COVID-19関連追加(2021107-2NEJMより心筋炎について2

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【イスラエルにおける,Covid-19に対するBNT162b2 mRNAワクチン接種後の心筋炎】

Mevorach D, et al. Myocarditis after BNT162b2 mRNA Vaccine against Covid-19 in Israel. N Engl J Med. https://doi.org/10.1056/NEJMoa2109730.

Background

510万人のイスラエル人が,2021531日までにBNT162b2メッセンジャーRNAワクチン(Pfizer–BioNTech)を2回接種し,Covid-19に対する完全な免疫を獲得していた.有害事象モニタリングで心筋炎が初期に報告されたため,イスラエル保健省は積極的なサーベイランスを開始した.

Methods

心筋炎の全症例に関して,20201220日〜2021531日までに得られたデータを後ろ向きに評価し,Brighton Collaboration definitionを用いて情報を分類した.

1回目ワクチン接種後と2回目ワクチン接種後(21日間隔)の発生率を比較してリスク差を計算することによって; 診断の確実性とは無関係に,1回目ワクチン接種後21日以内と2回目ワクチン接種後30日以内の発生率の予想値に対する観察値の標準化発生率比(standardized incidence ratioを算出することによって; ワクチン未接種者と比較して,2回目接種後の30日率比を算出することによって,我々は心筋炎の発生occurrence of myocarditis)を解析した.

Results

Summary:

心筋炎の症状があった304人のうち,21人は別の診断を受けていた.残りの283人のうち142人はBNT162b2ワクチン接種後に発症した; これらのうち136人は確定(definitive)あるいは疑い(probable)診断であった129人(95%)では臨床症状は軽症と判断された; 1人の劇症例は致命的であった1回目接種と2回目接種の間の全体的なリスク差は,10万人あたり1.76人(95%信頼区間[CI], 1.33-2.19)で,1619歳の男性で最も大きな差があった(差, 10万人あたり13.73, 95%CI, 8.11-19.46過去のデータに基づく予想された発生率と比較すると,標準化発生率比5.3495%CI, 4.48-6.40)で,1619歳の男性では2回目接種後に最も高かった(13.60; 95%CI, 9.30-19.20完全ワクチン接種者の2回目接種後の30日率比は,未接種者と比較して2.3595%CI, 1.10-5.02)であった; 年齢1619歳の男性で再び最も高くなり8.96, 95%CI, 4.50-17.83),6637人に1の割合であった

心筋炎の発生率は低いものの,BNT162b2ワクチン接種後,特に若い男性の2回目接種後に増加した.ワクチン接種後の心筋炎の臨床症状は通常は軽度であった.

 

CASES OF MYOCARDITIS:

サーベイランス期間中に対象となった9,289,765人のイスラエル住民のうち,5,442,696人が1回目ワクチン接種を受け,5,125,635人が2回目ワクチン接種を受けた(Table 1, Fig. S2).心筋炎のICD-9コードで定義された心筋炎の症例が合計304人,保健省に報告された(Table 2).これらの症例は,2回のワクチン接種を受けた196人で診断された: 1回目接種後21日以内および2回目接種後30日以内が151人,1回目接種21日後および2回目接種30日後が45人であった(1回目接種後22日以上経過,または2回目接種後30日以上経過して心筋炎が発症した人は,ワクチンとは時間的に近接していない心筋炎であると考えられた).症例の履歴を詳細に検討した結果,我々は合理的な代替診断のために21人を除外した.したがって,283人が心筋炎と診断されたその内訳は,1回目接種後21日以内と2回目接種後30日以内が142人,ワクチン接種に近接していないのが40人,そしてワクチン未接種が101人であった.ワクチン未接種者のうち,心筋炎と診断されたのは,Covid-19確定症例で29人,非確定症例で72人であった.

Table 1: Reported Myocarditis Cases, According to Timing of First or Second Vaccine Dose.

 

 

Table 2: Classification of Myocarditis Cases Reported to the Ministry of Health.

初回接種後21日以内または2回目の接種後30日以内に心筋炎が発症した142人のうち,136人が心筋炎確定(definite)または疑い(probable)と診断され,1人が心筋炎の可能性(possible)と診断され,5人はデータ不足であったCDC 4)-6)で用いられている心筋炎の定義に基づく症例の分類をTable S1に示す.

 

 

2人の心内膜心筋生検では,巨細胞は認められず,単核細胞の浸潤(単球またはマクロファージとリンパ球)が見られ,endointerstitial edemaと好中球の集簇が認められた.他に心内膜心筋生検を受けた患者はいなかった.ワクチン接種後の心筋炎の臨床的特徴をTable S3に示す.

心筋炎が確定または疑われた136人のうち,129人の臨床症状はおおむね軽症で,臨床症状と炎症マーカーおよびトロポニンの上昇,心電図および心エコーの正常化,入院期間が相対的に短いことなどから判断すると,ほとんどの症例で心筋炎が消失したと考えられるしかし,劇症型心筋炎の1人が死亡した.駆出率(ejection fraction)はほとんどの人が正常または軽度の低下,4人が重度の低下であった.48人に実施されたMRIでは,少なくとも 1つのT2シーケンスと1つのT1シーケンス(T2強調画像,T1およびT2パラメトリックマッピング,後期ガドリニウム増強を含む)がpositiveであったことから,心筋炎と一致する所見が得られた.退院後の症例の状態や心機能の一貫した測定法に関するフォローアップデータは得られなかった.

ワクチン接種に近接した症例数のピークは20212月と3月であった; ワクチン接種の有無,年齢,性別との関連をTable 1Figure 1に示した.心筋炎が確定または疑われた136人のうち,19人が1回目ワクチン接種後に,117人が2回目ワクチン接種後に発症した1回目接種後21日以内に19人の心筋炎患者が入院し,そして入院日はほぼ均等に分布していた2回目接種後に発症した117人のうち95人(81%)は,接種後7日以内に入院した.年齢と性別のデータが得られた95人のうち,86人(91%)が男性で,72人(76%)が30歳未満であった.

Figure 2: Timing and Distribution of Myocarditis after Receipt of the BNT162b2 Vaccine.

Shown is the timing of the diagnosis of myocarditis among recipients of the first dose of vaccine (Panel A) and the second dose (Panel B), according to sex, and the distribution of cases among recipients according to both age and sex after the first dose (Panel C) and after the second dose (Panel D). Cases of myocarditis were reported within 21 days after the first dose and within 30 days after the second dose.

 

COMPARISON OF RISKS ACCORDING TO FIRST OR SECOND DOSE:

1回目と2回目ワクチン接種後21日間のリスクを,年齢と性別で比較した結果をTable 3に示す.データを目視したところ,2回目ワクチン接種後の数日間に症例が集中していた(Figure 1Bおよび1D).1回目と2回目接種のリスク差は,10万人あたり1.76人(95%CI, 1.33-2.19)で,男性では3.19人(95%CI, 2.37-4.02),女性では0.39人(95%CI, 0.10-0.68)であった最も差が大きかったのは,1619歳の男性だった.10万人あたり13.73人(95%CI, 8.11-19.46)で,この年齢層では,2回目接種に起因するリスクの割合は91%であった.同じ年齢層の女性における1回目と2回目接種のリスク差は,10万人あたり1.00人(95%CI, 0.63-2.72)であった.2回目接種後にクラスターが認められたため,追跡期間を7日間に短縮してこれらの解析を繰り返したところ,1619歳の男性で同様の差が認められた(リスク差, 10万人あたり13.62, 95%CI, 8.31-19.03).これらの結果から,2回目ワクチン接種後の最初の1週間が主なリスクウィンドウであることが指摘された

Table 3: Risk of Myocarditis within 21 Days after the First or Second Dose of Vaccine, According to Age and Sex.

OBSERVED VERSUS EXPECTED INCIDENCE:

Table 4は,2017年〜2019年までのプレパンデミック期間中の発生率から予測した,ワクチン接種回数,年齢層,性別による心筋炎の標準化発生率比を示したものである.ワクチン2回目接種後の心筋炎の標準化発生率比は5.3495%CI, 4.48-6.40)で,これは主に若年男性の接種者で心筋炎と診断されたことが影響した少年および男性の間で,標準化発生率比が1619歳では13.6095%CI, 9.30-19.202024歳では8.5395%CI, 5.57-12.50),2529歳では6.9695%CI, 4.25-10.75),30歳以上では2.9095%CI, 1.98-4.09であったこれらの実質的に増加した所見は,1回目接種後には認められなかった.感度解析では,2回目ワクチン接種を受けた16歳〜24歳までの男性では,真の発生率が予想される発生率と異なることはないと仮定すると,観察された標準化発生率比によって,心筋炎が45倍過剰の報告を要求されたかもしれない(Table S4).

 

 

Table 4: Standardized Incidence Ratios for 151 Cases of Myocarditis, According to Vaccine Dose, Age, and Sex.

RATE RATIO BETWEEN VACCINATED AND UNVACCINATED PERSONS:

一般集団における2回目ワクチン接種後30日以内の心筋炎の発生率をワクチン接種者と未接種者で比較したところ,Brighton Collaboration classificationによる確定例と疑い例の分類によると,年齢と性別で調整した後の率比は2.3595%CI, 1.10-5.02)であったこの結果は主に若年層の男性で得られたもので,1619歳では8.9695%CI, 4.50-17.83),2024歳では6.1395%CI, 3.16-11.88),2529歳では3.5895%CI, 1.82-7.01)であった(Table 5追跡調査を2回目ワクチン接種後7日間に限定した場合,1619歳の男性の解析結果は,30日以内の結果よりもさらに強いものであった(率比, 31.90; 95%CI, 15.88-64.08.我々の所見とBradford Hill因果関係基準との一致をTable S5に示す.

 

 

Table 5: Rate Ratios for a Diagnosis of Myocarditis within 30 Days after the Second Dose of Vaccine, as Compared with Unvaccinated Persons (January 11 to May 31, 2021).

 

Discussion

イスラエル保健省は,202012月〜20215月にかけて実施された全国的なワクチン接種キャンペーンにおいて,BNT162b2 mRNAワクチンを2回接種に時間的に近接して発生した確定または疑い心筋炎136人を記録し,そのリスクはワクチン未接種者の2倍を超えることを明らかにした.この関連性は,2回目接種後1週間以内の若い男性で最も高かった.今回の研究では,2回目ワクチン接種後21日以内に16歳〜19歳に心筋炎が発生した場合,男性では6637人に1女性では99,853人に1の割合で発生していることがわかった

ほとんどの場合,心筋炎の症状は,2回目のワクチン接種後、数日以内に発症した.心筋炎の発生率は,新たにワクチンを接種した人の数が時間の経過とともに減少するとともに,減少した.この所見は,ワクチン2回接種と心筋炎のリスクとの間に因果関係がある可能性を示唆している全体として,2回目ワクチン接種後,イスラエル人全体で男性26,000人あたり約1人,女性218,000人あたり約1人の割合で心筋炎の確定例または疑い例が発生し,若い男性の接種者で再びリスクが最も高くなったと推定された.この結果は,15,000人の男女を対象としたワクチンの第3相試験8)で心筋炎の症例がなかったことの説明にもなるかもしれない.ワクチンによる心筋炎のメカニズムは明らかになっていないが,ワクチンの有効成分であるSARS-CoV-2スパイクタンパク質をコードするmRNA配列,あるいはワクチン接種に続く免疫応答に関連している可能性がある.

本研究では選択バイアスの可能性があるが,全国民のデータを使用しているため,その可能性は低いと考えられる.本研究の大きな限界は,比率の計算が,ワクチン接種群の個人の患者データ,一方で未接種群は集計データに基づいていることであるまた,心筋炎の診断は心筋生検によって検証されておらず,臨床評価者がワクチン接種の状況を知っていたため,獲得バイアス(acquisition bias)が存在した可能性がある.サーベイランスの際に誤分類が行われた可能性があり,その結果,胸痛や不快感を訴える若年層の患者のうち,厚生省が医療従事者に通知したにもかかわらず,疑うレベルが低いために心筋炎の評価に回されず,心筋炎が過小診断となった可能性がある.また,ワクチン接種による副作用の可能性に対する一般市民や医療関係者の認識が高まったことにより,心筋炎の症例が過剰に診断された可能性もある.しかし,我々の感度解析では,今回の結果を説明するものとして過大報告の発生を支持するものではなかった.また,リスク差と比率の計算は,心筋炎の確定または可能性が高いという厳格な基準を満たした症例に限定して行ったため,確認バイアスが少なくなっていると思われる.また,標準化発生率比の解析において,心筋炎のバックグラウンドの発生率の基準として,2017年〜2019年までのイスラエル国立病院退院データベースを使用したことも限界の一つかもしれない.これらの年は,2017年,2018年,2019年にはインフルエンザが発生したが,2020年と2021年には発生しなかったこと,2020年と2021年にはCovid-19が発生したが,2017年から2019年には発生しなかったことなど,ウイルスの循環に関して,また,先の期間に心筋炎の系統的な報告がなかったことから,2020年から2021年の期間とは異なっていた.しかし,2017年から2019年までの期間における心筋炎の入院率は,2020年の入院率と同様であり,これらの分母に用いたデータベースは,ワクチンを接種していない集団を代表するものである.年齢と性別以外の潜在的な交絡因子を調整することはできなかった.

最後に,我々の研究における心筋炎の発生率は,今回Journalに報告されたWitbergらの研究9)におけるClalit Health Servicesデータベースの発生率と比較することができる.この研究では心筋炎の発生率がやや低かったが,これは使用された方法が異なっていたためと思われる.我々の研究では,1回目接種から21日後,2回目接種から30日後という正確な追跡調査を行うために,各接種日を記録したが,Witbergらは1回目接種から42日後までワクチン接種者を追跡調査していたこの研究デザインでは,2回目接種後の追跡期間が短いため,心筋炎の症例が過小評価されている可能性がある.我々の研究では,ワクチンを接種していない一般集団における心筋炎の発生率は10,857人に1人であり,Baldらが以前に報告した,ワクチン接種後よりもSARS-CoV-2感染後の方が心筋炎の発生率が高いことを示す知見と比較することができる10)

イスラエルの国家データベースのデータによると,BNT162b2 mRNAワクチンを2回接種した後の心筋炎の発生率は低いが,ワクチンを接種していない人や過去の対照群の発生率よりも高かった.心筋炎のリスクは,主に2回目ワクチン接種後と若い男性の接種者における発生率の増加によってもたらされた.

 

References

1) Emergency use authorization: Pfizer-BioNTech COVID-19 vaccine. Silver Spring, MD: Food and Drug Administration, 2021

(https://www.fda.gov/emergency-preparedness-and-response/coronavirus-disease-2019-covid-19/pfizer-biontech-covid-19-vaccine.)

2) Haas EJ, Angulo FJ, McLaughlin JM, et al. Impact and effectiveness of mRNA BNT162b2 vaccine against SARS-CoV-2 infections and COVID-19 cases, hospitalisations, and deaths following a nationwide vaccination campaign in Israel: an observational study using national surveillance data. Lancet 2021;397:1819-1829.

3) Brighton Collaboration. Myocarditis/pericarditis case definition. The Task Force for Global Health, July 16, 2021

(https://brightoncollaboration.us/myocarditis-case-definition-update/.)

4) Casey C, Vellozzi C, Mootrey GT, et al. Surveillance guidelines for smallpox vaccine (vaccinia) adverse reactions. MMWR Recomm Rep 2006;55:1-16.

5) Centers for Disease Control and Prevention (CDC). Update: cardiac-related events during the civilian smallpox vaccination program — United States, 2003. MMWR Morb Mortal Wkly Rep 2003;52:492-496.

6) Mei R, Raschi E, Forcesi E, Diemberger I, De Ponti F, Poluzzi E. Myocarditis and pericarditis after immunization: gaining insights through the Vaccine Adverse Event Reporting System. Int J Cardiol 2018;273:183-186.

7) Sahai H, Khurshid A. Statistics in epidemiology: methods, techniques, and applications. Boca Raton, FL: CRC Press, 1996.

8) Polack FP, Thomas SJ, Kitchin N, et al. Safety and efficacy of the BNT162b2 mRNA Covid-19 vaccine. N Engl J Med 2020;383:2603-2615.

9) Witberg G, Barda N, Hoss S, et al. Myocarditis after Covid-19 vaccination in a large health care organization. N Engl J Med. DOI: 10.1056/NEJMoa2110737.

10) Barda N, Dagan N, Ben-Shlomo Y, et al. Safety of the BNT162b2 mRNA Covid-19 vaccine in a nationwide setting. N Engl J Med 2021;385:1078-1090.

 

 

 

 

 

 

 

【大規模医療機関におけるCovid-19ワクチン接種後の心筋炎について】

Witberg G, et al. Myocarditis after Covid-19 Vaccination in a Large Health Care Organization. N Engl J Med. Oct 6, 2021. https://doi.org/10.1056/NEJMoa2110737.

Background

心筋炎の発症とCovid-19に対するメッセンジャーRNAmRNA)ワクチン接種との関連性が示唆される報告があるが,ワクチン接種後の心筋炎の頻度や重症度については広く検討されていない.

Methods

イスラエル最大の医療機関(HCO: health care organization)であるClalit Health Servicesにおいて,BNT162b2 mRNAワクチン(Pfizer-BioNTech)を1回以上接種した患者で心筋炎と診断されたデータを検索した.心筋炎の診断は,Centers for Disease Control and Preventionが使用する症例定義を用いて,心臓専門医が判定した.患者の電子カルテから,症状,臨床経過,転帰を抽出した.1回目接種後,42日目までの心筋炎の発生率について,Kaplan-Meier解析を行った2回のワクチン接種後にそれぞれ約21日間のフォローアップができるように,1回目接種後42日間のフォローアップ期間を選択した

Results

PATIENTS:

20201220日〜2021524日の間に,Clalit Health Servicesの会員2,558,421人がBNT162b2 mRNA Covid-19ワクチンを少なくとも1回接種し,このうち2,401,605人(94%)が2回接種した.最初に,心筋炎の可能性のある159人が,1回目ワクチン接種後42日間にICD-9コードに基づいて特定された.判定の結果,これらの症例のうち54が心筋炎の診断基準を満たしていると判断された; これらの症例の重症度のうち,41人は軽症,12人は中等症,1人は劇症と分類された

心筋炎の診断基準を満たさなかった105人のうち,78人は新たなイベントを伴わない以前の心筋炎の診断が記録され,16人は診断基準を満たす十分なデータが得られず,7人はワクチンの初回接種前であった; 4人は心筋炎以外の疾患の診断の可能性が高いと判断された(Fig. S1).心筋炎を発症した可能性があると判断されたすべての患者について,地域の医療記録が入手できた.指標となる入院の退院サマリーは,イベントが記録されていない可能性がある症例81人のうち55人(68%),および研究基準を満たした54人のうち38人(70%)から入手できた.

心筋炎の患者の特徴をTable 1に示す.患者の年齢中央値は27歳(四分位範囲[IQR], 21-35)で,94%が少年および男性であった2人の患者は,ワクチン接種前にCovid-19に罹患していた(それぞれ125日前と186日前).ほとんどの患者(83%)は医学的併存疾患がなく,13%は慢性疾患の治療を受けていた.ワクチン接種前に軽度の左心室機能障害があった患者が1人存在した.

 

Table 1: Characteristics of the Study Population and Myocarditis Cases at Baseline.

心筋炎を発症した患者のうち,37人(69%)が,ワクチン接種の間隔は中央値で21日(IQR, 21-22)であり,2回目ワクチン接種後に診断を受けた.ワクチン接種後の心筋炎の累積発生率曲線をFigure 1に示す.ワクチン接種後,心筋炎が発生するまでの日数の分布をFigure S2に示す.いずれのFigureも,ワクチン接種後の期間中に発生したイベントを示しており,2回目接種後に発生率が上昇していることがわかる

Figure 1: Kaplan–Meier Estimates of Myocarditis at 42 Days.

Shown is the cumulative incidence of myocarditis during a 42-day period after the receipt of the first dose of the BNT162b2 messenger RNA coronavirus disease 2019 (Covid-19) vaccine. A diagnosis of myocarditis was made in 54 patients in an overall population of 2,558,421 vaccinated persons enrolled in the largest health care organization in Israel. The vertical line at 21 days shows the median day of administration of the second vaccine dose. The shaded area shows the 95% confidence interval.

Figure S2:

INCIDENCE OF MYOCARDITIS:

ワクチン接種者10万人あたりの1回目接種後42日以内の心筋炎の全体的な推定発生率は2.13人(95%信頼区間[CI], 1.56-2.70で,このうち男性患者の発生率は4.1295%CI, 2.99-5.26),女性患者の発生率は0.2395%CI, 0-0.49)であった(Table 216歳〜29歳までの全患者の10万人あたりの発生率は5.4995%CI, 3.59-7.39)で,30歳以上の患者の発生率は1.1395%CI, 0.66-1.60)であった発生率が最も高かったのは,1629歳の男性患者で,10万人あたり10.69人(95%CI, 6.93-14.46であった全体集団における重症度に関して,10万人あたりの発生率は,軽症心筋炎が1.6295%CI, 1.12-2.11),中等症心筋炎が0.4795%CI, 0.21-0.74),劇症型心筋炎が0.0495%CI, 0-0.12)であった.各重症度では,女性よりも男性の方が発生率は高く,30歳以上よりも16歳〜29の方が発生率は高かった.

Table 2: Incidence of Myocarditis 42 Days after Receipt of the First Vaccine Dose, Stratified According to Age, Sex, and Disease Severity.

CLINICAL AND LABORATORY FINDINGS:

心筋炎の臨床および臨床検査的特徴をTable 3およびTable S3に示す.症状としては,82%の症例で胸痛が認められた.入院時のバイタルサインはおおむね正常であったが,血行動態が不安定であったのは1人,そして強心剤や昇圧剤の投与や機械式循環補助を必要とした症例はなかった.入院時に心電図データが得られた38人のうち20人(53%)でST上昇が認められた.心電図は38人のうち8人(21%)で正常であったが,残りの患者では軽微な異常(T波変化,心房細動,非持続性心室頻拍など)が検出された.トロポニンTレベルのピーク値の中央値は,データがある41人の患者で680 ng/LIQR: 275-2075),クレアチンキナーゼレベルの中央値は,データがある28人の患者で487 U/LIQR: 230-1193)であった.

入院中に心原性ショックが発生し,体外式膜酸素療法(ECMO)が必要となった患者が1人存在した他の患者は,強心剤や昇圧剤の投与あるいは機械式換気を必要としなかった.しかし,5%に非持続性心室頻拍,3%に心房細動が認められた1人の患者から得られた心筋生検では,血管周囲にリンパ球と好酸球の浸潤が認められた入院期間の中央値は3日間(IQR, 2-4)であった全体では65%の患者が継続的な治療を受けることなく退院した

心疾患の既往のある患者が,退院の翌日に原因不明で死亡した心膜炎の既往があり,心筋炎で入院した1人の患者は,心膜炎の再発でさらに3回入院したが,最初のエピソード後,心筋病変は見られなかった.その他の臨床的記述は,Table S4に示す.

Table S4:

 

 

Table 3: Presentation, Clinical Course, and Follow-up of 54 Patients with Myocarditis after Vaccination.

ECHOCARDIOGRAPHY AND OTHER CARDIAC IMAGING:

心エコーは54人のうち48人(89%)で得られた(Table S5).これらの患者のうち,71%の患者は入院時の左室機能は正常であったある程度の左心室機能障害を示した14人の患者(29%)の内訳は,17%が軽度,4%が軽度〜中等度,4%が中等度,2%が中等度〜重度,2%が重度であった.来院時にある程度の左心室機能障害があった14人において,指標となる入院中のフォローアップ心エコー検査では,4人は機能正常,残りの10人は同様の機能障害が存在していた.退院時の左心室機能の平均値は57.5±6.1%で,これは来院時の平均値とほぼ同じであった退院後のフォローアップ期間の中央値は25日(IQR, 14-37で,退院前の最後の左心室評価である程度の機能障害が認められた患者10人のうち5人について,心エコーによるフォローアップが可能だったこれらの患者のうち,全員が正常な左心室機能を示した.残りの5人の患者については,心エコーのフォローアップ結果が得られなかった.

15人(28%)の患者に心臓MRIが実施された: 最初の入院時に5人,退院後中央値44日(IQR, 21-70)に10人の患者に実施された.すべての症例で左心室機能は正常で,平均駆出率は61±6%であった.遅発性ガドリニウム増強の定量的評価によるデータは11人で得られ,中央値は5%IQR, 1-15)であった(Table S6).

Table S5:

Table S6:

 

Discussion

本研究では,イスラエルの医療機関の大規模データベースを用いて,BNT162b2 mRNA Covid-19ワクチン接種後の心筋炎の発生率と臨床経過を推定した.公表されている診断基準を用いて,1回目ワクチン接種後42日間の心筋炎の発生率を,ワクチン接種者10万人あたり2.13人と推定した.発生率が最も高かったのは,1629歳の男性患者であった.ほとんどの症例の重症度は軽症または中等症であった.心筋炎の診断は,ワクチン接種後の全期間にわたって行われましたが,2回目ワクチン接種から約35日後に増加しているようだった心原性ショックを起こした患者が1人,心疾患の既往がある患者が1人は退院後まもなく原因不明であったが死亡した心エコー検査を受けた心筋炎患者の29%に左心室機能障害が初期に発生した; 退院後にフォローアップ検査を受けた患者では,左心室機能は正常化した.今回のコホートのフォローアップ期間(中央値, 83日)は非常に短く,ワクチン接種後の心筋炎患者の長期予後を確認することはできなかった.

我々の研究におけるワクチン接種後の心筋炎の発生率を,他の研究における発生率と直接比較することはできないが,我々のデータは参考になるかもしれない.Vaccine Adverse Events Reporting System(ワクチン有害事象報告システム)のデータに基づいて,CDCは,Covid-19ワクチン接種後の心筋炎の発生率は,全体で10万人あたり0.48人,18歳〜29歳までのワクチン接種者では10万人あたり1.2人と推定している10).これらの推定値は,本研究の推定値よりも低くなっているが,これは,症例を特定するために使用された方法が異なるためと考えられる(CDCへの受動的な報告 vs HCOの電子カルテ).また,この2つの推定値の違いには,それぞれの研究で対象となった患者の年齢や,有害事象を発見するためのタイムウィンドウの違いなどを含んでいる.米軍のCovid-19ワクチン接種キャンペーンの報告書では,男性軍人10万人あたり8.2人(合計23人)の心筋炎が発生したとされているが,これは本研究の全年齢層の男性における発生数の約2倍に相当する.軍隊の研究では,男性の17%に左心室機能障害が認められたが(全例が軽度または軽度〜中等度の範囲)11),一方我々の研究では29%であった.この違いは,年齢層の違い,併存疾患の違い,軍隊の研究ではフォローアップ期間が短かったことを反映しているとかもしれない.

Bardaらによるイスラエルの研究4)では,ワクチン接種者10万人あたり2.7人の心筋炎の過剰症例が発生した.この研究では,我々の研究で使用したのと同じHCOデータベースを使用しているが,2つの研究の発生率の推定値は同じではない.この違いの主な理由は,2つの研究集団の年齢分布が異なることと,ワクチン接種後の心筋炎の年齢に対する不均一性が大きいことにある.Bardaらの研究では,診断コードに基づいて症例を確認したが,我々は手作業による判定も行い,CDCの診断基準を満たす十分なデータが得られた症例のみをカウントした.

Limitation: 我々の研究にはいくつかの限界がある.第一に,心筋炎の確定診断は心内膜心筋生検の結果に基づくが,これはたった1人の患者にしか行われなかった.本研究で用いた心筋炎の定義は,臨床現場での心筋炎の診断方法に対応するものではあるが,診断を確定するものではない.第二に,ネットワーク外の病院で診断され,保険者(insurer)への報告が遅れた場合や,外来診療記録に診断名が記入されていなかった場合では,症例が見逃される可能性がある.また,心筋炎の患者の中には,指標となる入院の詳細を知ることができない,あるいは退院時に特定のデータが記録されていないといった理由で,研究の診断基準を満たさなかった人が存在したかもしれない.これらの問題は,心筋炎の発生率を過小評価することにつながると可能性がある.第三に,臨床経過に関する多くの項目でデータが不足していた.第四に,同時に登録された比較対照群がないため,ワクチンとその後の心筋炎発症との間の因果関係を推論することはできない.第五に,今回の研究デザインでは,Covid-19後の心筋炎の発生率に関するデータを収集することができない.

Conclusions

イスラエルの大規模医療機関で16歳以上を対象に行われたこの後ろ向きコホート研究では,BNT162b2 mRNAワクチンを少なくとも1回接種した後の42日間における心筋炎の推定発生率は,ワクチン接種者10万人あたり2.13,そして1629歳の男性患者では,10万人あたり10.69であった.心筋炎のほとんどの症例は,軽症または中等症であった.

 

References

1) Israel Ministry of Health. National Covid-19 data dashboard

(https://datadashboard.health.gov.il/COVID-19/general.) (In Hebrew).

2) Centers for Disease Control and Prevention. Myocarditis and pericarditis following mRNA COVID-19 vaccination. 2021

(https://www.cdc.gov/coronavirus/2019-ncov/vaccines/safety/myocarditis.html.).

3) Surveillance of myocarditis (inflammation of the heart muscle) cases between December 2020 and May 2021 (including). Press release of the Israeli Ministry of Health, June 2021 (https://www.gov.il/en/departments/news/01062021-03.).

4) Barda N, Dagan N, Ben-Shlomo Y, et al. Safety of the BNT162b2 mRNA Covid-19 vaccine in a nationwide setting. N Engl J Med 2021;385:1078-1090.

5) Cohen R, Rabin H. Membership in the health funds. 2017.

(https://www.btl.gov.il/Publications/survey/Documents/seker289/seker_289.pdf.)(In Hebrew).

6) Dagan N, Barda N, Kepten E, et al. BNT162b2 mRNA Covid-19 vaccine in a nationwide mass vaccination setting. N Engl J Med 2021;384:1412-1423.

7) Update: cardiac-related events during the civilian smallpox vaccination program — United States, 2003. MMWR Morb Mortal Wkly Rep 2003;52:492-496.

8) Kociol RD, Cooper LT, Fang JC, et al. Recognition and initial management of fulminant myocarditis: a scientific statement from the American Heart Association. Circulation 2020;141(6):e69-e92.

9) Sinagra G, Anzini M, Pereira NL, et al. Myocarditis in clinical practice. Mayo Clin Proc 2016;91:1256-1266.

10) Wallace M, Oliver S. COVID-19 mRNA vaccines in adolescents and young adults: benefit-risk discussion. Presented at the Advisory Committee on Immunization Practices Meeting, Atlanta, June 23–25, 2021

(https://www.cdc.gov/vaccines/acip/meetings/downloads/slides-2021-06/05-COVID-Wallace-508.pdf.).

11) Montgomery J, Ryan M, Engler R, et al. Myocarditis following immunization with mRNA COVID-19 vaccines in members of the US military. JAMA Cardiol 2021 June 29 (Epub ahead of print).