COVID-19関連追加(202179-2)変異株とワクチンその11Delta株に対する中和活性)

当院HP関連ファイル:

2021617-2

【抗体中和に対するSARS-CoV-2 Delta変異株の低下した感度】

Planas, D., Veyer, D., Baidaliuk, A. et al. Reduced sensitivity of SARS-CoV-2 variant Delta to antibody neutralization. Nature (2021).

https://doi.org/10.1038/s41586-021-03777-9.

Abstract

SARS-CoV-2B.1.617系統は,202010月にインドで確認された.その後,インドの一部の地域と英国で優勢になり,さらに多くの国に広がっている.B.1.617系統には,3つの主要サブタイプ(B1.617.1, B.1.617.2, B.1.617.3)があり,N末端ドメイン(NTD: N-terminal domain)と受容体結合ドメイン(RBD: receptor binding domain)に多様なスパイク変異があり,免疫逃避の可能性を高めているかもしれない.B.1.617.2は,Delta変異株とも呼ばれ,他の変異株よりも速く広がると考えられている.今回,我々はインドから帰国した旅行者から感染性Delta株を分離した.モノクローナル抗体(mAbs: monoclonal antibodies)およびCOVID-19回復者やワクチン接種者の血清における抗体に対する感受性を,他のウイルス株と比較して検討した.Delta株は,Bamlanivimabを含むいくつかの抗NTDおよび抗RBD mAbsによる中和に抵抗性を示し,Spikeとの結合が損なわれていた.発症後12ヶ月(12 months post symptoms)までに採取された回復期患者の血清は,Delta変異株に対して,Alpha変異株(B.1.1.7)と比較して,強さは4倍低下していたPfizer社またはAstraZeneca社ワクチン1回接種者の血清は,Delta変異株をほとんど阻害しなかった2回接種では,95%の人に中和反応が認められ,Delta株に対する抗体価はAlpha株よりも35倍低かった.このように,Delta株の広がりは,非RBDおよびRBDスパイクエピトープを標的とする抗体に対する逃避と関連している.

Figure 1:

 

Figure 2:

Discussion

我々は,既存のSARS-CoV-2株に対するmAbsの交差反応性,感染性Delta分離株に対する回復者および最近のワクチン接種者の血清を調査した.Bamlavinimabを含むいくつかのmAbはスパイクとの結合を失い,Delta株を中和しなくなった.さらに,Delta株は既感染者の血清に対して感受性が低いことも示された.回復者のワクチン接種は,中和の閾値をはるかに超えて液性免疫応答が増強された.これらの結果は,過去に感染した人にワクチン接種することが,Delta変異株を含む多くの流通しているウイルス株に対する防御となる可能性が高いことを強く示唆している.

過去にSARS-CoV-2に感染していない人では,Pfizer社またはAstraZeneca社ワクチンを1回接種しても,Delta変異株に対する中和抗体はほとんど誘導されなかったこの変異株を中和した血清の割合は約10%であったしかし,2回接種の場合,ワクチン接種後W8W16に採取された人では,Alpha株,Beta株,Delta株に対して高い中和抗体レベル(high sero-neutralization levels)が得られた.中和抗体レベルは,症候性SARS-CoV-2感染からの免疫防御を高度に予測する25).イングランドにおける症候性COVID-19症例をすべて解析した最近の報告書26)を用いて,ワクチン接種が感染に与える影響を推定した.AstraZeneca社またはPfizer社ワクチンを1回接種した後の有効性は,Alpha変異株よりもDelta変異株の方が顕著に低かった.Delta変異株に対する2回接種の有効性は,AstraZeneca社およびPfizer社ワクチンでそれぞれ60%および88%と推定された26)中和実験の結果,Pfizer社およびAstraZeneca社ワクチン誘発性抗体は,Delta変異株に対して有効であるが,Alpha変異株に比べると約35倍効果は低いことがわかった(less potentPfizer社とAstraZeneca社ワクチンによって誘発された抗体レベルには大きな違いはなかった

今回の研究の限界としては,解析したワクチン接種者数が少なかったことと,液性反応よりも交差反応性が高いと思われる細胞性免疫の特徴が明らかになっていないことが挙げられる.今後,より多くの人を対象とし,調査期間を長くすることで,流通している変異株に対するワクチン有効性における液性応答の役割を明らかにすることができるだろう.

今回の結果から,新しいDelta変異株は,過去のSARS-CoV-2感染やワクチン接種によって誘発される中和mAbsやポリクローナル抗体から,部分的ではあるが著明に逃避することが示された.

References

25) Khoury, D. S. et al. Neutralizing antibody levels are highly predictive of immune protection from symptomatic SARS-CoV-2 infection. Nature Medicine,

https://doi.org/10.1038/s41591-021-01377-8. (2021).

26) Bernal, J. L. et al. Effectiveness of COVID-19 vaccines against the B.1.617.2 variant. medRxiv, 2021.2005.2022.21257658,

https://doi.org/10.1101/2021.05.22.21257658. (2021).

 

 

 

 

 

 

 

COVID-19関連追加(202179-2

変異株とワクチンその11Delta株に対する中和活性)に715日追記しました

SARS-CoV-2 B.1.617変異株に対する感染およびワクチン誘発性中和抗体応答】

Edara V-V, et al. Infection and Vaccine-Induced Neutralizing-Antibody Responses to the SARS-CoV-2 B.1.617 Variants. N Engl J Med. July 7, 2021.

https://doi.org/10.1056/NEJMc2107799.

インドで発生したSARS-CoV-2の第2波の感染により、SARS-CoV-2変異株が出現していることがわかった.B.1.617.1(またはkappa)およびB.1.617.2(またはdelta)変異株は,インドで最初に確認され,急速に世界の数ヶ国に広がっている.これらの変異株には,強力な中和活性を持つ抗体が認識する抗原部位にスパイクタンパク質の変異が含まれている1)-3).我々は,感染者とワクチン接種者の血清を用いて,SARS-CoV-2変異株に対する中和活性をlive-virus assayで評価した.

解析には,20213月にカリフォルニア州スタンフォードの患者から採取した中鼻甲介スワブから分離されたB.1.617.1ウイルス(hCoV-19/USA/CA-Stanford-15_S02/2021と,20215月に患者から採取した鼻腔スワブから分離されたB.1.617.2ウイルス(hCoV-19/USA/PHC658/2021を使用したWA1/2020変異株(nCoV/USA_WA1/2020; spike 614D)と比較して,B.1.617.1およびB.1.617.2変異株は,N末端の抗原性スーパーサイト(N-terminal antigenic supersite4),受容体結合ドメイン(receptor-binding domain),多塩基性furin切断部位(polybasic furin cleavage)など,スパイク内の重要な領域に変異がある(Tables S1 and S2 in the Supplementary Appendix).そして我々は,Vero E6 cell lineTMPRSS2を発現するように設計されている)を用いたin vitrolive-virus focus reduction neutralization test FRNT50 [the reciprocal dilution of serum that neutralizes 50% of the input virus]5)を用いて,Covid-19感染から回復した24(症状発現から3191日後に採取1)mRNA-1273Moderna社)ワクチンを接種した15人(2回目の接種から3551日後に採取),そしてBNT162b2Pfizer-BioNTech社)ワクチンを接種した10人(2回目の接種から727日後に採取),から得た血清サンプルにおいて,WA1/2020に対する中和抗体応答と比較した.

感染者およびワクチン接種者のすべてのサンプルは,B.1.617.1およびB.1.617.2のいずれの変異株に対する中和活性がWA1/2020に比べて低下していた(Figure 1).回復期血清サンプルでは,B.1.617.1に対するFRNT50幾何平均力価(GMT: geometric mean titer)が7995%CI, 49-128)であったのに対し,WA1/2020に対するFRNT50幾何平均力価は51495%CI358-740)であった(5つのサンプルではB.1.617.1変異株に対する活性が検出されなかった); B.1.617.2に対するGMT20795%CI, 135-319)であったのに対し,WA1/2020に対しては50495%CI, 358-709)であった(1つのサンプルではB.1.617.2変異株に対する活性が検出されなかった).mRNA-1273ワクチン血清サンプルでは,B.1.617.1に対するGMT19095%CI, 131-274)であったのに対し,WA1/2020に対するGMT133295%CI, 905-1958)であった; B.1.617.2に対するGMT35095%CI, 229-535)であったのに対し,WA1/2020に対するGMT106295%CI, 773-1460)であった.BNT162b2ワクチン血清サンプルでは,B.1.617.1に対するGMT16495%CI, 104-258)であったのに対し,WA1/2020に対するGMT117695%CI, 759-1824)であった; B.1.617.2に対するGMT23595%CI, 164-338)であったのに対し,WA1/2020に対するGMT77695%CI, 571-1056)であった.3つのサンプルグループのうち,B.1.617.1およびB.1.617.2変異株に対するGMTは,WA1/2020株に対するGMTよりも有意に低かった

 

 

Figure 1: Neutralizing-Antibody Responses against the WA1/2020, B.1.617.1, and B.1.617.2 Variants.

https://www.nejm.org/na101/home/literatum/publisher/mms/journals/content/nejm/0/nejm.ahead-of-print/nejmc2107799/20210707/images/img_xlarge/nejmc2107799_f1.jpeg

我々の結果は,B.1.617.1変異株は,WA1/2020変異株と比較して,Covid-19回復者およびワクチン接種者の血清による中和感受性が6.8倍低く,B.1.617.2変異株は2.9倍低いことを示しているこの結果にもかかわらず,大部分の回復期血清(B.1.617.1に対して79%[24サンプルのうち19サンプル]B.1.617.2に対して96%[24サンプルのうち23サンプル])とワクチン接種者のすべての血清は,感染後またはワクチンの2回目接種後3ヶ月において,両変異株に対して検出限界を上回る中和活性を示した.このように,mRNAワクチンによって付与された防御免疫は,B.1.617.1およびB.1.617.2バリアントに対しても維持される可能性が高い.

 

 

 

 

 

 

References

1) Edara VV, Norwood C, Floyd K, et al. Infection- and vaccine-induced antibody binding and neutralization of the B.1.351 SARS-CoV-2 variant. Cell Host Microbe 2021;29(4):516.e3-521.e3.

2) Liu Z, VanBlargan LA, Bloyet L-M, et al. Identification of SARS-CoV-2 spike mutations that attenuate monoclonal and serum antibody neutralization. Cell Host Microbe 2021;29(3):477.e4-488.e4.

3) Plante JA, Mitchell BM, Plante KS, Debbink K, Weaver SC, Menachery VD. The variant gambit: COVID-19’s next move. Cell Host Microbe 2021;29:508-515.

4) Cerutti G, Guo Y, Zhou T, et al. Potent SARS-CoV-2 neutralizing antibodies directed against spike N-terminal domain target a single supersite. Cell Host Microbe 2021;29(5):819.e7-833.e7.

5) Vanderheiden A, Edara VV, Floyd K, et al. Development of a rapid focus reduction neutralization test assay for measuring SARS-CoV-2 neutralizing antibodies. Curr Protoc Immunol 2020;131(1):e116-e116.

 

Supplementary appendix