COVID-19関連追加(202184日)ワクチン接種後死亡した患者の剖検例

SARS-CoV-2予防接種を受けた患者に死後調査を行った初めての症例】

Hansen T, et al. First case of postmortem study in a patient vaccinated against SARS-CoV-2. International Journal of Infectious Diseases. Apr 16, 2021.

https://doi.org/10.1016/j.ijid.2021.04.053.

Highlights

・我々は,SARS-CoV-2ワクチン単回接種を受けた患者を報告する.

・彼の適切な血清力価は上昇したが,4週間後に死亡した.

・死後分子マッピングにより,我々が調べたほぼすべての臓器にウイルスRNAが検出された

・しかし,COVID-19に特徴的な形態的特徴は観察されなかった

・免疫原性が誘発される可能性があるが,真の免疫(sterile immunity)は確立されなかった

Abstract

過去に症状のなかった86歳の男性が,BNT162b2 mRNA COVID-19ワクチンの初回接種を受けた.彼は,その4週間後に急性腎不全と呼吸不全で死亡した.彼にはCOVID-19特有の症状は見られなかったが,生前にSARS-CoV-2陽性反応が出ていた.ヌクレオカプシドIgG/IgMは誘発されなかったが,スパイクタンパク質(S1)の抗原-結合では、免疫グロブリン(IgGレベルが有意に高かった.剖検では,急性気管支肺炎と尿細管不全(tubular failure)が死因とされた; COVID-19に特徴的な形態学的特徴は観察されなかった.リアルタイムポリメラーゼ連鎖反応による死後分子マッピングでは,肝臓と嗅球を除くすべての臓器(口腔咽頭,嗅粘膜,気管,肺,心臓,腎臓,大脳)で,関連するSARS-CoV-2 Ct値(cycle threshold)が検出されたこれらの結果は,初回のワクチン接種によって,免疫原性は誘導されるが,真の免疫(sterile immunity)は誘導されないことを示唆しているかもしれない

 

Main

SARS-CoV-2ワクチンを接種した86歳の男性(老人ホーム入所者)について報告する.既往歴の病歴には,全身性動脈性高血圧,慢性静脈不全(chronic venous insufficiency),認知症,前立腺癌などが含まれていた.202119日,この男性は脂質ナノ粒子製剤のヌクレオシド修飾RNAワクチンBNT162b230μg)接種した.その日とその後の2週間は,彼は臨床症状を示さなかった(Table 1).18日目に,下痢が増悪したため入院した.COVID-19の臨床症状を呈していなかったため,特定の環境下での隔離は行われなかった.臨床検査では,低色素性貧血と血清クレアチニン値の上昇が認められた.SARS-CoV-2抗原検査およびポリメラーゼ連鎖反応(PCR)は陰性であった.

 

 

Table 1: Summary of major features of the patient’s history, clinical symptoms and laboratory findings, including SARS-CoV-2 testing (reference values given in brackets).

 

さらに下痢の原因を調べるために,胃内視鏡と大腸内視鏡検査を行った.特に大腸内視鏡検査では,左結腸屈曲部に潰瘍性病変が認められ,組織学的には虚血性大腸炎と診断された.既報の方法(Kaltschmidt et al., 2021)に従った生検標本のPCR解析では,SARS-CoV-2は陰性であった.治療は,メサラジンと鉄剤の静脈注射による支持療法を行った.その後、患者の状態は腎不全が進行し,悪化した.24日目,本症例と同じ病室の患者がSARS-CoV-2陽性となった.25日目、我々の患者はリアルタイムPCRRT-PCR)でSARS-CoV-2陽性と判定され、サイクル閾値(Ct)値が低いことからウイルス量が多いことがわかった.スワブサンプルをさらに解析したところ,変異SARS-CoV-2B.1.1.7B.1.351B.1.1.28.1の証拠はなかった.以上のことから,この患者は病室にいた患者から感染したと考えられる.我々の患者は,発熱と呼吸困難を呈し,肺の聴診ではクラックルが認められた.酸素投与(毎分2リットル)と抗菌薬治療(セフトリアキソン)を開始したが,翌日,急性腎不全と呼吸不全により死亡した.

25日目に採取した血清中のスパイクタンパク(S1)抗原-結合性免疫グロブリン(IgGを測定して免疫原性を評価したところ,抗体応答(8.7U/ml, 参考値< 0.8-1.2U/ml, Roche ECLIA™)が認められたが,(ヌクレオカプシド)NCP-IgG/IgMは誘発されなかった(< 0.1U/ml, 参考値> 1.0U/ml, Roche ECLIA™).これらの結果は,この患者がワクチン接種によってすでに関連する免疫原性を獲得していたことを示している.

死後調査では,時にbacterial cocci細菌性球菌に囲まれた膿瘍を伴う急性の両側性気管支肺炎が認められた(Figure 1).COVID-19関連肺炎として一般的に記載されている症状は見られなかった.心臓では,両心室肥大(重量580g)を認め,我々は,組織学的には虚血性心筋症と診断した.心臓にはトランスサイレチン型のアミロイドーシスが検出され、より程度は低いが,肺にもアミロイドーシスが検出された.腎臓では,動脈硬化と間質の線維化を伴う慢性腎傷害およびhydropic tubular degenerationを伴う急性腎不全が認められた.脳は,左頭頂部の偽嚢胞組織壊死が認められ,古い梗塞領域と診断された.

Figure 1: Synopsis of the relevant histological findings and the results of molecular mapping is presented. The histomorphology is obtained by standard hematoxylin and eosin reaction, except for the myocardium on the right side (Congo red staining). The magnification is shown by bars. Note that in the lungs, we also observed colonies of cocci (arrow) in granulocytic areas. In addition, the results of molecular mapping are given as evaluated cycle threshold values of the real-time polymerase chain reaction for SARS-CoV-2. Note that only in the olfactory bulb and the liver SARS-CoV-2 could not be detected.

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ホルマリン固定パラフィン包埋組織の9つの異なる解剖学的部位について,既述の方法で分子マッピングを行った(Kaltschmidt et al., 2021)RNAは,Maxwell RSCPromega, Madison, WI, USA)を用いてパラフィン切片から抽出した.Multiplex RT-PCR analysisは,SARS-CoV-2-ゲノムの2つの独立した遺伝子を対象とした(Fluorotype SARS-CoV-2 plus Kit; HAIN/Bruker, Nehren, Germany: RNA依存性RNAポリメラーゼ(ターゲット1)とヌクレオペプチド(ターゲット2).陰性カットオフ値は,Ct> 45とした.我々は,9の組織サンプルを用いて,ウイルスが人体に拡散する際の既知の関連経路を調べた(Figure 1).クロスコンタミネーションを防ぐため,各検体は別々の組織カセットに直接埋め込み,4%リン酸緩衝生理食塩水ホルマリンで別々に固定した.その結果,肝臓と嗅球を除くほぼすべての臓器でウイルスRNAが検出された(Figure 1

SARS-CoV-2ワクチンを接種し,接種後にSARS-CoV-2検査が陽性となった患者の分子ウイルスマップを含む詳細な剖検調査は,著者らの知る限り,これまで報告されていない.BNT162b2 RNAワクチンを1回接種することで,スパイクタンパクに基づく血清中和IgGレベルに反映されるように,有意な免疫原性が誘発されたことが示唆された.ワクチン接種前の数週間から,ワクチン接種(1日目),死亡直前(24日目)まで,COVID-19に典型的に見られる臨床症状は見られなかった.さらに、血液検査では,一般的に発症してから714日後に観察されるIgM力価が見られなかった(Kim et al., 2020)しかし,この患者はSARS-CoV-2陽性であった.鼻咽頭スワブで測定したCt値と,ホルマリン固定パラフィン包埋した剖検標本で測定したCt値は,いずれもウイルス量を示し,感染性を示唆する.今回の患者は初めてSARS-CoV-2陽性となってから約2日後に死亡したことから,分子マッピングデータはウイルス感染の初期段階を反映していると考えられる.また,嗅球や肝臓などの異なる部位が,全身へのウイルス拡散の影響を受けていない理由も、感染の初期段階にある可能性がある.

これまでの包括的な形態学的剖検研究(Schaller et al., 2020, Edler et al., 2020, Ackermann et al., 2020)で報告されているCOVID-19の形態学的特徴は観察されなかった肺にはびまん性肺胞傷害の典型的な兆候は見られなかったが,細菌由来と思われる広範囲の急性気管支肺炎が確認された.我々は,この患者の死因は,気管支肺炎と急性腎不全であると結論づけた

我々の発見は,ワクチン接種によるSARS-CoV-2に対する免疫が,鼻腔スワブにウイルスRNAは残存したが,特に重度の肺疾患に関して病態の重症度を軽減するように見えるという動物モデルからの過去の証拠と一致している(Van Doremalen et al., 2020, Vogel et al., 2021).最近では,Amitら(2021年)が,ワクチンBNT162b2を接種した医療従事者を対象とした臨床試験の結果を発表し,初回ワクチン接種によって,SARS-CoV-2感染および症候性COVID-19の比率が早期に大幅に減少することを示している.

SARS-CoV-2に対するワクチン接種を受けた患者の主な有害事象については,局所反応が主であり,重度の全身性反応はほとんど記述されていない(Yuan et al.2020).しかし,最近の報告では,血栓のリスク,特にオックスフォード・アストラゼネカ社のワクチンの場合には脳静脈洞血栓症のリスクが増加したことが報告され(Mahase, 2021),COVID-19ワクチンの安全性全般について議論の対象となった.致死的な有害事象やワクチン接種に関連するあらゆる死亡についてより詳細な洞察を得るために,剖検データの包括的な解析を行う必要がある.

Conclusions

mRNAワクチンを接種した患者の剖検例の結果は,SARS-CoV-2に対するワクチンの初回接種では,すでに免疫原性が誘導されているが,真の免疫(sterile immunity)には十分に発展していないという見解を裏付ける.