COVID-19関連追加(2021910日)ファビピラビルのRCTJapicCTI-205238

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2020415-2

2020925

2021412-2

2021724

【酸素療法を行わない中等症COVID-19肺炎患者に対するFavipiravirの有効性と安全:

無作為化第III相臨床試験】

Shinkai, M., Tsushima, K., Tanaka, S. et al. Efficacy and Safety of Favipiravir in Moderate COVID-19 Pneumonia Patients without Oxygen Therapy: A Randomized, Phase III Clinical Trial. Infect Dis Ther (2021). https://doi.org/10.1007/s40121-021-00517-4.

Introduction

コロナウイルス感染症2019COVID-19)の原因である重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2SARS-CoV-2)は,エンベロープ型の一本鎖RNAウイルスである.ファビピラビルは,RNA依存性RNAポリメラーゼを選択的に阻害することを作用機序とする経口投与可能な抗ウイルス薬である.COVID-19患者を対象とした暫定試験では,多数の臨床パラメータにおいて有意な改善が報告されているが,これらの知見は十分な対照試験で確認されていない.酸素療法を必要としない中等症の肺炎患者を対象に,ファビピラビルの有効性と安全性を評価するため,無作為化,単盲検,プラセボ対照の第III相試験を実施した.

Methods

Trial Design and Oversight:

COVID-19患者におけるファビピラビルの安全性と有効性を評価するために,無作為化,単盲検,プラセボ対照,並行群間比較デザインを採用した.計画時点では本治療法に関する知識が限られていたため,中間解析で得られた知見に基づいてサンプルサイズを再推定するアダプティブデザインを取り入れた.COVID-19に対するファビピラビルのコンパッショネートユーズを目的とした観察研究は,本試験実施時にはすでに日本で開始されていた[8].そのため,COVID-19患者の多くがファビピラビルの治療を受けることができた.プラセボ群に割り付けられた患者の不利益を最小限にするために,割り付け比率はファビピラビル群を優位に21とした.治験責任者は,患者の胸部画像が顕著に悪化し,撮影前後12時間の酸素飽和度(SpO2)が継続的に低下傾向にあると定義される「有効性の欠如(lack of efficacy)」が生じた場合,患者を救援治療(rescue treatments)に切り替えることが認められた.これらのケースでは,プラセボ群の患者の治療オプションとして、ファビピラビルの後期投与(late administration)が認められた.以上のことから,プラセボ対照試験は倫理的に許容されると考えられた.この試験計画を日本の規制当局に申請した(IND #2019-7269).試験計画書,インフォームド・コンセント・フォーム,およびその他のすべての必要書類は,各試験実施施設での試験開始前に,各試験実施施設のIRBInstitutional Review Board)で審査された.本試験はすべてのIRBによって承認され(supplementary material参照),ヘルシンキ宣言(1964年およびその後の改正)およびGood Clinical Practiceに準拠して実施された.

Participants:

ファビピラビルは経口の抗ウイルス薬であるため,酸素療法が必要な患者や意識障害がある患者など,嚥下が困難である患者には適さない.そこで,入院治療が必要な中等症患者を対象とした.対象者の条件は (12074歳の男性または女性,(2)登録時に採取した呼吸器サンプルの核酸増幅検査でSARS-CoV-2が陽性であり,胸部画像で肺病変が確認され,37.5℃以上の発熱があること,(3)患者から書面によるインフォームドコンセントを得ていること,であった主な除外基準は,(137.5℃以上の発熱から11日以上経過していること,(2)感染エピソードが再燃または再感染であること,(3)酸素療法なしでSpO294%未満であること,であった

Setting:

治験責任者は,バイアスを最小限にするために,治験実施施設の必要最小限の関係者にのみ,登録患者に割り当てられた薬剤に関する情報を開示した.割り付けられた薬剤に関する情報は,患者および中央委員会には開示されず,試験期間中は盲検化が維持された.治験責任者は,退院時および/または28日目まで,少なくとも12回(朝と夜),患者の臨床症状とバイタルサインを観察し,記録した.退院時および/または28日目まで,3日ごとに鼻咽頭検体を用いたSARS-CoV-2のウイルス学的検査および胸部X線検査を行った.胸部X線検査とSARS-CoV-2定性検査は,治験責任者が主要エンドポイントを評価する際に任意に実施することができた.治験責任者は評価に用いた胸部X線写真を中央委員会に提出した.定性試験用のウイルスサンプルは,各試験実施施設において,米国国立感染症研究所(NIH)が推奨する方法で評価した.

Interventions:

試験の適格性を確認した後,中央無作為化を行った.ファビピラビル群に割り付けられた患者は,ファビピラビルを11800mg12回投与後,2日目から1800mg12回投与し,最大13日間投与された.この投与量は,日本でインフルエンザに対して承認されている投与量よりも多かった.これは,インフルエンザAH5N1)ウイルスに対するファビピラビルのneutral red uptake assayによるEC500.41.9µg/mLであったのに対し[9]SARS-CoV-2に対するEC509.72µg/mLであり[4],より高かったことによる.また,日本人の重症血小板減少性発熱症候群(SFTS: severe fever with thrombocytopenia syndrome)患者,に本試験と同じ用量のファビピラビルを投与したところ,平均トラフ濃度が40 µg/mLに達したことが報告されている[10].そのため,本試験ではこの投与量を採用した.なお,プラセボ群に割り付けられた患者には,マッチングしたプラセボ錠が最大14日間投与された.試験薬の投与期間中は,入院管理が必須であった.インターフェロンαSARS-CoV-2に対する抗ウイルス作用が報告されている薬剤(レムデシビル,硫酸ヒドロキシクロロキン,リン酸クロロキン,ロピナビル/リトナビル,シクレソニド,メシル酸ナファモスタット,メシル酸カモスタット,メシル酸ネルフィナビル,イベルメクチン)の使用,およびあらゆる種類の血液濾過療法(hemofiltration therapy)は禁止された.

Outcomes:

本試験当時,日本の規制当局は,発熱および呼吸器症状が改善した翌日に核酸増幅法によるウイルス定性検査を実施し,2日間連続して陰性であればCOVID-19患者を退院させることができると規定していた.この基準に基づき,主要エンドポイントは,4つの臨床パラメータ(体温,SpO2,胸部画像所見,ウイルスクリアランス)が改善するまでの時間として定義された複合アウトカムとした.他の臨床パラメータ(体温,SpO2,胸部画像所見)の改善後,少なくとも24時間後に得られたサンプルのSARS-CoV-2定性拡散増幅検査が記録された.改善は以下のように定義した: (1)体温の改善は,腋窩温が37.4℃以下に低下し,37.4℃以下の状態が24時間以上継続した場合; (2)SpO2の改善とは,酸素療法を行わずにSpO296%以上で24時間以上経過した場合; (3)胸部画像所見の改善とは,最も悪いと判断された前回の画像から少なくとも24時間後に撮影された胸部画像所見が改善している場合; (4)SARS-CoV-2陰性への回復とは,定性核酸増幅検査で,少なくとも24時間の間隔をおいて2回連続して陰性となった場合,と定義した.上記の定義を満たした場合,定性検査で初めて陰性になるまでの時間を,主要エンドポイントにおける改善時間と定義した.つまり,4つの臨床指標がすべて緩和された場合,退院可能と判断した.

主要エンドポイントに加えて,いくつかの副次エンドポイントも評価した.安全性評価では,28日間に発生したすべての有害事象(AEs: adverse events)を集計した.

Sample Size:

先行報告[7]に基づき,症状改善までの時間はファビピラビル群の方が4日短いと推定された.改善までの日数の生存関数が指数分布に従うと仮定して,α= 0.05(両側),統計的検出力80%log-rank検定によりファビピラビルの統計的優位性を示すには,96人(ファビピラビル64, プラセボ32人)で十分であると判断した.プロトコールでは,中央委員会による中間解析の結果に基づいて,サンプルサイズを再推定できることが規定された.中間解析は,プロトコールに規定されている通り,45人以上の患者データが得られた時点で行われた.委員会の生物統計学者は,試験からの脱落率を10%,治療開始前の患者の疾患回復率を25%と仮定して,少なくとも144人の患者(ファビピラビル96, プラセボ48人)のサンプルサイズを採用することを推奨した.このため,最終的な目標サンプル数は144人(ファビピラビル96, プラセボ48人)とした

Independent Central Committee:

盲検下で中央委員会が結果を再評価することで,一重盲検法に伴う操作上のバイアスを最小限に抑えた.胸部画像所見の再評価については,委員会は,治験責任者から提出された胸部X線画像の病変の範囲とdensityから最も悪化した画像を特定し,委員全員の合意を得た.委員会と治験責任者の間で意見の相違があった場合には,委員会の意見を採用した.委員会メンバーには,放射線科医を含む医師4人と生物統計学者1人の計5名の外部専門家が含まれた.委員会には3つの任務が与えられた: (1)主要エンドポイントの再評価,(2)有効性がないとする判断の妥当性の評価,(3)目標サンプルサイズの再推定,である.評価のサンプルを最小限にするために,再推定されたサンプルサイズは,生物統計家以外のすべての研究者と委員には開示されなかった.委員会は3回開催された.主要エンドポイントの再評価の際,委員会メンバーには,主要エンドポイントに関連する体温,SpO2SARS-CoV-2定性検査,胸部画像所見以外のデータは提供されなかった.

Statistical Analysis:

主要エンドポイント解析には,中間解析の前後で第一種過誤(type 1 error)を抑制するために,重み付けZ統計量[11]に基づくlog-rank検定を用いた.また,性別とベースライン時の年齢を共変量としたCox比例ハザードモデルを用いて,ハザード比(HR)とその95%信頼区間(CI)を算出した.有効性の欠如を認めた症例は28日目で打ち切られた.患者の状態などの縦断的データは,反復測定のための混合効果モデルを用いて評価した.そして,治療間の最小二乗平均値の差と95%CIを算出し,比較した.これらの解析には,SASソフトウェアv.9.4SAS Institute, Cary, NC, USA)を使用した.すべての統計検定は両側検定で,0.05未満のp値を有意とした.

Results

Patients:

合計156人の患者が無作為化された(Figure 1).試験薬を投与されたすべての患者が解析に含まれた.そのうち,ファビピラビル群では85人,プラセボ群では34人が,試験薬の投与を完了した.治験責任医師はファビピラビル群2人,プラセボ群10人に有効性の欠如を記録したが,中央委員会はプラセボ群1人に有効性の欠如があるとの判断を覆した.プラセボ群の7人は,有効性の欠如のため,2-8日間においてファビピラビルによる治療に切り替えられた。156人の患者のうち,ファビピラビルに割り付けられたのは男性の割合が相対的に高かった.平均年齢は両群間で差がなかったが,65歳以上の患者の割合がプラセボ群で高かった.NEWSについては,高/中リスクの患者の割合がファビピラビル群で高かった.その他の点では,両群間のバランスは良好であった(Table 1).酸素療法を必要としないCOVID-19肺炎患者が含まれていたので,治療開始前の平均SpO2は両群とも96%以上であった.

Figure 1: Of the 156 patients who underwent randomization, 119 (85 favipiravir, 34 placebo) completed the assigned study drug treatment. The study drug was discontinued in 22 patients in the favipiravir group and 15 in the placebo group, and, among these patients, the scheduled observations were continued to Day 28 in 15 patients in the favipiravir group and 7 in the placebo group. The study was discontinued for 4 patients in the favipiravir group and 1 in the placebo group. All 156 patients (107 favipiravir, 49 placebo) were included in the efficacy analysis as modified ITT population

Fig. 1

 

 

Table 1: Patients’ baseline demographic and clinical characteristics.

 

 

Efficacy:

主要エンドポイントを達成するまでの時間(95%CI)の中央値は,ファビピラビル群で11.9日(10.0-13.1),プラセボ群で14.7日(10.5-17.9)であった(Figure 2a, Table 2ファビピラビル群では,中央値が約3日短くなり,有意な差が認められた(p= 0.0136共変量調整済みCox比例ハザードモデルでは,HR95%CI)は1.591.02-2.48)で,これも有意であった.主要エンドポイントでは,評価項目では,両方法(both metnods)で有意差が認められた.

Figure 2: Kaplan–Meier curves for improvement in COVID-19 symptoms (i.e., temperature, SpO2, and findings on chest imaging, and SARS-CoV-2-negative conversion on qualitative testing) for 28 days defined as the primary end point among all patients in the trial (primary analysis) (Panel a) and two sub-groups according to whether the patients had IgA or IgG antibodies (Panel b) or not (Panel c) at randomization. The red curve represents the favipiravir group, and the blue curve represents the placebo group. The p value for the primary analysis (Panel a) was calculated by the log-rank test based on the weighted Z statistic. The others (Panels b and c) were calculated by a log-rank test. Hazard ratios (HR) for favipiravir to placebo were calculated using the Cox proportional hazards model adjusted for sex and age at baseline.

 

 

Fig. 2

Fig. 2

 

 

Table 2: Time from study drug initiation to COVID-19 clinical parameter improvement.

 

 

主要エンドポイントを構成する各パラメータについては,胸部画像所見の改善までの時間(中央値)は,ファビピラビル群がプラセボ群よりも有意に短かった(p= 0.0287定性検査でSARS-CoV-2陰性に回復するまでの時間(中央値)もファビピラビル群で有意に短かったが(p= 0.0405残りの2つのパラメータ(体温とSpO2)については同等であった(Table 2

COVID-19の各症状のうち,頭痛,筋肉痛あるいは関節痛,疲労感あるいは倦怠感は,ファビピラビル群で有意に早期に改善した(Figure 3).チアノーゼ,胸水,意識障害については,記録された症例数が少なかったため,十分な検討ができなかった.胸部画像の累積改善率の差は,時間の経過とともに次第に明らかになり,10日目からは有意な差が認められた(Figure 4).

Figure 3: Individual symptom specific hazard ratios using the Cox proportional hazards model adjusted for sex, age, the categorical variables that correspond to individual symptoms, and their interactions. Hazard ratios are plotted as black diamonds. Horizontal lines represent 95% confidence intervals.

Fig. 3

 

 

Figure 4: Time course of cumulative improvement rates on chest X-ray imaging. An asterisk on the difference in improvement rate indicates that there is a significant difference.

Fig. 4

7段階の順序尺度を用いた患者の状態に関しては,21日目までに退院した患者の割合の差は6.7%で、両群間に有意な差はなかった(Figure 5

Figure 5: Time course of patient status in accordance with the 7-point ordinal scale. Any missing clinical status score after the day of discharge was imputed by status score 1 (not hospitalized, no limitations on activities); other missing scores were imputed by last observation carried forward. Each number means the following clinical status; 1 not hospitalized, no limitations on activities; 2 not hospitalized, limitation on activities; 3 hospitalized, not requiring supplemental oxygen; 4 hospitalized, requiring supplemental oxygen; 5 hospitalized, on non-invasive ventilation or high-flow oxygen devices; 6 hospitalized, on invasive mechanical ventilation or extracorporeal membrane oxygenation; 7 death.

Fig. 5

事前設定したサブグループ解析では,日本人COVID-19肺炎患者の特徴をまとめた報告書[12]に基づき,リンパ球サブセット,LDHCRPを検査項目に含めた.BMI30kg/m2以上,発症から5日未満,ウイルスゲノム量が多い,CRPが高い,リンパ球が少ない,併存疾患(慢性呼吸器疾患,慢性腎疾患,糖尿病,高血圧,心血管疾患)がある患者の各サブグループでは,HRが有意に高かった(Figure 6

Figure 6: Sub-group specific hazard ratios using the Cox proportional hazards model adjusted for sex, age, the categorical variables that correspond to sub-groups, and their interactions. Hazard ratios are plotted as black diamonds. Horizontal lines represent 95% confidence ntervals. Nine and five patients in the favipiravir and placebo groups, respectively, were censored on Day 0 because they were SARS-CoV-2-negative before treatment initiation. Coexisting conditions included prognostic factors such as chronic respiratory illness, chronic renal disease, diabetes mellitus, hypertension, and cardiovascular illness

Fig. 6

Ad Hoc Analysis:

IgA抗体およびIgG抗体を測定し,サブグループ解析を行った.ファビピラビル群では,IgAまたはIgG抗体陽性サブグループにおいて,主要エンドポイントの達成までの時間の中央値が2.9日短くなった(Figure 2bIgAおよびIgG抗体陰性サブグループでは,log-rank検定により両治療群間に有意差が認められた(p= 0.0024また,Cox比例ハザードモデルに基づく共変量調整済みHR95%CI)は2.071.19-3.60)で,有意に高かった(Figure 2c.同様の傾向が,IgA抗体またはIgG抗体陰性患者に認められた.

Safety:

本試験では,死亡例は記録されなかった.AEsの発生率は,プラセボからファビピラビルに切り替えた患者を含むファビピラビル群では114人のうち106人(93.0%),プラセボ群では49人のうち19人(38.8%)であり,両群間に有意な差が認められた.重篤な有害事象(SAEs)はファビピラビル群で4件記録された(Table 3).ファビピラビル群のSAEsは,心肺停止,脳梗塞,肝障害,COVID-19関連肺炎であった.これらのSAEsのうち,因果関係が否定できなかったのは,脳梗塞と肝障害であった.改善または回復をアウトカムとしたAEsの発生率は同等であり,介入を必要としなかったAEsの発生率は,それぞれ270件のうち177件(65.6%)であったのに対し,プラセボ群では32件のうち10件(31.3%)であり,ファビピラビル群で有意に高かった.ファビピラビル群で5%以上の発現率を示したAEsは,高尿酸血症38.6%44/114),血中尿酸上昇37.7%43/114),発熱および肝酵素上昇がともに7.9%9/114),ALT増加7.0%8/114),肝機能異常5.3%6/114)であった高尿酸血症に関連したファビピラビル特異的AEs114人のうち87人(76.3%)に発生した

 

 

Table 3: Adverse event summary.

 

 

 

Discussion

ファビピラビルはこれまで,いくつかの非盲検試験でCOVID-19に対する臨床効果を示しており,中国,インド,ロシアでは治療の選択肢となっている[7, 13, 14].しかし,まだ未確認の知見も存在する.我々は,無作為化単盲検プラセボ対照第III相試験を実施し,ファビピラビルが酸素療法を行わない中等症COVID-19肺炎患者の臨床パラメータの改善までの時間を有意に短縮することを確認した.本試験の仮説は,Caiらが実施した過去の試験[7]を参考に設定し,中央値は予想よりも若干長かったものの,その差は約3日であり,仮説と矛盾しなかった.本試験の主要エンドポイントは,評価のタイミングや胸部画像やウイルス定性検査の頻度など,治験責任者が任意に測定できるものに影響されやすいと見ることができる.しかし,これらの評価時期や頻度については,両群間に明確な差は認められなかった.また,本研究の結果は,二重盲検試験と同等の方法で,独立した中央委員会により盲検下で評価された.以上のことから,ファビピラビルの有効性は信頼性をもって確認されたと考えられる.ベースラインでの患者の年齢とNEWSの分布に不均衡があったため,これらを共変量としたCox比例ハザードモデルを用いて効果を評価した.これらの共変量で調整済みHR95%CI)は1.681.06-2.64)で,当初のHRを上回った.この解析結果から,これらの不均衡は、結果を偏らせるほどの影響はないと考えられた.また,プラセボ群でファビピラビル投与に切り替えられた7人を含め,投与中止後の事象を割り付けられた治験薬の影響とみなした場合の感度分析を行い,有効性が認められなかった場合の影響を検討した.この解析では,ファビピラビル群の改善までの時間が約2日短くなり,主要解析と同様の傾向が確認された.主要評価項目である臨床パラメータについては,体温とSpO2の改善までの時間を単独で評価した場合には,有意な差はなかった.しかし,興味深いことに,これら2つのパラメータを組み合わせた場合の改善までの時間は,ファビピラビル群で1.6日短かった.これらの結果から,体温の改善と呼吸状態の改善は相関していないことが示唆された.主要エンドポイントである複合評価項目は,このような不均一な症状推移を示すCOVID-19患者にとって感度の高い評価項目であると考えられた.これら2つの臨床パラメータに差がなかった理由の1つとして,副腎皮質ステロイドの併用が認められたことが考えられる.副腎皮質ステロイドを使用した患者と使用しなかった患者のサブグループ解析では,後者のHRが前者の約2倍であったことから,ファビピラビルの投与が望ましいことが示された.また,約20%の患者が試験期間中,96%以上のSpO2を維持し,悪化しなかったことも理由として考えられる.このような患者さんの存在が,両群間の差を縮めている可能性がある.

log-rank検定で有意差を示したSARS-CoV-2陰性に回復するまでの時間のHRは約1.40であった.いずれの試験でもウイルスクリアランスには有意な差はみとめなかったが,このHRは,日本の無症候性または軽症COVID-19患者にファビピラビルを投与した試験[15]や,インドの比較的類似した患者集団を対象とした試験[13]に匹敵する.また,ロシアで行われた中等症COVID-19患者を対象としたファビピラビル試験の中間報告でも,早期のウイルスクリアランスが示唆されている[14].したがって,これらの結果は,SARS-CoV-2に対するファビピラビルの一貫した抗ウイルス活性を示していると考えられた.

ハムスターのSARS-CoV-2感染モデルでは,ファビピラビルを血漿中濃度4.4±1.6μg/mL以上で投与したところ,感染性ウイルス力価が著しく低下し,肺組織も大幅に改善した[16].残念ながら本試験の薬物動態データはないが,本試験と同量のファビピラビルをSFTS患者に投与したところ,トラフ濃度は前述のハムスター血漿濃度の約10倍であった[10].また,ファビピラビルは肺への浸透性が良好であると推定されている[17].これらの知見は,本試験で報告されたものと一致しており,両群間の胸部画像所見の改善率の差は徐々に明らかになり,10日目以降は有意な差になった.ハムスター肺内のウイルス動態をヒト患者のそれと直接比較することはできないが,ファビピラビルによる肺内のウイルス量の減少が,胸部画像所見の改善率の差に関与している可能性がある.

また,7段階の順序尺度による評価では,臨床状態の時間経過に有意な差は認められなかった.その理由として,プラセボ群で効果不十分と判断された患者がファビピラビル投与に切り替わったことで,プラセボ群で悪化した患者数が減少し,差がない方向に偏った可能性があると考えられる.

サブグループ解析の結果,肥満や糖尿病などの重症化の危険因子を持つ患者や早期発症の患者では,主要エンドポイントのHR2.0を超えており,これらの特徴を持つ患者ではファビピラビルの使用が望ましいことが示された.Fujii[18]は,ファビピラビルを早期に投与することで,解熱に至るまでの時間が短縮されることを後ろ向きコホート研究で報告している.我々は,中等症COVID-19患者において,ファビピラビルの早期介入がより良好な臨床アウトカムをもたらすことを,無作為化プラセボ対照試験により確認することができた.ファビピラビルの作用機序がウイルスの複製過程に作用することを考えると,この知見は妥当なものであろう.

ファビピラビル群のAEsの発生率は,プラセボ群よりも有意に高かった.しかし,ファビピラビル群のAEsの大部分は一過性のものであり,介入なしに消失したAEsや改善したAEsの発生率はファビピラビル群の方がはるかに高かった.ファビピラビル群で記録されたAEsは,主に高尿酸血症に関連するものであった.日本人の無症候性または軽症COVID-19患者を対象とした過去の試験でも,ファビピラビルを投与した82人のうち69人(84.1%)に一過性の高尿酸血症が認められた[15].このように,ファビピラビルの使用に伴う一過性の尿酸関連AEsは一般的であり,その大部分は不顕性(subclinical)であった.一方,COVID-19患者10,986人にファビピラビルを投与した日本の観察研究では,14人(0.1%)に痛風の発症が報告されている[8].さらなる調査が必要であるが,高尿酸血症や痛風の既往歴のある患者では,ファビピラビルの投与を慎重に検討すべきである.ファビピラビルとの因果関係が疑われるSAEs2件報告された.このうち,脳梗塞はCOVID-19に関連した血栓性合併症の結果である可能性があった[19, 20]

Limitation: @単盲検デザインによる固有の操作バイアスがあった.このバイアスの影響を最小限にするために,主要エンドポイントは独立した中央委員会による盲検コントロール下で再評価された.ACOVID-19の対象が肺炎患者であるにもかかわらず,ウイルス学的検査が鼻咽頭スワブのみで測定されたことである.本来であれば,下気道でのウイルス動態を評価することが望ましいが,収集プロセスはパンデミックに対応する医療従事者にとって新たな負担となっただろう.B本試験では,抗ウイルス薬の効果を評価するのに適した早期発症の患者のみをリクルートすることが困難であった.そのため,今回の結果は抗ウイルス薬の効果を過小評価している可能性がある.報告書[21]に記載されているウイルス動態を考慮すると,今後の研究では,少なくとも発症から4日以内の患者をリクルートする必要がある.C今回の結果は中等症肺炎(SpO2≧94%)のCOVID-19患者を対象としているため,SpO2≦93%の患者やそれ以上の重症患者には適用できない.D主要エンドポイントは,当時のCOVID-19患者の退院基準に基づいて設定されたものであり,現在の基準に直接適用することはできない.

近年,SARS-CoV-2変異が世界中で報告されており,ウイルス変異の出現は,治療法やワクチンの開発に影響を与える可能性がある[22,23,24].ファビピラビルは,変異が多いSARS-CoV-2のスパイクタンパクに作用する薬剤ではないため,ウイルス変異の影響をあまり受けないと推測される.このようなファビピラビルの特性は,今後,COVID-19の治療オプションとして重要になるかもしれない.

Conclusions

ファビピラビルは,解析計画通りにSpO2≧94%を呈する中等症COVID-19肺炎患者において,臨床的改善までの時間を約3日短縮すると思われた.この結果は,過去の非盲検試験の結果とほぼ一致した.また,COVID-19の徴候・症状のうち,胸部画像所見,ウイルスクリアランス,頭痛,筋肉痛あるいは関節痛,疲労感あるいは倦怠感は,ファビピラビル投与により有意に早期に改善したさらに,ファビピラビルは,早期に発症した患者や重症化リスク要因がわかっている患者において,有意に高いHRを示した.同時に,ファビピラビルの投与により,AEsの発生率が有意に高かったことにも留意する必要がある.本試験にはいくつかの限界があるが,この結果は,ファビピラビルが中等症COVID-19肺炎治療の選択肢の1つになり得ることを示している.なお,使用にあたっては,高尿酸血症をはじめとするAEsのリスクを十分に考慮する必要がある.

 

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