COVID-19関連追加(20211019日)

COVID-19と鑑別を要した超音波加湿器肺】

S. RO, et al. (Department of Pulmonary Medicine, Thoracic Center, St. Luke's International Hospital, Chuo-ku, Japan)

Ultrasonic humidifier lung as a mimic of COVID-19. Respiratory Case Reports. May 4, 2021. https://doi.org/10.1002/rcr2.761.

Introduction

重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2SARS-CoV-2)のポリメラーゼ連鎖反応(PCR)検査は,コロナウイルス2019COVID-19)の診断におけるゴールドスタンダードとされており,パンデミックの際には胸部CTがこのモダリティを補完するために用いられてきた.しかし,他のさまざまな肺疾患がCOVID-19CT所見と類似している可能性があり,鑑別診断が不可欠である[1].我々の知る限り,超音波加湿器肺とCOVID-19との鑑別についての報告はない.本稿では,当初COVID-19感染が疑われたが,上葉優位の分布を示す小葉中心性結節とコンソリデーションという特徴的なCT所見を有する超音波加湿器肺と診断された症例2人を報告する.

Case Report

Case 1:

64歳の男性が,4週間にわたる発熱と呼吸困難を訴えて当院を受診した.酸素マスク10 L/minで酸素飽和度は88%であった.気管内挿管し,人工呼吸を開始した.検査データでは,白血球数(WBC),乳酸脱水素酵素(LDH),C反応性タンパク質(CRP),Krebs von den Lungen-6KL-6)値が,それぞれ10,200/μL366 U/L17.52 mg/dL416 U/mLであった.CTでは,両肺背側に小葉中心性結節と両側びまん性GGOground-glass opacification)およびコンソリデーションが認められた(Fig. 1).当初,COVID-19が疑われた.重症呼吸不全を呈していたため,肺傷害に対するメチルプレドニゾロン(1000mg/日,3日間),肺感染症疑いに対するピペラシリン・タゾバクタム(13.5g/日)のエンピリック投与を開始したが,診断は確定しなかった.しかし,繰り返し行われたPCRおよび血液/喀痰培養は陰性であった.問診では,入院前の1カ月間,超音波加湿器の水交換やタンク洗浄を行わずに使用していたことが判明した.病歴とCT所見から超音波加湿器肺を疑った.発熱と胸部X線写真のGGO病変は3日以内に改善した.この特徴的な病歴と入院経過から,最終的に超音波加湿器肺と診断した.退院後は加湿器の使用を控えたことによって,患者の症状とCT所見は改善した.

 

 

Figure 1: Chest computed tomography (CT) in case 1 showed centrilobular particles (see arrows). Consolidations were seen on both lungs' dorsal area, which was similar to those found in coronavirus disease 2019 (COVID-19).

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Case 2:

62歳の男性が,発熱,呼吸困難,喉の違和感が1週間続いたため,当院に入院した.臨床検査では,WBC数が8300 /μLLDH290 U/LCRP9.67 mg/dLKL-6570 U/mLであった.胸部CTでは,両側上葉優位の非区域性GGOおよび末梢性線状コンソリデーション(peripheral linear consolidations)が認められた(Fig. 2).我々はCOVID-19を強く疑った.しかし,繰り返し行われたPCRおよび血液/喀痰培養は陰性であった.患者には超音波加湿器の使用歴があり,入院前の1ヶ月以上,水の交換やタンクの清掃を行っていなかった.最終的に超音波加湿器肺と診断された.抗原回避後,症状は胸部CT所見の改善とともに消失し,薬物療法を行わなくても症状の再発は見られなかった.

Figure 2: Chest computed tomography (CT) in case 2 showed peripheral consolidation predominant in the upper lobes.

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Discussion

ここで我々は,当初COVID-19が疑われた超音波加湿器肺と診断された2人の患者を報告した.上葉優位の分布を示す小葉中心性結節とコンソリデーションのCT所見,および加湿器の使用歴が診断の決め手となった.

加湿器肺は,大規模な加湿器に関連した過敏性肺炎の表現型として1970年代に初めて報告され,最近まで主に職業病と考えられていた[2].罹患率は曝露者で約10%である[3]日本では,過敏性肺炎の4.3%が加湿器肺と報告されており,近年,家庭用超音波加湿器の普及に伴い増加している可能性がある[4, 5]また,日本では,室内環境の乾燥を防ぐために超音波加湿器が使用される12月から2月の冬季に,加湿器肺の症例が季節的に増加することが報告されている[6].一般的な症状は発熱,咳,呼吸困難である[3].超音波加湿器は,水を交換しない,あるいはタンクを定期的に清掃しない場合,真菌や細菌などの微生物が内部で繁殖する.それらを含んだ飛沫(droplets)を吸い込むことで,超音波加湿器肺を引き起こすことがある.多くの微生物は,加湿器肺になるようなアレルギー反応を引き起こすことが報告されている.加湿器タンクの高濃度汚染水に含まれるエンドトキシンは,重症肺傷害を誘発することが示唆されている[5].そのため,抗菌薬は通常は効果がない.抗原回避するためには,加湿器の使用を中止することが最も重要である.また,重症肺傷害には副腎皮質ステロイドが有効な場合がある[2, 6]

この報告にある2人の患者は最終的に加湿器肺と診断され,そのCT所見はCOVID-19と類似していた.COVID-19の診断ではPCRがゴールドスタンダードとされているが,胸部CTは感度が高いため(97%),流行地域では診断を補完するために使用される[7]COVID-19の典型的なCT所見としては,GGO単独(50.2%)およびコンソリデーションを伴うGGO44.2%)があり,両側,末梢/胸膜直下,下葉に主に分布している[8].しかし,CTの特異度は25%と低いため,CT所見が類似している他の疾患とCOVID-19を鑑別することが重要とされている.超音波加湿器肺のCT所見は,GGO88.9%),遠心小結節(27.8%),気管支血管束沿いまたは胸膜直下の非区域性コンソリデーション(44.4%),mosaic attenuation50.0%),subpleural curve linear opacity11.1%)が特徴である.日本で最も多い過敏性肺炎の表現型である夏型過敏性肺炎とは異なり,GGOや小葉中心性結節だけでなく,胸膜直下コンソリデーションも特徴的であるこれらの所見は,エアロゾル化した細菌それら由来のエンドトキシンを直接吸入することで誘発される著しい炎症の結果である[6]2人の患者はCOVID-19のパンデミック時に発熱と呼吸困難を呈し,CTGGOと胸膜下コンソリデーションが認められたことから,当初はCOVID-19が疑われた.しかし,上葉優位分布を示す小葉中心性結節のCT所見は,COVID-19としては非典型的であったCOVID-19CT所見の検討では,他の疾患とは異なり,下葉優位分布の小葉中心性変化の欠如が典型的であった[1]

肺機能検査や6分間歩行試験などの長期的なデータは,パンデミックの中では実施に限界があったため得られなかった.しかし,我々の患者は呼吸困難もなく日常生活に戻り,胸部X線写真でも改善が見られた.また,チャレンジテストや気管支鏡検査は,患者から協力が得られず,初期の呼吸状態を考慮して実施しなかった.超音波加湿器肺の診断は,1週間以上続く呼吸器症状,両側GGOとコンソリデーションという典型的なCT所見,加湿器の使用歴,加湿器の使用を避けることで患者の状態が改善したことに基づいた[5, 6]

超音波加湿器肺はあまり認識されておらず,過小評価されている可能性がある.我々の知る限り,超音波加湿器肺とCOVID-19の鑑別に関する報告はない.超音波加湿器肺を鑑別するには,特徴的なCT所見と超音波加湿器の使用歴が重要である.

 

References

1) Duzgun SA, Durhan G, Demirkazik FB, et al. 2020. COVID-19 pneumonia: the great radiological mimicker. Insights Imaging 11: 118.

2) Banaszak EF, Thiede WH, and Fink JN. 1970. Hypersensitivity pneumonitis due to contamination of an air conditioner. N. Engl. J. Med. 283: 271– 276.

3) Koschel D, Stark W, Karmann F, et al. 2005. Extrinsic allergic alveolitis caused by misting fountains. Respir. Med. 99: 943– 947.

4) Ando M, Konishi K, Yoneda R, et al. 1991. Difference in the phenotypes of bronchoalveolar lavage lymphocytes in patients with summer-type hypersensitivity pneumonitis, farmer's lung, ventilation pneumonitis, and bird fancier's lung: report of a nationwide epidemiologic study in Japan. J. Allergy Clin. Immunol. 87: 1002– 1009.

5) Suda T, Sato A, Ida M, et al. 1995. Hypersensitivity pneumonitis associated with home ultrasonic humidifiers. Chest 107: 711– 717.

6) Sakamoto S, Furukawa M, Shimizu H, et al. 2020. Clinical and radiological characteristics of ultrasonic humidifier lung and summer-type hypersensitivity pneumonitis. Respir. Med. 174:106196.

7) Ai T, Yang Z, Hou H, et al. 2020. Correlation of chest CT and RT-PCR testing for coronavirus disease 2019 (COVID-19) in China: a report of 1014 cases. Radiology 296: E32– E40.

8) Ojha V, Mani A, Pandey NN, et al. 2020. CT in coronavirus disease 2019 (COVID-19): a systematic review of chest CT findings in 4410 adult patients. Eur. Radiol. 30: 6129– 6138.

 

 

 

 

 

 

 

【過敏性肺炎: 臨床症状/ILD-India registryからの前向きデータ】

Singh S, et al. Hypersensitivity pneumonitis: Clinical manifestations - Prospective data from the interstitial lung disease-India registry.

Lung India. Nov-Dec 2019;36(6):476-482.

https://doi.org/10.4103/lungindia.lungindia_263_19.

Context

過敏性肺炎(HP)の発症には複数の環境因子が関連しており,最近の観点からHPの診断アルゴリズムが提案されている.

Aims

間質性肺疾患(ILD-India registryからHP患者のデータを解析した.解析の目的は,(1)HPの有病率を検出すること,(2)診断確実性レベルを評価するために最近提案された分類基準に従ってHPを再分類すること,(3)HPの原因物質を特定することであった.

Setting and designs

本研究は,インド国内の27施設で新たに発症したILDの連続活動意を得た成人患者(20123月〜20154月)を対象とした,多施設共同前向き研究である.

Materials and methods

診断は,事前に規定されたworking clinical criteriaMDDに基づいた.入手可能な臨床情報に基づいて診断の強さ(strength of diagnosis)を評価するために,HP患者を,最近の分類法を用いて,definite HPHP with high level of confidenceHP with low level of confidenceに亜分類した.

Results

新たに発症したILD患者1084人のうち513人がHPと臨床診断されHP with high level of confidence380, 74.1%),HP with low level of confidence106, 20.7%),definite HP27, 5.3%)に亜分類されたHP患者の曝露は,鳥類(オッズ比[OR]: 3.52, P< 0.001),air-conditionersOR: 2.23, P< 0.001),カビ(OR: 1.79, P< 0.001),農村居住(OR: 1.64, P< 0.05),air-coolersOR: 1.45, P< 0.05)であった.

 

 

Figure 3: High-resolution computed tomography images of patients from the interstitial lung disease-India registry who were diagnosed to have acute (axial [a], coronal [b], sagittal [c]) and chronic (axial [d], coronal [e], sagittal [f]) hypersensitivity pneumonitis on the basis of multidisciplinary discussion including histopathology in both cases.

 

Conclusions

インドで新たに発症したILD患者の約47.3%HPと診断され,その大半がHP with a high level of confidenceであった最も多かった曝露は,冷却装置(cooling devicesカビ(visible moldsであった