COVID-19関連追加(20211013日)SARS-CoV-2再感染に対する免疫の持続性

SARS-CoV-2再感染に対する免疫の持続性: a comparative evolutionary study

Townsend JP, et al. The durability of immunity against reinfection by SARS-CoV-2: a comparative evolutionary study. LANCET Microbe. Oct 1, 2021.

https://doi.org/10.1016/S2666-5247(21)00219-6.

Introduction

現在進行中のCOVID-19のパンデミックにより,世界中で450万人を超える死者が出ている.COVID-19を制御するためのアプローチは,回復やワクチン接種によって付与される免疫の持続性に依存している.しかし,COVID-19の原因ウイルスであるSARS-CoV-2に対する免疫力の持続性を予測することは,パンデミックの中では困難である.パンデミックが急速に拡大している間,全体の発生率に比べて再感染の記録はほとんどない.SARS-CoV-2中和抗体レベルの短期的な縦断研究1,2は、せいぜい免疫の持続性の下限を示すに過ぎない.一方,SARS-CoV-2の近縁であるSARS-CoVMERS-CoV,ヒトコロナウイルス(HCOV-OC43HCOV-229EHCOV-NL63などのコロナウイルスについては,感染に続く抗体レベルの長期的な減弱が評価されてきた3)4)5)6)7).人獣共通感染症のコロナウイルスであるSARS-CoV-2は,近縁のコロナウイルスと比較して,哺乳類の免疫システムとの相互作用が特に乖離して進化したとは考えられない7).したがって,SARS-CoV-2に対する液性免疫の減弱,感染後に観察される抗体低下の割合,およびSARS-CoV-2の複数の近縁ウイルスの抗体レベルを考慮した際の再感染の確率は,祖先と子孫の状態の系統解析から推定することができ8)SARS-CoV-2に関する知識の重要なギャップを埋めることができる.近縁ウイルスからの推定値の影響を,それらの進化的分散(evolutionary fivergence)と形質の進化速度(speed at which the trait evolves)によって逆に加重するという,この確立された系統学的アプローチにより,再感染の確率を推定することができる.

本研究の目的は,SARS-CoV-2の進化的に近いコロナウイルスの免疫の持続性に関するデータを用いて,SARS-CoVMERS-CoV,ヒトコロナウイルス(HCOV-229EHCOV-OC43,およびHCOV-NL63関連ウイルスのcomparative evolutionary analysisにより,再感染までの時間を推定することである.

Methods

本研究では,S遺伝子,M遺伝子,ORF1b遺伝子の系統解析を行い,ヒト感染コロナウイルスの最尤分子系統を再構築した.この系統をもとに,ヒト感染コロナウイルスの再感染データと合わせて,ヌクレオカプシドタンパク質,スパイクタンパク質,全ウイルスライセートIgG抗体(whole-virus lysate IgG antibody)の光学密度のピーク値を正規化した比較解析(comparative analyses)を行った.我々は,祖先と子孫の状態を解析し,SARS-CoV-2および他のヒト感染コロナウイルスの流行条件下で,時間の経過とともに予想される抗体レベルの低下,抗体レベルに基づく再感染の確率,および回復後の再感染までの予想時間を推定した.

Results

Summary:

我々は,6種類のヒト感染コロナウイルスについて,1984年から2020年の間に,感染後128日目から28年目までの抗体光学密度データを入手した.これらのデータから,流行期における典型的な抗体低下のプロファイルと再感染の確率を推定することができた.SARS-CoV-2流行状況下での再感染は,抗体応答がピークに達してから3ヶ月から5.1年の間,中央値16ヶ月に起こる可能性が高いだろう.この防御期間は,ヒトの間で循環しているコロナウイルスで明らかになっている期間の半分未満である(5-95%分位数は,HCOV-OC43では15ヶ月〜10年,HCOV-NL63では31ヶ月〜12年,HCOV-229Eでは16ヶ月〜12).SARS-CoVでは,5-95%分位数は4ヶ月から6年であったが,MERS-CoVでは95%分位数はデータセットによって異なっていた

再感染の時間枠(time frame)は,公衆衛生上の意思決定の多くの面で基本となる.COVID-19のパンデミックが続く限り,再感染はますます頻繁に起こる可能性が高い.過去にSARS-CoV-2に感染したことのある人を含め,感染を抑制する公衆衛生対策を維持し,世界中でワクチン接種を加速する努力を続けることが,COVID-19morbidityと死亡率の予防には不可欠である.

 

Main:

2020212日〜615日の間に,アルファコロナウイルス58件,ベータコロナウイルス105件,デルタコロナウイルス11件,ガンマコロナウイルス3件のゲノム配列にアクセスし,解析を行った(appendix 1 p1).系統解析の結果,7つのヒト感染コロナウイルス,SARS-CoV-2SARS-CoVMERS-CoVHCOV-OC43HCOV-NL63HCOV-229EHCOV-HKU1の進化関係のトポロジー(topology of the evolutionary relationships)が作成された(Figure 1A; appendix 2 p3).我々は,ヒトに感染する風土病コロナウイルスHCOV-HKU1については,Edridgeらによる1人の感染者から2つのデータポイントしか得られていないため,Figure 1Aおよびその後の解析から除外した7)

系統解析の結果,SARS-CoVSARS-CoV-2は近縁であり,MERS-CoVはこのSARS-CoV cladesibling lineageであり,他の風土病コロナウイルスはより遠いoutgroupsであることがわかった(Figure 1A).これらの系統関係の推定値は,複数の推論方法の間で一致しており,すべてのnodesにおいて強力な支持(100% bootstrap)が得られた(appendix 2 p4).

これは,コロナウイルス間の進化的関係(evolutionary relationships)に関するこれまでの仮説と一致している(Figure1A;appendix 2 pp5-623)

 

 

Figure 1: Evolutionary divergences, peak-normalised coronavirus anti-spike protein IgG antibody levels, daily probabilities of infection given antibody level, and probabilities of reinfection for human-infecting coronaviruses SARS-CoV-2, SARS-CoV, MERS-CoV, HCoV-OC43, HCoV-NL63, and HCoV-229E.

(A) Phylogenetic chronogram of the evolutionary divergence of human-infecting coronaviruses relative to the most recent common ancestor. Bootstrap support was 100% for all nodes on this phylogeny. Peak-normalised antibody levels with fitted exponential waning (B–G) to a phylogenetically informed (B–D) or empirically determined baseline (E–G), in days from peak antibody level at 3 months. Daily probabilities of infection given peak-normalised S IgG antibody levels (H–M) from phylogenetically informed estimates (H–J) or from a maximum-likelihood fit of a linear-logistic model of probability of infection given antibody level (K–M). (N–S) Daily probability (curve with relative gradient from grey [low], to red [moderate], to yellow [high] for each virus) of reinfection over time, and central 90% interval of the reinfection day (black dashed vertical lines). Curves each correspond to parameters estimated from datasets 1–6.3)5)7)19)20)21)22) HCoV=human coronavirus.

 

 

感染後の抗体データについて文献検索を行ったところ,比較解析に必要な抗N IgG,抗S IgG,全ウイルスライセートIgG抗体(whole-virus lysate IgG antibody)レベルの十分なELISA光学密度データの基準を満たした7つの研究が見つかった3)5)7)19)20)21)22).これらの研究により,免疫の持続性や,我々のデータ選択に対する所見の頑健性(robustness)についての洞察を与える6つの比較データセットが得られた(Figure 1B-S).データセット1は,SARS-CoV感染関連肺炎を発症した20人における発症後240日を超える期間における抗N IgG抗体データである22);  SARS-CoV-2感染の診断から125日を超える時点での1797人の集団サンプルから得られたデータ20),および1984-97年および2003-20年の28年間を超える期間におけるHCOV-OC43HCOV-NL63,およびHCOV-229E感染に対する抗体応答を調べた27-75歳の男性10人のデータから構成されている(appendix 1 p37).データセット2には,発症して2年を超えて経過した30人(男性13人,女性17人,平均年齢37[SD11])のSARS-CoVの代替データ(alternate SARS-CoV data)が含まれている19).データセット3および4には,抗N IgG抗体と抗S IgG抗体を関連付ける線形モデルから得られた流行性コロナウイルス抗S IgG抗体の減弱推定データ(appendix 1 p4)と,2つの情報源から得られたMERS-CoV推定データ(データセット3には,無症状から重症まで9[男性5人,女性4人,年齢2754]が含まれ,最長18ヶ月間モニタリングされている3).データセット4には,発症して1年を超えて経過している11人(重症5人,軽症6人)が含まれている21).データセット56には,抗N抗体と抗ウイルスIgG抗体を関連付ける線形モデル(appendix 1 p5)から得られた流行性抗ウイルスIgG抗体の減衰推定データと,SARS-CoVの代替データが含まれている.データセット5には2年を超えてモニターされた30人が19),データセット6には発症後3年を超えてモニターされた176人が含まれている(appendix 1 p35)

Figure 2: Evolutionary divergences of human-infecting coronaviruses and estimated half-lives of antibody decline to baseline 3 months after infection by human-infecting coronaviruses.

Estimated half-life to baseline for SARS-CoV-2 and other human-infecting coronaviruses are colour coded by dataset. The estimated half-lives resulting from analyses of datasets 1–6 are plotted in comparison to the mean half-life to baseline across all coronaviruses (dashed vertical line). HCoV=human coronavirus.

 

 

再感染の時間依存性確率をロジスティック回帰パラメータで,祖先と子孫の状態を解析した結果,ヒト感染コロナウイルスの抗体レベルを考慮すると,抗体減弱のプロファイル(Figure 1B-G)と再感染の確率の間の関係が明らかになった(Figure 1, Figure 3).SARS-CoV-2は,時間経過で再感染しない確率が相対的に最も低い(comparatively lowest probabilities)ことが示された(Figure 3A).SARS-CoV-2による再感染の確立が低いのは,抗体低下の速度が中程度であり(moderately fast)(Figure 1B),特定の抗体レベルでは,感染する確率がより高い(Figure 1H)ことによる.これらの結果は,年表(chronogram)と分子進化樹(molecular evolutionary tree)のどちらを使っても,また,どのような系統推論の方法(method of phylogenetic inference)を使っても,一貫していた(appendix 2 pp9–10).SARS-CoV-2の抗体応答がピークに達してから再感染するまでの期間の推定中央値は16ヶ月であり(Figure 3A),抗体減弱のデータセットを組み合わせた場合,推定値は16ヶ月〜21ヶ月となる(appendix 2 p11).抗体データセット間で再感染の期間の推定中央値が一致しているのは,感染後の抗N IgGおよび抗S IgG抗体のピークレベル(post-peak infection levels)(r2= 0.998; p< 0.0001)と,抗Nおよび抗ウイルスIgG抗体のピークレベル(r2= 0.904; p= 0.0006; appendix 1 p4-5; appendix 2 p12)との間に強い相関関係があることを反映している.

Figure 3: Probability of remaining free of reinfection over time and median times to reinfection for human-infecting coronaviruses SARS-CoV-2, SARS-CoV, MERS-CoV, HCoV-OC43, HCoV-NL63, and HCoV-229E.

Probability of remaining free of reinfection (curves) and median times to reinfection (black dashed vertical line) resulting from analyses of datasets 1–6, in days from peak antibody level at 3 months. HCoV=human coronavirus.

総合すると,ヒト感染コロナウイルスでは,抗体低下や再感染の確率に大きな違いがあることがわかった.にもかかわらず,すべてのウイルス系統において,時間経過で再感染の確率にはかなりの重複が見られ(Figure 1N-S),コロナウイルスとヒトの間の免疫学的関係が進化的に保存されている(evolutionary conservationことが明らかになった.我々の主要解析の結果,SARS-CoV-2については,抗体応答ピーク後,3ヶ月〜5.1年の5-95%分位数が得られた(Figure 1N他のウイルスの分位数は,SARS-CoVでは4ヶ月〜6年,HCOV-OC43では15ヶ月〜10年,HCOV-NL63では31ヶ月〜12年,HCOV-229Eでは16ヶ月〜12年と,典型的にはより遅く,明らかに広い範囲にわたっていた(Figure 1O, Q-SSARS-CoV-2HCoV-OC43HCoV-NL63HCoV-229E5-95%分位数は,データセット1-6間で非常に類似していたSARS-CoVMERS-CoVについては,使用したデータセットに対する感度がより高かった(Figure 1N; appendix 2 p11

 

Discussion

本研究では,ヒト感染コロナウイルスの系統関係を推定し,祖先と子孫の状態を系統的解析することで,感染後のウイルス特異的抗体の減弱,一定の抗体レベルでの感染確率,再感染までの可能性のある時間分布についての理解を深めることができた.今回の解析では,ヒト感染コロナウイルスの中でも,抗体減弱プロファイルや,ある抗体レベルでの感染確率が不均一であることがわかった.祖先と子孫の状態を解析してこれらのパラメータを定量化することで,各コロナウイルスの再感染までのタイムスケールを推測することができた.SARS-CoV-2が流行している状況では,抗体応答のピーク後,3ヶ月〜63ヶ月,中央値16ヶ月で再感染する可能性が高かったこの防御期間は,ヒトの間で循環するコロナウイルスで明らかになった防御期間の半分にも満たない

再感染までの推定時間は,再感染の有効な症例数が少ないことと一致している.しかし,我々の結果は,パンデミック病が風土病に移行するにつれて,再感染がますます一般的になることを示唆している.我々が推定した免疫減弱の時期は,COVID-19から回復した者,そして再感染に対して一時的に免疫があるとみなされる可能性のある者についての,すべての政策決定のための定量的解析を促進することができる.特に,我々の推定値は,自然感染による集団免疫によって長期的に流行が収束するという主張や,ワクチン接種なしで長期的な罹患および死亡率のリスクを軽減できるという主張に対して強く反論するものである.ワクチン接種をせずに集団免疫に頼ると,高い確率で再感染,罹患,死亡をもたらし,何百万人もの命が危険にさらされる.我々のデータに基づいた解析によって,ワクチン接種率が低い地域では,パンデミックの状況が続く中,再感染を避けるために,ソーシャルディスタンス,適切な屋内換気,マスク着用などの安全対策を継続する必要が強調される.SARS-CoV-2が再感染する可能性のある推定された時間経過は,渡航制限,学生教育に関する決定,および流行の予測モデリングに応じた経済の再開決定にも影響を与える24)COVID-19発生時に公衆衛生政策や疾病管理において重要な役割を果たした疫学モデルは,SARS-CoV-2の免疫減弱の時期に関する厳格なbase-caseの推定値が過去に存在しなかったため,タイムスケールに制限があり,長期的な影響も曖昧であった24)25).我々の結果を踏まえて,さらなるモデリングが必要である.

我々の推定値は,時間経過に伴う確率的な免疫の予測と理解すべきであり,免疫の耐久性や感染に対する絶対的な防御は存在しないという概念を強調している.このアプローチは,抗体レベルの特定の閾値に基づいて個人の再感染リスクを分類する他のアプローチとは対照的である26).このようなbinary distinctionはリスクの人工的な分類を強いるものであり,意図せずに誤解を招くような科学的・公衆衛生的なメッセージを与える可能性がある.再感染に関する確率論的フレームワークでは,短期的な再感染のような個人の低確率イベントを考慮した定量的モデリングを採用することができる.個人の場合,このような再感染は極めて起こりにくい.しかし,何十万人もの人々が感染するパンデミックでは,このような稀なイベントが定量化可能な頻度で発生する可能性が高く,公衆衛生に大きな影響を与える可能性がある.

本研究にはいくつかの限界がある.まず,我々の研究では,風土病コロナウイルス感染に対する抗S IgGおよび抗ウイルスIgG抗体応答に関する縦断的なデータが得られなかったため,一部の解析を,いくつかの標的に対する抗体の高い相関性(抗Nと抗S,抗ウイルスと抗S)に基づいたimputation(欠測値補完,インピュテーション)に頼らざるを得なかったことが挙げられる.さらに,我々が解析に用いたSARS-CoVMERS-CoVHCOV-229EHCOV-OC43HCOV-NL63の長期研究で得られた抗体低下と感染確率は,残念ながら少数の感染者の平均値であった; ある個人がより長い,あるいはより短い免疫の期間を持っていたかもしれない.個人の再感染リスクは,免疫状態,感染の重症度,交差免疫,年齢,そしてT細胞記憶やB細胞記憶,抗体中和能力の欠如などの他の免疫学的要因に依存する27)28)29).今回の解析では,確率論的フレームワークでは,これらの側面やそれらの相互作用,さらにはSARS-CoV-2感染の中でも特に注意すべき側面を捉えることができない.例えば,無症候性SARS-CoV-2感染は,症候性感染に比べて弱い免疫応答を誘発する可能性があり2),その結果,抗体産生がより低下し,時間経過とともに再感染に対する抵抗はより短期間になる.この観察結果は,再感染では初感染よりも感染の重症度がより低い可能性があるため(reinfection can lead to lower infection severity than primary infection),特に重要である30).自然感染の結果に依存する疫学予測モデリングにおいては,症状に応じて免疫の減弱時間を認識することが重要であるかもしれない25)

もう一つの限界として,防御免疫は,液性免疫(抗体に基づく免疫)と,B細胞とCD4+およびCD8+T細胞の協調作用によってもたらされる細胞(介在)性免疫の両方が存在するという点である28)B細胞とT細胞の集団(その量,サブセット,エフェクターやメモリーといった表現型,持続性を含む)を特定することは,抗体レベル単独よりも,より直接的に免疫の原因となり,また免疫の持続性のより良い指標となる可能性がある.特に発病率が高い環境下でのヒトの場合27)と重症疾患の場合31)において,抗体レベルがSARS-CoV-2に対する防御と相関することが示されているが,新しい研究では,さまざまなコロナウイルス感染後のメモリーB細胞,メモリーT細胞およびエフェクターT細胞,そしてそれらのサイトカインの作用が示されている32)33).これらの免疫学的特性について,様々な風土病ヒト感染コロナウイルスや歴史的な人獣共通感染コロナウイルスに関する縦断的なデータを収集し,免疫に関する高い説明力の可能性を,相関特性のある祖先と子孫の状態の解析(correlated-trait ancestral and descendent states analysis)に組み込むことができれば,価値のあることだろう8).免疫の直接的な原因となる免疫応答の構成要素の性質にかかわらず,我々の解析の推論根拠は,風土病ヒトコロナウイルスにおける抗体レベルと再感染の相関関係のみに依存している.ヒト感染コロナウイルスの進化的関係が近いことを考えると,ヒト感染風土病コロナウイルスと人獣共通感染症コロナウイルスの間では,免疫学的な相関関係が類似している可能性が高い.

SARS-CoV-2による自然感染に続く免疫が長期的に持続するという過度の信頼が,ワクチンを躊躇させる原因となっていることが示されている34).おそらく,麻疹,おたふくかぜ,風疹などの疾患を引き起こす進化的に異なるウイルスの自然回復後の長期的な免疫と同等であるという誤った認識が原因であろう.対照的に,インフルエンザ,ヒトライノウイルス,コロナウイルスなどの呼吸器系ウイルスは,ヒトの免疫システムが最も頻繁に監視し標的とするタンパク質ドメインにおいて新たな変異ウイルスを進化させることで,過去の感染によって得られた免疫を克服することができる.COVID-19パンデミックが発生してからわずか1年余りで,感染の重症度を変化する,免疫応答の違いが生じる,そして免疫の持続性を阻害する新たなSARS-CoV-2変異ウイルスが発生している35).このような新たな変異ウイルスは,より重症度の低い風土病ヒトコロナウイルスの存続にも,おそらく同様の進化的役割を果たしている4).近い将来,免疫逃避するSARS-CoV-2変異ウイルスに進化する可能性を抑えるには,自然感染よりも高い免疫原性を誘発することができるワクチン接種を世界規模で迅速に展開することが重要になるかもしれない36)

現代社会の特徴は,ヒトの健康を脅かす新たな脅威の進化にあると考えられる.このような解析の理論的基盤を提供した進化生物学は,従来,歴史的な学問と考えられてきた.しかし,我々の知見は,意思決定の情報提供における進化生物学の重要な役割を強調する.今回の結果は,SARS-CoV-2の再感染に対する耐性の見通しをしっかりと把握するための重要な足がかりとなる.SARS-CoV-2の再感染リスクを包括的かつ決定的に定量化する長期コホート研究が可能になるまでの間,これらの眺望は公衆衛生上の様々な意思決定の指針となる.ワクチン接種後の抗体低下に関するデータが増えれば,我々のアプローチを拡張して,どのワクチンが自然感染よりも長い免疫をもたらし,新たな変異ウイルスに対してより強い防御を持つかを評価することができる.さらに,進化的免疫学的推論(evolutionary immunological inference)は,将来の新興疾患にも適用でき,効果的なパンデミック対応に必要な知識の重要なギャップを迅速に知らせることができる.

 

 

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Supplementary appendix