COVID-19関連追加(2021925-2

ブースター接種は功を奏するか(Scienceの記事)

COVID-19を封じ込めようと奮闘するイスラエルの姿は,他国への警告となるかもしれない−学校や休暇が感染拡大を促進すると,広範囲でのブースター接種を行っても感染率は低下しない】

Wadman M. Israel’s struggles to contain COVID-19 may be a warning for other nations.

Widespread boosters don't dent case rate as schools, holidays foster spread.

Scinece. Sep 21, 2021. https://doi.org/10.1126/science.acx9164.

Staff members hand masks to schoolchildren

School reopenings in Israel have kept COVID-19 case numbers high.REUTERS/AMIR COHEN.

 

イスラエルは,コロナウイルスのワクチンを最初に開始した国の一つであり,大規模なブースター接種を最初に実施した国でもあるが,この秋に他の富裕国が追加接種を開始した場合に,何が起こりうるかという不穏な兆候を提供している.イスラエルでは,7月下旬に先駆的なブースターキャンペーンを開始し,デルタ変異ウイルスの感染力の強さ,規制の緩和,初冬に接種したワクチンによる防御効果の減弱を反映する感染者の急増によって,さらに促されている.しかし,その後も感染者数はさらに増加しており,子供たちやその他の人々がワクチンを受けていない場合,ブースターは万能ではないことを示唆している.

イスラエルでは,730日以降,40歳以上の大部分を含む300万人を超える国民にメッセンジャーRNAワクチンの3回目接種が行われた.イスラエル最大の医療機関であるClalit Health Serviceschief innovation officerであるRan Balicerは,”1日につき,100万人あたり1000人あるいは900人の新規感染者が出るという現状から抜け出せないでいるこれは非常に悪い状況だと話す.

人口930万人のこの国が,積極的にワクチンを接種しているにもかかわらず,国民1人当たりの感染報告率が世界で最も高い国の一つであり,米国の2倍を超える理由については,公衆衛生の専門家の間でも意見が分かれている.大規模な検査や社会的な要因が影響しているかもしれない.しかし,Johns Hopkins Bloomberg School of Public Healthの感染症疫学者であるDavid Dowdyは,ブースターショットの提供だけでは,国レベルでの感染伝播の経過や軌道を劇的に変えないなぜならば,感染伝播の大部分は依然としてワクチンを接種していない人々から発生しているからである”,と述べる.イスラエルのワクチン接種率は,人口の64%が少なくとも2回の接種を受けており,米国よりも進んでいるが,他の約30ヶ国よりも遅れている.

イスラエルの経験は,先週金曜日に開催された米国食品医薬品局(FDA)のアドバイザー会議で,満場一致でPfizer社とBioNTech社のSARS-CoV-2ワクチンのブースター接種を推奨することが決定されるなど,ブースターに関する議論に反映されている.

ブースター接種した60歳以上のイスラエル人では,2回ワクチン接種した人に比べて,8月における感染のリスクが11倍,そして重症化のリスクが20倍に低下したことが,先週『New England Journal of Medicine』誌に掲載された,FDA委員会で議論された110万人のイスラエル人を対象とした研究で明らかになった.Weizmann Institute of ScienceのシステムバイオロジストであるRon Miloは,8月中にウイルスの拡散能力(いわゆる再生産数)が30%低下し,1人の感染者が感染させる人数が1人をわずかに下回るようになったというデータを発表した(これは最終的にアウトブレイクを終わらせるために必要な閾値である).

しかし,イスラエルの最近の感染者数はその傾向を反映していないと,諮問委員会のメンバーである米国CDCの呼吸器疾患センターのchief medical officerチーフメディカルオフィサーであるAmanda Cohnは指摘する.なぜ,再生産数が1を下回るのに,...現在,最も高い感染率(新たな感染者数)になるのだろうか,彼女は会議でこう質問した.

このパラドックスは,社会的な現実を反映していると,イスラエル保健省の公衆衛生サービス部長であるSharon Alroy-Preisは会議で述べた.公立学校は91日に開校し,96日から27日まではユダヤ教の大聖日で,旅行や家族の集まりがある(イスラエル人の多くは,屋内の家族の集まりではマスクをしない).

イスラエル政府にパンデミック対策を助言する専門家委員会の委員長を務めるBalicerも同意見である.(ワクチンを接種していない)子供たちが学校で出会い,その後,大家族が集まるという組み合わせは,この疾患を大量に拡散させるレシピである,とScience誌に語った.

新規感染の大部分は,まだワクチンが承認されていない12歳未満のイスラエルの子供たち200万人で発生している.814日時点では,このグループが新規感染者の24%を占めていたが,916日までの1週間で42%に増加している.Balicerは,この割合を押し上げている2つの平行した力が働いている: すなわち学校の開校と、高齢者の防御が徐々に強化されているということだ,と述べている.60歳以上の4分の3を超えるイスラエル人がブースター接種を受けている.

Israel Institute of Technology Technion)の生物医学データサイエンティストであるDvir Aranは,イスラエルの感染者数が多いのは,第3の要因−検査が多すぎる−を反映しているのではないかと言う.学校が始まってからは,クラスで感染者が確認された場合,子供たち検査を受けなければならないこれは,より多くの子供たち検査を受けることを意味している(彼の2歳の娘は,幼稚園の同級生が陽性と判定されたため,自分や彼女の兄弟(姉妹)と離れて,母親と一緒に隔離されている.)

子供たちの感染が急増しているにもかかわらず,1日あたりの新たな重症患者数は,8月下旬には90100人だったのが,9月に入ってからは約70人に減少している.Hadassah Hospital Ein KeremCOVID-19患者を担当し,政府にアドバイスを行っている医師のDror Mevorachは,新たな感染者は多いが,新たな重症患者はあまり見られない,と述べる.

ブースターキャンペーンにより,重症になった患者の接種状況も劇的に変化した.ワクチン効果が薄れ始め,ブースターの効果が定着する前の8月中旬には,重症患者の59%が完全ワクチン接種者だった.一方,9月中旬では,重症患者の70%がワクチン未接種者であった.我々の病院では,60歳未満の重症および重篤患者はすべてワクチンを接種していないMevorachは言う.

Dowdyは,イスラエルは西欧諸国にとっての前兆(habinger)ではなく,外れ値(outlier)の可能性があると注意を促している.そのほかの国では,学校が再開されているが,同様の急増は見られない.また,ワクチン接種率が非常に低い国の多くでは,イスラエルのようなアウトブレイクは見られない.イスラエルで起きていることは,世界のどこでも起きていることではない,と彼は言う.Technionの進化微生物学者であるRuth Hershbergは,イスラエルの検査率の高さが一因ではないかと考えている.他の国に比べて,感染者の発見が上手い”,と彼女は言う.

しかしAranは,ワクチン接種キャンペーンの開始が遅れた国では,たとえブースターの提供を開始したとしても,イスラエルのような状況が待ち受けているのではないかと心配している.気をつけてほしいイスラエルに限らず,他の国でもデルタと免疫の減弱のコンビネーションは,非常に厳しいアウトブレイクを引き起こすことになる,と彼は言う.

イスラエルの専門家たちは,継続的なブースター接種によって,イスラエルが現在の袋小路から抜け出すことを期待している.”40歳を超えるイスラエル人の大半はブースターを受けているしかし,40歳未満は少数派ですあり,世界中の感染は若い人たちが牽引しているHershbergは語る.

また,国はその急増を抑えるために,他の対策にも目を向けている.103日より,スポーツや文化イベント,レストラン,ホテル,ジム,バー,大学,50人以上の宗教行事に参加するためには,12歳以上の人は,6ヶ月以内に完全ワクチン接種を受けたこと,あるいはブースター接種を受けたことを証明する必要がある.