COVID-19関連追加(2021719日)変異株とワクチンその12

【海外からの到着者を対象としたSARS-CoV-2検査およびシーケンスが,高リスクの変異株が国境を越えて英国に伝播していることを明らかにした】

Williams GH, et al. SARS-CoV-2 testing and sequencing for international arrivals reveals significant cross border transmission of high risk variants into the United Kingdom.

EClinicalMedicine. July 14, 2021.

https://doi.org/10.1016/j.eclinm.2021.101021.

Introduction

SARS-CoV-2[[1]]は,COVID-19を引き起こし,その後2021510日現在、世界中で15000万人以上が感染し,少なくとも330万人が死亡している[[2]]SARS-CoV-2は,BetacoronavirusSARS-related coronavirusSARSr-CoV)種に属し,大きな(〜30kb+ssRNAゲノムが特徴である.SARS-CoV-2は,他のすべての既知のヒトコロナウイルスと同様に,パンゴリン[[3]],コウモリ[[4]],またはその中間種[[5]]を起源とする最近の人獣共通感染症と考えられている.

RNAウイルスは変異率が高く,この変異率の高さが病原性や進化性の強化につながっている[[6]].また,コロナウイルスは、ウイルスの進化適応能力を高めるために,感染イベント(co-infection events)において組み換えを行う傾向がある[[7]].これらの生物学的特性により,SARS-CoV-2はヒト宿主に迅速に適応し,ワクチンによって誘発される進化を遂げる可能性がある.実際,パンデミックが発生して以来,少なくとも1250の異なる変異株が確認されている[[8]].最初に発見された変異株は,祖先の「S型」(後にA型に再分類)と「L型」(後にB型に再分類)(これは,すぐに武漢で優勢になった)であった[[9]]20202月に北イタリアで出現したB.1系統は,その後の第2波でB.1.177の変異株に取って代わられた[[10]]

B.1.1.7は,ケント州で最初に確認され,現在では英国で主流となっているVOCvariant of concern)である.17の変異で特徴づけられ,特に3つのスパイクタンパクの変異が最も重要であると考えられている[[11]]N501Yはスパイクタンパク質の受容体結合ドメイン(RBD)に認められ,ウイルスがヒトの細胞に侵入する際の主要な手段であるヒトのアンジオテンシン変換酵素2ACE2)との結合親和性を高めることが示されている.69-70delは,N501Yとの組み合わせで伝播性の増加につながると考えられている.P681Hは,フリンの開裂部位に隣接しており,膜融合に影響を与える可能性がある[[11]]B.1.1.7変異株は,伝播性の増強を示しているが[[12]],臨床的重症度の上昇は示されていない[[13],[14]]

特に懸念される変異はE484Kであり,RBDへの抗体の結合を低下させ,いくつかのSARS-CoV-2 WTの回復期ヒト血清中の中和効果を,10倍を超えて低下させる[[15]]K417はクラス1抗体パラトープ(class 1 antibody paratopes)に60-100%埋まっていることが分かっており,K417Nも血清の中和効果を著しく低下させることが示されている[[16]]B.1.351(南アフリカ)とP.1(ブラジル)に見られるRBD変異近縁のK417N/TE484KN501Yの組み合わせは,特にこれらの懸念される変異作っている.実際,Moderna社とPfizer社のワクチンは,これらの変異を持つウイルスを中和する効果が低いことが示唆されており,17つのワクチン誘発性抗体を調べたところ,E484Kを含む疑似ウイルスに対しては9つ,K417Nに対しては5つ,N501Yに対しては4つの抗体の効果が少なくとも10倍低くなっていた[[17]]Pfizer社のワクチンを2回接種した人の血清は,B.1.351に対して14倍も効果が低く,回復して9ヶ月を超える人の血清の40%は全く活性がなかった[[18]]E484K変異は,VOC-21FEB-02に指定されたB.1.1.7変異株や,英国で初めて発見されたがナイジェリアが起源と考えられているB.1.525でも確認されている[[19]].この変異は,B.1.1.7においてもワクチン誘発性抗体の有効性を低下させる効果がある[[20]]

最近,インドでさらに別のVOCが確認され,B.1.617と命名され,異なる変異プロファイルを持つ3つのcladeを含んでいる; B.1.617.1L452RE484Qを含むスパイクプロファイルを持ち,B.1.617.2E484Qを含まない異なるプロファイルを持ち,最近拡大したようだ; B.1.617.3L452RE484Qを持つが,B.1.617.1とは異なり,現在はごく一部のシーケンスでしか検出されていない.B.1.617.2は最近の英国での拡大を理由にVOC-21APR-02に指定され,一方B.1.617.1は変異プロファイルと明らかに成功した伝播・拡散を基にVUI-21APR-01に指定されている.B.1.617.3VUI-21APR-03に指定されているが,英国での流行は低いままである[[21]]

高リスク変異株の数の増加に対応して,英国への国際的な流入を軽減するために,英国政府は最近,海外からの到着者に対する2日目および8日目のPCR検査の義務化を導入した[[22]].英国政府の保健社会福祉省は,このプログラムに参加する検査施設に対して,ISO:15189規格に準拠した英国認定機関(UKAS: United Kingdom Accreditation Service)による監督と評価を受け,厳しい最低限の性能特性を設定している.この基準には,SARS-CoV-2 RT-PCR検査の感度が> 99%,特異度が> 99%,検出限界(LOD: limit of detection)が1000 SARS-CoV-2 copies per millilitre(≦1000 copies/mL)以下であることが含まれる.2日目に陽性となったサンプルのうち,Ct値が30未満(約10,0001000 viral genome copies/mLに相当すると定義)のものは,最低でも50%30倍以上のカバー率でゲノムシーケンスを実施しなければならない[[22]].英国への渡航者も出発前の検査を受けなければならないが,感度は80%,特異度は97%LOD100,000 viral copies/mLと低く設定されている[[23]].この検査には,PCR検査とは異なる技術、例えばLoop-mediated isothermal Amplification LAMP)やラテラルフロー検査などが含まれるが,これらは活動的な感染を検出する感度が低い可能性がある.

Oncologicaは,英国で初めてUKASの認定を受け,Department of Health and Social Care DHSC)のリストに掲載され、2日目と8日目の検査を実施しているラボである.今回の認定は,TaqPath CE-IVD COVID-19 RT-PCRIon AmpliSeq SARS-CoV-2 Next Generation Sequencing Assayを組み合わせた新しい統合ワークフローに関するものである.このワークフローにより,海外から英国に到着した人を対象とした迅速なハイスループット検査とシーケンスが可能となった.ここでは,海外からの入国者のSARS-CoV-2検査トレンドデータの後ろ向き解析を行い,英国内での有病率と変異型を明らかにし,SARS-CoV-2検査陽性データとワクチン接種状況との相関性を調べた.

Methods

SARS-CoV-2検査とシーケンスは,TaqPath CE-IVD COVID-19 RT-PCRIon AmpliSeq SARS-CoV-2 Next Generation Sequencing Assayを組み合わせて行われた.311日に検査を開始してから2021414日までの検査傾向データの後ろ向き解析を行った

Results

2021311日〜414日の間に,英国に入国する海外旅行者203,065人が,英国到着者に対する義務的な国際旅行検査プログラムの一環として,SARS-CoV-2RT-PCR検査を受けた.3855サンプル(1.9%)からSARS-CoV-2が検出され,政府のガイドラインに基づき,Ct< 30に基づいて2日目の旅行者から1913SARS-CoV-2ゲノムが選択され,ゲノムシーケンスが行われた.1635サンプル(85.5%)で高品質のシーケンスデータとその後の系統解析が得られた.

合計で49の変異株が確認された(Figure 1).最も多く見られたのはB.1.1.7(ケント)変異株で,シーケンスされたサンプルの> 80%n= 1317)がこの変異株であった.次に多かったのは,南アフリカのB.1.351変異株(n= 69, 4.2%)であった.さらに,B.1.617.2n= 28; 1.7%),P.1n= 6; 0.4%),E484KをもつB.1.1.7n= 3; 0.2%),VUIであるB.1 .617.1n= 49; 2.9%),B.1.617n= 9; 0.6%),B.1.617.3n= 3; 0.2%),B.1.525n= 31; 2.0%),B.1.1.318n= 7; 0.4%)のVUIが確認された.また,A.27B.1.214.2B.1.526R.1のモニタリングのもと,変異株のsingle instancesも確認された.

 

 

Figure 1: Lineage assignments of 1635 SARS-CoV-2 sequences of samples collected from day 2 international arrivals in the UK between 11 March and 14 April 2021. Variants of Concern B.1.1.7 (n = 1317), B.1.1.7 with E484K (n = 3), B.1.351 (n = 69), B.1.617.2 (n = 28), and P.1 (n = 6) are highlighted in orange, Variants under Investigation B.1.617.1 (n = 49), B.1.617 (n = 9), B.1.617.3 (n = 3), B.1.525 (n = 34), and B.1.318 (n = 7) are highlighted in yellow and Variants under Monitoring A.27, B.1.214.2, B.1.526 and R.1 (all n = 1) are highlighted in blue (For interpretation of the references to color in this figure legend, the reader is referred to the web version of this article.).

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完全に保持されていたすべての配列(n = 1361)について、系統解析を行った(Supplementary Figure 1).その結果,全てのB.1.1.7変異株など変異株の大部分を含む明確な別のcladeが示された.この解析により,インドの変異株であるB.1.617.1B.1.617.2B.1.617.3は共通の系統を持つことが確認され,他のすべての同定された変異株の根(root)とは全く別の進化の枝(branch)を形成していることが示された.B.1.351B.1.525は、B.1.1.7とは別の枝に共通の祖先を持っていた.

ワクチン接種状況と年齢が判明しているすべてのサンプル(n= 128,566, 63.3%)において,ワクチン未接種者の全体的な有病率は2.4%(n= 2449/105,193であった一方,少なくとも1回のワクチン接種者の有病率は1.3%n= 276/21,992であり,全体のワクチン有効性は46%であった(Table 1, Figure 2A35歳未満と35歳以上50歳未満の年齢層では,ワクチンを接種したコホート内の有病率が有意に減少し(ワクチン有効性はそれぞれ67%48%; p< 0.0000150歳以上65歳未満と65歳以上の年齢層では,ワクチン有効性はそれぞれ25%p= 0.007)と27%p= 0.075)であった(Table 1, Figure 2A

Table 1: Prevalence of SARS-CoV-2 infections by age and vaccination status.

 

Figure 2: (A) Prevalence of SARS-CoV-2 in unvaccinated individuals (n = 105,193) and those who had received at least one dose of a vaccine (n = 21,992) stratified by age with 95% Wald confidence intervals. (B) Ct values of positive cases from vaccinated (n = 274) and unvaccinated (n = 2417) individuals with 95% Wald confidence intervals. (C) Prevalence of SARS-CoV-2 in unvaccinated (n = 106,501) individuals and those who had received one (n = 1 5171) or two (n = 5844) doses of a vaccine with 95% Wald confidence intervals. (D) Relative prevalence of infection in individuals above and below the age of 60 after one (n = 3443 and n = 11,510 respectively) and two (n = 1617 and n = 4112 respectively) doses of a vaccine compared to unvaccinated individuals with Wald 95% confidence intervals. **** indicates p < 0.0001.

 

 

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ワクチン接種者(n= 274)と未接種者(n= 2417)の陽性例の平均Ct値は,それぞれ25.4225.55で,これら2群間でウイルス量に有意差は認めなかったFigure 2B

2回目ワクチン接種の有効性は,1回目ワクチン接種のみよりも有意に大きかった1回目接種者(n= 15,415)の有病率は1.6%n= 244)で,ワクチン未接種者に比べて32%減少したが,2回目接種者(n= 5844)の有病率は0.5%n= 31)で,78%減少した(Figure 2Cワクチン1回目接種者では,60歳を超えるコホートでは有効性が5%だったのに対し,60歳未満のコホートでは37%だった2回目接種では,>60歳と<60歳の両方のコホートで有意な改善が見られたが,2回目接種を受けた<60歳(17/4112, 0.4%)では83%の減少であったが,>60歳(13/1617, 0.8%)では60%の減少であり,依然として疾患有病率が高かったFigure 2D

 

 

ワクチン接種者と未接種者におけるB.1.1.7B.1.351B.1.525,および複合B.1.617変異株の有病率を,Šídákの多重比較検定を用いて比較した(Figure 3).B.1.1.7は,ワクチン接種者(n= 51, 63%)が未接種者(n= 607, 80%)に比べて低い有病率(p< 0.0001)であったのに対しB.1.617 は、ワクチン接種者(n= 12, 15%)が未接種者(n= 38, 5%)に比べて高い有病率(p= 0.007)であったB.1.351B.1.525はいずれもワクチン接種者で有病率が高かったが,これらは有意ではなかった.

Figure 3: Lineage assignment of SARS-CoV-2 sequences from unvaccinated (A, n = 759) and vaccinated (B, n = 81) day 2 international arrivals in the UK between 11 March and 14 Apr 2021. Variants of Concern B.1.1.7 (A: n = 607, B: n = 51), B.1.351 (A: n = 33, B: n = 7), B.1.617.2 (A: n = 17, B: n = 5) and P.1 (A: n = 4, B: n = 0) are highlighted in orange. Variants under Investigation B.1.617.1 (A: n = 21, B: n = 5 ), B.1.617.3 (A: n = 0, B: n = 3), B.1.525 (A: n = 15, B: n = 3) and B.1.1.318 (A: n = 3, B: n = 1) are highlighted in yellow (For interpretation of the references to color in this figure legend, the reader is referred to the web version of this article.).

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最も多く見られた変異株の平均Ct値(n> 20)を,Dunnettの多重比較検定を用いてB.1.1.7Ct= 21.2)と比較した(Figure 4A).B.1.617.2は,B.1.1.7と比較してCt値が16.7と有意に低かった(p= 0.0004).これは,B.1.1.7に比べてウイルス量が21倍に増加したことに相当するFigure 4B).また,共通系統の根(root)を持つ複合B.1.617変異株(B.1.617/.1/.2/.3)は,B.1.1.7と比較して平均Ct値が低く(18.8),ウイルス量が5.3倍増加したことに相当する(p= 0.001

Figure 4: (A) Mean Ct values for 5 most prevalent variants (n > 20) with 95% Wald confidence intervals. *** represents p < 0.001 by Dunnett's multiple comparisons test. (B) Estimated viral loads calculated from mean Ct value.

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Discussion

SARS-CoV-2が海外旅行再開において国境を越えて伝播することは,英国にとって公衆衛生上のリスクであり,現在進められているワクチン接種プログラムの成功が損なわれる可能性がある.スパイクタンパク質ドメインの変異を特徴とする高リスク変異株は,回復期血清やモノクローナル抗体に対する中和感受性を低下させることが示されており,現行のワクチンによる防御を回避できる可能性がある[15, 16, 17, 18,[20]].ここで我々は,英国における2日目と8日目の検査プログラムが,旅行者に関連して英国に持ち込まれたSARS-CoV-2を同定するのに有効であることを示した.SARS-CoV-2の国境を越えた伝播は,VOCVUI,監視された変異株(monitored varinats)のような幅広い種類の変異株を含めて,高い有病率(1.9%)で検出された.COVID-19感染の有病率が予想外に高かったのは,PCR検査と比較して感度が低い,ラテラルフローを含む渡航前検査の要求を反映している可能性がある.B.1.1.7Kent)変異株は,英国への到着者(UK arrivals)から最も多く検出され(80.6%),これは英国集団における高い有病率を反映している[21]B.1.1.7変異株は,その伝播性の向上により,202011月には0.1%未満であったが,20212月にはイングランドにおける新規SARS-CoV-2感染者の> 95%にまで広がり[[12],[33]],現在では世界130ヶ国以上で検出されている. 我々が海外旅行者から確認したVOCsVUIsを含む49SARS-CoV-2変異株の高い多様性は,SARS-CoV-2の急速な生物学的進化により,複製効率と伝播性が向上し,免疫逃避の可能性があることを反映している[[34]]

今回のデータでは,ワクチン未接種集団では2.4%の有病率が,ワクチン接種集団では1.3%に低下し,ワクチン接種が感染防御に大きな影響を与えることがわかった.注目すべきことに,ワクチン有効性は,1回目と2回目の接種,および年齢層によって異なっていた.少なくとも1回の接種を受けたワクチン接種群と未種群を解析したところ,全体的な有効性は46%であった.しかし,これは年齢に有意に関係しており,< 35歳群では67%> 65歳群では27%であった.2回目接種の効果を解析すると,2回目接種でワクチン有効性が有意に高まることがわかった.全体では,1回目接種者ではワクチン有効性は32%であったのに対し,2回目接種者では78%であった.> 60歳群では,1回目接種の有効性は5%であったのに対し,< 60歳群では37%であった.注目すべきことに,2回目接種の効果は,> 60歳群では60%に有効性,< 60歳群では83%の有効性であり,両年齢層で有意に高かった.

若年層で観察された高い感染防御効果とワクチン接種回数の影響は,感染に対するワクチンの有効性は,一回目接種後21日で70%2回目接種後7日で85%という,SIREN前向き多施設コホート研究[[35]]を裏付けるものであった.本研究は,BNT162b2mRNAPfizer-BioNTech社)ワクチンを接種した医療従事者を対象としており,年齢中央値46.1歳(IQR 36.0-54.1)と相対的に若い年齢層が対象となっている.SARS-CoV-2に対するワクチンの有効性が年齢の上昇とともに低下することは,免疫老化の進行と一致している[36, 37, 38].これは,インフルエンザ[[39]],肝炎[[40]],肺炎球菌[[41]]など,他のウイルスや細菌の病原体に対するワクチン接種の予防効果が低下していることと同様で,加齢に伴う自然免疫応答や獲得免疫応答の低下の結果,抗体価,有効性,親和性が低下していることが観察されている.高齢者に対するワクチン接種プロトコルの最適化は,ブースター用量やアジュバントの改良など,さまざまなアプローチを用いて以前から検討されている[[36]].自己申告データでは,接種したワクチンの種類が示されていなかったため,異なるワクチンの種類に関連してワクチンの有効性を判断することはできなかった.> 60歳の集団における感染防御のための様々なワクチンの種類における有効性を厳密に評価することは,免疫老化によって課せられる制約を回避し,最適なワクチンを選択するために,今後重要となるだろう.

ワクチン接種集団におけるB.1.1.7Kent)変異株の割合は,未接種集団と比較すると有意に減少し,それに伴い,B.1.351(南アフリカ),B.1.525(ナイジェリア/英国),特にB.1.617.1B.1.617.2B1.617.3(インド)などの高リスク変異株の相対的な割合が拡大した.このことから,現在のワクチンは、現在優勢なB.1.1.7 Kent株と比較して,高リスク変異株による感染を防御する効果が低いと考えられる.これは,新たなSARS-CoV-2変異株が,受容体結合ドメイン(RBD)を含むスパイクタンパク質の変異によって,過去の感染やワクチン接種によって誘導された中和抗体から逃避しうるという研究結果と一致している[15, 16, 17, 18,[20]].しかし,この傾向は,より大規模なコホートで確認する必要があり,2日目の検査とシーケンスデータの継続的な我々の解析が焦点となっている.注目すべきことに,PCR検査で陽性となった症例のウイルス量も変異株の種類と関連しており,B.1.1.7変異株(〜3.6×107 virions/mL)と比較して,B.1.617.2では平均ウイルス量が著しく増加していました(〜8.3×108 virions/mL).インドで初めて検出されたこの変異株はVOCに指定されており,英国に入国する旅行者の間で急速に流行が進んでいることが確認された.2日目の検査とシーケンスにより,B.1.617変異株の有病率は,2021311日〜414日の期間では5.4%だったのが,2021415日〜56日の期間では23%に増加していることがわかった.同じ期間に,特にB.1.617.2変異株の有病率は1.7%から17%に増加した(未発表データ).B.1.617系統に関連して,スパイクL452Rは,回復期血清に対する感受性を大幅に低下させ,ACE2に対する結合親和性が最も高くなることで注目されている[[42]].また,B.1.617.1には,B.1.351B.1.525P.1に見られるE484K SNPと同様の変異であるE484Qがあり,免疫逃避を媒介することが証明されている.一方,B.1.617.2には、E484Qの代わりにT478Kが存在する.この変異はあまり研究されていないが,別のin silico解析では,調べられた95の変異の中で,ACE2との結合親和性を最も大きく増加させることが示されている[[43]]B.1.617変異株の特徴である高リスクの変異は,他の変異株と比較して,感染した旅行者において,我々が観察した驚くほど高いウイルス量や,ワクチン接種者における有病率の増加を説明するものと思われる.他のVOCsVUIsと比較して異常に攻撃的な生物学的特徴は,B.1.617.1B.1.617.2B.1.617.3の各変異株が,他のすべての同定された変異株の根(root)からまったく別の進化した枝(evolutionary branch)を形成しているという我々の系統解析結果と一致している.

TaqPath CE-IVD COVID-19 RT-PCRIon AmpliSeq SARS-CoV-2 Next Generation Sequencing assayを組み合わせた統合的なワークフローには,いくつかの明確な利点がある.この統合されたアプローチにより,4872時間以内に陽性結果を確定・通知するturnaround timeで,検査とシーケンスを行うことが可能であり,効果的なアクティブコンタクトトレースが可能な時間内に陽性症例を検出し,シーケンスを行うことができる.また,この統合されたワークフローは,PCR検査で陽性となった症例を中央にある基準検査機関に照会する際に生じる問題を回避することができる.照会は,複雑なロジスティクスとサンプルにおいて繰り返しのPCRを必要とするため大幅な遅延を引き起こす.抽出されたRNAサンプルの検査室間の輸送は,turnaround timeに影響を与え,そしてRNAは本質的に不安定であるため,温度管理された輸送が必要である.RT-PCR cycle thresholdCt)値は,次世代シーケンシングプロトコルの一部であるライブラリ増幅のためにサンプルを正規化するために使用される.そのため,サンプルの劣化の可能性や,検査室のプロトコルや機器の違いにより,輸送されたサンプルのRT-PCRを基準検査機関で繰り返す必要がある.

検査結果が入手可能になると,Public Health England PHE)に検査結果とシーケンスデータが通知される.SGSSは,すべての検査結果を保持する全国的な監視システムで,症例とその接触者を積極的にフォローアップすることができる.国境検査の有効性は,検査結果を迅速に処理できる公衆衛生インフラが整備されている国に大きく依存している.

パンデミックにおける再開時期(opening phases)である20206月にアラスカ州が導入した旅行者のSARS-CoV-2検査プログラムは,米国のほとんどの州と比較して,アラスカ州の過剰死亡者数が少なかったことに寄与しており,国境を越えた検査の重要性を強調した最初の研究となった[[44]]

Conclusions

英国到着者におけるCOVID-19の有病率が予想外に高かったことは,英国に流入したVOC B.1.617.2を含む高リスクのSARS-CoV-2変異株の豊富な多様性と関連している.ワクチンを接種しても感染を防ぐことはできず,その有効性は年齢に大きく依存し,変異株の種類によっても影響を受ける.我々が採用した迅速なハイスループット検査とシーケンスのワークフローは,国境を越えた伝播の監視に特に適しており,公衆衛生上の即時介入を可能する.

 

References

省略.

PIIS2589537021003011.pdf