COVID-19関連追加(2021912日)T細胞応答のさらなる広がり

COVID-19T細胞応答にさらなる広がりをもたらすこと】

Bejarano DA, Schlitzer A. Breathing more breadth into COVID-19 T cell responses. VIEWPOINT. Med. VOLUME 2, ISSUE 9, P999-1001, SEPTEMBER 10, 2021.

https://doi.org/10.1016/j.medj.2021.08.009.

Summary

自然および獲得異種免疫(innate and adaptive heterologous immunity)は,病原体に対する抵抗を付与する.しかし,それが抵抗やヒト感染症の経過に与える影響はほとんど解明されておらず,ワクチンの効果を増強するためにこの現象を利用することは困難である.本号では,Mysoreらが,SARS-CoV-2感染やワクチン接種によって誘発されるT細胞応答が,MMRおよびTdap免疫によって誘発されるT細胞応答と相関することを示し,これらの相関のトランスクリプトーム基盤を明らかにするとともに,異種獲得免疫がCOVID-19疾患の予後の改善に寄与することを明らかにする1)

Main

T細胞やB細胞による獲得免疫応答は,ウイルス感染の制御に不可欠である.樹状細胞(DC: dendritic cells)などの抗原提示細胞(APC: antigen presenting cells)は,入ってきた抗原を処理してCD4+またはCD8+T細胞に提示し,T細胞の活性化,クローン選択,その後の分化を誘導する2).ウイルス感染の間,ウイルスの複製と拡散を抑制することが,宿主の生存と疾患重症度の抑制に不可欠である.T細胞は,ウイルス複製を抑制するために不可欠であることが指摘されてきた.このプロセスでは,抗体産生B細胞の生成をサポートし,インターフェロンガンマ(IFNγ)などの炎症惹起性サイトカイン(pro-inflammatory cytokines)を分泌して感染のクリアランスを促すCD4+TヘルパーT細胞集団(Th)が増加する.これと並行して,異種抗原特異的な長期記憶(lasting memoryCD4+およびCD8+T細胞プールが生成される.これらのCD4+およびCD8+記憶T細胞のうち,エフェクター記憶再発現CD45RATEMRAT細胞(effector memory re-expressing CD45RA (TEMRA) T cellsは,ウイルス,特にSARS-CoV-2に対するtissue-resident immunityに大きく寄与することが最近明らかになった3)組織内において,TEMRA細胞は,急速に活性化された,抗原特異的で長期にわたる再感染の第一のバリアを提供し,ワクチン接種によるTEMRA細胞の誘導は,多くの場合,防御の増強と相関する

SARS-CoV-2は,感染初期に,prototypical antiviral phenotype(たとえばIFNγ+IL-2+)を示し,回復期においても検出可能な,抗原特異的CD4+およびCD8+T細胞を誘導する4).いくつかの研究では,T細胞応答の大きさやタイミングと,抗体産生や疾患重症度との間に正の相関関係があることが報告されている4).最近では,T細胞受容体(TCR)によって寄与されるT細胞応答の高い特異性にもかかわらず,ヒトやマウスの実験モデルには交差反応性記憶T細胞(cross-reactive memory T cells)が存在することが発見され,ナイーブドナーの異なるA型インフルエンザウイルス株に対する反応性や,デングウイルス血清陽性患者のジカウイルスに対する交差防御性,すなわち異種免疫(heterologous immunityと名付けられた現象,を示すことが明らかになった.同様に,SARS-CoV-2ペプチドに反応するT細胞は,10年以上前にSARS-CoVに感染した患者や,風邪の原因となる他のコロナウイルスに感染した健康なドナーから分離されている5)

BCG,麻疹・ムンプス・風疹(MMR),破傷風・ジフテリア・百日咳(Tdap)などのワクチンは,獲得異種免疫を誘導することが示されている6).しかし,このような異種免疫の生物学的意義は,より効率的なワクチンの設計に役立つ可能性があるが,いまだ明らかではない(Figure 1).

Figure 1: Origin and mechanisms of innate and adaptive heterologous immunity.

Vaccination and infection events along a person’s lifetime generate immune memory to confer long-lasting protection. Cross-reactive memory CD4+ and CD8+ TEMRA cells are persistent and can react to different antigens creating a broader barrier, as shown by a recent publication exploring the effect of MMR and Tdap vaccines on the adaptive immune responses to SARS-CoV-2.1)Other vaccines, such as BCG are also capable of inducing similar heterologous responses by priming myeloid cells, which undergo metabolic and epigenetic changes that trigger broad and persistent protection. Both mechanisms of heterologous immunity should be considered to improve vaccine efficacy and prolong protection.

Mysore1)は,SARS-CoV-2に対する異種獲得免疫の基盤となる分子プロセスに焦点を当て,抗原特異的T細胞応答を研究するための洗練されたアプローチを開発し,SARS-CoV-2と,ヒトに最も使用されている2つのワクチン(MMRTdap)の抗原に対する反応性を共有する異種T細胞プールの同定を報告した.本研究では,SARS-CoV-2感染者や健康なドナーの血液から,高度に活性化されたSARS-CoV-2あるいはMMR/Tdapワクチン抗原パルス(pulsed, 刺激した)好中球または単球由来DCを用いて,生理的な抗原処理を行い,その後,これらのAPCと自家T細胞(autologous T cells)を共培養してT細胞応答性を評価した.

興味深いことに,著者らは,SARS-CoV-2のヌクレオカプシドとS1スパイクタンパク質に特異的な記憶T細胞の強い活性化を観察しただけでなく,MMRワクチンやTdapワクチンに含まれる抗原に対する記憶T細胞の再活性化も観察したこれらの想起反応(recall responses)は,感染者の方が健常者よりも高く,IgG抗体とは対照的に,感染初期に容易に検出された2回目接種から2.5ヶ月後にModerna mRNA-1273 COVID-19ワクチンを接種した人のサンプルでは,S1スパイクだけでなくMMRTdap抗原にも反応する記憶T細胞の増加が観察され,ワクチン接種によって誘導された他の抗原との交差反応が確認された.異種応答性T細胞の表現型を解析したところ,IFNγ+GPR56+CX3CR1+を発現するCD4+TEMRAが多く存在し,末梢組織に侵入して獲得第一線防御(adaptive first line defense)を行うための分子ツールボックスを提供した.CD8+TEMRAもすべての抗原に反応したが、COVID-19ワクチン接種者では回復者に比べて低かった.特定されたTEMRA集団における異種免疫の基礎的な分子メカニズムを明らかにするために,シングルセルmRNAシーケンスとTCRシーケンスを行い,10,000を超えるTCRクロノタイプを同定した。この10,000のクロノタイプのうち,90の異種クロノタイプが発見され,そのうち30は評価したすべてのドナーに共通していたまた,トランスクリプトームプロファイルにより,細胞障害性TEMRA細胞であることが確認された

これらの知見を発展させ,SARS-CoV-2MMRおよびTdap抗原に対する異種免疫がSARS-CoV-2感染時に見られる重症度の幅に寄与しているかどうかを評価するため,著者らは,MMRまたはTdapのワクチン接種歴のある11,483人および36,793人の感染者コホートを後ろ向きに調査した.いくつかの人口統計学的特性や危険因子を調整した結果,MMRまたはTdapの接種歴がある人では,COVID-19重症度がそれぞれ38%または23%低下することが確認されたこれは,ワクチン接種や感染などの過去の出来事が,SARS-CoV-2に対する免疫応答を高めることを示唆している

以前のex vivo研究では,事前に存在する記憶T細胞がSARS-CoV-2に関連する抗原ペプチドを認識することが示されていたが5)7),生理学的に処理された抗原を認識する異種T細胞クローンの存在は依然として不明であった.今回,著者らは,SARS-CoV-2の生理的処理と,TCRの特異性および多様性をシングルセルで解析することにより,異種T細胞応答の転写基盤を理解し,その知識をより効率的なワクチンの設計に役立てるための詳細な情報を得た1)

COVID-19回復者およびCOVID-19 mRNAワクチン接種者は,MMRおよびTdap特異的TEMRA細胞の有意な増加を示し,SARS-CoV-2に対する異種獲得応答を引き起こすワクチンの有効性を裏付けた1)CD8+TEMRA細胞は,ウイルス制御に不可欠であり,再感染の制御のための中心的な礎であることが示されてきた.興味深いことに,SARS-CoV-2COVID-19 mRNAワクチンを接種した場合の微妙な違いが報告された.ここでは,ワクチンは,ワクチン接種後の活性化CD8+TEMRA細胞の量が少ないことが示された.したがって,新しいワクチン接種のデザインやスキームを評価するためには,異種CD8+TEMRAの誘導に関して,ベクターベースのワクチンとmRNAワクチンの効果を比較する研究が必要である.

ウイルスや細菌由来の抗原は,異種獲得免疫を誘導し,SARS-CoV-2ペプチドに交差反応する記憶T細胞の類似したレパートリーに収束することが示されている.また,世界で最も使用されているワクチンであるBCGは,黄熱ウイルス(YFV)やその他の種類の病原体の感染に対して,in vivoである程度の防御効果がある8)9).最近では,YFV自体が,訓練免疫(trained immunity)とも呼ばれる異種自然免疫の誘導に関係しているとされている.BCGYFVによる訓練免疫の誘導はいずれも,骨髄系細胞の前駆細胞(myeloid cell progenitors)やエフェクター細胞のリプログラミングに関連しており,代謝や分泌のスイッチを誘発し,炎症反応の幅や持続時間を高め,侵入してきた病原体に対する第一防御(first line defense)を可能にしている8)9).しかし,TEMRA細胞が優先的に生成され,インターロイキン15に対する厳密なライセンス依存性(strict licensing dependency)があるというメカニズムは,まだ明らかではない.異種T細胞で活性化される転写ネットワークを解明するためのさらなる研究が急務である(Figure 1).

現在,BCGによる訓練免疫の臨床的有益性は,COVID-19の予防と重症化に関して,第一線の医療従事者で評価されている(NCT04659941, NCT04648800, NCT04384549, NCT0434837010)ここでは,MMRおよびTdap接種の効果が後ろ向きに評価され,重症COVID-19の減少が認められ,異種獲得免疫応答の誘導に起因すると報告された1)しかし,MMRTdapはヒトにおいて訓練免疫を誘導する前の効果が示されているので,この後ろ向き分析において自然免疫系の影響を否定することはできない

総合すると,ウイルス感染に対して防御するためには,強固で特異的かつ長期的なT細胞応答が不可欠であり,特に高齢者に見られるような効率的な抗体応答が得られない場合には,このことが重要である.著者らは,TEMRAエフェクター細胞を誘導する異種獲得免疫が,ウイルスやその他の病原体に対する総合的な免疫を高めるための新たな手段であることを強調している.したがって,これらのデータは,現在進行中のSARS-CoV-2パンデミックに対抗し,パンデミックの可能性を秘めた現時点では未知の新しい病原体に対する備えを強化するために,異種獲得免疫と自然免疫の利点を新しいワクチンツールボックスやワクチン接種スキームの設計・開発に組み入れるための基盤となるものである(Figure 1).

 

References

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