COVID-19関連追加(2021716-22回目接種後のスパイク抗体の減弱

BNT162b2またはChAdOx12回目接種後のスパイク抗体の減弱】

Shrotri M, et al. Spike-antibody waning after second dose of BNT162b2 or ChAdOx1. Lancet. July 15, 2021.

https://doi.org/10.1016/S0140-6736(21)01642-1.

SARS-CoV-2スパイク糖タンパク質をベースにしたワクチンは,感染を抑制し,COVID-19によるmorbidityや死亡率を抑えるために,世界各地で展開されている.現在のエビデンスでは,BNT162b2PfizerBioNTech社)およびChAdOx1 nCoV-19OxfordAstraZeneca社)の免疫原性は高く,短期的な有効性も高いことが示されている1)2)3)どちらのワクチンもプライム・ブースト方式(prime-boost strategy)で投与されるが,英国を含む多くの国では,初回接種のカバー率と免疫原性を最大限に高めるために,接種間隔を34週間より長い期間で設定されている.世界的に高い発生率で推移しており,さらに伝播性の高いSARS-CoV-2変異株の可能性から,さらなるブースター接種の必要性を明確にするために,長期的なワクチン有効性と未感染者の抗体動態に関するデータが不可欠である.

2回目の完全接種後のスパイクタンパクに対する抗体(S抗体)レベルの減弱の早期兆候を確認するために,イングランドとウェールズで行われている縦断的コミュニティコホート研究”Virus Watch”に血液サンプルを提出した成人完全接種者(18歳以上)を対象に,クロスセクション解析を行った4).本研究は,Hampstead NHS Health Research Authority Ethics Committee20/HRA/2320)から倫理的な承認を得た.血清は,Elecsys Anti-SARS-CoV-2 S and N electro-chemiluminescent immunoassaysRoche Diagnostics, Basel, Switzerlandを用いて検査された; SアッセイはスパイクタンパクのS1サブユニットに対する総抗体(total antibodies)を対象とし(range 0.4-25,000 units/mL [U/mL],一方Nアッセイは全長ヌクレオカプシドタンパクに対する総抗体を対象としている(我々は過去のSARS-CoV-2感染のプロキシとして用いている)(特異度99.8% [99.3-100]5).血清検査の結果は,登録時に収集した人口統計および臨床情報,ならびに週ごとに自己申告したワクチン接種状況と関連付けられた.

2021614日〜15日にかけて,成人605人によって有効なサンプルが提出された.参加者605人のうち321人(53%)が女性であり,年齢の中央値は63歳(IQR 58-67)であった.605人のうち,186人(31%)が「臨床的に脆弱」,117人(19%)が「臨床的に極めて脆弱」,302人(50%)が「臨床的に脆弱ではない」と分類された(その他の参加者の特徴および臨床的脆弱性の定義については,appendixを参照).参加者は,2回目接種から14154日後(中央値42[IQR 30-53])に採取された1つのサンプルを提供した.605人のうち197人(33%)がBNT162b2ワクチン接種者,405人(67%)がChAdOx1ワクチン接種者であった; 3人(1%未満)についてはワクチンの種類が不明であった.1回目と2回目の接種間隔の中央値は77日(IQR 70-78)であった

感染歴のある参加者(N-血清陽性; n= 47)のS抗体レベルの中央値は9091 U/mLIQR 3143-16,135)であった; ChAdOx1(中央値5179[IQR 2432.5-9513.5])は,BNT162b2(中央値13,025[9091-25,000])に比べて,S抗体レベルの中央値は25倍低かった.N-血清陰性者は,N-血清陽性者に比べて,S抗体の平均値が7倍低かった(中央値1257 U/mL[IQR 616-3526]; この未感染者のグループでは,ChAdOx1(中央値864[IQR 481-1395])は,BNT162b2(中央値5311[3133-8829])に比べて中央値は6倍低かった

N-血清陰性サンプルにおいて,2回目接種から1420日後,2141日後,4255日後,5669日後,70日後以上,でのS抗体レベルの分布を調べた(ワクチンの種類で層別化し,そして時間経過に伴う抗体レベルの一般的な傾向を推測し、傾向に関するノンパラメトリック検定からp値を算出した.ChAdOx1BNT162b2において接種間隔が長い場合よりも短い場合の方が免疫原性は低いことが実証されているため6)7),接種間隔が2128日と短かった2人を除外し(初回接種日が不明の場合は,接種間隔が長いと仮定),合計552人を解析対象とした.

ChAdOx1p< 0.001)とBNT162b2p< 0.001; Figure, appendix)の両方で,時間経過とともにS抗体レベルが低下する有意な傾向が見られ,2回目接種から2141日後あるいは70日以上後の間で,ChAdOx1では約5倍,BNT162b2では約2倍,S抗体レベルが低下していた.この傾向は,性別,年齢,臨床的脆弱性で層別化しても一貫していた(appendix).BNT162b2では,S抗体レベルは,2141日後の中央値7506 U/mLIQR 4925-11950)から70日以上後の3320 U/mL1566-4433)まで低下した; ChAdOx1では,S抗体レベルは,020日目の中央値1201 U/mLIQR 609-1865)から70日以上後の190 U/mL67-644)まで低下した.

 

 

Figure: Levels of antibody against the spike glycoprotein of SARS-CoV-2 (S-antibody) at defined timepoints after second dose of vaccination (with extended dose intervals) in individuals with no previous infection, stratified by vaccine type.

 

 

いずれのワクチンの種類においても,女性は男性よりも接種2142日後の初期S抗体レベルが高く,70日以上後でも高いレベルを示した(appendix同様に,1864では,65歳以上と比べて,接種後2142日により高いレベルを示し,70日以上後でもより高いレベルを示した(appendix

 

BNT162b2ワクチン接種者では,接種後2141日の抗体レベルのピーク値において,臨床的脆弱性の状態によって若干の格差が認められたが,このパターンはChAdOx1では認められなかった(appendix).70日後以上では,BNT162b2では脆弱性群で抗体レベルが高くなり,ChAdOx1では逆のパターンとなり,格差が認められた.これらのデータは,臨床的脆弱性群内での根本的な不均一性を示唆しており,また,臨床的に極めて脆弱性である層の数が少ないために限界がある.しかし,時間経過とともにS抗体レベルが低下する傾向は一貫しており,臨床的脆弱性群のChAdOx1ワクチン接種者において,接種70日後以上でS抗体レベルが低いのは,懸念すべきことである.

我々のデータは,ChAdOx1またはBNT162b22回目接種後,310週間かけて未感染者のS抗体レベルが低下することを示唆している.これらのデータは,メモリーB細胞集団は維持されているようであるが,感染後に観察されるスパイク抗体および中和抗体レベルの低下と一致している8)9)このように,ワクチン接種後の抗体レベルの低下が臨床的にどのような意味を持つのかはまだ明らかになっておらず,臨床的な結果からの防御に関連するS抗体の閾値を確立することが重要である

免疫応答に影響を与えると思われる主要な変数で層別化しても傾向は一貫していたが,人数が少ないため,年齢や投与間隔による交絡が残っている可能性がある.また,今回の結果はクロスセクションデータであるため,限界がある.より多くの参加者を対象にして,潜在的な交絡をより適切に調整できるようにするとともに,612ヶ月にわたって個人の抗体動態を縦断的に追跡し,プラトーレベルやセロコンバージョンまでの期間を確立するために,この解析は繰り返す必要がある.

抗体レベルが高ければ,部分的に免疫を逃避しうる変異株に対する防御が高くなる可能性があり,Delta変異株(B.1.617.2)に対するBNT162b2の有効性がChAdOx1と比較して高い(一部は暫定的)ことを説明できるかもしれない10)11).したがって,ある群の抗体レベルが他の群よりも早く防御の閾値を下回った場合(まだ定義されていない),ワクチンの種類,そしてより少ない程度であるが,人口グループにおけるピーク抗体レベルの格差が重要になるかもしれない.しかし,特に抗体応答が弱い,あるいは欠如している人においては,T細胞介在性免疫の重要性を示唆する証拠が蓄積されており12),そのため抗体応答が弱まってもT細胞応答がある程度補う可能性がある.

英国のJoint Committee on Vaccination and Immunisation(予防接種に関する合同委員会)からのブースター接種を支持する最近のアドバイス13)や,これらのデータが示唆するS抗体の急速な低下を考慮すると,暫定的データではあるが,より強い抗体およびT細胞応答を引き起こすとされる異種混合レジメン14)15)は,より持続的な免疫を提供し,新たに出現した変異株に対してより高い防御を発揮する可能性が示唆されている.しかし,異なる接種間隔や様々な異種混合接種の組み合わせが,臨床結果に最終的にどのような影響を与えるかについては,依然として重要な未解決問題である.特に,世界的なワクチン不平等が問題になっている中で,高所得者層に普遍的なブースター接種を行うことの倫理的根拠を慎重に検討する必要がある.抗体のピークと減少の格差に関するデータは,ターゲットを絞って公平にブースターを展開する際に役立つかもしれない.

 

References

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Supplementary appendix