COVID-19関連追加(2021711日)

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2021415

2021625

COVID-19ワクチンBNT162b2の液性および細胞性免疫応答に対するメトトレキサートおよび標的免疫抑制の影響: コホート研究】

Mahil SK, et al. The effect of methotrexate and targeted immunosuppression on humoral and cellular immune responses to the COVID-19 vaccine BNT162b2: a cohort study. Lancet Rheumatology. July 8, 2021.

https://doi.org/10.1016/S2665-9913(21)00212-5.

Background

免疫介在性炎症疾患のために治療的免疫抑制剤を服用している患者は,COVID-19ワクチンの臨床試験から除外されていた.そこで我々は,メトトレキサートおよび一般的に使用されている標的生物学的療法を受けている患者を対象に,COVID-19ワクチンBNT162b2Pfizer-BioNTech社)に対する液性および細胞性免疫応答を健常対照者と比較して評価することを目的とした.人口カバー率を最大化するために,接種間隔を延長するプログラムが展開されていることを考慮し,我々は初回接種後の所見を示した.

Methods

このコホート研究では,皮膚科医により乾癬と確定診断され,メトトレキサートまたは標的生物学的単剤療法(腫瘍壊死因子[TNF]阻害剤,インターロイキン[IL]-17阻害剤,IL-23阻害剤)を受けている連続患者を,ロンドンおよび南東イングランドの乾癬専門センターから募集した.また,Guy's and St Thomas' NHS Foundation Trust London, UK)でワクチン接種のために来院した,乾癬ではなく,そして全身性免疫抑制治療を受けていない連続ボランティアを健常対照コホートとした.すべての参加者はBNT162b2ワクチン接種を受ける資格を有していた.免疫原性は,ワクチン接種直前と接種後28日目(±2日)に評価した.中和アッセイは,Wuhan-Hu-1スパイク(野生型[WT]),またはB.1.1.7変異株スパイクを組み込んだ疑似型HIV粒子を用いた疑似ウイルスアッセイを用いた.主要評価項目は,SARS-CoV-2スパイク糖タンパク質に対する液性免疫(野生型SARS-CoV-2に対する中和抗体応答と定義)と,ワクチン接種から28日後のスパイク特異的T細胞応答(インターフェロン-γ,IL-2IL-21を含む)であった.

Results

2021114日〜44日の間に,免疫抑制剤を投与されている乾癬患者98人と,健常ボランティア23人(対照群)を募集した.過去のCOVID-19appendix p8)に基づいて10人(対照群6人,メトトレキサート投与患者1人,IL-23阻害剤投与患者3人),ChAdOx1 nCoV-19ワクチンを接種していた10人を最終解析から除外した.最終解析対象者は,対照者17人と,メトトレキサート(17[20%]),TNF阻害剤(27[32%]),IL-17阻害剤(15[18%]),IL-23阻害剤(25[30%])による単剤治療を受けている乾癬患者84人で,いずれもグルココルチコイドを併用していなかった(Figure 1).解析に参加したすべての被験者は,試験スケジュールのプロトコルに従った.

Figure 1: Study overview.

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参加者の年齢中央値は43歳(IQR 31-52),男性が56人(55%),女性が45人(45%),そして人種は白人が85人(84%)であった(Table 1).84人の乾癬患者において,乾癬罹患期間の中央値は21年(IQR 15-33),20人(24%)は乾癬性関節炎を併発しており,BMIの中央値は28.7kg/m2IQR 26.4-33.1)であった.免疫抑制療法の遵守はすべての参加者に確認され,ワクチン接種前または接種中に免疫抑制剤を一時休薬または中止したと報告した参加者はいなかった.メトトレキサート投与量の中央値は15mg/週(IQR 15-20)であった.現在の免疫抑制剤の投与期間の中央値は3.3年(IQR 1.3-5.3)で,すべての研究グループの参加者は,ベースラインの疾患重症度で示されるように,乾癬が十分にコントロールされていた.男女別のベースライン特性を付録(p4)に示す.

Table 1: Baseline characteristics of study participants.

免疫抑制療法を受けている乾癬患者84人のうち63人(75%)が,BNT162b2ワクチンの初回接種後28日以内に軽度の有害事象を報告したのに対し,対照17人のうち16人(94%)が報告した(appendix p6).有害事象データは4人の患者で欠落していた.17人の患者(20%)と1人の健常対照者(6%)が副作用を報告せず,そして中等度または重度の有害事象を報告した参加者はいなかった.最も多かった局所性有害事象は,注射部位の痛みで,患者55人(65%),対照群14人(82%)から報告された.全身性有害事象は,患者36人(43%)と対照群7人(41%)から報告された.最も一般的な全身性有害事象は,倦怠感と頭痛であった.試験期間中にCOVID-19を報告した被験者はいなかった.ワクチン接種後に乾癬が悪化したと報告した患者は9人(11%)であった: 4人がIL-23阻害剤,2人がメトトレキサート,3人がTNF阻害剤を使用していた.

メトトレキサートの2人,TNF阻害剤の3人,IL-23阻害剤の2人については,液性および細胞性データが不足していた.健常対照1人については利用できる細胞性データがなかった.対照群では,BNT162b2ワクチン接種後にセロコンバージョンの証拠が得られたのは17人の参加者のうち17人(100%; 95%CI 80-100)であり,一方免疫抑制剤を投与されている77人の患者では60人(78%; 67-87)であった(Table 2).最もセロコンバージョン率が低かったのはメトトレキサートを投与されている患者であった(15人のうち7[47%; 95%CI 21-73]がセロコンバージョンした)TNF阻害剤を投与されている患者(24人のうち19[79%; 95%CI 58-93])およびIL-23阻害剤を投与されている患者(23人のうち19[83%; 61-95])のセロコンバージョンも対照と比較して低かったが,その程度はメトトレキサートを投与されている患者に比べて軽かった.まとめると,メトトレキサートは,健常対照(β= 0.76 [95%CI 1.05-0.48]; p= 0.0001)や標的生物学的療法(β= 0.52[0.77-0.26]; p= 0.0001)よりも低いセロコンバージョン率と関連していた

 

 

Table 2: Immunogenicity of the first dose of the COVID-19 vaccine BNT162b2.

A threshold EC50 value of 25 was used for anti-SARS-CoV-2 IgG titres, at which serological responses were classified as positive. A threshold value of 30 cytokine-secreting cells per million peripheral blood mononuclear cells was established for total T-cell responses (interferon-γ, IL-2, or IL-21), at which the T-cell response was classified as positive. EC50=half maximal effective concentration. Humoral and cellular data were missing for two patients on methotrexate, three patients on TNF inhibitors, and two patients on IL-23 inhibitors. No cellular data were available for one healthy control. IL=interleukin. TNF=tumour necrosis factor.

 

 

血清反応を示した患者のうち,免疫抑制剤を投与されている乾癬患者は,BNT162b2の初回接種から28日後のスパイク特異的IgG価(50%最大効果濃度[EC50]43[IQR 25-162])の中央値が対照者よりも低かった(101[55-200]; Figure 2; appendix p9ワクチン接種から28日後の時点で,メトトレキサートを投与されている患者の抗スパイクIgG抗体価の中央値は,対照と比較して有意に低かった(31 [IQR 25-48], p= 0.015スパイク特異的IgG価の中央値は,メトトレキサートを投与されている患者の方が,標的生物学的療法を受けている患者よりも数値的には低いが,有意ではなかった(48 [IQR 25-174], p= 0.26

Figure 2: Serological immune responses to COVID-19 vaccine BNT162b2.

Spike-specific IgG titres (EC50) in plasma samples on day 28 after vaccination in healthy controls and patients with psoriasis receiving methotrexate or targeted biological monotherapy. The circles represent individual values. The red diamonds and range lines indicate the median and IQR. In the IL-23 inhibitor group, filled circles represent participants receiving IL-23p19 inhibitors and hollow circles represent participants receiving an IL-12/23p40 inhibitor. The horizontal dashed line indicates the seroconversion threshold. EC50=half maximal effective concentration. IL=interleukin. TNF=tumour necrosis factor.

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メトトレキサートと標的免疫抑制剤の投与されている人の間で観察されたBNT162b2に対する血清反応の違いをさらに詳しく調べるために,我々は次に,セロコンバージョンの機能的効果を評価した.中和活性の証拠があった人のうち,TNF阻害剤,IL-17阻害剤,IL-23阻害剤を投与されている人は,野生型SARS-CoV-2に対する中和価(50%阻害濃度[ID50])が対照者と同程度であった(Figure 3A)一方,メトトレキサートを投与されている患者は,中和価の中央値(ID50 129 [IQR 40-236])が健常対照者(317 [213-487], p= 0.0032)や標的生物学的治療を受けている患者(269 [141-418], p= 0.011)よりも低かった.

 

 

Figure 3: Functional humoral immunogenicity of the COVID-19 vaccine BNT162b2.

(A) Neutralisation titres against wild-type SARS-CoV-2 on day 28 after the first dose of BNT162b2. (B) Neutralisation titres against B.1.1.7 SARS-CoV-2 variant on day 28 after the first dose of BNT162b2. The circles represent individual values. The red diamonds and range lines indicate the median and IQR. In the IL-23 inhibitor group, filled circles represent participants receiving IL-23p19 inhibitors and hollow circles represent participants receiving an IL-12/23p40 inhibitor. The horizontal dashed line indicates neutralisation activity threshold. (C) Correlation between spike-specific IgG and neutralisation titres against wild-type or the B.1.1.7 variant. Blue diamonds show individual patients, shading indicates the 95% CI. EC50=half maximal effective concentration. ID50=50% inhibitory dilution. IL=interleukin. TNF=tumour necrosis factor.

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B.1.1.7変異株に対する中和活性は,BNT162b2の初回接種後,すべての試験参加者で低く(Figure 3B),対照者と免疫抑制剤を投与されている患者との間に差は見られなかった(ID50中央値61[IQR 36-195] vs 54[38-108], p= 0.92.セロコンバージョンはスパイクに結合するIgGの存在によって決定されたが(中和能力は評価していない),血漿中和はIgMIgAIgGによって媒介される可能性がある.それにもかかわらず,各試験群の野生型とB.1.1.7株の両方において,抗スパイクIgG価は中和と正の相関を示した(Figure 3C.また野生型とB.1.1.7株の中和価も相関していた(appendix p10).Th1サイトカインプロファイル(IL-2とインターフェロン-γで特徴づけられる)を持つT細胞の頻度は,メモリーT細胞応答を含むワクチン誘発細胞性免疫の評価に広く用いられており17)T濾胞ヘルパー(Tfh)由来のIL-21はメモリーB細胞応答に不可欠である18)ROC曲線解析(Receiver operator characteristic curve analysis)により,総T細胞応答(Th1またはTfh; インターフェロン-γ, IL-2, およびIL-21の組み合わせ)および各サイトカインについて陽性反応を判定するための閾値が設定された(appendix p11).すべての試験群は,一般的に遭遇するウイルスや真菌抗原に由来するペプチドに対して幅広いサイトカイン応答を示し,どの群においても反応の大きさや極性に大きな違いは見られなかった(appendix p12).

全ての試験群で,BNT162b2の初回接種から28日後に,インターフェロン-γ,IL-2,またはIL-21産生で示されるスパイク特異的T細胞応答が認められた(Figure 4A; appendix p13T細胞応答率は,メトトレキサートと標的生物製剤を投与されている患者と対照群で同様であった(Table 2回帰解析では,メトトレキサートは,健常対照(β= 0.65 [95%CI 0.07-1.24], p= 0.029)あるいは標的生物学的製剤(β= 0.12 [0.28-0.53], p= 0.53)と比較して細胞性免疫原性の低下とは関連しなかったT細胞応答の大きさは,インターフェロン-γ,IL-2IL-21の複合応答(Figure 4A),および個々のサイトカインに関する応答(appendix p14)のいずれについても,すべての試験群間で同様であった

Figure 4: Cellular immunogenicity of the COVID-19 vaccine BNT162b2.

(A) Total T-cell response, as determined by combined interferon-γ, IL-2, and IL-21 responses to stimulation with peptides from total spike peptide pools, reported as number of cytokine-secreting cells per 106 cells in PBMC samples on day 28 after the first dose of BNT162b2. The horizontal line indicates the T-cell response threshold. (B) IL-17A and IL-22 responses to stimulation with peptides from total spike peptide pools, reported as number of cytokine-secreting cells per 106 cells in PBMC samples on day 28 after the first dose of COVID-19 vaccine BNT162b2. The horizontal line indicates the T helper 17 response threshold. The circles represent individual values. The red diamonds and range lines indicate the median and IQR. In the IL-23 inhibitor group, filled circles represent participants receiving IL-23p19 inhibitors and hollow circles represent participants receiving an IL-12/23p40 inhibitor. (C) Spearman correlation between T-cell responses (cytokine-secreting cells per 106 PBMCs) and humoral immune responses as determined by ELISA and neutralisation assays. The colour scale indicates the Spearman R values; all p values are less than 0·01. EC50=half maximal effective concentration. ID50=50% inhibitory dilution. IL=interleukin. PBMCs=peripheral blood mononuclear cells. TNF=tumour necrosis factor.

 

 

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T細胞応答は,メトトレキサート(8人のうち7人),TNF阻害剤(5人のうち3人),IL-23阻害剤(4人のうち1人)を投与されていた血清非反応者(セロコンバージョンの証拠がない人)にも認められたこのように,メトトレキサートまたは標的生物製剤を投与されている患者では,ワクチン接種後にT細胞応答が正常に誘導され,液性免疫原性の検出とは無関係に,各群間で同程度の応答が得られた

乾癬の病因においてTh17免疫が中心的な役割を果たしていること,標的IL-17阻害治療効果10),そしてTh17細胞活性化と重篤COVID-19の関連15)16)を考慮して,我々は次に全試験群のスパイクペプチドプールに対するIL-17AおよびIL-22サイトカイン応答を解析した.IL-17AおよびIL-22応答は,4つの免疫抑制剤群すべてにおいて低く,対照群で見られた応答と同様であった(Figure 4Bインターフェロン-γ,IL-2,およびIL-21T細胞応答(特にインターフェロン-γ)は,血清および機能的液性免疫応答と広く相関していた(Figure 4C一方、Th17型応答と液性免疫との間には相関は見られなかった.しかし,サイトカインや薬剤のカテゴリーによって,相関の強さにばらつきがあった(appendix p15).

最後に我々は,免疫抑制療法を受けている4人(メトトレキサート1人,IL-23阻害剤3人)の液性および細胞性免疫応答を評価した.この4人は,BNT162b2の初回接種を受けたが,過去のSARS-CoV-2自然感染が確認されたため,本研究から除外された.液性免疫を解析したところ,野生型SARS-CoV-2B.1.1.7変異株のどちらに対しても,ワクチン接種後28日目に強固な血清および中和応答が認められた(appendix p16).同様に,28日目に強固な細胞性免疫応答が確認された(appendix p16).これらの液性および細胞性免疫応答は,同じ免疫抑制療法を受けているナイーブである試験参加者(および対照者)のそれを上回っていた

Discussion

本研究では,メトトレキサート,TNF阻害剤,IL-17阻害剤,IL-23阻害剤による単剤療法を受けている人を対象に,BNT162b2ワクチンの初回接種に対する液性および細胞性免疫応答を評価した.本研究では,乾癬に対する免疫抑制剤を単剤投与され,副腎皮質ステロイドを併用していない同質のコホートを使用することで,ワクチンの免疫原性に対する(疾患特異的ではなく)薬剤特異的影響を調べることができた.メトトレキサートを投与されている患者では,野生型SARS-CoV-2株に対するセロコンバージョンおよび中和能力が,標的生物学的療法を受けている患者や健常対照者に比べて低かったまた,B.1.1.7変異株に対する中和価は,いずれの群でも低かったしかし,注目すべきことに,Th1およびTfh応答を含むBNT162b2による細胞性免疫は,すべての免疫抑制剤群で示され,対照群と同様であり,他の対照コホートで観察されたレベルとも同様であった11)14)

標的生物学的製剤を用いたワクチンの免疫原性に関する我々の知見は心強いものであるが,メトトレキサートを投与されている患者の結果は,液性免疫原性と細胞性免疫原性の間の格差を浮き彫りにしている.この知見の臨床的意義については,さらなる研究が必要である.我々の研究は,免疫抑制患者のCOVID-19ワクチンに対する血清応答のみを評価し,中和抗体応答(体液性免疫原性のゴールドスタンダード)や細胞性免疫を考慮していない最近の研究に基づいている19)20)21)22)TNF阻害剤を投与されている患者のスパイク特異的IgGが対照群に比べて低いことを示した我々のデータと一致するように,炎症性腸疾患患者1293人を対象とした研究では,TNF阻害剤(インフリキシマブ)を投与されている患者は,ベドリズマブ(腸管選択的インテグリン阻害剤)を投与されている患者の参照コホートに比べて,ワクチン単回接種後の抗体価とセロコンバージョン率が低いことが示された19).多変量解析モデルでは,60歳以上の年齢と併用療法(アザチオプリン,メルカプトプリン,メトトレキサート)がSARS-CoV-2抗体価の低下と関連することが明らかになった; しかし,中和抗体価や細胞性免疫(TNF阻害剤を投与されていたコホートと対照コホートでは同様であった)については検討されなかった.また,代謝拮抗型免疫抑制剤(ミコフェノール酸モフェチル,ミコフェノール酸,アザチオプリン)を投与されている固形臓器移植患者は,そのような免疫抑制剤を投与されていない人に比べて,単回ワクチン接種に対する血清応答が低かった22).最後に,固形がんや血液がんの免疫不全患者では,単回ワクチン接種の細胞性および液性免疫原性は低かった14).この結果は,免疫介在性炎症疾患の免疫抑制患者では,細胞性免疫応答が損なわれていないという我々のデータとは対照的であり,基礎疾患である悪性腫瘍や免疫抑制剤の種類や負荷の影響によるかもしれない14).我々のデータセットでは,BNT162b2の初回接種により,対照群および免疫抑制剤を投与されている患者の大部分で,スパイクペプチドプール全体に対する好ましいT細胞応答(インターフェロン-γ,IL-2IL-21)が誘導され,メトトレキサートまたは標的生物学的製剤の単剤投与されている患者では,対照群と比較して細胞性免疫の低下は認められなかった.さらに,メトトレキサートや標的生物学的製剤の投与を受けていて血清応答がなかった患者のT細胞が,ワクチン接種後にT細胞応答を示し,液性および細胞性応答の格差が明らかになった.

ワクチン接種後の免疫防御の真の体外相関性や,液性免疫と細胞性免疫の相対的な重要性については不明である.COVID-19ワクチンに対する反応に関するこれまでの研究では,圧倒的に血清応答に焦点が当てられており,使用されている実験方法には大きな違いがあり(アッセイの比較可能性が制限されている),防御に必要な抗体のレベル(すなわち臨床的有効性)は示されていない.さらに,液性免疫が低下している状況で,SARS-CoV-2感染を防ぐための細胞性免疫応答の重要性はまだ明らかになっていない.ワクチンによって誘発される細胞性免疫は,免疫応答が低下した患者がインフルエンザなどの呼吸器ウイルスから防御するためには,液性免疫よりも優れた代替手段となるかもしれない23)24)

細胞性免疫は,SARS-CoV-2の除去とCOVID-19からの回復に極めて重要であることが示されている25)26)COVID-19患者では,SARS-CoV-2特異的CD4およびCD8 T細胞応答が観察され27),メモリーB細胞とTfh細胞が回復後に同定された.SARS-CoV-2スパイク糖タンパク質,核タンパク質,マトリックスに由来するペプチドを認識するT細胞が回復期に見られたが,T細胞数の減少,T細胞の疲弊,炎症性サイトカインの増加は,重症COVID-19の特徴である.このように,ワクチン接種後の細胞性応答は,SARS-CoV-2に対する総合的なワクチン効果に影響を与える可能性がある.メトトレキサートや生物学的療法がT細胞の増殖,活性化,サイトカイン産生に影響を与えることが知られていることを考えると,ワクチン接種後の細胞性応答に関する我々のデータは心強い.

我々の知見は,メトトレキサートが液性免疫を減弱させることを示す既存のデータを支持するものである; メトトレキサートは,抗薬物抗体(anti-drug antibody)の発生を防ぐために治療的に使用され,季節性インフルエンザ(特に新型)および肺炎球菌に対するワクチン血清応答を低下させる8)28).関節リウマチを対象とした試験データでは,インフルエンザワクチン接種後2週間はメトトレキサートを一時的に中止した方が,メトトレキサートを継続した場合に比べて血清防御率が高まる可能性が示されている29).しかし,評価されたのは液性免疫原性のみであり,抗体応答の上昇がインフルエンザ感染の発生率に及ぼす臨床的意義は不明である.レジストリデータによると,免疫介在性炎症疾患に対するメトトレキサートや生物学的単剤療法は,COVID-19の有害な転帰とは関連していないことが示唆されている30)31).そのため,メトトレキサート投与によるBNT162b2に対する液性応答の低下が,SARS-CoV-2の感染リスクの増加につながるかどうかは不明である.

これらのデータは,様々なSARS-CoV-2変異株に対するワクチンの免疫原性の違いも明らかにしている.スパイク糖タンパク質に変異を持つ新しい変異株は,ワクチンによって誘導される防御免疫を逃避する可能性があり,スパイクタンパク質に9つのアミノ酸の変化を持つ伝播性の高いB.1.1.7変異株は,ワクチン接種や感染後に産生される抗体による中和に対して抵抗性が高いことが示されている32)33)34)2回目のワクチン接種後の反応を評価することは非常に重要であるが,我々は,対照群と免疫抑制剤を投与されている乾癬患者群の両方において,ワクチン接種後のB.1.1.7に対する中和が低いことを確認しており,1回目のワクチン接種後も継続してリスクを軽減する必要性を強調する.ワクチン接種によって産生されたB.1.1.7に対する中和抗体価は,症候性COVID-19に対する臨床的なワクチン有効性とは相関しない可能性があることを示す新たな証拠がある35).そのため,新しい系統のSARS-CoV-2に対するワクチンによる防御において,細胞性免疫(T細胞やナチュラルキラー細胞応答,抗体依存性細胞性傷害あるいは貪食作用)がどのように寄与しているかを調査する必要がある.

本研究では,既存のデータセットのいくつかの限界に取り組んだ.本研究では,比較的若く均質なコホートにおいて,異なる免疫抑制剤治療がワクチンによる液性および細胞性免疫応答に及ぼす影響を検討した.本研究では,参加者が同じ免疫介在性炎症疾患(乾癬)に罹患しており,疾患活動性が低い,または全くないこと,他の免疫抑制剤やグルココルチコイドとの併用療法を受けていないことから,交絡は限定される.免疫抑制剤の第一選択薬として広く処方されているメトトレキサートに加え,免疫介在性炎症疾患に使用される主要な生物学的製剤が含まれていた.本研究の限界は,参加者数が限られていることと,2回目(ブースター)のワクチン接種後の免疫原性データがないことである.参加者数は少なかったものの,試験群はベースラインの人口統計に関してよく一致しており,免疫応答の複数の構成要素がプロファイリングされているため,今後の大規模な研究に役立つだろう.今回の中間解析では,プライミング用量のワクチンの免疫効果の特徴を明らかにすることに重点を置いたため,長期的なデータは示されていない.励みになるのは,過去にSARS-CoV-2に感染して免疫抑制治療を受けていた4人の患者において,BNT162b2の初回接種後に強固な液性および細胞性応答が観察され,免疫応答のプライミングが行われたことである.これは、免疫正常者における観察結果と一致している11).免疫抑制治療を受けているナイーブ患者への(12週間の間隔を空けての)ブースター接種後の免疫原性データの継続した観察が期待される.

世界的にCOVID-19の大量接種プログラムが進行中であるが,免疫抑制患者におけるワクチン有効性については,免疫逃避を脅かす新規SARS-CoV-2変異株に対するものも含め,懸念が残っている.ワクチン接種後のCOVID-19リスクに対応する免疫応答の指標は現在のところ不明であり,免疫抑制患者を対象とした新しい研究は血清応答のみに焦点を当てている.血清応答は,ワクチンに対する複雑な免疫応答を代表するものではないため,単独で考えた場合,臨床的な有用性は限られる可能性があることを示している.中和活性とは無関係に,他の生物学的製剤とメトトレキサートの間で細胞性免疫原性が維持されていることを示す我々のデータは心強いが,この知見がワクチンの臨床的有効性につながるかどうかは,現在進行中のファーマコビジランス研究によって決定される.T細胞応答の大きさと質は,さらにワクチンを接種することによっても影響を受けるため,ブースター接種後の細胞動態を解析することが重要である.しかし,メトトレキサートを投与されている患者では,BNT162b2の初回接種の機能的液性免疫原性が減弱することが観察され,そして,すべての試験参加者でB.1.1.7に対する中和活性が低いことから,初回接種とブースター接種の間隔を短くすることが望ましいと考えられる.これらのデータは,SARS-CoV-2への曝露を減らすために,初回接種後も継続して厳格なリスク軽減策を講じる必要があることを強調している36)

 

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Date: Nov 27, 2020

Date accessed: June 24, 2021