COVID-19関連追加(2021831日)自然感染とワクチン免疫

SARS-CoV-2に一度でも感染すると,ワクチンよりもはるかに高い免疫が得られる

−ただし,感染パーティはご遠慮ください】

Wadman M. Having SARS-CoV-2 once confers much greater immunity than a vaccine—but no infection parties, please. Science. Aug 26, 2021.

https://doi.org/10.1126/science.abm1207.

https://www.sciencemag.org/sites/default/files/styles/inline__450w__no_aspect/public/_20210826_on_Naturalimmunityvsvaccination_1280x720.jpg?itok=c7WNBeht

SARS-CoV-2に感染した後に発生する自然な免疫防御は,パンデミックコロナウイルスのデルタ変異に対する盾としては,Pfizer-BioNTech社ワクチンを2回接種するよりもはるかに効果的であることが,イスラエルで行われた大規模な研究で明らかになった.今回発表されたデータによると,SARS-CoV-2に感染したことのある人は,ワクチンを接種したことのない人に比べて,デルタ変異ウイルスに感染したり,発症したり,重篤なCOVID-19で入院したりする可能性が非常に低いという.

この研究は,ヒト免疫システムのパワーを示すものだが,感染症の専門家は,それにもかかわらず,COVID-19に対するこのワクチンやその他のワクチンは,重篤疾患や死亡対して高い防御を維持していると強調している.また、ワクチンを接種していない人が意図的に感染することは非常に危険であると警告している.ロックフェラー大学の免疫学者で,SARS-CoV-2に対する免疫応答を研究しているMichel Nussenzweigは,今回の研究には参加していないが,”我々が人々に言ってほしくないのは,『よし、外に出て感染しよう、感染パーティを開こう』ということだ.”なぜなら,誰かが死ぬかもしれないから.”

また,過去にSARS-CoV-2に感染し,Pfizer-BioNTech社のメッセンジャーRNAmRNA)ワクチンを1回接種した人は,かつてSARS-CoV-2に感染し,まだワクチンを接種していない人に比べて,再感染に対する防御効果が高いことも分かった.今回の研究結果は,過去に感染した人が,Pfizer-BioNTech社ワクチンまたはModerna社の同様のmRNAワクチンを受ける必要があるかどうかについての議論に役立つ可能性がある.米国では,SARS-CoV-2にすでに感染している人を必ずしもワクチン接種の対象外とはしておらず、完全ワクチン接種を推奨している.しかし,1回のmRNA接種で十分ではないかと主張する科学者もいる.また,ドイツ,フランス,イタリア,イスラエルなどの国々では,過去に感染した人に1回だけワクチンを接種している.

この研究は,世界で最もCOVID-19ワクチン接種率の高い国の1つであるイスラエルで実施され,イスラエルでデルタが主流となった61日〜814日までの間に,感染,症状,入院を記録した何万人ものイスラエル人を調査したものである.この研究は,SARS-CoV-2に対する自然による免疫とワクチンによる免疫を比較したものとしては,これまでで最大規模のリアルワールドにおける観察研究である.

この研究は,Nussenzweigらをはじめとする科学者たちを感心させた.SARS-CoV-2に対する免疫応答を研究しているダンデリド病院とカロリンスカ研究所の医師兼免疫学研究者であるCharlotte Thålinは,”自然な免疫がワクチンよりも優れていることを示す教科書的な例だ”と言う.”私の知る限りでは,COVID-19でこのことが示されたのは初めてである.”

それでも,Thålinをはじめとする研究者たちは,ワクチンを接種していない人が意図的に感染すると,重症や死亡,あるいは”Long Covid”と呼ばれる長引く重大な症状が出る大きなリスクがあると強調する.ワシントン大学シアトル校の免疫学者であるMarion Pepperは,この研究は自然な免疫の利点を示しているが,”そこに至るまでにこのウイルスが体に何をするかは考慮されていない”と言う.COVID-19はすでに世界中で400万を超える死者を出しており,デルタやその他のSARS-CoV-2変異ウイルスはオリジナルウイルスよりも死に至る危険性があると懸念されている.

今回の分析は,約250万人のイスラエル人を登録しているMaccabi Healthcare Servicesのデータベースに依拠して行われた.同サービスの研究・イノベーション部門であるKSM社のTal PatalonSivan Gazitが中心となって行ったその研究では,2つの分析では,1月と2月にワクチンを接種した未感染者は,コロナウイルス既感染者と比較して,6月,7月,8月前半において6倍〜13倍の確率で感染する可能性が高いことがわかった1つの分析では,医療機関の32,000を超える人を比較したところ,ワクチン接種者では,症候性COVID-19を発症するリスクは27倍、入院リスクは8であった

Thålinは,”その差は非常に大きい”と述べたが,比較のために分析した感染やその他のイベント数は "小さい "と注意を促している.例えば,32,000人を対象とした分析における,高い入院率は,ワクチン接種群で8人,既感染群で1人の入院に基づいている.また,感染リスクが13倍に増加したのは,ワクチン接種群で238人の感染があったからで,これは16,000を超える人の1.5%にも満たない.一方,SARS-CoV-2既感染の同人数の間では,19人の再感染があった.

今回の研究では,新たなSARS-CoV-2感染者において死亡者はいなかったため,死亡率の比較はできなかったが,自然による免疫には及ばないにしても,ワクチンが重篤な疾患に対する強力な盾になることは明らかである.さらに,自然による免疫は完全ではない.SARS-CoV-2の再感染はまれであり,多くの場合,無症候性あるいは軽症であるが,重症化する可能性もある.

もう1つの分析では,SARS-CoV-2感染が確認され,まだワクチンを接種していない14,000人を超える人と,それと同数の既感染のある人がPfizer-BioNTech社ワクチンを1回接種した場合を比較したその結果,ワクチン未接種群では,ワクチン1回接種群と比較して,再感染する確率が2倍になる可能性があることがわかった

スクリプス研究所の科学者Eric Topolは,”我々は,自然感染免疫(natural infection immunity)の重要性を過小評価し続けている...特に(感染が)最近の場合は”と言う.”そして,1回のワクチン接種でブーストすると,現在世界にあるどのワクチンにも匹敵しないレベルにまで高めることができる.”

Nussenzweigによると,過去に感染したことのあるワクチン接種者の結果は,彼のグループやロックフェラー大学の同僚Paul Bieniaszらが『Nature』誌および『Immunity』誌に発表した一連の論文や,Bieniaszらが今月発表したプレプリントから得られた実験結果を裏付けるものだという.Nussenzweigによれば,SARS-CoV-2に対する自然の免疫を獲得した後にワクチンを接種した人の免疫システムは,コロナウイルスに対して非常に広範で強力な抗体を作り出すという.例えば,過去に感染した後にmRNAワクチンを接種した人の血液中には,コロナウイルスのスパイクタンパク質に20の懸念する変異(concerning mutations)を加えたものを発現させた,ヒトに無害な別のウイルスの感染性を中和する抗体があることが報告されている.ワクチンを接種した人と自然感染した人の血清では,これができなかった.

Topolらは,イスラエルの医療記録研究について,新規感染,症候性感染,入院,死亡などを追跡する前向き研究に比較して,後ろ向き分析固有の弱点があることなど,いくつかの限界を指摘している.エモリー大学の生物統計学者であるNatalie Deanは,”今回の結果が再現されるか,反論されるかが重要”と述べている.

彼女はまた,”この研究の最大の限界は,(SARS-CoV-2感染の)検査がまだ任意であることであり,研究デザインの一部ではないことだ”,”つまり,例えば,過去に感染して軽い症状を発症した人は,おそらく自分には免疫があると思うため,ワクチンを接種した人よりも検査を受ける確率が低いような,比較が混同される可能性がある”と述べる.

Nussenzweigのグループは,SARS-CoV-2の感染から回復した人は,コロナウイルスを標的とする抗体の数と種類が1年以内に増加し続けるというデータを発表している.一方,2回ワクチンを接種した人は,2回目接種から数ヶ月後には,”全体的なメモリー抗体コンパートメントの効力や幅の増加が見られなくなる(stop seeing increases “in the potency or breadth of the overall memory antibody compartment””と彼は言う.

多くの感染症では,自然に獲得した免疫の方がワクチンによる免疫よりも強力で,それが生涯続くことが多いことが知られている.ヒトの重篤な疾患である重症急性呼吸器症候群や中東呼吸器症候群の原因となる他のコロナウイルスは,強固で持続的な免疫応答を引き起こす.一方で,通常は風邪程度の症状しか引き起こさない他のいくつかのヒトコロナウイルスは,定期的に再感染することが知られている.

 

 

 

 

 

 

 

SARS-CoV-2の自然による免疫とワクチンによる免疫の比較: 再感染とブレイクスルー感染の比較】

Gazit S, et al. Comparing SARS-CoV-2 natural immunity to vaccine-induced immunity: reinfections versus breakthrough infections. medRxiv. Posted Aug 25, 2021.

https://doi.org/10.1101/2021.08.24.21262415.

Abstract

Background

COVID-19に対するワクチンによる免疫が低下しているという報告が出始めている.しかし,SARS-CoV-2に過去に感染していた場合の長期的な防御効果については不明である.

Methods

我々は,3つのグループを比較する後ろ向き観察研究を行った: (1)SARS-CoV-2未感染者がBioNTech/Pfizer社のmRNA BNT162b2ワクチンを2回接種した場合,(2)既感染者でワクチンを接種していない場合,(3)既感染者で1回接種した場合.3つの多変量ロジスティック回帰モデルを適用した.すべてのモデルで,4つのアウトカムを評価した.SARS-CoV-2感染,症候性疾患,COVID-19関連の入院,死亡の4つのアウトカムを評価した.イスラエルでデルタ変異ウイルスが優勢であった202161日〜814日までを追跡期間とした.

Results

SARS-CoV-2未感染のワクチン接種者は,最初のイベント(感染またはワクチン接種)が2021年の1月〜2月に発生した場合,既感染者と比較してデルタのブレイクスルー感染リスクが13.06倍(95%CI, 8.08-21.11)に増加した.このリスク増加は,症候性疾患についても有意(P< 0.001であった.ワクチン接種前の任意の時期(20203月〜20212月まで)に感染が発生した場合,自然による免疫が低下している証拠が示されたが,SARS-CoV-2未感染のワクチン接種者は,ブレイクスルー感染リスクが5.96倍(95%CI, 4.85-7.33),症候性疾患リスクが7.13倍(95%CI, 5.51-9.21)増加した.また,SARS-CoV-2未感染者は,既感染者に比べてCOVID-19関連の入院リスクが高かった

Conclusions

本研究では,SARS-CoV-2デルタ変異ウイルスによる感染,症候性疾患,入院に対して,BNT162b22回接種による免疫と比較して,自然による免疫の方がより長期的かつ強力な防御効果をもたらすことを示した.また,SARS-CoV-2に過去に感染したことがあり,かつワクチンを1回だけ接種した人は,デルタに対してさらなる防御効果を得ることができた.