COVID-19関連追加(2021812日)ワクチンブレイクスルー感染についてその8

COVID-19ワクチンの早期接種者における無症候性SARS-CoV-2の発生率を決定する: ワクチン接種前,接種中,接種後の医療従事者を対象とした前向きコホート研究[DISCOVER-COVID-19]

North CM, et al. Determining the Incidence of Asymptomatic SARS-CoV-2 among Early Recipients of COVID-19 Vaccines: A Prospective Cohort Study of Healthcare Workers before, during and after Vaccination [DISCOVER-COVID-19].

https://doi.org/10.1093/cid/ciab643.

Abstract

COVID19ワクチン接種がブレイクスルー感染のウイルス特性に与える影響は不明である.この前向きコホート研究では,ワクチン接種後にSARS-CoV-2感染症の発生率が低下した.ワクチン接種後,無症候性の陽性反応が観察されたが,Ct値の上昇,陰性反応の繰り返し,ウイルス培養ができないことから,その臨床的意義について疑問が生じる

Methods

Study design:

20201230日〜202142日まで,マサチューセッツ州ボストンの大規模医療システム(Mass General Brigham, MGB)において,COVID-19ワクチン接種前,接種中,接種後の医療従事者を対象とした前向きコホート研究を実施した.従業員は,MGBの予防接種プログラムで予防接種を受ける資格があり、MGBCOVID-19ワクチンの1回目接種する予定,または最近接種したばかりで,毎週セルフスワブ検査キットを預けることができる人が参加対象となった.医療従事者の募集は,Eメールでの告知と,英語とスペイン語の広告を掲載して行いった.

Study procedures and data collection:

参加者は毎週,自己記入式の前鼻腔スワブとオンライン症状サーベイを行った.COVID-19を示唆する症状が現れた参加者は,産業保健プロトコルに従って追加検査を受けた.週1回の検査は,登録から1回目ワクチン接種後8週間まで続けられた.1回目ワクチン接種後4週間を超えて経過してから登録した参加者は,4週間検査を続けた.陽性反応が出た人は,産業保健部で独自の症状評価を受けた.鼻腔スワブは,MITとハーバード大学のブロード研究所(Cambridge, Massachusetts)でリアルタイム逆転写酵素PCR検査が行われ,陽性反応のCt値が報告された(3 cycleでウイルス量の約1 log差)10).調査担当者は,調査期間中,すべての参加者のMGBシステムでのSARS-CoV-2検査結果と,Occupational Health社の症状評価を閲覧することができた.

Virologic characteristics sub-study:

2021129日,ワクチン接種後の感染のウイルス学的特徴を明らかにするためのサブスタディを開始した.1回目ワクチン接種後に陽性と判定された参加者を対象に,約1日おきに最長14日間の家庭訪問を行い,SARS-CoV-2 PCR検査,ウイルス培養,シーケンスのためにself-administeredの鼻腔スワブを収集した(Supplementary Material).

Results

合計2,247人の医療従事者が解析対象となった(eTable 1 & 2).女性が多く(n= 1,760; 78%),年齢中央値は37歳(IQR 30, 50; 医療従事者では,医師/看護師/医師助手が最も多く(n= 873, 39%),84%n= 1,879)が白人またはコーカサスと回答した.約半数(n= 1,015, 47%)が調査期間中にCOVID-19患者を担当し,調査期間終了時にはほぼ全員(n= 2,243; > 99%)がワクチン接種を完了していた.ワクチンメーカーは,Moderna社(n= 1,428; 64%)とPfizer-BioNTech社(n= 814; 36%)が最も多かった.

参加者は,85,109人日(中央値42人日[IQR 26, 50])にわたり,13,359本のスワブ(参加者1人あたり中央値6[IQR 3, 8])を採取された.調査期間中に19人(0.8%)の参加者が陽性反応を示し(Figure 1a),1000人年当たりの感染は81.5件であった(95%CI 49.1, 127.3).COVID19で入院した参加者はいなかった.これらの19件の感染のうち,6件(31.6%)はワクチン接種前期間(1回目接種後(※前?)中央値1.5日)に発生し,10件(52.6%)は部分接種期間(1回目接種後中央値21.5日)に発生し,3件(15.8%)は完全接種後(1回目接種後中央値52日後)に発生した.発生率は,完全接種者(34.6/1000人年(95%CI 7.1-101.1; 率比0.05295%CI 0.013-0.21; p< 0.001)と部分接種者(72. 8/1000人年(95%CI 34.9-133.9; 率比0.1195%CI 0.040-0.30; p< 0.001)であり,一方,陽性反応時にワクチン未接種者は666.3/1000人年(95%CI 244.5-1450.3)であった(eTable 3).ワクチン間隔期間の定義を変えても結果は同様であった(eTable 4).

Ct値は陽性検査のうち17件(89%)で得られ,症候性感染者では無症候性感染者に比べて低い(ウイルス量が多い)ことがわかった(21.1[IQR 15.6-33.5] vs 36.0[IQR 26.8-37.4], p= 0.01.ワクチン接種前に陽性反応が出た人と,部分または完全ワクチン接種した人のCt値の違いは,統計的に有意ではなかった(未接種21.0[IQR 15.2-33.5] vs 部分接種31.0[IQR 21.3-36.2] or 完全接種31.4[IQR 26.8-36.0]; p= 0.50.ワクチン接種前に感染した6人のうち5人(83%)が症状を呈したのに対し,部分接種期間に感染した10人のうち6人(60%),完全接種後に感染した3人のうち1人(33%)が症状を呈した(p= 0.39).

ウイルス学調査開始後に検査陽性となった7人(無症候性4人,症候性3; 全員が部分または完全ワクチン接種期間)に対して,追加の特性評価が行われた(eTable 5).無症候性感染者4人は,陽性反応後、中央値2日(IQR 2, 2)でウイルス量が検出されず,培養可能なウイルスは検出されなかった症候性感染者のうち1人は,陽性反応の2日後に鼻腔スワブにおいてウイルス量が検出されず,培養も陰性であった症候性感染者3人のうち2人は,ウイルス量がそれぞれ10日後と11日後,培養可能なウイルスがそれぞれ4日後と7日後に検出された(Figure 1b.いずれもシーケンスされ,アルファ変異株が同定された.

 

 

Figure 1: Cycle thresholds (Panel A), duration of detectable SARS-CoV-2 virus, and culture positivity (Panel B) among participants with detectable SARS-CoV2 in relation to time since first vaccine dose. In figure 1b, each line represents a single participant over time. Samples collected after Day 0 were tested with a quantitative viral load assay.

 

Discussion

大規模な医療機関がCOVID-19ワクチン接種を迅速に展開する中,系統的な検査インフラを調整することで,ワクチン接種後にSARS-CoV-2感染の発生率が段階的に低下することを明らかにした.我々は,部分ワクチン接種と完全ワクチン接種期間で無症候性感染者を確認した; しかし,連続再検査を受けた無症候性感染者は全員,2日以内にPCR検査が陰性となり,培養可能なlive virusを保有していなかった.しかし,連続して再検査を受けた無症候性感染者は全員、2日以内にPCR検査が陰性となり、培養可能な生ウイルスを保有していなかった。このことから,これらの無症候性感染者におけるウイルス排出期間は,これまでワクチン接種前の症候性感染で報告されてきた期間11)12)よりも短いことが示唆された.これらの所見は,ワクチン接種後の無症候性で,高Ct値陽性反応が一過性の感染なのか,あるいは偽陽性反応なのかという重要な問題を提起している

対照的に,部分接種または完全接種期間中に症候性感染を認めた3人のうち2人は,最初の陽性反応から7日後までウイルス排出が延長し,培養可能なウイルスが存在した.なぜ一部の人が感染から守られないのかを理解する上で,ワクチン接種後の感染に対するウイルス学および免疫学的な要因を解明するための今後の研究は非常に重要である.

本研究の強みは,前向きなデザイン,症状にかかわらず毎週行われる体系的なサンプリング,陽性と判定された一部の参加者における詳細なウイルス学的特徴である.この研究には限界もある: @参加者は毎週鼻腔スワブを採取していたため,無症候性参加者が感染してもウイルス排出が止まる間隔よりも長くなるため,無症候性感染の発生率が過小評価されている可能性がある.A医療現場でワクチンを接種していない対照群を登録することができなかったため,本研究における発生率の傾向を,調査期間中の地域別の傾向と明確に分けることができなかった.しかし,本研究のコホートにおける発生率は,地域の検査陽性率が上昇し始める一方で低下し続けており(Figure 1),本研究のコホートにおける発生率は,単に地域社会の傾向を反映したものではないことが示唆された.B今回の調査対象者は,若年層,女性,白人/非ヒスパニック系の人種・民族が多い医療従事者であり,高齢者や免疫抑制状態にある人を含む一般人口を反映していない可能性がある.

References

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