COVID-19関連追加(202191日)Delta変異ウイルスの病原性と伝播動態

SARS-CoV-2 delta B.1.617.2)とalphaB.1.1.7)の比較による入院および救急受診のリスク: コホート研究】

Twohig KA, et al. Hospital admission and emergency care attendance risk for SARS-CoV-2 delta (B.1.617.2) compared with alpha (B.1.1.7) variants of concern: a cohort study. Lancet Infectious Diseases. Aug 27, 2021.

https://doi.org/10.1016/S1473-3099(21)00475-8.

Summary

Background

SARS-CoV-2 deltaB.1.617.2)は,20213月にイギリスで初めて検出されたウイルスである.その後,感染性が高いことから,急速に優勢な系統となった.このdelta変異ウイルスは,以前から優勢であったalphaB.1.1.7)よりも重症疾患と関連していることが疑われている.我々は,病院受診(hospital attendance)の相対リスクを測定することで,alphaと比較したdeltaの重症度の特徴を明らかにすることを目的とした.

Methods

このコホート研究は,2021329日〜523日にイングランドでCOVID-19を発症したすべての患者のうち,全ゲノムシーケンスによりalphaまたはdelta変異ウイルスに感染していることが確認された患者を対象に行われた.これらの患者の個人レベルのデータを,ワクチン接種,救急受診(emergency care attendance),入院、死亡に関する日常的な医療データセットとリンクさせた(Public Health England's Second Generation Surveillance System and COVID-19-associated Deaths dataset, National Immunisation Management System, NHS Digital Secondary Uses Services and Emergency Care Data Set).コホート全体およびワクチン接種状況のサブグループごとに,シーケンスでdeltaおよびalphaが確認された患者間で,入院と救急受診のリスクを比較した.層別Cox回帰を用いて,年齢,性別,民族性,貧困度(deprivation),最近の海外旅行,居住地域,暦週,ワクチン接種状況を調整した.

Results

2021329日〜523日までにイングランドでalphaおよびdelta変異とシーケンスで確認された49930人のうち,43338人を解析対象とした(appendix p2).5634人の記録がNHS番号の欠落により除外された(alpha変異の39677人のうち4240[10.7%]delta変異の10253人のうち1394[13.6%]).NHS番号の欠落は,白人よりも黒人やアジア人に多く見られ(アジア人10075人のうち1512[15.0%],黒人1508人のうち291[19.3%],白人33306人のうち2574[7.7%]),海外旅行者にも見られた(海外旅行者2952人のうち871[29.5%]に対し,非旅行者46977人のうち4762[10.1%]).

34656人の患者がalpha変異に,8682人の患者がdelta変異に感染していた; 研究期間中,変異ウイルス別の週間症例数の割合は変化し、alpha変異患者は2021329日の週の7606人のうち7593人(99.8%)から,2021517日の週の6090人のうち2117人(34.8%)に減少した.delta変異患者(年齢中央値29[IQR 14-41])は,alpha変異患者(年齢中央値31[17-43])によりも若年であった.alpha変異患者と比較して,delta変異患者は,アジア系の背景を持つ人や,イングランド北西部やロンドンに住んでいる人の割合が高かった(Table 1).

 

 

Table 1:

alphaおよびdelta変異患者の病院受診アウトカムを分析した結果をTable 2に示す.検体採取後14日以内の入院の推定リスクは,alpha変異患者よりもdelta変異患者の方が高かったまた,14日以内の入院または救急受診の推定リスクは,alpha変異患者よりもdelta変異患者の方が高かった

Table 2:

Table 3は,deltaおよびalpha変異患者の病院受診アウトカムのHRsをワクチン接種状況別に示したものですある.ワクチン未接種または初回接種から21日未満の患者では,delta変異患者はalpha変異患者に比べて,入院の推定リスクが高く,入院または救急受診のいずれのリスクも高かった.ワクチン接種を受けた患者(vaccinated patients)のサブグループ(2回目接種の有無にかかわらず,初回接種から21日以上経過)では,deltaおよびalpha変異患者の間で,いずれの病院受診アウトカムの推定リスクには有意な差は認められなかった.ワクチン接種を受けた患者(vaccinated patients)におけるdeltaおよびalpha変異のリスク推定値は,精度が低く,CIsが広いために限界があった.ワクチン接種を受けたサブグループと未接種のサブグループのHRsを比較しても,有意な相互作用は見られなかった(Table 3).

Table 3:

シェーンフィールド残差および検定(Schoenfeld residuals and test)では,比例ハザードの仮定からの有意な逸脱は見られなかった(appendix p3).交絡因子の事後評価では,両カテゴリーの病院受診アウトカム(入院,入院あるいは救急受診)の調整済みHRsは,暦週で調整した場合に最も変化した(入院で83%, 入院あるいは救急受診で39%の変化; appendix p4).1つまたはすべての層別変数(stratification variables)を回帰変数として含めると,どちらの病院受診アウトカムの推定リスクは,alpha変異患者よりもdelta変異患者の方が一貫して大きかった(appendix p7).地域や暦時間(calender period)の代替変数,症状の有無(symptomatic status),サブグループの分析,アウトカムの定義を変えて調整した場合の結果への影響を評価した感度分析をappendixpp 8-9)に示す.すべての感度分析において,どちらの病院受診アウトカムの推定リスクは,delta変異患者の方がalpha変異患者よりも高かった.この差は一貫して統計的に有意であったが,症状の有無によるサブグループ解析では,Clsが広く,場合によっては1を含むこともあった.

Conclusions

この大規模な全国調査では,delta変異ウイルスによるCOVID-19患者は,alpha変異ウイルスに比べて,入院や救急受診のリスクが高いことがわかった.この結果は,ワクチンを接種していない集団においてdelta変異ウイルスアウトブレイクが発生した場合,alpha変異に比べて医療サービスへの負担が大きくなる可能性を示唆している.

 

 

 

 

 

 

 

【中国におけるDelta変異ウイルス感染の伝播動態と疫学的特徴】

Kang M, et al. Transmission dynamics and epidemiological characteristics of Delta variant infections in China. medRxiv. Posted Aug 13, 2021. preprint.

https://doi.org/10.1101/2021.08.12.21261991.

Background

SARS-CoV-2 Delta変異が世界的に優勢になっている.我々は,中国南部で発生したDelta変異アウトブレイクの感染動態と疫学的特徴を評価した.

Methods

202156月に中国・広東省で発生したアウトブレイクから,確定症例とその濃厚接触者に関するデータを後ろ向きに収集した.主要な疫学的パラメータ,ウイルス量の時間的傾向,二次発病率を推定し,Delta変異と野生型SARS-CoV-2ウイルスとの間で比較した.また,ワクチン接種とウイルス量および伝播との関連を評価した.

Results

広東省で発生したアウトブレイクでは,167人の患者がDeltaに感染していた.感染待ち期間(latent period)と潜伏期間(incubation period)の平均推定値はそれぞれ4.0日と5.8日であったDelta変異感染者では,野生型感染者に比べて相対的に高いウイルス量が観察された.Delta変異症例の濃厚接触者における二次発病率は1.4%であり,73.9%95%CI: 67.2%, 81.3%)が発症前に伝播していたワクチン未接種OR: 2.84, 95%CI: 1.19, 8.45)またはワクチン1回接種OR: 6.02, 95%CI: 2.45, 18.16)の指標症例は,ワクチン2回接種症例に比べて,濃厚接触者への伝播の可能性がより高かった

 

 

Figure 1: The key epidemiologic time-delay distributions of Delta variant (red lines).

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我々は,感染のtime windowとウイルス排出開始のtime windowを推定するのに十分な情報が得られたDelta確定症例101人のデータを調べた.感染待ち期間(latent period)は平均4.0日(95%CI: 3.5, 4.4)と推定されたDelta症例の95%は,感染後8.2日以内(95%CI: 7.1, 9.3)にウイルス排出を開始した(Figure 1A症候性Delta症例95人から推定された潜伏期間(incubation period)は平均5.8日(95%CI: 5.2, 6.4)であったDeltaの潜伏期間の95%パーセンタイルは11.5日(95%CI: 10.1, 13.0)であった(Figure 1B

我々は,発症日が報告されているDelta症例の伝播ペア94組のデータを用いて,発症前の伝播を考慮し,感染性プロファイルを推定した.その結果,伝播の2.7%(95%CI: 1.0%, 5.0%)は発症7日前に起こり,22.5%95%CI: 16.0%, 30.0%)は発症4日前から感染性を持ち始め,感染性は発症2.1日前(95%CI: 1.5, 2.7)にピークを迎え,それから徐々に低下し,伝播の73.9%95%CI: 67.2%, 81.3%)は発症前に起こり,そして伝播の97.1%95%CI: 94.4%, 99.0%)は発症後4日以内に起こっていたFigure 1C

 

Figure 2: The daily estimates of forward serial interval, instantaneous reproduction number (Rt) and infectiousness peak.

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Deltaアウトブレイクにおいて,推定された世代間隔(serial intervals)は,2021525日の6.1日(95%CI: 5.2, 7.1)から2021618日の4.0日(95%CI: 3.1, 5.0)に減少した(Figure 2B).時間変化する世代間隔と症例発生率のデータを用いて推定すると,Rt2021525日の9.395%CI: 7.7, 11.6)から2021618日の0.4895%CI: 0.42, 0.57)まで急速に低下し,202169日以降は1を下回っていた(Figure 2C).同時期に,時間変化する世代間隔に基づいて推定した感染性のピークは,発症後0.23日(95%CI: 0.20, 0.26)から発症2.14日前(95%CI: 1.52, 2.70)にシフトした(Figure 2D).2021527日以前の指数関数的急増期における世代間隔とRtの日次推定値を用いると,初期の世代間隔は5.8日(95%CI: 5.2, 6.1)と推定され(Figure 2B),R06.495%CI: 3.7, 9.3)となった(Figure 2C).

 

 

Figure 3: Temporal patterns of viral shedding for the Delta variant and the wild-type SARS-CoV-2 virus.

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159人のDelta症例については,発症の4日前から34日後までに採取した1314件の咽頭スワブを検査した.発症4日前から発症後7日までは高いウイルス量が維持され,その後,20日目頃までは徐々に低レベルまで減少したが検出可能なレベルであった(Figure 3A).デルタ変異と野生型のウイルス量を比較するために,2020121日〜2020214日の間に,中国広東省広州市で野生型ウイルスに感染した年齢中央値46歳(IQR: 33, 61)の94人を確認した.そのうち,47人(50.0%)が男性で,無症候性2人(2.1%),軽症30人(31.9%),正常(normal61人(64.9%)であり,重症・重篤症例はなかった.これらの症例はいずれもCOVID-19ワクチンを接種していなかった.野生型94人については、発症日と発症31日後に合計406件の咽頭スワブが採取され検査が行われた.重症・重篤症例とワクチン接種を受けた症例を除いた結果,ウイルス量が多い時期(発症後07日)には,Delta変異のN遺伝子のCt値の中央値は23.0IQR: 19.3-28.6)で,野生型のN遺伝子のCt値の中央値36.5IQR: 33.0-40.0)よりも有意に低いことがわかった(Figure 3BGAMsの結果,発症日数,年齢,重症度を調整すると,ワクチンを1回または2回接種したDelta症例のCt値は,ワクチンを接種していない症例に比べて平均で0.9795%CI: 0.19, 1.76)高かった(Figure 3C

Table 1:

Table 1.

我々は,個人の感染リスクとDelta変異の伝播に対するワクチン接種の有効性を評価するために,COVID-19症例73人の濃厚接触者である5153人の感染を分析した.接触者の全体の二次発病率は1.4%95%CI: 1.1%, 1.8%)であったステップワイズ回帰モデルによると,感染リスクが高かったのは,高齢者(OR: 1.02, 95%CI: 1.01, 1.03ワクチン未接種(OR: 2.84, 95%CI: 1.19, 8.45)またはワクチン1回接種(OR: 6.02, 95%CI: 2.45, 18.16)の指標症例に対する曝露者,そして,家庭や親戚の接触者(household and extended family contacts)(OR: 40, 95%CI: 24, 66であった(Table 1

 

Conclusions

Delta変異ウイルスに感染した患者は,発症がより早かった.再生産数の推定には,世代間隔(serial interval)が短く,時間的に変化することを考慮する必要がある.ウイルス量が多く,発症前に感染するリスクが高いことから,Delta変異ウイルスの感染対策には課題がある.