COVID-19関連追加(2021108日)BNT162b2ワクチンの液性免疫応答の減弱

6ヶ月にわたるBNT162b2 Covid-19ワクチンによる液性免疫応答の減弱】

Levin EG, et al. Waning Immune Humoral Response to BNT162b2 Covid-19 Vaccine over 6 Months. N Engl J Med. Oct 6, 2021. https://doi.org/10.1056/NEJMoa2114583.

Introduction

SARS-CoV-2に対するワクチンの展開が世界的に拡大しているが1)2),防御の持続性に関するデータは限られている.無作為化比較試験およびリアルワールドでの研究により,BNT162b2ワクチン(Pfizer–BioNTech)のワクチン効果は9495%であり,2回目接種後7日以上経過した場合,症候性Covid-19の予防におけるワクチン有効性が示されている1)3)-5).ワクチン接種後の経時的な抗体動態を記述したリアルワールドの有効性と免疫原性のデータが出始めているが,免疫の持続期間についてはまだ完全には把握できていない.我々は最近,BNT162b2ワクチン接種者のブレイクスルー感染が中和抗体価と相関していることを報告した6).しかし,ブレイクスルー感染を予測できる閾値の抗体価は定義されていない.

BNT162b2ワクチンは,2回目接種から714日後に高いIgGおよび中和抗体応答を引き起こす.高齢者,男性,免疫抑制状態では,抗体レベルが低くなることが示されており,これらの集団の抗体価は他の集団よりも早く低下する可能性が示唆されている7)8)197人のワクチン接種者において,BNT162b2ワクチンの2回目接種後,ピーク時(2140日後)から84日後までの間に,抗スパイク(S)抗体レベルが2倍減少したことが観察された9).ここで我々は,医療従事者を対象とした大規模な縦断的研究を実施し,人口統計学的特性や併存疾患の異なる人の免疫応答動態を,BNT162b2ワクチンの2回目接種後6ヶ月間にわたって評価した結果を報告する.

Methods

STUDY DESIGN AND POPULATION:

イスラエルの大規模な三次医療センターであるSheba Medical Centerは,1600床のベッドを有し,従業員,学生,ボランティア,退職者を含む14,739人の医療従事者を対象に,この前向き縦断的コホート研究を実施した.Sheba Medical Centerの医療従事者の分布は以下の通り: 18%が医師,27%が看護師または看護補助者,21%がパラメディカル,34%が管理職または物流管理である.研究プロトコルはSheba Medical Centerの機関審査委員会で承認された.

参加者はすべて医療従事者で,1回目ワクチン接種前と2回目ワクチン接種後6ヶ月間は毎月(28日ごと, ±14日以内),血清学的検査のために末梢血サンプルを提供した.研究参加者全員から書面によるインフォームド・コンセントを得た.

適格基準は,年齢が18歳以上であること,1回目ワクチン接種前にSARS-CoV-2に感染していないこと(抗SARS-CoV-2 IgG検査が陰性であるか,SARS-CoV-2のポリメラーゼ連鎖反応[PCR]検査結果が陽性でないかのいずれかに基づいて判断され,臨床的なSARS-CoV-2感染が疑われる病歴がないこと),2回目ワクチン接種後に少なくとも1回の血清検査結果が得られていることであった.PCR検査に関するデータは,NEJM.orgで本論文の全文を閲覧できるSupplementary AppendixSupplementary Methods Section S1に記載されている.参加者の研究終了は,2回目ワクチン接種から175日後経過した場合,SARS-CoV-2 PCRまたは抗ヌクレオカプシド(N)抗体が陽性となった場合、または追跡調査不能となった場合とした.

Sheba Medical Centerのすべての医療従事者は,病院到着時に毎日の健康状態を報告することが求められた.Covid-19関連症状や,職場,家庭,地域でSARS-CoV-2感染者に接触したことが報告された場合,SARS-CoV-2PCR検査が必要とされた6)10).さらに,研究期間中,月1回の血清学的追跡調査が行われた.連続した検査の間にIgG抗体レベルまたは中和抗体価の大幅な上昇(4倍以上)が見られた参加者は,Covid-19ブレイクスルー感染を除外するために抗N抗体の検査を受け,陽性の場合は研究から離脱した.

参加者には個人の検査結果が通知された.IgGおよび中和抗体価が検査カットオフレベル未満に低下した参加者は,追跡調査に戻ってこない傾向があった.これらやその他の欠落した転帰は,解析に使用した線形混合モデルで対応した(後述).

STUDY DESIGN OF SEROLOGIC ASSAYS:

抗体検査は,ベースライン期間(2回目ワクチン接種後4日目から17日目まで)と,その後は4週間ごとに実施した: 18日目から42日目(期間1),43日目から70日目(期間2),71日目から98日目(期間3),99日目から126日目(期間4),127日目から154日目(期間5),155日目から175日目(期間6.中和抗体測定をすべての参加者に行うことができなかったため,65歳以上の高齢者や併存疾患がある人など,対象となるリスク因子を持つ人の割合が高いサブグループを選択した.中和抗体サブグループの参加者の選択基準は,Supplementary Methods Section S2に記載した.ピーク期間(peak period)とは,2回目接種後,力価が最も高くなるinterval of timeと定義した

最近,中和抗体価と感染性の相関関係が報告され6),ブレイクスルー感染を予測できる具体的な閾値の力価はまだ定義されていないものの,中和抗体が防御の相関関係として利用できる可能性が示唆された.我々はそこで,中和抗体検査で診断陽性となるカットオフ値(すなわち16)未満の力価を持つ確率と,それ以上の4つの力価を持つ確率を評価した: 32641282564段階で評価した.我々はIgGおよび中和抗体の力価は,ピーク期間と研究終了時(175日目)の2つの時点で評価した

年齢と性別のデータは,すべての研究参加者について入手可能であった.人口統計学的特性および併存疾患に関するコンピュータベースの質問票を,すべての研究参加者に電子送付した.質問票と研究変数の定義は,Table S2およびS3に示した.質問票に回答しなかった参加者は,混合モデル解析には含めなかった.

 

 

SEROLOGIC ASSAYS:

ワクチン接種者サンプルについては,Access SARS-CoV-2 IgG assayBeckman Coulter)を用いて,SARS-CoV-2受容体結合ドメイン(RBD)に対する抗体を調べた11)12).抗N抗体は,Platelia SARS-CoV-2 Total Ab AssayBio-Rad)を用いて,製造者の指示に従って検査した.SARS-CoV-2疑似ウイルス中和アッセイは,SARS-CoV-2 Sタンパク質でコーティングされた水胞性口内炎ウイルスを主軸とする緑色蛍光タンパク質レポーターベース(green fluorescent protein reporter–based)の疑似ウイルスを用いて,既報7)のように実施した.IgGの診断の検出下限値は0.62,中和とみなされる下限値は16である.抗体検査に関する追加情報は,Supplementary Methods Section S3に記載されている.

STATISTICAL ANALYSIS:

我々は,2回目ワクチン接種後6ヶ月間のIgG抗体および中和抗体動態を調べ,これらの変化を参加者の人口統計学的特性や併存疾患と関連付けるために,線形混合モデルを用いた.従属変数は,IgGまたは中和抗体レベルとし,対数変換したものを用いた.固定効果共変量(fixed-effect covariates)には,性別,年齢層(1844, 4564, あるいは65歳以上),および年齢と性別の交互作用(age-by-sex interaction)が含まれた.時間は,2回目接種後30日までは一定とし,それ以降は線形傾向(linear trend)とした.中和抗体レベルについては,2回目接種後70日目に線形傾向の傾きが変化するようにした.最初の時間の傾き(30日目以降)と年齢層および性別との相互作用も考慮した.この基本モデルに加えて,抗体動態との関係を検討するために,BMIと併存疾患を追加し,時間と各共変量との交互作用は,多重比較のためのBonferroni調整後に5%レベルで有意である場合にのみ,モデルに残した.参加者個人レベルと時間傾向はランダム効果(random effects)として含めた.IgGまたは中和抗体レベルに関する欠測データは,「無作為抽出の欠測: missing at random」の仮定のもと,これらのモデル内で取り扱われた.共変量の値が欠落している参加者は解析から除外された.混合モデル解析に関する詳細は,Supplementary Methods Sections S4S5に記載されている.

共変量の推定効果は,IgG抗体および中和抗体のoriginal scaleの平均の比と95%信頼区間で示した.両側P値が0.05未満であれば統計的有意性ありとした.適合した各モデルを基に,コンピュータ・シミュレーションを用いて,異なる参加者のプロファイルについて,2回目接種6ヶ月後に指定された異なる中和抗体価を下回る推定確率(および95%信頼区間)を算出した.

対数変換したIgGと中和抗体レベルの散布図,および2回目接種を受けてからの時間による対数変換したIgGと中和抗体レベルの分布は,GraphPad Prism software, version 5.0 (GraphPad Software)を用いて作成した.各期間のIgGと中和抗体レベルの相関関係は,Spearman順位相関で評価した.統計解析は,SASソフトウェア バージョン9.4SAS Institute)を用いて行い,線形混合モデル解析は,Rソフトウェア バージョン3.6.2R Foundation for Statistical Computing)を用いて行った.

Results

Summary:

本研究では,4868人の参加者を対象とし,3808人を線形混合モデル解析の対象とした.IgG抗体レベルは一定の割合で減少したが,中和抗体レベルは最初の3ヶ月間は急速に減少し,その後は比較的ゆっくりと減少したIgG抗体レベルは中和抗体価と高い相関性を示したが(Spearman順位相関0.68-0.75),IgG抗体と中和抗体レベルの間の回帰関係は,2回目ワクチン接種以降の時間に依存していた2回目接種から6ヶ月後の中和抗体価は,男性は女性よりも大幅に低く(平均の比, 0.64; 95%CI, 0.55-0.75),65歳以上18歳〜45歳未満よりも低かった(平均の比, 0.58; 95%CI, 0.48-0.70),そして免疫抑制状態の参加者は,そうでない参加者よりも低かった(平均の比, 0.30; 95%CI, 0.20-0.46

BNT162b2ワクチンの2回目接種から6ヶ月後,特に男性65歳以上免疫抑制状態では液性免疫応答が大幅に低下していた

 

STUDY POPULATION AND SEROLOGIC ASSAYS:

本研究は,20201219日〜202179日まで実施された.研究の対象となるワクチン接種を受けた医療従事者12603人のうち,4868人が試験参加者としてリクルートされた(Figure 1).研究期間中,20人の参加者がブレイクスルー感染(SARS-CoV-2PCR結果が陽性と定義)し,そして5人が抗N抗体陽性となった.合計で14,736件のIgGアッセイと4521件の中和抗体アッセイが実施された.IgGアッセイと中和抗体アッセイを繰り返し行った人数をFigure 1に示す.IgGレベルは,6ヶ月間の追跡期間中にすべての研究参加者で少なくとも1回評価され,2631人(54.0%)では少なくとも2回評価された.中和抗体サブグループには,少なくとも1回の中和抗体検査を受けた1269人(26.1%)が含まれた; このうち955人(75.3%)は少なくとも2回の検査を受けていた.年齢と性別のデータは,すべての研究参加者について入手可能であった.全体で3808人(78.2%)の参加者がコンピュータベースの質問票に回答し,混合モデル解析の対象となった.

研究参加者の人口統計学的特徴と併存疾患に関するデータを,全体集団と中和抗体サブグループの両方について,Table S1に示した.参加者の平均年齢(±SD)は,全体で46.9±13.7歳,中和抗体サブグループで52.7±14.2歳であった.研究期間,IgGおよび中和抗体の測定結果に応じた参加者の人口統計学的特性および併存疾患の分布をTable S4およびS5に示す.

 

 

Figure 1: Recruitment of Participants, Testing, and Follow-up.

This study involved a prospective cohort of health care workers who had received the BNT162b2 vaccine and underwent at least one serologic assay after receipt of the second dose of vaccine. During the study period (December 19, 2020, to July 9, 2021), participants were followed monthly for 6 months after receipt of the second dose. PCR denotes polymerase chain reaction, and SARS-CoV-2 severe acute respiratory syndrome coronavirus 2.

 

 

SARS-COV-2 ANTIBODY KINETICS AFTER RECEIPT OF SECOND VACCINE DOSE:

抗体応答と動態は,2回目ワクチン接種後6ヶ月間評価した(Figure 2A and 2B and S1 and Table S6).2 回目ワクチン接種後の最大力価(ピーク)は4日目から30日目に観察されたので,これをピーク期間と定義した.ピーク期間の予想されたIgG幾何平均力価(GMT)は29.395%CI, 28.7-29.8)であり,カットオフに対するサンプルの比率で表した.月を追うごとにIgGレベルが大幅に減少し,6ヶ月後には18.3倍まで減少した中和抗体価も大幅に減少し,ピークから研究期間2の終了まで3.9倍減少したが,研究期間3の開始以降の減少は非常に緩やかで,期間36では全体で1.2倍減少した50%中和価で表される中和抗体のGMTは,ピーク期間では557.195%CI, 510.8-607.7)であったが,期間6には119.495%CI, 112.0-127.3)に減少した

 

 

Figure 2: Distribution of Antibodies 6 Months after Receipt of Second Dose of the BNT162b2 Vaccine.

Panels A and B show the geometric mean titers (GMTs) of IgG and neutralizing antibody, respectively, in the entire study population, and Panels C through F show GMTs according to age group and sex. Antibodies were tested monthly throughout seven periods after receipt of the second dose of vaccine. Dots represent individual observed serum samples. The dashed line in each panel indicates the cutoff for diagnostic positivity. 𝙸 bars indicate 95% confidence intervals. RBD denotes receptor-binding domain.

DIFFERENTIAL DECAY ACCORDING TO AGE AND SEX:

IgG抗体および中和抗体動態は,年齢層と性別による免疫原性の違いを示した(Figure 2C2F).年齢と性別で定義されたすべてのサブグループにおいて,IgGの減衰は6ヶ月間を通して一定であったが,一方中和抗体は期間3までは大幅に減少し,その後は緩やかに減少した65歳以上の参加者は,18歳〜45歳未満の参加者に比べて,ピーク期間のIgGおよび中和抗体レベルが低く,中和抗体価も約3ヶ月(期間2の終わり)まで大きく減少したFigure 2C and 2D, and see Supplementary Results Sections S1 and S2

PREDICTORS OF PEAK AND END-OF-STUDY ANTIBODY TITERS:

ピーク期間および研究終了時において,有意により低いIgG抗体価は,高齢,男性,2つ以上の併存疾患(高血圧,糖尿病,脂質異常症,心疾患,肺疾患,腎疾患,肝疾患)の存在,自己免疫疾患の存在,および免疫抑制の存在と関連していた有意により低い中和抗体価は,両期間ともに,高齢男性免疫抑制状態と関連しており,そして有意により高い中和抗体価は,両期間ともに,BMI 30未満と比べて,BMI 30以上(肥満)と関連していた我々の結果では,ピーク期間では,2つ以上の併存疾患がある参加者は,併存疾患がない参加者に比べて,IgG抗体価および中和抗体価が有意に低かったが,研究終了時には中和抗体価に有意な差は認められなかったまた,自己免疫疾患のある参加者は,自己免疫疾患のない参加者に比べて,ピーク期間および研究終了時のいずれにおいても,IgG抗体価は有意に低かったが,中和抗体価は有意に低くなかった年齢と性別の交互作用(age-by-sex interaction)が認められた; 45歳未満の男性よりも45歳以上の男性における力価がより低いというその差は,対応する女性グループ間の差よりも大きかった

研究終了時の混合モデル解析では,65歳以上の高齢者では,18歳〜45歳未満の参加者と比べて,IgG抗体および中和抗体濃度がそれぞれ38%42%減少65歳以上の男性では,同年齢層の女性と比べて,それぞれ37%46%減少した(Table 1免疫抑制状態にある参加者は,免疫抑制状態にない参加者と比べて,IgG抗体および中和抗体の濃度がそれぞれ65%70%減少した肥満(BMI 30以上)の参加者は,非肥満の参加者と比べて,中和抗体濃度が31%増加した(Table 1

 

 

Table 1: Mixed-Model Analysis of Variables Associated with IgG and Neutralizing Antibody Titers after Receipt of the Second Vaccine Dose.

IgGレベルについては,個々の参加者のピークレベルと減少の傾きとの間に正の相関関係が見られたが弱かった(0.17; 95%CI, 0.11-0.24; 減衰の割合は初期レベルとは強く関連していなかった.しかし,中和抗体については,強い負の相関が見られた(−0.63; 95%CI, 0.70-0.55他の要因を調整した結果,2回目接種から約70日後までは,初期レベルが高いほど減少が速い傾向にあったそれ以降は,減衰の割合は緩やかで,参加者間で大きな差はなかった

我々は,2回目接種から6ヶ月後までに中和抗体価が診断陽性のための検査カットオフ値よりも低くなる確率(<16)を異なるサブグループで予測するために,この混合モデルを用いた.我々はまた,異なる中和抗体価未満(<32, <64, <128, <256)に低下する確率を予測するために,このモデルを用いた(Table 2).3つの年齢層(18歳〜45歳未満, 45歳〜65歳未満, >65歳)の健康な女性および男性において,2回目接種から175日後に中和抗体価が256未満である確率は以下の通りであった: 女性ではそれぞれ0.680.790.81; 男性ではそれぞれ0.750.890.92この3つの年齢層(18歳〜45歳未満, 45歳から65歳未満, >65歳)において,中和抗体価が16未満である確率は以下の通りであった: 女性ではそれぞれ0.020.050.06; 男性ではそれぞれ0.040.110.15全体的に(性別や年齢にかかわらず),肥満の参加者は非肥満の参加者に比べて中和抗体価がより低いリスクが低かった免疫抑制状態の参加者は,健康な参加者に比べて中和抗体価が平均未満である可能性が高かったTable 2

Table 2: Probability of Having a Titer below Different Neutralizing Antibody Titers at 175 Days after Receipt of the Second Vaccine Dose, According to Sex and Age.

CORRELATION BETWEEN IGG AND NEUTRALIZING ANTIBODY LEVELS:

我々は,IgGおよび中和抗体価の相関関係を評価した.IgG抗体価と中和抗体価の間には,2回目ワクチン接種後6ヶ月間にわたって強い相関関係が維持されていたが(Spearman順位相関0.68-0.75)(Fig. S2),IgGおよび中和抗体価の回帰関係は2回目ワクチン接種以降の時間に依存しており,これは恐らくはIgGおよび中和抗体価の間に異なる動態があることによると考えられたFigure 2

 

 

Discussion

この前向き縦断研究では,4868人の大規模コホートにおいて,BNT162b2ワクチンの2回目接種後,6ヶ月以内に液性麺英応答の顕著な減弱が認められた.抗S IgG抗体価は6ヶ月以内に相対的に安定した割合で継続的に減少した.中和抗体価の減少は,最初は7080日までの期間で活発に見られたが,その後は緩やかになった.抗体価は,年齢,性別,併存疾患との関連が見られた.特に中和抗体価が低い脆弱な集団は,高齢の男性や免疫抑制状態にある参加者であった.

麻疹,ムンプス,風疹などの多くのワクチンについては,中和抗体価が毎年510%ずつわずかに減少することが報告されている13)14).我々は,BNT162b2ワクチンに対する液性応答の有意かつ急速な減少が,ワクチン接種後数ヶ月以内に観察されることを発見した.

中和抗体は,防御と相関することが示されている6)15).しかし,中和アッセイは複雑で時間がかかる.そのため,今回報告された抗S IgGレベルと中和抗体レベルの相関関係は有用である一貫して強い相関が見られたものの,IgGと中和抗体の回帰関係は時間に依存していたしたがって,IgGレベルと中和能の関連は,2回目接種以降の時間に依存する

我々は,混合モデルを用いて,年齢,性別,併存疾患と免疫原性との関連を,2回目接種後のピークおよび6ヶ月時点において解析した.その結果,2回目接種後,最初の1ヶ月における抗体レベルは,これまでに報告されているように,男性よりも女性の方が高く,年齢とともに減少することがわかった7)16).他の報告と同様に17)-19),免疫抑制状態の参加者では,観察期間中一貫して抗体応答が有意に低く,中和抗体価は免疫抑制状態のない参加者に比べて5分の1に低下していた.

肥満(BMI≧30)のある参加者は,非肥満の参加者に比べて長期追跡調査中の中和抗体価が有意に高かった.肥満はCovid-19重症度と関連しており20),疾患重症度は,Covid-19のより高い液性免疫応答と関連している.最近の研究では,SARS-CoV-2中和抗体がBMIと正の相関関係にあることが示されている21)しかし,ワクチンを接種した肥満者がブレイクスルー感染のリスクが高いのか低いのか,また,ワクチンによる相対的に高い液性免疫応答が防御につながるのかどうかは,まだ明らかになっていない

SARS-CoV-2感染から回復した人の液性応答の持続性に関するいくつかの研究では,IgG抗体および中和抗体レベルは感染後810ヶ月でわずかに減少することが示されている22)23).このような回復者とワクチン接種者の間の抗体動態の顕著な違いが,既感染者のブレイクスルー感染の発生率がワクチン接種者よりも大幅に低い理由である可能性がある24)25).我々の研究と他の研究からの蓄積された証拠は22)-25),既感染者の長期的な液性応答およびワクチン有効性が,2回ワクチン接種者のそれよりも優れていることを示している.

本研究は医療従事者を対象としており、そのほとんどが健常者であったため,一般集団を代表していない可能性がある.この限界を克服するために,研究集団全体でIgG検査を実施したが,一般集団をよりよく反映させるために,高齢者や併存疾患のある人の割合が高いサブグループで中和抗体検査を実施した.

今回のデータは,BNT162b2ワクチン接種に対する免疫応答の縦断的動態に関する重要な知見を提供する.このパンデミックが進む中で,ワクチン接種後の防御の免疫相関を明らかにすることの重要性が明らかになった.SARS-CoV-2とその亜種から変異から国民を守るためには,宿主免疫を持続させる戦略を評価する必要がある.

 

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Supplementary appendix

 

 

 

 

 

 

 

【米国の大規模統合医療システムにおける6ヶ月までのmRNA BNT162b2 COVID-19

ワクチンの有効性: 後ろ向きコホート研究】

Tartof SY, et al. Effectiveness of mRNA BNT162b2 COVID-19 vaccine up to 6 months in a large integrated health system in the USA: a retrospective cohort study. Lancet. Oct 4, 2021. https://doi.org/10.1016/S0140-6736(21)02183-8.

Summary

Background

SARS-CoV-2感染に対する有効性の低下について,デルタ変異ウイルス(B.1.617.2)の影響と潜在的な免疫減弱を区別したワクチン有効性研究は行われていない.我々は,米国の大規模医療機関に所属する患者を対象に,SARS-CoV-2感染およびCOVID-19関連入院に対するBNT162b2tozinameran, Pfizer-BioNTech)の全体的な有効性および変異ウイルス別有効性を,ワクチン接種後の期間別に評価することを目的とした.

Methods

今回の後ろ向きコホート研究では,医療機関であるKaiser Permanente Southern California(米国カリフォルニア州)の会員であった12歳以上の個人電子カルテを解析し,SARS-CoV-2感染およびCOVID-19関連入院に対するBNT162b2ワクチンの有効性を,最長6ヶ月間にわたって評価した.参加者は1年以上の会員歴が必要であった.アウトカムは,SARS-CoV-2PCR検査陽性およびCOVID-19関連入院であった.効果の計算は,調整済みCoxモデルによるハザード比に基づいて行った.本研究は,ClinicalTrials.govNCT04848584)に登録されている.

Findings

20201214日〜202188日の間に,適格性を評価した4,920,549人のうち,3,436,957人を対象とした(年齢中央値45[IQR 29-61], 女性1,799,395[52.4%], 男性1,637,394[47.6%]).完全ワクチン接種した人のSARS-CoV-2感染症に対する有効性は73%95%CI 72-74),COVID-19関連入院に対する有効性は 90%89-92)であった.感染に対する有効性は,完全接種後1ヶ月間は88%95%CI 86-89)であったが,5ヶ月後には47%43-51)に低下したシーケンスされた感染のうち,デルタ変異ウイルス感染に対するワクチン有効性は,完全接種後1ヶ月間は93%95CI 85-97)と高かったが,4ヶ月後には53%39-65)に低下したその他の(デルタ以外の)変異ウイルスに対する有効性も,完全接種後1ヶ月間は97%95%CI 95-99)と高かったが,45ヶ月後には67%45-80)に低下したすべての年齢層において,デルタ変異ウイルス感染による入院に対するワクチン有効性は,6ヵ月目までは全体的に高かった(93%[95%CI 84-96]

 

 

Figure 1: Distribution of variants from January to July, 2021.

n=5008. Failed sequence counts are not included.

 

 

Figure 2: Adjusted estimated vaccine effectiveness against SARS-CoV-2 infection and hospital admissions.

Vaccine effectiveness (95% CI) against SARS-CoV-2 infection (A) and COVID-19 hospital admission (B) by age group and number of months since being fully vaccinated with BNT162b2. *BNT162b2 authorised for those aged 12–15 years in May, 2021, limiting follow-up time for this age group.

Figure 3: Adjusted estimated vaccine effectiveness against SARS-CoV-2 infection by variant.

Data are shown for number of months since being fully vaccinated with BNT162b2 with 95% CIs.

 

Interpretation

今回の結果から,デルタ変異ウイルスが広く普及しているにもかかわらず,完全ワクチン接種してから6ヶ月程度までは,入院に対してBNT162b2が高い有効性を発揮することが裏付けられたSARS-CoV-2感染に対するワクチン有効性が時間の経過とともに低下するのは,デルタ変異ウイルスがワクチンによる保護を受けられないというよりも,むしろ時間の経過とともに免疫が減弱することが主な原因である可能性がある.

Fundings

Pfizer.