ACE2TMPRSS2をトランスフェクトしたA549細胞(25.3% ± 2.66SD; Figure 4A)に比べて非常に低かった(3.03% ± 2.17SD; Figure 4A).これらの結果から,hMDMSARS-CoV-2の受容体であるACE2を発現しているものの,TMPRSS2の発現がないため,感染を防ぐことができる可能性が示された.

Figure 4: ACE2 and TMPRSS2 expression in hMDM. After 6 days of differentiation ACE2 and TMPRSS2 were immunolabeled with specific antibodies and positive cells were assessed by flow cytometry. A549 cells transfected with ACE2 and TMPRSS2 were used as control (A). Representative histograms for each marker in the analyzed cells are shown (B). The data from 5 different human donor hMDM run in triplicates are shown. Statistically significant differences in the expression of each marker between both cell types are marked by asterisks (****p ≤ 0.0001).

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Antibodies From Convalescent COVID-19 Patients Neither Induce Antibody-Dependent Enhancement of Infection of hMDM With SARS-COV-2 Nor Promote Cytokine Responses:

まず、hMDMにおけるADEpositive controlとして,ブタMDMにおいてJEVJapanese encephalitis virus)の強いADEを誘導することが以前に実証された免疫化したブタ血清(sera from immunized pig)を使用した(Garcia-Nicolas et al., 2017).ブタIgGsのヒトFcRへの結合が低いにもかかわらず(Antonsson and Johansson, 2001),この実験では,そのようなJEV免疫複合体(JEV immune complexes)が,JEV Laos controlとナイーブブタ血清の同一希釈のどちらとも比較しても、hMDMの感染を増強することが示された(Supplementary Figure 1).この実験は,hMDMにおける感染のADEを検査する方法論の妥当性を示した.

 

 

Supplementary Figure 1: Positive control experiment for ADE with hMDM. Serum from pig vaccinated with an experimental JEV vaccine (red) and naïve serum (black) were ten-fold diluted (from 1:10 to 1:10000) and incubated with JEV Laos at MOI of 1 TCID50/ml for 30, then immune complexes were incubated with hMDM for another 30 min, after wash and incubation for 24 h, infected cells were quantified by flow cytometry. Data from four independent experiments run in triplicates are shown. Each symbol represents the average value of infection in hMDM from a different donor. Statistically significant differences are indicated by asterisks (*p < 0.05, **p ≤ 0.002, and ***p ≤ 0.001).

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次に,中和力が1:10未満,そして中和力が1:240COVID-19血清を選択し,1:10から1:1000まで連続的に希釈し,SARS-CoVSARS-CoV-2を混合した後,Vero E6細胞に添加した.いずれの血清も希釈依存的にSARS-CoV-2感染を抑制した.また,COVID-19回復期患者血清とSARS-CoV-1との交差反応性が認められ,これまでの報告(Zettl et al., 2020)を裏付ける結果となった(Table 2).

 

 

Table 2: Summary data for virus neutralization on Vero E6 cells and antibody-dependent enhancement of infection or cytokine response by hMDM for SARS-CoV and SARS-CoV-2-antibody complexes”+” detected; “-” not detected; “NT” not tested.

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同じアプローチで,COVID-19回復期患者から採取した中和価が10未満から1:2560までの血清を,SARS-CoVおよびSARS-CoV-2と共に異なる濃度でインキュベートし,hMDMに添加した重要なことは,1:10000まで希釈した血清を用いても,hMDMへの感染は観察されなかったことであるさらに,ウイルス-抗体複合体(virus-antibodies complexes)にさらされたhMDMは,検出可能な炎症惹起性サイトカイン(pro-inflammatory cytokines)を一切分泌しなかった(Table 2.これらの結果から,SARS-CoVおよびSARS-CoV-2FcRを介して取り込まれても、ヒトマクロファージへの感染および活性化には至らないことが示された

 

Discussion

本研究では,風邪ウイルスであるhCoV-229EMERS-CoVとは対照的に,SARS-CoVSARS-CoV-2hMDMに感染できないということがまず観察されたSARS-CoV-2の受容体は,アンジオテンシン変換酵素2ACE2)であり、典型的には線毛上皮細胞,杯細胞,II型肺胞上皮細胞のほか,肺細胞のほか,腸細胞(enterocyte)などの異なる臓器の細胞に発現している(Sungnak et al., 2020).しかし,SARS-CoVによるヒトマクロファージの感染については,相反する報告がある.ある研究では,マクロファージによるACE2の発現は非常に限定されていると述べているが(Sungnak et al., 2020),別の報告では,組織に常駐するマクロファージに受容体が発現していると仮定している(Song et al., 2020)本研究では,培養・分化条件でhMDMの約30%ACE2を発現することを示したが,hMDMSARS-CoVSARS-CoV-2に対して寛容(permissive)ではなかった.なお、IFN刺激やウイルス感染により,dAEC2truncated ACE2 isoform,切断されたACE2アイソフォーム)の発現が確認されている(Onabajo et al., 2020)dAEC2は生物学的には活性を維持しているものの,SARS-CoV-2のスパイク結合を促進せず,進入受容体としての役割は果たしていない.hMDMdAEC2を発現しているかどうかは,まだ正式には決定されていない.ウイルスが細胞表面に付着した後,スパイクタンパク質は分解的に活性化され,膜融合を引き起こし,ウイルスゲノムを宿主細胞の細胞質に放出することができると考えられる.TMPRSS2または関連酵素によるタンパク質が分解される開裂(cleavage)は,通常は細胞表面で行われるが,その後の膜融合でも行われる(Hoffmann et al., 2020)The proteolytic cleavage by TMPRSS2 or related enzymes normally takes place at the cell surface as well as the subsequent membrane fusion).TMPRSS2が存在しない場合,SARS-CoVおよびSARS-CoV-2は,受容体を介したエンドサイトーシスの後、カテプシンB/Lによってタンパク質分解的に活性化される可能性がある(Hoffmann et al., 2020; Shang et al., 2020)本研究では,TMPRSS2hMDMにおける発現は非常に低いレベルであることが示されており,これは,ヒトマクロファージにおけるTMPRSS2の発現が非常に限定されているという過去の報告と一致している(Sungnak et al., 2020)したがって,これがマクロファージにおけるウイルス侵入の重要な制限因子ではないかと推測される.さらに最近では,CD74MHC classU)のp41 invariant chainが,ウイルスエンベロープタンパク質に対するカテプシンを介した開裂を阻害することが報告されている(Bruchez et al., 2020).マクロファージはCD74を恒常的に発現しているので(Cho and Roche, 2013)p41 invariant chainの存在がカテプシンB/Lの活性を阻害し,SARS-CoVおよびSARS-CoV-2による感染に対するhMDMの抵抗性に寄与している可能性がある.COVID-19患者のリンパ系臓器のマクロファージには,ウイルスの核タンパク質Nが検出されているが(Park, 2020)the viral nucleoprotein N has been detected in macrophages from lymphoid organs of COVID-19 patients),これが直接感染して生じたものなのか,感染細胞を貪食した結果生じたものなのかは明らかではない(but it is not clear whether this was caused by direct infection or as a consequence of phagocytosis of infected cells

HCoV-229EによるhMDMの感染は、これらの細胞がHCOV-229Eの細胞受容体であるアミノペプチダーゼNCD13)を発現していることと一致している(Yeager et al., 1992)HCoV-229Eが肺胞マクロファージに感染したとする過去の報告とも一致している(Funk et al., 2012)MERS-CoVの細胞受容体であるdipeptidyl peptidase-IVDPP4 ,別名CD26)は,健常者のヒト単球やマクロファージでは低レベルで発現しており(Wang et al., 2013; Zhong et al., 2013; Rao et al., 2018; Rao et al., 2019),我々の実験におけるhMDMMERS-CoV感染を説明することができる.

HCoV-229Eに感染したヒトマクロファージは,TNFを強く分泌する一方で,IL-6や一部のIFN-βも産生することを示した既報の結果とも一致している(Funk et al., 2012).最後に我々は,MERS-CoV感染後のマクロファージの自然免疫応答が乏しいことにも注目し,同様の結果を示した過去の報告を確認した(Zhou et al., 2014)

この原稿を書いている間に,SARS-CoV-2hMDMの免疫活性化を誘導するという矛盾したデータが発表された(Zheng et al., 2020)これらの矛盾した結果は,使用した方法論が異なることに起因しているかもしれない.我々は精製単球を用いて6日間でマクロファージを生成したが,ZhengらはPBMCM-CSFを加えて4日間培養し、細胞が接着するようになってからさらに10日間培養した(Zheng et al., 2020).もう1つの重要な方法論の違いは,我々の研究ではサイトカインの検出にELISAを用いたのに対し,Zhengらは,RT-PCRmRNAを解析したことである.発見されたmRNA誘導レベルはむしろ低かったため(0.3を下回る倍数変化の増加),ELISAによるタンパク質の検出も検出限界を下回った可能性がある.したがって,精製単球から作られたhMDMは,SARS-CoV-2の感染に対して寛容ではなく,炎症反応を起こさないを我々は考えている.これは,HCOV-229ETLR ligand controlsを用いた場合とは対照的である.今後,組織マクロファージに拡大した研究が重要であるが,我々の結果は,COVID-19で観察された炎症惹起性反応は,マクロファージの感染によるものではなく、他の自然免疫細胞や,マクロファージを含む可能性のある異なる免疫細胞間の複雑な相互作用に由来する可能性を示唆している.したがって,これらの事象を理解するためには,抗ウイルスサイトカイン反応のフロントラインにある形質細胞様樹状細胞のような,より多くの免疫細胞を調査する必要がある.

抗体が存在するCOVID-19では,ADEと炎症が関連している可能性があることから,hMDMを用いてこの仮説を検証した.COVID-19患者の回復期血清を選択し,前述の条件で行ったところ,非常に高い血清希釈でも,中和抗体レベルが低い血清でも,抗体を介したマクロファージ感染の増強や炎症惹起性サイトカイン反応の証拠は得られなかった.興味深いことに,COVID-19患者の回復期血清は,SARS-CoVとの交差反応性を示したが(Zettl et al., 2020),これは,過去のコロナウイルス感染流行に由来するSARS-CoV-2に対する交差反応性抗体の存在が,より重篤なCOVID-19とは関連しないことを示した過去の報告と一致している(Ng et al., 2020).さらに,マカクで実施されたワクチン接種/曝露実験では,疾患が増強される兆候は検出されなかった(Gao et al., 2020; Yu et al., 2020).最後に,回復期血漿で治療されたCOVID-19患者は,疾患増悪兆候を示さなかった(Casadevall and Pirofski, 2020; Joyner et al., 2020)これらのデータは,我々の発見と一致しており,SARS-CoV-2による直接接触あるいは回復期COVID-19患者からの抗体媒介によって,hMDMは感染,そして活性化ししないことを示しているSARS-CoVおよびSARS-CoV-2によるhMDM感染がないことは,ADEがないことの証拠となるが,我々の研究では,補体系やT細胞媒介性炎症の役割の可能性や,他のFcR発現細胞に対するADEの影響を除外することはできない

 

 

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31) Zhong J., Rao X., Deiuliis J., Braunstein Z., Narula V., Hazey J., et al. (2013). A potential role for dendritic cell/macrophage-expressing DPP4 in obesity-induced visceral inflammation. Diabetes 62 (1), 149–157. doi: 10.2337/db12-0230

32) Zhou J., Chu H., Li C., Wong B. H., Cheng Z. S., Poon V. K., et al. (2014). Active replication of Middle East respiratory syndrome coronavirus and aberrant induction of inflammatory cytokines and chemokines in human macrophages: implications for pathogenesis. J. Infect. Dis. 209 (9), 1331–1342. doi: 10.1093/infdis/jit504

 

 

 

 

 

 

 

新型コロナウイルス感染症まとめver3-2202177日)ADEについて

2021824日追記しました

【感染増強抗SARS-CoV-2抗体は,オリジナルWuhan/D614G株とDelta変異ウイルスの両方を認識する.集団予防接種の潜在的リスク?】

Yahi N, et al. Infection-enhancing anti-SARS-CoV-2 antibodies recognize both the original Wuhan/D614G strain and Delta variants. A potential risk for mass vaccination?

Journal of Infection. Aug 9, 2021.

https://doi.org/10.1016/j.jinf.2021.08.010.

Highlight

症候性Covid-19では感染増強抗体が検出されている.

抗体依存性増強(ADE)はワクチンの潜在的な懸念である.

増強抗体は,Wuhan株とdelta変異ウイルスの両方を認識する.

●delta変異ウイルスのADEは,現在のワクチンの潜在的なリスクである.

●ADEエピトープを欠くワクチン製剤が提案されている.

 

Abstract

感染の抗体依存性増強(ADE)は,ワクチン戦略における安全性の懸念である.最近の発表では,Liら(Cell 184 :4203-4219, 2021)が、SARS-CoV-2スパイクタンパク質のN末端ドメイン(NTD)に向けられた感染増強抗体は,in vitroではウイルス感染を促進するが,in vivoでは促進しないことを報告している.しかし,この研究はオリジナルのWuhan/D614G株を用いて行われたものである.現在,Covid-19パンデミックではDelta変異ウイルスが主流となっているため,これらの変異ウイルスのNTDと増強抗体の相互作用を解析した.分子モデリングの手法を用いて,我々は,増強抗体が,Wuhan/D614GNTDよりもDelta変異ウイルスのNTDに対して高い親和性を持つことを示している.また我々は,増強抗体はNTDを脂質ラフトマイクロドメイン(lipid raft microdomains)に固定することで,スパイク三量体の宿主細胞膜への結合を強化することを示している.この安定化メカニズムは,受容体結合ドメインのdemaskingを引き起こす構造変化を促進する可能性がある.NTDは中和抗体の標的にもなっていることから,我々のデータは,ワクチン接種を受けた人の中和抗体と促進抗体(facilitating antibodies)のバランスは,オリジナルWuhan/D614G株では中和に有利であることを示唆している.しかし,Delta変異ウイルスの場合,中和抗体はスパイクタンパクに対する親和性が低下しているのに対し,促進抗体は顕著に親和性が上昇している.したがって,オリジナルWuhan株スパイク配列に基づくワクチン(mRNAまたはウイルスベクター)を接種している人にとっては,ADEが懸念される.このような状況下では,構造的に保存されたADE関連エピトープを欠くスパイクタンパク製剤を用いた第二世代のワクチンを検討すべきである.

 

本研究の目的は,NTDに対する感染増強抗体によるSARS-CoV-2 Delta変異ウイルスの認識を評価することであった.抗体は,症候性Covid-19患者から分離された1052pdb file #7LAB1)を用いた.分子モデリングによるシミュレーションは,以前に報告された方法で行った2).現在流通している2つのDelta変異ウイルスを調査し,NTDには以下のような変異パターンが見られた:

G142D/E154K (B.1.617.1)

T19R/E156G/del157/del158/A222V (B.1.617.2)

それぞれの変異パターンをオリジナルWuhan/D614G株に導入し,エネルギー最小化を受け,それから抗体結合試験を行った.NTD領域におけるreference pdb file #7LABWuhan/D614G株)の相互作用のエネルギー(ΔG)は-229kJ/mol-1と推定された.Delta変異ウイルスの場合,相互作用のエネルギーは-272kJ.mol-1B.1.617.1)および-246kJ.mol-1B.1.617.2)に引き上げられた.このように,これらの感染増強抗体は,Delta変異ウイルスを認識するだけでなく,オリジナルのSARS-CoV-2株よりも高い親和性を示している.

Figure 1Aに,B.1.617.1変異ウイルスの三量体スパイクの細胞方向(cell-facing view)から見た全体構造を示す.予想通り,NTDに結合した促進抗体(緑色)は,ウイルス-細胞間の付着に干渉しないように接触面の後ろに位置している.実際,あらかじめ形成された抗体-NTD複合体は,宿主細胞膜に完全に結合することができる.NTDと脂質ラフトの相互作用をFigure 1Bに,ラフト-スパイク-抗体複合体の全体をFigure 1Cに示す.興味深いことに,Figure 1D-Eにさらに示されているように,抗体のごく一部が脂質ラフトと相互作用することがわかった.より正確には,アミノ酸残基28-31および72-74を含む抗体の重鎖の2つの異なるループが,ラフトの縁と直接相互作用することで複合体を安定化させている(Figure 1F).全体として,NTD-ラフト複合体の相互作用のエネルギーは,抗体がない場合の-399kJ.mol-1から,抗体がある場合の-457kJ.mol-1まで上昇した.NTDと脂質ラフトを挟み込むことで,抗体がスパイクタンパク質の細胞表面への付着を強化し,それゆえ,ウイルス感染プロセスの次のステップであるRBDの構造変化が促進されることになる2)

Figure 1: Infection enhancing antibodies recognize the NTD of Delta variants.

A. Molecular model of the Delta B.1.617.1 spike trimer as viewed from the host cell surface (chains A, B and C in cyan, yellow and purple, respectively), with the NTD and RBD of each chain indicated. The 1052 antibody is in green. B. Spike trimer with the B subunit bound to a lipid raft (with 6 ganglioside GM1 molecules). C. Trimolecular [spike-antibody-raft] complex. D. Focus on the NTD-antibody complex bound to the lipid raft. E. Secondary structures of the NTD (yellow) and the antibody (green) bound to lipid raft gangliosides. F. The 1052 antibody clamps the NTD and the edge of the lipid raft.

 

 

https://els-jbs-prod-cdn.jbs.elsevierhealth.com/cms/attachment/4bd173af-37af-443a-b038-deb300a2f7c0/gr1_lrg.jpg

このように,感染増強抗体による二重のNTD-ラフト認識という考え方は,他のウイルスにも有効な新しいタイプのADEであると考えられる.つまりは我々のデータは,抗NTD抗体によって誘発される,感染のFcR非依存性増強のメカニズムを説明するものである1)SARS-CoV-2ADEに初めて脂質ラフトが関係しているという我々のモデルは,デングウイルス感染のADEintact脂質ラフトが必要であるという過去のデータと一致している3)

Covid-19患者には,NTDに対する中和抗体も検出されている4)5)4A8抗体はこのような抗体の代表的なものである5)この抗体が認識する平坦NTD表面上のエピトープは,Delta変異ウイルスのNTDでは劇的に変化しており2)Delta変異ウイルスに曝露したワクチン接種者では活性が大きく失われていることが示唆されている.より一般的には,中和抗体と促進抗体のバランスは,ウイルス株によって大きく異なることが想定される(Figure 2).

 

 

Figure 2: Neutralization vs ADE balance according to SARS-CoV-2 strains.

https://els-jbs-prod-cdn.jbs.elsevierhealth.com/cms/attachment/6b783453-4cbc-4003-882c-b05d37629da9/gr2_lrg.jpg

現在のCovid-19ワクチン(mRNAまたはウイルスベクター)は,オリジナルWuhanスパイク配列に基づいている.中和抗体が促進抗体を圧倒する限り,ADEは懸念されない.しかし,SARS-CoV-2変異ウイルスが出現したことで,感染が増強される可能性がある.我々の構造的およびモデル化されたデータは,Delta変異ウイルスの場合,実際にそのようになる可能性を示唆している

結論として,オリジナルWuhan株スパイク配列に基づいたワクチン(mRNAまたはウイルスベクター)を接種した人が,その後Delta変異ウイルスに曝露した場合,ADEが発生する可能性がある.この潜在的なリスクは,Covid-19ワクチンが大量に使用される前から巧妙に予想されていたが6)SARS-CoV-2抗体がin vivoでの感染増強を媒介する能力は正式には実証されていない.しかし,これまでに得られた結果はむしろ安心できるものであったが1),我々の知る限り,Delta変異ウイルスのADEは特に評価されていなかった.我々のデータによると,Delta 変異ウイルスはNTDを標的とした感染増強抗体によって特によく認識されるため,現在のDelta変異ウイルスのパンデミックの際に大量のワクチンを接種する際の潜在的なリスクとなる可能性があるため,ADEの可能性についてさらに調査する必要がある.この観点から,構造的に保存されたADE関連エピトープ(structurally-conserved ADE-related epitopes)を欠いたスパイクタンパク製剤を用いた第二世代ワクチン7)を検討すべきである.

 

 

References

1) Li D.

et al.

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Cell. 2021; 184: 4203-4219

2) Fantini J.

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J Gen Virol. 2010; 91: 394-403

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A neutralizing human antibody binds to the N-terminal domain of the Spike protein of SARS-CoV-2.

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Potent neutralizing antibodies against multiple epitopes on SARS-CoV-2 spike.

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The potential danger of suboptimal antibody responses in COVID-19.

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7) Fantini J.

Chahinian H.

Yahi N.

Leveraging coronavirus binding to gangliosides for innovative vaccine and therapeutic strategies against COVID-19.

Biochem Biophys Res Commun. 2021; 538: 132-136