COVID-19関連追加(2021818日)

エアロゾルに含まれる感染性ウイルスとマスク効果

【初期の軽度感染時の呼気エアロゾル中の感染性SARS-CoV-2とマスク効果について】

Adenaiye OO, …, Donald Milton.. Infectious SARS-CoV-2 in Exhaled Aerosols and Efficacy of Masks During Early Mild Infection. medRxiv. Posted Aug 13, 2021.

https://doi.org/10.1101/2021.08.13.21261989.

Background

世界保健機関(WHO[1]と米国疾病予防管理センター(Centers for Disease Control and Prevention[2]は最近,SARS-CoV-2の重要な感染経路は吸入曝露(inhalation exposure)であるという科学的コンセンサスが高まっていることを認めました[3,4].疫学調査や集団発生調査から得られた証拠は,呼気エアロゾルの大きさの分布に関するデータと、それに対応する定量的モデルと合わせて、説得力のあるものとなっています[4]。しかし,呼気エアロゾルからのウイルス培養や,実際の患者がフェイスマスクを着用した際のウイルスエアロゾルの発生源対策としての効果の直接測定に関してデータは欠落している.また,これまでに報告されている感染性ウイルス[5,6]や室内空気中のウイルスRNA濃度[7,8]では、感染者がどの程度のウイルスを空気中に排出しているかについては明確に把握できていない.このようなギャップは,アウトブレイクの後ろ向き解析から得られる曝露量の推定値の不確実性につながる[9].新たな変異ウイルスは伝播性が高いと考えられるが,感染防御の柱である効果的な公衆衛生的介入を実施するためには,より定量的なデータが必要である.

我々は,Gesundheit-IIG-II)呼気サンプラー[10,11]を用いて,大学キャンパス内で流通しているアルファおよびそれ以前の変異ウイルスを含むSARS-CoV-2ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によるCOVID-19確定例から呼気エアロゾルを採取した.我々は呼吸器スワブ,唾液,エアロゾルからSARS-CoV-2RNA濃度と回収した感染ウイルスの濃度を測定し,感染源対策としてのフェイスマスクの効果を解析し,アルファ変異株がエアロゾルの排出に与える影響を検討した.

Methods

我々は募集したCOVID-19症例から,2日間隔で最大2回の訪問時に,マスクの有無にかかわらず,血液,唾液,中鼻甲介(MTS: mid-turbinate swab),そしてfomite(電話)のスワブ,およびGesundheit-IIに向かって発声しながらの30分間の呼気サンプルを得た.

参加者には,各訪問時にペアの呼気サンプルを提供してもらい,1回目はフェイスマスクを着用した状態で,2回目はマスクを着用していない状態で採取した.参加者が持参したマスクと,我々が提供したサージカルマスクをテストし,系統的な順番の偏りを避けるために,1回目と2回目の訪問時にどちらをテストするかを無作為化した.20209月以前に調査した症例は,30分のサンプリング時間内にアルファベットを3回繰り返してもらった.それ以降の症例は,「Go Terps」と30回叫び,「Happy Birthday」を30分ごとのサンプリング期間の5分,15分,25分に3回大声で歌うよう求められた.より症状の重い参加者は,30分間の呼気採取を1回だけ行うことを選択する場合があり,このような参加者には,フェイスマスクなしでの採取を優先した.

また,ウイルスRNAの定量およびシーケンス,ウイルス培養,抗スパイク抗体と抗RBD抗体の血清解析を行った.

Laboratory analyses:

具体的な実験室での分析の詳細は,SIに記載した.コホートの唾液はSalivaDirect[14]を用いて処理した.その他のサンプルについては,MagMax Pathogen RNA/DNA KitApplied Biosystems)を用いて,KingFisher Duo PrimeThermo Scientific)上で,サンプルの種類に応じたメーカーのプロトコルに従って核酸を抽出した.ウイルスのRNAは,TaqPath COVID-19 Real Time PCR Assay Multiplexを用いて検出・定量し,サンプルの重複感染(coinfection)はTaqMan Array Card(いずれもThermo Scientific)を用いて判定した.RNAコピー数は,唾液については1mLあたり,その他のサンプルタイプについては1サンプルあたりで報告されている.検出限界(LOD: limit of detection)は75コピー/サンプル,定量限界(LOQ: limit of quantification)は250コピー/サンプルとした(SI).

TMPRSS2を安定的に発現しているVero E6細胞上でウイルスを増殖させた後,その培地を,ヒトACE2を安定的に発現しているA549細胞(A549-ACE2)に移すことで,ウイルス感染性を測定した.感染したA549-ACE2細胞は,抗SARS-CoV-2ヌクレオカプシド抗体(Sino Biological 40143-R004)およびHoechst 33342Invitrogen H3570)を用いた免疫蛍光染色,およびCeligo Imaging CytometerNexcelom社)を用いたイメージングにより定量した(Figure S1, S2).血漿は,Stadlbauerら,2020[15]に記載された修正プロトコルを用いて,SARS-CoV-2に対するIgGIgMIgA抗体を解析した.MTSおよび唾液サンプルは,ウォルター・リード・アーミー研究所またはメリーランド大学ゲノム科学研究所でシーケンスされた.SARS-CoV-2の系統と変異は,PANGOLINおよびNextstrainツールを用いて決定した[16,17]

Results

SARS-CoV-2感染者(最近発症し,MTSまたは唾液PCRが陽性)のうち,61人が呼気検査に登録された: その内訳は,毎週唾液検査を行っているコホートから3人,最近診断されたCOVID-19症例55人から43人,感染の早期発見のために追跡調査した接触者62人から15人であった(Figure S3).活動性感染者8人(13%)は,最初の呼気検査の際にSARS-CoV-2スパイクタンパクに対するIgMまたはIgG抗体を持っており,4人は静脈血サンプルを提供できなかった.

呼気採取時に血清学的状態がわかっていた57人(血清陰性49人,血清陽性8人)は,発症または最初の陽性反応から0日〜12日後までに登録された(Table 1, Figure S4).血清陰性例には,過去に歌唱経験があり,アルファ株感染した参加者すべてが含まれていた.味覚・嗅覚消失頻度,その他の症状,体温,酸素飽和度など,血清陽性群と血清陰性群の間には,その他の有意差はなかった.調査時点では,全例が無症候性または軽症であった.呼気サンプル採取時に抗ウイルス薬を服用していたボランティアはおらず,併発している感染症も確認されなかった.

Table 1:

Table 1.

 

 

Seronegative cases:

血清陰性の参加者のうち,アルファに感染していたのは4人(8%)であり,伝播性が高いとされるデルタやその他の変異ウイルスには感染していなかった[22]Table S1).症状は,最初の訪問時(shedding visit)に顕著な傾向があり,2人の参加者は2回目の訪問時に発熱していた(Figure S5-S6).血清陰性のアルファ症例4人は,すべてのMTS,唾液,fomites,エアロゾルサンプルでウイルスRNAが検出可能な濃度であった(Table 2).残りの血清反応陰性者では,すべてのMTS99%の唾液,49%fomites19%粗エアロゾル(coarse-aerosol, > 5μm31%微細エアロゾル(fine-aerosol, ≦ 5μmからウイルスRNAが検出された.ウイルスRNAの幾何平均濃度は,アルファ症例から採取したすべてのサンプルタイプで有意に高かった

Table 2:

Table 2.

 

 

Exhaled breath viral RNA from seronegative cases without masks:

30分間の呼気エアロゾルサンプルに含まれるウイルスRNA量は,参加者の携帯電話から回収したRNA量と同程度であった(Table 2).エアロゾル中のウイルスRNAの検出頻度は,発症あるいは最初の陽性反応後25日が最大であったが(Figure S7),エアロゾル中のウイルスRNA量の有意な予測因子ではなかった(Table 3).MTSと唾液中のウイルスRNAは中程度の相関関係にあったが(Figure S8: ρ= 0.46),MTS中のRNAのみがエアロゾル中のウイルス量の強い予測因子となった(Table 3, Figure S9, S10微細エアロゾル画分のウイルスRNA量は,粗エアロゾル画分の1.9倍(95%CI 1.2-2.9)であった(図示せず)

Table 3:

Table 3.

Table 3.

 

 

Effect of alpha variant infection on viral RNA shedding from seronegative cases:

アルファに感染した場合,それ以前の株や変異ウイルスに感染した場合よりも有意に多くのウイルスRNAが排出された.マスクなしで採取したサンプルの二変量解析(Table 3, S3)では,アルファは,野生型や伝播性の増加と関連しない他の変異ウイルスよりも,有意に大きなウイルスRNAの排出と関連していた.微細エアロゾルの排出は,MTSおよび唾液中のウイルスRNAの増加,サンプリングセッション中の咳の回数,症状などで調整しても,アルファ感染で有意に大きいままであった(18, 95%CI, 3.4-92倍)(Table 3.我々はまた,マスクの有無にかかわらず採取されたサンプルを含む,より大規模なデータセットを用いて,アルファ変異ウイルスが排出に与える影響を解析した.マスク効果とサンプリング時の咳の回数でコントロールした結果,アルファ感染は,粗エアロゾルのRNA排出が100倍(95%CI, 16-650),微細エアロゾルのRNA排出が73倍(95%CI, 15-350)増加することと関連していた(Table 3

Effect of masks on viral RNA shedding from seronegative cases:

サンプリングセッション中の咳の回数で調整すると,エアロゾルの排出量が統計的に有意に減少することが確認された: 粗エアロゾルでは77%95%CI, 51%-89%),微細エアロゾルでは48%95%CI, 3%-72%)の減少が見られた(Figure 1マスクとアルファの相互作用を解析したところ(Table 3),アルファ感染ではマスクの性能(performance)に有意差がないことが確認された.参加者が持参したフェイスマスクの種類は様々で,研究初期には一重の自家製マスクと輸入品の装飾用スカーフマスク,1年の間には自家製および市販の二重構造の布製マスク,サージカルマスク,ダブルマスク,KN95へと進歩していった(Table S4).サージカルマスクと,調査した様々な布製マスクを組み合わせたものとの間には,有意な差は見られなかった(Table S5).

 

 

Figure 1: Viral RNA shedding in paired with and without face mask samples. Viral RNA measured during 69 same-day paired sampling events with and without mask from 46 seronegative cases. Samples with no detected viral RNA were assigned a copy number value of one. Exhaled breath aerosols were obtained in 30-minute sampling durations. “+mask” = sample collected while wearing a face mask. MTS = mid-turbinate swab, Fomite = swab of participant’s mobile phone.

Figure 1.

Seropositive cases:

呼気サンプル採取時に8人がSARS-CoV-2スパイクタンパクに対する抗体を持っていた.血清陽性例は血清陰性例よりも咳をする傾向があったが(Table 1),血清陽性例の呼気エアロゾルサンプルには検出可能なウイルスRNAはなかった(Table S6

Virus cultures:

ウイルス培養を行ったサンプルのうち,血清陰性者から採取したMTS73個のうち50個(68%),唾液62個のうち20個(32%)から,感染性ウイルス(Figure S2)を検出した(Figure 2, Table S2a50%の確率で培養陽性となるRNA濃度は,MTSでは7.8×105,唾液では5.2×106であった(Figure S11, Table S7フェイスマスクを着用していない状態で採取した75個の微細エアロゾルサンプルは,いずれも培養陽性ではなかった.フェイスマスク着用の状態で採取した66個の微細エアロゾルサンプルのうち,2個(3%)が培養陽性であった: そのうち1個は発症後2日のアルファ変異ウイルス感染者,1個は発症後3日のNextstrain clade 20Gウイルス感染者であった培養に回されたfomitesおよび粗エアロゾルサンプルは陰性であった

Figure 2: Viral RNA content and culture results of samples from all sampling events for seronegative cases. Samples with no detected viral RNA were assigned a copy number value of one. Exhaled breath aerosols were obtained during 30-minute sampling events and included unpaired with and without face mask samples. Five fine aerosol samples with face mask and three fomite samples were not available for culture. A subset of MTS, saliva, and coarse aerosol samples were subjected to culture. MTS = mid-turbinate swab, Fomite = swab of participant’s mobile phone.

Figure 2.

 

Discussion

アルファ変異ウイルスに感染した場合,初期の株や伝播性の増加を伴わない変異ウイルスと比較して,呼気中のウイルスRNAの量が12桁多かった.鼻や口でのウイルスRNA量の増加を考慮しても,エアロゾル排出量が増加していることから,進化の圧力(evolutionary pressure)によって,より効率的に空気媒介性伝播できるSARS-CoV-2が選択されていると考えられる.

呼気中の微細エアロゾル2サンプル,MTSの約2/3,唾液の約1/3から感染性ウイルスを回収した.MTSおよび唾液サンプルのロジスティック回帰分析によると,各RNAコピーが,小さいものの,測定可能である感染性ウイルス粒子を表す確率であることが示唆され,これまでの感染性ウイルスの用量反応モデルと一致した[23].我々の細胞培養システムで感染性ウイルスが検出される確率は,102コピーの唾液サンプルのRNAコピーあたり10-4と高い可能性がある.回帰モデルに基づいて培養陽性の推定確率が1サンプルあたり8%であった,1サンプルあたりのRNAコピー数が104を超える2個の微細エアロゾルサンプルのうち1個から,感染性ウイルスが回収された.もう1つの培養陽性エアロゾルサンプルは,RNAの検出限界である75コピーを下回るエアロゾルサンプル98個のうちの1個であった.この観察結果は,非常に低いRNAコピー数のエアロゾルサンプルから感染性SARS-CoV-2が検出されたという過去の報告[5]と一致しており,呼吸器エアロゾル中のウイルス粒子には,MTSよりも不完全なビリオン(defective virions)が少ないこと,あるいは鼻汁や唾液に比べて,液体がウイルス細胞の付着および侵入に干渉する可能性が低いことを示唆しているのかもしれない.ヒト気道上皮は,実験室の細胞培養よりも感染に対して感受性がある可能性がある[24]

研究ボランティアが使用した様々な種類のフェイスマスクは,呼気中のウイルスRNA量をわずかではあるが有意に減少させたことから,発生源対策としての使用が支持された.インフルエンザに関するこれまでの研究と同様に,SARS-CoV-2ウイルスRNAは粗エアロゾルよりも微細エアロゾルでより多く排出され,マスクは粗エアロゾルの放出を阻止するのにより効果的であった[10,13,25,26].微細エアロゾルの放出を阻止するフェイスマスクの効果(1.9倍)は,我々が以前にインフルエンザで報告した効果(2.8倍)と同様であった[13].しかし,粗エアロゾルを4.3倍(または77%)減少させることができものの,これまでにインフルエンザの排出で観察された25倍の減少に比べて有意に少ないものであった[13].これは,今回の研究では,より活発で長時間にわたる発声が行われたため,ゆるいフェイスマスクからの漏れが最大になったと予想される.フェイスマスクは,アルファと「野生型」のエアロゾルの排出を同等に抑制した.

シンガポールにおけるCOVID-19患者22人から採取したウイルスRNAエアロゾルのG-IIを用いた測定結果は[27],今回観察されたものとRNAコピー数および歌唱時および大声での会話時の呼気サンプルの全体的な陽性率(59% vs 今回51%)は同様であった.シンガポールで調査された症例の大部分(68%)は伝播性の増加に関連する変異ウイルスに感染していたが,18%の感染はVOCsあるいはVOIsではなく,各症例の採取はわずか1日だけであった.それに比べて,今回のサンプルでは,「野生型」感染が多く,1人あたりのサンプリング日数も多いため,変異ウイルスが排出に与える影響を解析することができた.シンガポールではデルタ変異ウイルスが1つ調査されていたが,本研究ではなかった.しかし,両研究におけるG-IIを用いて検出された排出率は,Maらが細いストローで息を吹きかけるサンプラーを用いて報告した排出率[28]よりも低かった.Maらと我々のデータは,「野生型」に感染した人のうち,検出可能なレベルのウイルスRNAをエアロゾル中に排出する人が少数派(それぞれ26%31%)であるという点で一致している.しかし,アルファ感染に関する我々のデータとシンガポールのデータは,この状況が変化しつつあり,ほとんどの症例がより頻繁にウイルスのエアロゾルを排出している可能性を示唆している.我々は,デルタ感染者を登録し,メリーランド州のプロトコルを用いて調査を行っている.

Limitation: ほとんどの症例は,発症または最初の陽性反応から数日後に調査されたため,最も感染性の強い時期を逃してしまった可能性がある[29,30].さらに,すべての症例は検査時には軽症であり,中等症になって入院を必要としたのは2人のみであった.そのため,今回のデータは,感染の全容を表していない可能性がある.参加者が着用したフェイスマスクの種類は調査期間中に変化し,購入できたサージカルマスクの品質も変化した.そのため,我々は特定のフィッティングがゆるいマスクの効果については報告できない.しかし,この研究は,コミュニティ・マスキングによってもたらされる感染源コントロールの平均的な量についての情報を提供する.最後に,物流上の配慮から,採取から培養までの間にサンプルを凍結させる必要があり,特に希釈されているエアロゾルサンプルでは感染性が失われる可能性があった.

 

 

Conclusions

SARS-CoV-2はより効率的な空気媒介性伝播に向かって進化しており,フィッティングがゆるいマスクは重要な感染源対策にはなるが,中程度(modest)のものである.したがって,ワクチン接種率が非常に高くなるまでは,何層もの感染対策を継続し,フィッティングが良いマスクやレスピレーターを使用する必要がある.

 

References

省略.

2021.08.13.21261989v1.full.pdf
media-1 (1).pdf