COVID-19関連追加(2021103日)3剤併用(BRD)について

【重症COVID-19患者におけるバリシチニブ,レムデシビル,デキサメタゾン併用療法の臨床的影響】

Izumo T(Department of Respiratory Medicine, Japanese Red Cross Medical Center), et al. Clinical impact of combination therapy with baricitinib, remdesivir, and dexamethasone in patients with severe COVID-19. Respiratory Investigation. Aug 10, 2021.

https://doi.org/10.1016/j.resinv.2021.07.004.

Background

コロナウイルス感染症2019COVID-19)は世界的に広がっており,日本でも重要な疾患である.そのため,重症COVID-19に対する最適な治療戦略を早急に確立する必要がある.ヤヌスキナーゼ阻害剤であるバリシチニブ,そしてレムデシビル,デキサメタゾン併用療法(BRD)の効果は不明である.

Materials and methods

Eligibility criteria:

COVID-19の診断は,喀痰または鼻咽頭スワブを用いたSARS-CoV-2のポリメラーゼ連鎖反応(PCR)により確認された.SARS-CoV-2 RNAは,TaqMan one-step real-time PCRキット(QIAGEN, Co., Ltd., Hilden, Germany)を用いて検出した.米国国立衛生研究所の分類基準に基づき,COVID-19患者を以下の4つのカテゴリーに分類した: 1) 軽症群: 息切れ,呼吸困難あるいは胸部画像の異常所見を除き,COVID-19の様々な徴候や症状を有する患者; 2) 中等症群: 臨床評価または画像検査に基づいて診断された下気道疾患(肺炎)を有し,室内気中の血中酸素飽和度(SpO2)が94%以上の患者; 3) 重症群: 呼吸数が30/分を超え,SpO294%未満,動脈血酸素分圧と吸入酸素分率の比(P/F)が300Torr未満,または肺浸潤が>50%の患者; 4) 重篤群: 呼吸不全,敗血症性ショック,および/または多臓器不全の患者[9]

202012月から20211月にかけて,入院時に重度の腎機能障害(推定糸球体濾過量[eGFR]30mL/min未満)を伴わない重症または重篤COVID-19患者を本研究に連続的に登録した.

Procedures:

レムデシビルは,1日目にloading dose 200mgを静脈内投与し,その後,25日目に100mg(侵襲的機械式換気なし)または210日目に100mg(侵襲的機械式換気あり)を投与した[10]デキサメタゾンの経口投与または静脈内投与は,16mgで最大10日間行われた[3]バリシチニブは14mg14日間または退院まで経口または経鼻胃管で投与した.eGFR3060mL/minの患者には,バリシチニブを112mgの用量で投与した[4]

Statistical analyses:

すべてのデータは,中央値に四分位範囲(IQRs)を加えたもの,または絶対値にパーセントを加えたものである.データは,EZRSaitama Medical Center, Jichi Medical University, Saitama, Japan; http://www.jichi.ac.jp/saitama-sct/SaitamaHP.files/statmed.html),Rソフトウェアのグラフィカル・ユーザー・インターフェース(version 2.13.0; The R Project for Statistical Computing; http://www.r-project.org),およびR Commander修正版を用いて解析した[11].有害事象は,CTCAECommon Terminology Criteria for Adverse Eventsversion 5.0に基づいて報告された.

Ethics approval and consent to participate:

本研究は,日本赤十字社医療センターの臨床研究に関する倫理委員会(no.1155; 2020102日)で承認された.全患者から適応外使用に関する書面によるインフォームドコンセントを得た.本研究では,臨床情報を得るためにレトロスペクティブなカルテレビューを行うという研究デザインの性質上,追加のインフォームドコンセントは免除された.また日本の臨床研究に関する倫理指針に基づき,インフォームドコンセントの必要性は見送られた.

 

 

Results

本研究では,重症COVID-19患者44が登録された.

ベースライン時の患者の臨床的特徴をTable 1に示す.患者の年齢中央値は61歳(IQR: 55-75歳)で,35人(80%)が男性であった.補助酸素療法が行われたのは19人(43%),そして侵襲的機械式換気が必要だったのは25人(57%)であった

Table 1:

 

 

ベースライン時の患者の臨床検査データをTable 2に示す.白血球(WBC)数の中央値は6100/mm3IQR: 5500-7500/mm3),リンパ球数は840/mm3IQR: 530-1085/mm3),好酸球数は0/mm3IQR: 0-10/mm3)であった.CRPの中央値は7.4mg/mL,フェリチンの中央値は635ng/mLであり,増加していた.

Table 2:

 

 

患者の転帰をTable 3に示す: 28日死亡率2.3% [1/44]; 侵襲的機械式換気回避率90% [17/19]; 侵襲的機械式換気からの抜管率96% [24/25]; 入院期間中央値11[IQR: 7-17]; 回復までの期間中央値9 [IQR: 6-16]; 集中治療室(ICU)滞在期間中央値は6 [IQR: 4-9]; 侵襲的機械式換気期間中央値は5 [IQR: 4-8]; 補助酸素療法期間中央値は5 [IQR: 2-8]

Table 3:

有害事象はTable 4に示し,CTCAE version 5.0に基づいて報告された.有害事象は計15人(34%)に発生した: 肝機能障害 11%; 血栓症 11%; 腸腰筋血腫 2%; 腎機能障害 2%; 人工呼吸器関連肺炎 2%; 感染性心内膜炎 2%; 帯状疱疹 2%であった

Discussion

我々の知る限り,本研究は,重症COVID-19患者に対するBRD併用療法の有効性と安全性について,臨床現場で行われた初めての研究である.本研究では,重症COVID-19に対して,有害事象は許容でき,BRD療法が高い有効性を示した.

COVID-19は,SARS-CoV-2を原因とする感染症である.さらに,酸素療法や侵襲的機械式換気を必要とする重症患者では,過剰な炎症やサイトカインストームのような状態は重篤であると考えられている[12].そのため,補助酸素を必要とするCOVID-19患者に対しては,ステロイド療法とレムデシビルによる抗ウイルス療法が現在行われている[2,3]ACTT-1試験によると,副次エンドポイントである15日目までの死亡率は,レムデシビル投与群で6.7%,プラセボ投与群で11.9%であったのに対し,統計学的に有意ではなかったが29日目までの死亡率は両群でそれぞれ11.4%15.2%であった[2]RECOVERY試験では,死亡率は,無作為化時点で侵襲的機械式換気を行っている患者(29.3% vs 41.4%)および侵襲的機械式換気を行わずに補助酸素療法を行っている患者(23.3% vs 26.2%)において,デキサメタゾン群が通常治療群よりも有意に低かった.しかし,無作為化時に補助酸素療法を受けていなかった患者の死亡率には,統計的に有意差は認めなかった(17.8% vs 14.0%[3].しかし臨床現場では,レムデシビルとデキサメタゾン単剤療法の効果は限定的であることが多い.近年,世界各地でSARS-CoV-2変異が出現しており,日本でも各変異ウイルスの患者数が増加している.SARS-CoV-2変異によるCOVID-19は,現在の変異以前の株よりも早く患者の病状を悪化させることが報告されている[13].そのため,この病状の悪化を抑制する治療戦略の開発が求められている.

今回の研究では,BRD療法の効果は高く,死亡率は2.3%90%の患者が侵襲的機械式換気を必要としないで済んだことがわかったさらに,96%の患者が侵襲的機械式換気から抜管することができた重症COVID-19患者にとって,ICU滞在期間の長期化は重大な問題であるが,本研究では,BRD療法を受けた患者のICU滞在期間中央値は6日間と短く,このことは臨床上有利である可能性がある

有害事象の発生率は34%であった.デキサメタゾンとバリシチニブという2種類の免疫調整剤を併用しても大きな問題は生じなかったことから,COVID-19治療の臨床現場では併用療法を真剣に検討すべきであると考えられる.ACTT-2試験によると,JAK阻害剤の使用に伴う,免疫抑制,二次感染,血栓症に関する懸念にもかかわらず,バリシチニブの追加は、有害事象や血栓塞栓症の発生率を有意に増加させるものではあなかった[4].実際,バリシチニブとレムデシビル併用療法を受けた患者は,レムデシビル単独療法を受けた患者に比べて,有害事象,治験薬の中止に至る有害事象,重篤な有害事象,致命的な転帰を伴う重篤な有害事象,および感染症関連の有害事象の発生率が有意に低かった.バリシチニブ単剤療法で有害事象の発生率が一貫して低かったことは,炎症性肺傷害の軽減やリンパ球数の改善,抗ウイルス作用,あるいはそれに伴う回復時間の短縮や臨床症状の改善の早さ,院内感染のリスクを低減するすべて,に関係している可能性がある[4]要約すると,重症COVID-19治療にバリシチニブに加えてデキサメタゾンとレムデシビルを併用した本研究では,BRD療法で有害事象の発生率は低かった

Limitation: @単施設研究かつ患者数が少数であった.A標準治療を受けている重症COVID-19患者の対照群がなかった(設定することは困難であった).さらに,標準治療は,季節,変異ウイルス,医療供給体制などによって異なる.そのため,プロペンシティマッチングを試みたとしても,比較検討を行うことは困難であった.B本研究は,臨床研究に必要な特別な環境をできる限り用意せずに実施された.この点を明らかにするには,さらなる調査が必要である.

Conclusions

BRDとの併用療法は,重症COVID-19に対して有効であり,有害事象の発生率も低かった.本研究の結果は,COVID-19の世界的な広がりによる重大な影響を考慮すると有望であるが,これらの知見を確認するためには,さらなる無作為化臨床試験を実施する必要がある.

 

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