COVID-19関連追加(2021104日)致死性COVID-19肺炎の病理組織像

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【致死性COVID-19肺炎の免疫組織化学およびウイルスRNA研究からみた病理組織学的病因検討】

Sauter JL, et al. Insights into pathogenesis of fatal COVID-19 pneumonia from histopathology with immunohistochemical and viral RNA studies. Histopathology. July 2, 2020. https://doi.org/10.1111/his.14201.

Abstract

Introduction

我々は、急速に死亡した症例から長期入院の症例に至るまでの疾患経過のスペクトラムを持つCOVID-19肺炎患者の死後の肺組織学的所見について述べる.

Methods and results

COVID-19肺炎で死亡した患者8人の死後の肺組織における病理組織学的所見を検討した.ウイルスの検出には,免疫組織化学(IHC: immunohistochemistry)と次世代シーケンス(NGS: next-generation sequencing)を用いた.すべての症例でびまん性肺胞傷害(DAD),それも急性期と器質化期の両方のスペクトルが見られた.SARS-CoV-2ウイルスの核タンパク質およびスパイクタンパク質に対するモノクローナル抗体を用いたIHCでは,器質化期DADではなく急性期DADの領域でウイルスが検出され,細胞内ウイルス抗原およびRNAの発現は,罹患期間が10日未満の患者に多く見られた.主な血管所見としては,中型および大型血管の血栓,CD61 IHCで検出された血小板微小血栓,フィブリン微小血栓などであった.

Conclusions

SARS-CoV-2ウイルスRNAが発症初期にNGSで検出され,IHCによるウイルス抗原の発現は器質化期DADではなく急性期DADのみであったことからDADの急性肺傷害の開始にはウイルスが主要な役割を果たしているが,DADが器質化期に移行したときには,患者の免疫応答によってウイルスが肺から排除されている可能性が考えられる.これらの知見は,COVID-19肺炎の疾患経過中に,治療上の意味を持つ大きな変化がある可能性を示唆している.また,頻繁に発生する血栓や微小血栓は,治療介入のための潜在的な標的となりうる.

 

 

Results

Patient Demographics, Social History and Comorbidities:

8例の患者(女性4例,男性4例)はいずれも比較的若く,年齢の中央値は57.5歳(範囲= 39-65歳)であった.患者の75%8例中6例)が肥満であった.BMIの中央値は33.9kg/m2(範囲= 23.0-53.2)であった.5例(62.5%)の患者はnever smokers2例(25%)はformer smokers1例(患者2)はcurrent smokerであった.

症例7を除くすべての患者は,複数の合併症を持っていた.ほとんどの患者は,糖尿病予備軍または2型糖尿病(n 5),高脂血症(n 4),心血管疾患(高血圧[n 60]または心筋梗塞の既往[n 1])を有していた.2例は慢性閉塞性肺疾患,4例は閉塞型睡眠時無呼吸症候群(在宅CPAP使用)であった.残りの患者は肺疾患の記録がなかった.

Clinical Presentation:

すべての患者が呼吸困難を呈していたが,症例2は救急車で搬送中に心停止となり,病院到着後すぐに死亡が確認された.入院前の症状の持続期間は、2-3日(症例2)から最大2週間(症例78)までさまざまであった.すべての患者が,入院前に息切れと咳を経験していた.発熱(100.7102.9°F)は,症例28を除くすべての患者で報告された.その他の臨床的特徴および臨床検査所見をData S1に示す.

Radiographic Findings:

7例の胸部X線写真が入手できたが,症例2は病院到着時に死亡していたため,利用できなかった.7例全員にmultifocal pneumoniaを示唆する両側肺の浸潤影が認められた.

Medical Management and Hospital Course:

発症から死亡までの罹患期間は3日(症例1)から25日(症例7)であった(Table 1).症例12を除くすべての患者で,機械式換気が行われた(期間中央値= 2.5, 範囲=<1-11日)(Table 1

 

 

Table 1: Disease course and histopathologic findings in autopsy lung tissue from patients who died from COVID-19 pneumonia.

Post-Mortem Gross Findings:

Internal examinationsの結果,すべての症例で肺が重く,死後肺の合計重量は1630g(症例3)から2380g(症例6)であった.

Post-Mortem Pathologic Findings:

Major findings:

本研究の主な知見は,(i)罹病期間が10日未満のacute DADではウイルス抗原とRNAが存在するが,罹病期間が長いorganizing DADではウイルス抗原とRNAが消失すること(ii)微小血栓を含む血管血栓(iii)acute DADでは好中球,organizing DADでは慢性炎症細胞と炎症細胞が異なること(iv)急性気管支肺炎の組織学的所見(v)気管支炎と気管支支炎などである(Table 1

Major histological findings:

Diffuse alveolar damage and other interstitial findings:

全症例の肺の組織学的切片は,acute/organizing DADの様々な段階を示す不均一な特徴を示し(Figure 1),時には,相対的に保存された肺胞実質の領域に隣接していた.症例1および2では,DADの急性/滲出期が主な所見であり,非典型的なII型肺細胞の増殖,肺胞フィブリン,肺胞腔への頻繁な肺細胞の落屑を伴う,硝子膜や肺胞および間質の浮腫が特徴であった(hyaline membranes, alveolar and interstitial oedema, with atypical type II pneumocyte proliferation, alveolar fibrin and frequent pneumocyte desquamation into alveolar spaces)(Figure 1A-D).後者(alveolar and interstitial oedema)は真の病理学的所見ではなく,死後のアーチファクトである可能性がある.残りの症例では,局所的な急性変化を伴うあるいは伴わない,organizing DADが主な所見であった.症例6にはacute DADは見られなかった.organizing DADの特徴は,しばしば非典型的な反応性変化を伴う,線維芽細胞の増殖および著明なII型肺胞上皮細胞の増殖による肺胞壁肥厚であった(Figure 1E).肺水腫は症例1および4では水腫による小葉間隔壁肥厚が見られ(Figure 1B),7例に肺水腫が認められた(Figure 1A).

Figure 1: Spectrum of diffuse alveolar damage (DAD) seen in COVID-19 pneumonia. A, All cases demonstrated DAD, seven of eight of which showed a component of acute phase DAD. Note the demarcation between affected lung parenchyma with thickened alveolar septa and hyaline membranes (lower left) and the relatively preserved lung parenchyma (upper right) separated by a thickened oedematous interlobular septum. B, Oedema of variable severity was seen in all cases and is marked in this example. Note also the conspicuous hyaline membranes. C, The presence of interstitial neutrophilic infiltrates was focally seen in areas with acute DAD. D, Reactive type II pneumocytes within alveolar spaces showed abundant eosinophilic cytoplasm, irregular nuclear contours, occasional binucleation, vesicular condensed chromatin and prominent macronucleoli. Intracapillary megakaryocytes (arrows) were also present within alveolar capillaries and were highlighted by CD61 immunohistochemistry (inset). E, Lungs from six patients showed organising phase DAD alone or in combination with acute phase DAD, with characteristic type II pneumocyte and fibroblastic proliferation within alveolar walls and focal intraluminal plugs of loose connective tissue. F, Some areas within organising DAD showed interstitial chronic inflammation.

 

 

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DADの急性期を示す部位では,間質の好中球浸潤が局所的に顕著であった(Figure 1C).organizing DAD6例中5例では,肺胞壁や増殖した結合組織の領域内にリンパ球,形質細胞,組織球からなる軽度から中等度の間質性慢性炎症が見られ(Figure 1E),症例6では最も著明であった(Figure 1F).

反応性II型肺胞上皮細胞は,細胞質の局所的な部分は泡状になっており,豊富な好酸球性の細胞質を示していた.核は肥大し,多くは不規則な核の輪郭を持ち,小胞状の凝縮したクロマチンと顕著なmacronucleoliを含んでいた(Figure 1D).ウイルス封入体は見られなかった

炎症細胞の浸潤,気管支・細気管支病変(Figure S1),急性気管支肺炎,血栓や血管の炎症を含む血管病変(Figure S2)のほか,軽微な組織学的所見の詳細はData S1に記載されている.

Immunohistochemistry:

SARS-CoV核タンパク質に対するモノクローナル抗体を用いたIHCでは,8例中6例(75%)でウイルスが検出され(Table 2),非COVIDDAD対照組織ではすべて陰性であったことから,過去に確立された抗体の特異性が確認された23)最も注目すべき点は,両抗体の染色はacute DADの領域に限定され,DADの器質化期の領域には存在しないことである.これは,1つの切片にどちらの時期のDADが存在する症例3で明確に示されている(Figure 2A, B).この知見は,染色可能な切片にacute DADが存在しなかったことによって,2例(症例67)で免疫反応性が見られなかったことの説明にもなる.ウイルス抗原はすべての陽性症例の硝子膜に検出されたが,再生および反応しているII型肺細胞(regenerating and reactive type II pneumocytes)および肺胞マクロファージの細胞質内がびまん性に染色されたFigure 2C, D)のは,疾患経過が最も短かった2例(症例12)のみであった.これらのうち1例(症例1)のみで,散在する静脈や肺胞毛細血管の内皮細胞にも弱い細胞質染色が認められた(Figure 2E).注目すべきは,この症例1は,代表的な切片におけるIHCによるウイルス抗原量が,コホートの他のすべての症例に比べて最も多かったことである.興味深いことに,気管支上皮細胞にウイルス抗原が検出されたのは,症例2(疾患経過が最も短く,ウイルス量が非常に多かった)のみで,核タンパク質に対する抗体でのみ検出された.同様に,疾患経過が長い症例(症例58; 疾患期間はそれぞれ16日と17日)では,肺細胞と肺胞マクロファージの核タンパク質に対する反応は非常にまれであり,S2スパイクサブユニットに対する抗体では反応はなかった

 

 

Table 2: Viral detection by next-generation sequencing and immunohistochemistry and corresponding histology.

Figure 2: Viral antigen detection by immunohistochemistry (IHC) against SARS-CoV nucleoprotein [monoclonal antibody (mAb) 001]. A, In this example (case 3) both acute and organising phases of DAD are present in a single section. Areas with organising DAD (upper right) that lack hyaline membranes failed to demonstrate the presence of viral antigen by IHC, while areas with acute DAD (lower left) showed staining in hyaline membranes but not in pneumocytes (B). C, In all IHC-positive cases, viral antigen was detected in hyaline membranes (thick arrows) within areas of acute phase DAD, and in two cases diffusely within regenerating and reactive type II pneumocytes (arrowheads). Viral antigen was also present in alveolar macrophages in these latter two cases (D). In case 1, the case with the most viral antigen detected by IHC, weak cytoplasmic staining was observed in endothelial cells of scattered venules and alveolar capillaries (E).

 

 

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リンパ系マーカーとCD61IHCの結果は,Data S1にまとめた.

Viral RNA Detection:

発病から死亡までの期間が10日未満(それぞれ7日,3日,9日)で,組織学的には主にacute DADであった症例1-3では,NGS 25)26)によりSARS-CoV-2ウイルスRNAが検出されたが,発病期間が10日を超えており(それぞれ16日,13日,20日,25日,17日),肺組織学的には主にorganizing DADであった症例4-8では検出されなかった(Table 2.注目すべきは,これらの症例はIHCでウイルス抗原が陰性であり(症例67),acute DADの局所領域内の硝子膜に主に陽性染色が見られたことである(症例458).症例3は例外で,IHCによる染色が硝子膜に限定されていたにもかかわらず,NGSによりウイルスRNAが低レベルで検出された.この症例では,RNA抽出に使用したブロックに,IHCに使用した切片よりも多くのacute DADの領域が含まれていたことが,この結果を説明している可能性がある.

 

Discussion

本研究では,DADが急性期から慢性期へと進行するにつれて,COVID-19肺炎の病態に大きな変化が生じることを示す新しい観察結果を得た.IHCによるSARS-CoV抗原の存在は,急性期DADの領域にのみ認められ器質化期DADの領域には認められなかったまた,NGSによるウイルスRNAは,疾患経過の早期(10日未満)に検出されたことから,ウイルスがDADの急性肺傷害の開始に主要な役割を果たしていることを示唆するしかし,発病後10日目以降,あるいはDADが器質化期に移行した時点で,ウイルスRNAとタンパク質は患者の免疫応答によって除去されていた可能性があるかもしれない.この原稿の執筆中に,SARS-CoV-2は主にDAD初期段階に存在し,DAD器質化期の領域には存在しないという我々の発見を検証する別の研究が発表された27).我々の報告とは対照的に,この研究ではIHC2種類のモノクローナル抗体ではなく1種類のポリクローナル抗体を使用している.そして対照となる非COVIDDAD症例の染色や,肺組織のウイルスRNA検査は報告されていない27).両方のモノクローナル抗体が,II型肺胞上皮細胞,肺胞マクロファージ,および硝子膜にウイルス抗原のIHC発現を示したという我々の知見は,以前に電子顕微鏡で確認されたコロナウイルスのビリオンの局在とよく一致する28).核タンパク質抗体(001)はスパイクタンパク質抗体(1A9)よりも広範囲に染色されたため,抗体間の感度と特異性の違いが考えられた.IHC陽性のすべての症例において,両方のSARS-CoV抗体で硝子膜が特異的に染色されていることがわかった非特異的な染色であることは考慮されるべきであるが,対照となる非COVID DAD症例の硝子膜には染色が見られないことから,その特異性が確認された.また,硝子膜にウイルス粒子を確認した別の報告も,我々の知見を支持している28).ウイルスRNAが検出されないのに,硝子膜にウイルスタンパク質抗原が存在するという観察結果は,SARS-CoV-2感染に特有のものではなく,1918年と2009年のパンデミックにおけるA型インフルエンザの剖検調査でも観察されている24)29)硝子膜に検出されるウイルスタンパク質は,おそらく溶解感染(lytic infections: 感染細胞の死滅とともに感染性のあるウイルス粒子を産生,放出する感染)の残骸であろうRNAは,ubiquitous RNAaseを受けたタンパク質よりもはるかに安定性が低く,これが我々の観察結果と過去のインフルエンザ剖検研究の結果を説明する有力な理由である30)

注目すべきは,今回のコホートにおいて,細胞内ウイルス抗原が最も顕著に検出されたのは,最も急性症状を呈し,急速な疾患経過をたどった2例(症例12)(それぞれ7日と3日)であり,そしてacute DAD組織像のみであり,今回のコホートにおいてNGSで検出されたSARS-CoV-2 RNAの量が最も多かった症例に一致していることである.これは,ウイルスクリアランスの過程を表しているのかもしれない.つまり,ウイルスタンパク質は,直接的な溶解作用や炎症細胞/免疫介在性傷害によって損傷を受けた感染肺細胞から肺胞腔内に放出され,疾患経過の後期で患者の免疫システムによって除去され,肺が修復しようとする際にDADの器質化期として組織学的に現れるのである.また,これらの症例では,組織学的所見が不均一であり,同じ肺の中でも部位によってacute DADorganizing DADの程度が異なることに注意する必要があるしたがって,DADが専ら(exclusively)器質化期に進行するまでは,ウイルスクリアランスは全体的な効果ではなく,局所的な効果である可能性がある

COVID-19肺炎患者の肺組織におけるSARS-CoV IHCに関する発表データが急速に蓄積されているが,特定の抗体(ポリクローナル vs モノクローナル),検出された抗原(スパイク vs 核タンパク質),評価された肺傷害パターン(acute DAD vs organizing DAD,あるいは気管支肺炎),免疫反応の局在性(肺細胞,硝子膜,マクロファージ,内皮細胞あるいは気管支上皮細胞),および罹病期間など,方法論に注意を払わなければならない.これらの要素の違いが,報告された結果の違いにつながる可能性がある27)28)31)-33).また,我々が利用した抗体を含め,発表された報告書で利用されている抗体の中には,SARS-CoV-1にも反応するため,SARS-CoV-2に特異的ではないものがあることにも注意が必要である.しかし,現在のパンデミックでは,これら2つのSARS-CoV感染症の鑑別診断は大きな問題ではない.また,今回のCOVID-19患者の肺組織では,ウイルス抗原の存在が確認されたものの,明確なウイルス封入体は確認されなかったSupporting information, Results and Discussion

興味深いことに,機械式換気をほとんど行わず急速に死亡した2例の肺組織はacute DADを示していたが,機械式換気を受けた他の6例の肺組織は,5例の急性変化に加えて,主としてorganizing DADを示していた.さらに,肺における炎症の種類は,DADの段階に応じて,急性期における好中球からorganizing DADの慢性炎症性間質性浸潤へと変化した.この知見は,リンパ球,形質細胞,組織球も,おそらくウイルスに対する免疫応答やクリアランスにおいて,病因としての役割を担っているのではないかと考えられる.我々は,これらの慢性炎症細胞の存在が,これらの患者におけるより長い機械式換気ことと関係している可能性は除外できない.しかし,他の病因によるDADでは,機械式換気の有無にかかわらず,疾患経過の早期には好中球が,後期には他の慢性炎症細胞が認められることが報告されている21)34)-39).インフルエンザウイルス40)-43),エボラウイルス44)を含む他のウイルス性肺炎では,ウイルス感染による直接的な傷害に加えて,宿主の炎症反応が病因に明確な役割を果たすことが示されている.重症SARS-CoV-2感染症でもそうであると仮説を立てることは妥当であるが,この問題についてはさらなる研究が必要である.

COVID-19肺炎に関する新たな文献は,DADが器質化期に進行する過程で,肺からのウイルスクリアランスが行われる可能性があるという我々の発見を裏付けている.SARS-CoV-2ウイルス量,伝播性,咽頭ウイルス排出量は,発病後1週間以内にピークに達することが臨床的に示されている45)-48)Menterらの病理学的研究では,21例中1例の死後肺組織からはRT-qPCRRT-quantitative PCR)によるウイルスRNAが検出されなかったが,DADの組織学的局面との相関関係については言及されていない49)Adachiらは,「進行した」病変ではなく,より早期のDADにおける肺細胞でIHCによるSARS-CoV-2抗原の検出があったことを,その重要性には言及せずに簡単に述べている31)Martinesらは,組織学的には主としてorganizing DADであった1例の肺組織では,IHCによるSARS-CoV抗原の検出は見られなかったが,acute DADおよび/または急性気管支肺炎を示した7例中6例がウイルス抗原陽性であったことを報告した28).残念ながらこの研究では,IHC陽性と,acute DAD vs organizing DADあるいは気管支肺炎の領域などの特定の組織学的特徴との相関は認められなかった28)

COVID-19肺炎における我々の知見は,ShiehらがH1N1インフルエンザウイルス肺炎で観察した所見と類似しており,A型インフルエンザウイルスRNART-PCRで,そして抗原をIHCで検出したところ,罹病期間が長い(すなわち10日を超える)患者の肺では,罹病期間が短い患者に比べて検出頻度が低かった50)SARS-CoV2肺炎では,ウイルスが気道からクリアランスされる現象が,最近の症例報告でも指摘されている51).しかし,ShiehShaoらも,これらの所見をDADの組織学的パターンと関連付けていない.ウイルスが肺組織に存在しているときのacute DADパターンから,DADの器質化期,さらにウイルスが肺組織から除去されたときの慢性炎症性浸潤の存在へと,組織学的に明確な変化が見られることから,COVID-19肺炎の病態は,DADの段階や罹病期間に応じて基本的に変化すると考えられる.これは興味深い観察結果であり,COVID-19肺炎に特有のものかどうかを判断するために,他のウイルス性肺炎についてもさらに研究すべきである.これらの知見は,COVID-19肺炎の早期では抗ウイルス薬が有効であるが,肺からウイルスが除去される1014日後には,治療の焦点をorganizing DADの管理に移すのが最善であるというように,治療上の重要な意味を持つ可能性がある.しかし,治療の指針となる今回の知見の臨床的有用性を判断するには,より大規模なコホートでの検証が必要である.

このコホートの1例では,ウイルス抗原が内皮細胞に非常に局所的にIHCで検出された.しかし,これはCOVID-19肺炎の血管傷害やDADにおいて内皮細胞への一次感染が主要な役割を果たしていることを示唆するには不十分な証拠であるSARS-CoV-2が内皮細胞に直接感染するという超微細構造の所見に基づく提案52)53)には異論がある.Goldsmithらは,内皮細胞内のビリオンと推定される画像は,実際にはウイルスではなく小胞体のような正常な細胞構造を表していると指摘している54).我々の研究と同様に,Shiehらは,内皮細胞にH1N1インフルエンザのIHCが陽性となるのは稀なケースであると述べている50).さらに,我々は血栓,微小血栓,局所的な血管炎症を観察したが(Supporting information, Discussion and Supporting information, Figure S2),他の研究者が報告したような血栓性壊死性毛細血管傷害,内皮細胞壊死,内皮炎の病変は観察されなかった32)52).とはいえ,この疾患におけるウイルス感染の病態をより明確に理解するためには,内皮細胞傷害におけるSARS-CoV-2の役割をさらに研究する必要がある.

Conclusions

今回の研究結果から,致死性COVID-19肺炎の初期の肺傷害は,DADの急性期にSARS-CoV-2によって直接引き起こされていることが示唆されたDADが器質化期に進行すると,ウイルスRNAおよび抗原は検出されなくなり,患者の免疫応答によるクリアランスの可能性を示唆している.これらの知見は,COVID-19肺炎の病態が疾患経過中に大きく変化することを示唆しており,DADが器質化期に移行したかどうかによって,異なる治療アプローチを検討する必要がある.

 

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