COVID-19関連追加(202185-2)ワクチンブレイクスルー感染についてその7

SARS-CoV-2デルタ変異株のワクチンブレイクスルー感染のウイルス学的および

血清学的動態: 多施設コホート研究】

Chia PY, et al. Virological and serological kinetics of SARS-CoV-2 Delta variant vaccine-breakthrough infections: a multi-center cohort study. medRxiv. Posted July 31, 2021.

https://doi.org/10.1101/2021.07.28.21261295.

Objectives

SARS-CoV-2に対する非常に有効なワクチンが開発されているが,スパイクタンパクに変異を持つVOCvariant of concern),特にB.1.617.2(デルタ)は世界中で急速に広まっている.我々の目的は,ワクチン接種によって,ブレイクスルー感染におけるウイルス学的・血清学的動態が変化するかどうかを調べることである.

Methods

シンガポールにおいて,承認されたmRNA ワクチンを接種し,B.1.617.2 SARS-CoV-2感染症で入院した患者を対象に,多施設共同後ろ向きコホート研究を行った.完全ワクチン接種者と非接種者で,臨床的特徴,ウイルス学的および血清学的動態(抗ヌクレオカプシド抗体,抗スパイク抗体,サロゲートウイルス中和力価)を比較した.

Results

218件のB.1.617.2感染が,5つの研究施設で確認された(Supplementary Figure S1).これらのうち,71人がワクチンブレイクスルーの定義を満たしていた.また,発症14日以上前に1回のみ接種,あるいは発症14日以内に2回接種した者が13人,海外で非RNAワクチンを接種した者が4人含まれていた.ワクチンブレイクスルーの定義を満たした参加者の大部分は,BNT162b22回接種していた(n= 66, 93%).

 

 

Clinical Features:

シンガポールの国家予防接種戦略では,高齢者が優先的に予防接種を受けることになっており,今回のワクチンブレイクスルーコホートは高齢者が有意であった; 年齢の中央値56歳(IQR: 39-64vs 39.5歳(IQR: 30-58)(p< 0.001)(Table 1).その他のベースライン人口統計は同様であった.

Table 1:

https://www.medrxiv.org/content/medrxiv/early/2021/07/31/2021.07.28.21261295/T1/graphic-1.medium.gif

https://www.medrxiv.org/content/medrxiv/early/2021/07/31/2021.07.28.21261295/T1/graphic-2.medium.gif

 

ワクチンブレイクスルー患者は,無症候性である可能性が有意に高く(28.2% vs 9.2%, p< 0.001; そして症候性患者である場合は,症状の数が少なかった(Table 1).ワクチン未接種者は,リンパ球数,CRP,乳酸脱水素酵素(LDH),アラニントランスフェラーゼ(ALT)など,COVID-19の重症化に関連する既知のバイオマーカーレベルが不良であった.また,ワクチン未接種者は,ワクチン接種者と比較して,肺炎,補助酸素,ICU入室の割合が高かった.ワクチン未接種者と,少なくとも1回のワクチン接種を受けた者(すなわち,ワクチンブレイクスルーと不完全接種の両方)を比較した広範な解析でも,同様の結果が得られた(Supplementary Table T1).

重症COVID-19(酸素補給が必要と定義)の発症についての多変量ロジスティック回帰解析では,調整オッズ比(aOR0.07395%CI: 0.016-0.343)(p= 0.001)とワクチン接種が防御的であることが示された(Table 2).ワクチン未接種者と1回以上のワクチン接種者を比較した解析でも同様の結果が得られた(Supplementary Table T2).また,中等症COVID-19(肺炎の発症で定義)の発症についての多変量ロジスティック回帰解析でも,OR0.06995%CI: 0.027-0.180)(p< 0.001)であり,ワクチン接種が防御的であることが示された(Supplementary Table T3).

Table 2:

Table 2:

 

Virologic kinetics:

ウイルス量のサロゲートマーカーとして,個人の連続Ct値を解析した.Ct値の初期値(中央値)は,ワクチン未接種者と完全ワクチン接種者で差がなかった(未接種者のCt値中央値18.814.9-22.7, ワクチン接種者19.215.2-22.2, p= 0.929).しかし,完全ワクチン接種患者は,ワクチン未接種患者に比べてCt値の上昇率が速く,ウイルス量の減少が速いことが示唆されたcoefficient estimates for interaction terms ranged from 9.12 (standard error 3.75) to 12.06 (standard error 3.03); p-value <0.05 for each interaction terms)(Figure 1

Figure 1: Scatterplot of Ct values and marginal effect of day of illness of COVID-19 B1.617.2 infected patients with 95% confidence intervals from generalized additive mixed model with interaction term between vaccination status and day of illness.

Figure 1:

 

Serologic data:

完全ワクチン接種した69人とワクチン未接種45人の血清学的データが記録されていた.ワクチン接種者の66/66100%)は発病1週目にS抗体が検出されたが,ワクチン未接種者では7/4516%)が検出された(Supplementary Figure S2).1週目に抗N抗体でセロコンバートした人の割合は,ワクチン接種者7/6810%),未接種者11/10710%),2週目にはワクチン接種者2/1118%),未接種者4/2020%)と,差は認めなかった.

sVNTcPassの解析では,ワクチン接種者は発病1週目に非常に中央値98.3%と高い阻害率を示し( IQR: 91.0-99.4%),2週目には99.6%IQR99.3-99.9%)まで上昇した(Figure 2A, 2Bワクチン未接種者では,1週目,2週目ともに阻害率の中央値は20%の閾値を下回っていたワクチン接種者のうち,血清サンプルを採取してマルチプレックスsVNT法による検査が可能だった37人では,B.1.617.2やその他のVOCと比較して,野生型ウイルスに対する力価が有意に高かった(Figure 3

sVNT力価は,VOC B.1.617.2P.1に対して最も低かった

 

 

Figure 3: (A) Spaghetti plot of surrogate virus neutralisation (sVNT) inhibition % as measured by cPass; (B) Scatterplot of sVNT inhibition % and marginal effect of day of illness by vaccine-breakthrough and unvaccinated groups of COVID-19 B1.617.2 infected patients with 95% confidence intervals from generalized additive mixed models. For both plots, n=127; vaccine-breakthrough = 67, unvaccinated = 60

Figure 2:

 

 

Figure 3: Violin plots of of surrogate virus neutralisation (sVNT) inhibition % against wildtype SARS-CoV-2 and the B.1.617.2 variant for 36 patients with vaccine-breakthrough infection (median day of sample collection from infection onset 6 days (inter-quartile range (IQR) 3-7). Titres against the four variants were significantly lower than against wildtype SARS-CoV-2 [median sVNT, B.1.1.7 98.5% (IQR: 96.3-99.5); B.1.351 98.2% (IQR: 95.3-99.5); B.1.617.2 96.0% (IQR: 90.9-99.3); P.1 95.5% (IQR: 91.3-98.9); Wildtype 99.4% (IQR: 98.5-99.7), Kruskal-Walis p-value = 0.00055, Post-hoc pairwise comparison (Conover) Wildtype versus each variant p<0.05]

Figure 3:

 

Conclusions

COVID-19に対するmRNA ワクチンは,B.1.617.2変異株による症候性感染と重篤疾患に対して防御的であるワクチンを接種した人は,ウイルス量がより急速に減少しており,このことは二次伝播や公衆衛生政策にも影響を及ぼすCOVID-19パンデミックを抑制するためには,ワクチン接種プログラムを迅速かつ広範囲に実施することが引き続き重要な戦略となる.ワクチンによる防御を向上させるためには,ワクチンブレイクスルー感染を引き起こす免疫学的特徴を解明する必要がある.