COVID-19関連追加(20211022日)IVMの毒性およびデータ誤用による長期的な影響について

★当院HP関連ファイル:

2021923-2(イベルメクチンの教訓[Nat Medより]

 

Covid-19の予防と治療に関連したイベルメクチン使用における毒性】

Temple C, et al. Toxic Effects from Ivermectin Use Associated with Prevention and Treatment of Covid-19. N Engl J Med. Oct 20 2021.

https://doi.org/10.1056/NEJMc2114907.

イベルメクチンは、米国食品医薬品局(FDA)より、腸管ストロンギロイト症(intestinal strongyloidiasis)およびオンコセルカ症(onchocerciasis)の経口治療薬として,また,しらみ症(pediculosis)および酒さ(rosacea)の局所治療薬として承認されている.また、ペットや家畜(livestock)の寄生虫の治療薬としても使用されている.イベルメクチンは,in vitroでは重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2SARS-CoV-2)の複製を減少させる可能性があるが1)2),無作為化比較試験では,Covid-19の予防または治療における臨床的有用性は示されていない3).獣医によるイベルメクチンの使用(veterinary use)は増加している.そして米国ではヒトに使用するための処方数はパンデミック前の24倍に達している.さらに,20218月の当該処方数は,20217月の4倍となっている3)4)

オレゴン中毒センターは,専門的な訓練を受けた看護師,薬剤師,医師が常駐する電話相談センターで,オレゴン州,アラスカ州,グアムの患者を治療する医療従事者への公式の包括的治療相談のためのアドバイスを提供している.このセンターには,最近,Covid-19に関連したイベルメクチン曝露に関する問い合わせが増加している.イベルメクチンに関する問い合わせの割合は,2020年には月に0.25件であったが,20211月〜7月までは月に0.86件に増加している; 20218月にはセンターに21件の通報があった.すべての毒物曝露に関する月間総問い合わせ数は,2020年と2021年を通じて安定していた.

8月に電話相談を行った21人のうち,11人は男性で,ほとんどが60歳を超える高齢者だった(年齢中央値64; range, 20-81).約半数(11人)が,Covid-19の予防のためにイベルメクチンを使用し,それ以外はCovid-19症状を治療するためにイベルメクチンを使用していたと報告された3人は医師または獣医から処方を受け,17人は獣医用製剤を購入していた; 残りの1人のイベルメクチンの入手先は確認されていないほとんどの人は初回の大量かつ単独,単回の摂取後2時間以内に症状を認めていた6人では,1日おきまたは週2回の服用を数日〜数週間繰り返した後,症状を徐々に認めた.また,1人はCovid-19の治療または予防のためにビタミンDを摂取していた.獣医用製剤を使用していた人が摂取したと報告された用量は,1.87% paste6.8mg125mg1%溶液で2050mgであったヒト用の錠剤の投与量は,予防のために121mgを週2回摂取であった

 

21人のうち6人がイベルメクチン摂取による中毒症状で入院した; 処方箋で入手した3人を含め,6人全員が予防的使用を報告した4人が集中治療室で治療を受け,死亡者はいなかった.症状は,胃腸障害4人,錯乱(confusion3人,運動失調と脱力2人,低血圧2人,痙攣1人であった.入院しなかった人の多くは,胃腸障害,めまい(dizziness),錯乱,視覚症状,発疹などであった.

これらの症例は,錯乱,運動失調,痙攣,低血圧などの重篤なエピソードを含むイベルメクチンの潜在的な毒性作用を示しており,不適切な使用の頻度が増加している.Covid-19の治療や予防にイベルメクチンを使用することを支持する十分な証拠はなく3),不適切な使用や薬物相互作用の発生の可能性5)により,入院を必要とする重篤な有害事象が生じる可能性がある.

 

References

1) Caly L, Druce JD, Catton MG, Jans DA, Wagstaff KM. The FDA-approved drug ivermectin inhibits the replication of SARS-CoV-2 in vitro. Antiviral Res 2020;178:104787-104787.

2) Lehrer S, Rheinstein PH. Ivermectin docks to the SARS-CoV-2 spike receptor-binding domain attached to ACE2. In Vivo 2020;34:3023-3026.

3) Centers for Disease Control and Prevention. Rapid increase in ivermectin prescriptions and reports of severe illness associated with use of products containing ivermectin to prevent or treat COVID-19. CDC Health Alert Network no. CDCHAN-00449. August 26, 2021

(https://emergency.cdc.gov/han/2021/han00449.asp.).

4) Lind JN, Lovegrove MC, Geller AI, Uyeki TM, Datta SD, Budnitz DS. Increase in outpatient ivermectin dispensing in the US during the COVID-19 pandemic: a cross-sectional analysis. J Gen Intern Med 2021;36:2909-2911.

5) Edwards G. Ivermectin: does P-glycoprotein play a role in neurotoxicity? Filaria J 2003;2:Suppl 1:S8-S8.

 

 

 

 

 

 

 

【イベルメクチンのデータ誤用による長期的影響】

Alvarez-Moreno C, et al. Long-term consequences of the misuse of ivermectin data. Lancet Infectious Disease. Oct 18, 2021.

https://doi.org/10.1016/S1473-3099(21)00630-7.

イベルメクチンは,顧みられない熱帯病(neglected tropical diseases)プログラムに不可欠な経口抗感染症薬である.イベルメクチンは,リンパ系フィラリア症,疥癬,オンコセルカ症の治療と制御に安全かつ効果的であり,WHOの「顧みられない熱帯病のためのロードマップ2021-30」でも認識されている1)WHOの必須医薬品リストでは,基本的なヘルスケアシステムに必要な最低限の医薬品が推奨されており,駆虫薬,抗フィラリア薬,抗寄生虫薬としてのイベルメクチンが含まれている2)

イベルメクチンがCOVID-19による症状や死亡率の軽減に役立つのではないかという意見がいくつかの国で出ており,多くの人が肯定的な効果を推測するメタアナリシスを引用している3); しかし,これらの結論は信頼性が低いようだ(appear to unreliable).2021331日,WHOは,イベルメクチンの使用は臨床試験に限定し,日常的な臨床診療の一部として使用すべきではないと勧告した4).このアドバイスを受けて,製造元であるメルク社は,202124日に「COVID-19患者における臨床活動や臨床効果に関する意味のあるエビデンスはない」と発表した5).このような状況にもかかわらず,ラテンアメリカの一部の環境では、一部の政府や医療関係者からの勧告を受けて,イベルメクチンが日常的に使用されている6)

20217月,複数の科学者がCOVID-19に対するイベルメクチンの使用に関する詳細な臨床試験データを検討して報告した7).彼らのコメントは査読を受けていないが,試験データの中に広範な不整合があることを強調した.彼らはまた,データに一貫性のないイベルメクチン試験が,査読を受けたメタアナリシスにおける肯定的な結論の中心であったことを指摘した.20217月に行われたコクランレビューでは,COVID-19の予防および入院/外来患者の治療におけるイベルメクチンの使用に関するエビデンスベースが評価された.

世界の医療機関がCOVID-19パンデミックの抑制に取り組む中,将来的にイベルメクチンの使用と評判は危険にさらされるだろうか?パプアニューギニアとトーゴは,2021年の最後の四半期に大規模なイベルメクチン投薬を実施した国の一つである.COVID-19の論争の中で,この薬剤はコミュニティから不信感を持たれているかもしれないし,COVID-19に転用されることで,顧みられない熱帯病プログラムが損なわれるかもしれない.現在、COVID-19対策としてイベルメクチンの使用を提唱している人の中で,疥癬やフィラリア症の負担に取り組むためにイベルメクチンの使用を長期的に支持している人はほとんどいない可能性が高い.

誤った情報のキャンペーンが持続すると,信頼および公衆衛生や住民の行動に影響を与える可能性がある.査読前論文データで報告されているように,オックスフォード・アストラゼネカ社のCOVID-19ワクチン(ChdAdOx1 nCoV-19)のヨーロッパと北米における政治的・規制的な取り扱いが一貫していないことが、ガーナにおけるワクチン接種のためらいの一因となっており9),逸話によると,エチオピアやパプアニューギニアでも同様の状況が観察されている(Yirgu R, Middleton J, Pomat W, unpublished data).イベルメクチン自体も,広く知られてはいるが,(英国を含む)一部の環境ではいまだに臨床使用が妨げられている介護施設の高齢者の死亡率との根拠のない関連性が指摘されている10)

誤った情報が続くと,限られた医療や政府のリソースが、公衆衛生の真の進歩ではなく,風評(rumours)に取り組むために流用されることになる.現地で信頼されている関係者やコミュニケーター(医療従事者を含むがこれに限定されない)が,COVID-19を管理するためのイベルメクチンのエビデンスベースが不確かであること,そしてイベルメクチンが顧みられない熱帯病を管理するための重要な医薬品であることを認識するために,今すぐ積極的な健康プロモーション・教育が必要である.COVID-19パンデミックの際に,公式または高水準な情報源からの提言があった場合,我々は,コミュニティ内での不信感が高まる可能性があると懸念している.国際的,国内的な医療政策の関係者は,この不信感が短期的,中期的に取り組むべき問題であることを認識する必要がある.

WHOの「顧みられない熱帯病ロードマップ」が掲げる2030年の大掛かりな(ambitious)目標を達成するためには1), 顧みられない熱帯病に対する偏見や誤った情報の普及を減らすことが重要となる.低所得の環境において,機関は何年もかけて医療サービスと住民との間の信頼関係を築き,住民向けの健康キャンペーンが高い確率で受け入れられ,採用されるようにしてきた.もし,イベルメクチンの使用に関する地域の否定的な認識のために信頼が損なわれると,国や世界の「顧みられない熱帯病」の目標達成が妨げられ,最終的には脆弱な人々が被害を受けることになるだろう

 

References

1) WHO

Ending the neglect to attain the Sustainable Development Goals: a road map for neglected tropical diseases 2021–2030. Geneva: World Health Organisation, 2020.

https://www.who.int/neglected_diseases/Ending-the-neglect-to-attain-the-SDGs-NTD-Roadmap.pdf

Date accessed: July 28, 2021

2) WHO

World Health Organization model list of essential medicines, 21st list, 2019.

World Health Organization, Geneva2019

https://apps.who.int/iris/handle/10665/325771

(accessed July 28, 2021).

3) Bryant A Lawrie TA Dowswell T et al.

Ivermectin for prevention and treatment of COVID-19 infection: a systematic review, meta-analysis, and trial sequential analysis to inform clinical guidelines.

Am J Ther. 2021; 28: e434-e460

4) WHO

WHO advises that ivermectin only be used to treat COVID-19 within clinical trials. World Health Organization, March 31, 2021.

https://www.who.int/news-room/feature-stories/detail/who-advises-that-ivermectin-only-be-used-to-treat-covid-19-within-clinical-trials

Date accessed: July 28, 2021

5) Merck

Merck statement on ivermectin use during the COVID-19 pandemic. Feb 4, 2021.

https://www.merck.com/news/merck-statement-on-ivermectin-use-during-the-covid-19-pandemic/

Date accessed: July 28, 2021

6) Álvarez-Moreno C Valderrama-Beltrán S Rodriguez-Morales AJ

Implications of antibiotic use during the COVID-19 pandemic: the example of associated antimicrobial resistance in Latin America.

Antibiotics (Basel). 2021; 10: 328

7) Reardon S

Flawed ivermectin preprint highlights challenges of COVID drug studies.

Nature. 2021; 596: 173-174

8) Popp M Stegemann M Metzendorf M-I et al.

Ivermectin for preventing and treating COVID-19.

Cochrane Database Syst Rev. 2021; 7: CD015017

9) Brackstone K Boateng LA Atengble K et al.

Examining drivers of COVID-19 vaccine hesitancy in Ghana.

figshare. 2021; (published online July 19.) (preprint).

https://doi.org/10.6084/M9.FIGSHARE.14494851.V3

10) Middleton J Walker SL House T Head MG Cassel JA

Ivermectin for the control of scabies outbreaks in the UK.

Lancet. 2019; 394: 2068-2069