COVID-19関連追加(20211029日)フルボキサミンについて(TOGETHER試験)

COVID-19患者における救急治療および入院リスクに対するフルボキサミンによる早期治療の効果: TOGETHER無作為化プラットフォーム臨床試験】

Reis G, et al. Effect of early treatment with fluvoxamine on risk of emergency care and hospitalisation among patients with COVID-19: the TOGETHER randomised, platform clinical trial. Lancet Global Health. Oct 27, 2021.

https://www.thelancet.com/journals/langlo/article/PIIS2214-109X(21)00448-4/fulltext.

Introduction

COVID-19に対する安全で効果的なワクチンが開発され,流通しているが,特に資源の乏しい環境では,その製造,配分、適切な価格(affordability)の面で大きな課題が残っている1).したがって,COVID-19に対する安価で広く利用可能な有効な治療法を特定することは非常に重要である.特に,広く入手可能で安全性プロファイルが十分に理解されている既存の医薬品を再利用することは魅力的である2)

フルボキサミンは,選択的セロトニン再取り込み阻害剤(SSRI)であり,σ-1受容体(S1R)作動薬である3).フルボキサミンのCOVID-19疾患に対する治療効果については,抗炎症作用や抗ウイルス作用など,いくつかのメカニズムが考えられている4).小規模なプラセボ対照無作為化試験では,フルボキサミンがCOVID-19外来患者の臨床的悪化リスクを減少させる可能性が指摘されているが,より大規模な無作為化プラセボ対照試験の必要性が示唆されている5)6)

検査で確認されたSARS-CoV-2外来患者におけるCOVID-19の進行と入院を予防するためのフルボキサミンの有効性を評価するために,ブラジルのミナスジェライス州で無作為化プラセボ対照アダプティブプラットフォーム試験を実施した.このフレキシブルプラットフォーム試験では,包括的なマスタープロトコルに記載された標準化された操作手順に基づいて,薬剤を追加して試験を行うことができる7)8).このプラットフォーム試験において,8つの異なる治療法が評価されたが,ここで我々は,プラセボ対照群を併用したフルボキサミンの臨床評価について報告する.

Methods

SARS-CoV-2陽性が確認された高リスク症候性成人ブラジル人患者を対象に実施されたこのプラセボ対照無作為化アダプティブプラットフォーム試験には,ブラジル国内の11の臨床施設から,既知の重症化リスク要因をもつ適格患者が参加した.患者は,フルボキサミン(100mg, 12, 10日間)またはプラセボ(またはここでは報告されていない他の治療群)のいずれかに,1:1で無作為に割り付けられた.試験チーム,治験施設スタッフ,および患者は,治療の割り付けについてマスキングされた.主要アウトカムは,intention to treatに基づいて無作為割り付け後28日までの,COVID-19救急環境での待機,またはCOVID-19による三次医療機関への転院のいずれかとして定義される入院の複合エンドポイントとした.修正intention to treatでは,主要アウトカムイベントの発生前に少なくとも24時間の治療を受けた患者を対象とし,per-protocol解析では,高いアドヒアランス(>80%)を示した患者を対象とした.我々は,プラセボと比較した介入の成功確率と効果を確立するために,ベイズ解析の枠組みを用いた.本試験は,ClinicalTrials.govNCT04727424)に登録されており,現在進行中である.

 

Study design:

TOGETHER試験は,高リスクの成人外来患者を対象に,COVID-19疾患に対する再利用された治療法の有効性を検討する無作為化アダプティブプラットフォーム試験である9).本試験は、ブラジルの11の参加臨床施設と協力して設計,実施され,マスタープロトコルによって早期疾患に対する可能性のある治療法を同時に検証したものである.マスタープロトコルでは,無益性を理由とした介入の中止,プラセボに対する優位性を理由とした中止,新たな介入の追加など,前向き判断基準が定められている.TOGETHER試験では、これまでに、ヒドロキシクロロキン(プロトコル1),ロピナビル-リトナビル(プロトコル110),メトホルミン,イベルメクチン,フルボキサミン,ドキサゾシン(doxasozin),ペグインターフェロンラムダ(pegylated interferon lambda vs マッチしたプラセボ(プロトコル2)などが評価されている.TOGETHER試験は,Platform Life Sciences社(カナダ・バンクーバー)が中心となり,Cardresearch社(ブラジル・ベロオリゾンテ)が現地で実施している.統計解析はCytel社(Waltham, MA, USA)が行った.

本試験は,International Conference of Harmonization-Good Clinical Practicesに加え,現地の規制要件にも準拠している.本試験は,ブラジルの地域および国の倫理委員会(CONEP CAAE: 41174620.0.1001.5120, 承認書5.501.284)およびカナダのハミルトン統合研究倫理委員会(承認書13390)により,研究倫理が承認された.プロトコルと統計解析計画の全文はすでに発表されており9),詳細はappendix 2p2)に記載されている.

本試験は,International Conference of Harmonization-Good Clinical Practicesに加え,現地の規制要件にも準拠している.本試験は,ブラジルの地域および国の倫理委員会(CONEP CAAE: 41174620.0.1001.5120, 承認書5.501.284)およびカナダのハミルトン統合研究倫理委員会(承認書13390)により,研究倫理が承認された.プロトコルと統計解析計画の全文はすでに発表されており9),詳細はappendix 2p2)に記載されている.ます。本試験の報告書は,「Adaptive designs Consolidated Standards of Reporting Trials extension statement」に基づいて作成された10)11).独立したデータ安全性監視委員会(DSMC)が試験を監督した.

Participants:

試験に参加したブラジルの11の臨床施設の都市と治験責任医師は,appendix 2p3)に記載されている.各地の治験責任医師は,地域の公衆衛生当局と協力して,地域の医療施設(救急施設,influenza-symptom referral centresprimary care community centres)で参加者を募集した.我々は,本試験の認知度を高めるために,地域の公衆衛生当局の指示に従い,physical and social mediaを含むいくつかのcommunity outreach strategiesを用いた.

外来診療所のいずれかに来院すると,医師が参加者候補をスクリーニングし,参加資格基準を満たす人を同定した.主な組み入れ基準は,>18歳で,COVID-19に一致する急性の臨床症状を呈し,スクリーニング日の7日以内に症状が始まった,またはスクリーニング時に行われたSARS-CoV-2抗原の迅速検査が陽性であった患者,または発症の7日以内にSARS-CoV-2診断検査が陽性であった患者であった.対象となる患者は,さらに少なくとも1つの高リスク基準を満たしていた; 糖尿病; 治療のために少なくとも1種類の経口薬を必要とする全身性動脈性高血圧症; 既知の心血管疾患(心不全, 先天性心疾患, 弁膜症, 冠動脈疾患, 治療中の心筋症, 臨床的に顕在化し臨床的影響がある心疾患); 症候性肺疾患またはその治療(肺気腫, 肺線維症); 症状を抑えるための薬剤の慢性使用を必要とする症候性喘息; 喫煙; 肥満(BMI> 30kg/m2; 体重と身長の情報は患者が提供); 移植を受けたことがある; ステージIVの慢性腎臓病または透析を受けている; 免疫抑制または副腎皮質ホルモン療法(プレドニゾン10mg/日以上に相当)もしくは免疫抑制療法の使用; 過去0.5年間, または現在がん治療を受けている, または50歳以上のがんの既往; ワクチン未接種の状態.

以下の重要な基準のいずれかに該当する患者を試験から除外した: 急性インフルエンザ様症状に伴うSARS-CoV-2の診断検査が陰性(インフルエンザ様症状の発症から7日以内であれば,早期に検査を受けて陰性でも,数日後に陽性となった患者は対象となる); COVID-19に適合する急性呼吸器疾患をプライマリケアで治療し,以前に入院を必要としたことがある,他の原因による急性呼吸器疾患; SARS-CoV-2の予防接種を受けたことがある; 他の急性・慢性呼吸器疾患や感染症による二次的な呼吸困難(例えば,非代償性慢性閉塞性肺疾患,急性気管支炎,肺炎,原発性肺動脈性肺高血圧症); 現在のSSRIsの使用(他のセロトニン再取り込み阻害剤の使用は除外されない); コントロールされていない精神疾患や自殺念慮; 研究のガイドラインや手順に従うことができない,または従う意思がない.除外基準の一覧は,試験プロトコルに記載されている.

患者が前述の適格基準を満たしている場合,研究担当者は書面によるインフォームドコンセントを得た.インフォームドコンセントを得た後,COVID-19迅速抗原検査(Panbio, Abbott Laboratories Jena, Jena, Germany)と妊娠可能な女性のための妊娠検査を行った.COVID-19検査が陰性の場合,または妊娠検査が陽性の場合,その参加者は試験に参加しなかった.インフォームドコンセントの後,試験担当者は無作為化の前に以下のデータを収集した: 人口統計,病歴,併用薬,併存疾患,指標症例への曝露に関する情報,WHO臨床悪化スケール,患者報告式アウトカム測定情報(PROMIS)グローバルヘルススケール.

Procedures:

すべての参加者は,公的医療機関の医療従事者によるCOVID-19の通常標準治療を受けた.患者は,無作為化後(1日目)からフルボキサミン(Luvox, Abbott)を1100mg12回の用量で10日間投与する群と,対応するプラセボ群に無作為に割り付けられた.研究担当者は参加者にウェルカムビデオを提供し,試験,試験薬,有害事象,フォローアップ手順などの情報を提供した.公的医療機関で通常治療を行う臨床医は,通常,症状の管理に重点を置き,もし細菌性肺炎が疑われる場合にのみ解熱剤を投与や,抗生物質を推奨する.

試験担当者は,第1日目,第2日目,第3日目,第4日目,第5日目,第7日目,第10日目,第14日目,第28日目に,直接,または電話連絡,またはビデオ会議を用いたソーシャルメディア・アプリケーションを介して,アウトカムデータを収集した.我々は,参加者が試験薬を服用しているかどうかにかかわらず,アウトカムデータを収集した.有害事象が発生した場合には,臨床治療以外の予定外の訪問(治療期間中)がいつでも可能であった.

SARS-CoV-2伝播性の特徴と,陽性者の隔離が推奨されていることを考慮し,我々は,バイタルサインのデータはほとんど収集しなかった.心臓の安全性は,ベースライン時に6誘導心電図(Kardiamobile, Mountain View, CA, USA)を用いて評価した.記録されたデジタルデータは,識別不可能な状態で中央施設(Cardresearch, Belo Horizonte, Brazil)に転送され,解読された.酸素状態は,非侵襲的に動脈酸素飽和度と脈拍を測定するパルスオキシメーター(Jumper Medical Equipment, Shenzhen, China)を用いて評価し,体温は,試験担当者が管理する標準的なデジタル口腔体温計を用いて評価した.鼻咽頭スワブまたは喀痰唾液を採取するために,中鼻甲介鼻腔スワブキットと無菌の受取保管庫が提供された.PCR検査のための鼻腔スワブは,試験に登録した参加者の1/43日目と7日目に完了した.抗ウイルス効果を薬剤が示すかどうかを確立するために,ウイルスクリアランスを評価した.

すべての重篤および非重篤有害事象は,現地の規制要件に従って試験担当者に報告された.報告可能な有害事象には,重篤有害事象,治験薬の投与を中止するに至った有害事象,および治験薬に関連する可能性があると評価された有害事象が含まれた.

Outcomes:

主要アウトカムは,無作為化後28日以内にCOVID-19関連疾患による医療機関への入院(COVID-19による救急搬送で参加者が6時間を超えて観察下に置かれた場合,またはCOVID-19の進行によりさらなる入院に回された場合)という複合エンドポイントとした.通常であれば入院するはずの患者の多くが,ピーク時には病院のキャパシティオーバーのために入院できなかったため,複合エンドポイントでは,入院と,入院のプロキシであるCOVID-19救急病院環境での待機の両方を取り上げた.ブラジルのこの地域では,5080床のユニットが,数日間の滞在,酸素吸入,機械式換気などのサービスを提供し,救急環境で病院のようなサービスを実施していた.6時間という基準値は,臨床医が観察を推奨する時間のみを指し,待ち時間は含まれていない.主要副次アウトカムは,ウイルスクリアランス,臨床的改善までの時間,呼吸器症状のある日数,何らかの原因による入院またはCOVID-19の進行による入院までの時間,全死亡および何らかの原因による死亡までの時間,WHO臨床悪化スケールスコア,入院および人工呼吸器の使用日数,有害事象,試験薬による有害反応,試験薬の非アドヒアランスの参加者の割合を含む.すべての副次アウトカムは,無作為化後28日までに評価された.

Results

Summary:

研究チームは,この試験のために9803人の可能性のある参加者をスクリーニングした.本試験は202062日に開始され,優越性のために試験アームを停止する2021120日〜85日まで、フルボキサミンへの無作為化が報告された.741人の患者がフルボキサミンに,756人の患者がプラセボに割り付けられた.参加者の平均年齢は50歳(range 18-102),58%が女性であった.COVID-19救急環境で6時間を超えて観察された患者,またはCOVID-19により三次医療機関に転院した患者の割合は,プラセボと比較してフルボキサミン群で低く(741人中79[11%] vs 756人中119[16%]; 相対リスク[RR] 0.68; 95%ベイズ信頼区間[95%BCI]: 0.52-0.88,事前規定した優越性の閾値97.6%を上回る99.8%の確率で優越性が認められた(リスク差5.0%.複合主要アウトカムイベントのうち,87%入院であった.主要アウトカムの結果は,修正intention-to-treat解析では同様の結果(RR 0.69, 95BCI 0.53-0.90),per-protocol解析ではより大きな結果(RR 0.34, 95%BCI 0.21-0.54)が得られた主要intention-to-treat解析では,フルボキサミン群で17人,プラセボ群で25人の死亡が認められた(オッズ比[OR]0.68, 95%CI, 0.36-1.27また,per-protocol集団では,フルボキサミン群で1人,プラセボ群で12人の死亡が認められた(OR 0.09, 95%CI 0.01-0.47フルボキサミン群とプラセボ群の患者の間で,治療上の緊急性のある有害事象の発生数には,有意な差は認められなかった

Main:

現在までに9803人の可能性のある参加者をスクリーニングし,本試験に参加している.TOGETHER試験では,202062日に最初の参加者が登録され,2021120日にフルボキサミン群への登録が開始された.本試験は進行中であるため,ここでは,フルボキサミンおよび同時に投与される対照薬(プラセボ)に無作為に割り付けられた参加者のみの記述的要約を提供する.202185日までに,募集した1497人の参加者がフルボキサミン(n= 741)またはプラセボ(n= 756)に無作為に割り付けられ,1826人がその他の治療群に無作為に割り付けられた(figure 1).ここでは,202199日時点で28日間の追跡調査を終えた全患者のデータを紹介する.年齢の中央値は50歳(range 18-102)で,862人(58%)が女性であった(Table 1).ほとんどの参加者は,混合人種(mixed race)が1428人(95%),白人が12人(1%),黒人またはアフリカ系が10人(1%)(いずれも自認),残りは不明47人(3%)であった.年齢,BMI,併存疾患などの共変量に関しては,各群は概ねバランスが取れていた(Table 1).無作為化前の平均症状日数は3.8日(SD 1.87であった

 

Figure 1: Trial profile.

 

 

Table 1: Patient characteristics by treatment allocation in the TOGETHER trial.

 

すべての患者がCOVID-19救急環境を介して治療を受けた.COVID-19救急環境を利用したことのある患者は,フルボキサミン群で180人,プラセボ群で251人であった.かつてCOVID-19救急環境を訪れたことの相対リスク(RR)は0.7395%CI 0.62-0.88)であった.

フルボキサミン群では79人(11%)が主要アウトカムイベントに該当したのに対し,プラセボ群では119人(16%)が該当した(Table 2).ほとんどのイベント(87%)は入院であった.ベイズβ二項モデルに基づき,救急環境での待機あるいは三次医療機関への転院として定義された入院の複合主要エンドポイントを減少させるフルボキサミンの有用性が示された(ITT集団ではRR 0.6895%ベイズ信頼区間[BCI]0.52-0.88; 修正ITT集団ではRR 0.6995%BCI 0.53-0.90figure 2A, figure 2BNTTnumber needed to treat20だったPer-protocol解析では,より大きな治療効果(0.34, 95%BCI 0.21-0.54)が示されたプラセボ群と比較して,イベント率がフルボキサミン群で低くなる確率は,ITT集団では99.8%mITT集団では99.7%であった(figure 2A, B202185日に開催されたDSMCでは,TOGETHER試験において,この比較が主要エンドポイントに対する事前規定された優越性基準を満たしていたため(事前規定された優越性基準値97.6%),患者をフルボキサミン群に無作為に割り付けることを中止するよう推奨された.

Table 2: Proportion of primary outcome events and relative risk of hospitalisation defined as either retention in a COVID-19 emergency setting or transfer to tertiary hospital due to COVID-19 for patients allocated fluvoxamine versus placebo.

 

 

Figure 2: Probability of efficacy and Bayesian relative risk of hospitalisation defined as either retention in a COVID-19 emergency setting or transfer to tertiary hospital due to COVID-19 for fluvoxamine versus placebo.

 

 

Table 3は,副次アウトカム解析の結果を示している.7日目のウイルスクリアランス(p= 0.090),COVIDによる入院(p= 0.10),全原因による入院(p= 0.09),入院までの時間(p= 0.11),入院日数(p= 0.06)、死亡率(p= 0.24)、死亡までの時間(p= 0.49),機械式換気日数(p= 0.90),回復までの時間(p= 0.79),またはPROMIS Global Physical Scalep= 0.55)やMental Scalep= 0.32; appendix 2 p8)については,フルボキサミンとプラセボの間に有意差はなかった

Table 3: Secondary outcomes of fluvoxamine versus placebo in the TOGETHER trial.

忍容性(tolerability)の問題から84人がフルボキサミンの投与を中止し,64人がプラセボの投与を中止した.最適なアドヒアランス(可能な日数で>80%)を報告した患者を対象としたper-protocolの結果では,主要アウトカム(RR 0.34; 95%BCI 0.21-0.54),死亡率(オッズ比 0.09; 95%CI 0.01-0.47)と,有意な治療効果が示された有害事象については,フルボキサミン群とプラセボ群の患者の間で,治療上の緊急性のある有害事象発生数に有意差はなかった

事前に規定されたサブグループ解析では,年齢,性別,発症してからの日数,喫煙状況,併存疾患などのサブグループにおいて,プラセボと比較してフルボキサミンの治療効果が軽減された証拠は見つからなかった(figure 3, appendix 2 p9).

Figure 3: Subgroup analyses of fluvoxamine versus placebo in the TOGETHER Trial.

Discussion

本試験は,我々の知る限り,COVID-19の急性期治療に対するフルボキサミンの有効性を検証した初めての大規模無作為化比較試験である.我々は,フルボキサミンを10日間投与することにより,COVID-19による救急搬送,またはCOVID-19による三次医療機関への転院と定義される入院という主要アウトカムにおいて,臨床的に重要な絶対リスクを5.0%,相対リスクを32%減少させることがわかった.本研究は,早期の治療において,再利用薬の重要な治療効果を示した2つ目の研究である13).今回の結果は,DSMCが積極的なフルボキサミン投与群の中止を推奨した後の試験の完全解析であり,無作為に割り付けられた患者の28日間の追跡調査をすべて行った.フルボキサミンの安全性,忍容性,使いやすさ,低価格,広く普及していることを考えると,今回の結果は,もしかすると,COVID-19の臨床管理に関する国内および国際的なガイドラインに影響を与えるかもしれない(might).

我々の結果は,米国で行われた小規模な試験(EJLAMRが主導)と一致している6)

この試験では,高用量のフルボキサミン(100mg13回,15日間)を使用し,主要アウトカムのリスクがより低い群を対象としたが,フルボキサミンを投与された80人の患者では臨床的悪化が見られなかったのに対し,プラセボを投与された72人の患者では6人の悪化が見られた.フランスで行われた大規模な観察研究では,COVID-19入院患者7230人という異なる集団を対象とし,SSRIsの使用により挿管の使用や死亡が減少したことが報告されている5)

COVID-19に対するフルボキサミンの根本的なメカニズムはまだ不明である.仮説にはいくつかの潜在的なメカニズムが含まれているが4)COVID-19の治療薬としてフルボキサミンが最初に研究された主な理由は,S1Rの活性化による抗炎症作用(anti-inflammatory action through activation of the S1R)であった14)S1Rは,小胞体シャペロン膜タンパク質(endoplasmic reticulum (ER) chaperone membrane proteinで,小胞体ストレス応答ー折りたたみ異常タンパク質応答(UPR: unfolded protein response)の制御や,炎症のトリガーとなるサイトカイン産生の制御など,多くの細胞機能に関与している15)16).フルボキサミンの存在下では,S1Rは,小胞体ストレスセンサーであるイノシトール要求性酵素inositol-requiring enzyme 1α)が,インターロイキンIL-6IL-8IL-1βIL-12などのサイトカイン産生の重要な調節因子であるX-box protein 1XBP1)のmRNAをスプライシングおよび活性化することを阻止するかもしれない.Rosenらによる2019年の研究では,前臨床モデルの炎症や敗血症において,このメカニズムでフルボキサミンが有効であることが示された16)

次のメカニズムとして,フルボキサミンの抗血小板活性の可能性が挙げられる17)SSRIsは,血小板へのセロトニンの取り込みを防ぎ,血小板の活性化を抑制することで,血栓症のリスクを減少させる可能性があり,このような抗血小板作用は心保護作用にもつながる.最後に,もう一つのメカニズムとして,フルボキサミンが血漿中メラトニンレベルを上昇させることと関連しているかもしれない16).最も可能性の高いメカニズムを明らかにするためには,in vitroおよび動物実験が必要である.今後,無作為化比較試験の一環としてバイオマーカー試験を実施することも,メカニズムの解明に役立つかもしれない.

COVID-19パンデミックが始まって以来,ClinicalTrials.govに登録された無作為化比較試験は2800件を超えている.しかしながら,報告されているのは300件に満たず,ほとんどの臨床試験はサンプルサイズが100未満と小規模で,検出力も十分ではなかった.多くの場合,これらの臨床試験は,地域の流行が波状的に発生し,スタッフを維持するための持続可能なインフラや,募集のための地域の関心が不足しているため,募集に失敗している.最も明確な医学的理解を得ることができる試験は,SOLIDARITY17)RECOVERY18)PRINCIPLE11)REMAP-CAP19)のような大規模プラットフォーム試験である傾向がある.そのため,我々は,介入が重なる試験を実施している他の研究者と積極的に協力し,その結果,彼らは我々の試験の決定を認識して,それぞれの試験に影響を与えるかどうかを判断することができる.

本試験の強みは,重症COVID-19を発症するリスクの高い患者を迅速に募集し,登録したことである.我々の募集戦略は,地域の公衆衛生システムと連携しているため,1日あたり20人を超える患者を頻繁に募集することができる.市販のCOVID-19迅速抗原検査(Panbio, Abbott Rapid Diagnostics Jena, Jena, Germany)を用いて,COVID-19と診断され,発症してから7日以内の患者のみを登録したCOVID-19陽性検査とRT-PCRとの一致性を,PCR評価を行った参加者群で評価したところ,ベースラインで採取した両検査の一致率は99%を超えていた.この試験では,COVID-19検査陽性のない参加者や,無症候性SARS-CoV-2陽性参加者は登録しなかった.我々の主要アウトカムは入院であり,COVID-19救急環境で6時間を超えて待機した場合と,COVID-19のため三次医療機関へ転院した場合で定義した.イベント裁定委員会(event adjudication committee)は,患者の待機時間を主要エンドポイントに寄与するものとみなした.ブラジルでの流行に対応するために,専門的な救急医療施設が開設されたが,通常であれば入院するはずの患者の多くが病院のキャパシティオーバーのために入院できなかったため,我々は,これらの施設での長期にわたる観察と治療は入院と同等の重要性を持つと考えた本試験では,主要アウトカムイベントの87%が最終的に三次医療機関への転院となった.また,救急環境と病院の両方で観察された患者は1回のみカウントされた.サブグループ解析では,あらかじめ決められた集団グループを調べ,相互作用の検定では,どのサブグループでも異なる効果は検出されなかった.また,女性はフルボキサミンが好ましい(favouring fluvoxamine)サブグループ,一方男性は好ましくないグループ(not favouring)と同定されたが,両群間での効果の違いは検出されなかった.

20206月にこのプラットフォーム試験を開始して以来,COVID-19の疫学,疾患の進行やアウトカムについての理解が深まっている.初期の試験では,ウイルス量とクリアランスに対する介入の効果を評価したが,一方後期の試験ではより臨床的なアウトカムも評価している.我々は,事前に規定されたルールに従い,適切な倫理審査委員会とコミュニケーションを取りながら試験の調整を行ったことで,高い募集率を維持しながら流行の波に対応することができた.多くの外来患者を対象とした臨床試験とは異なり,本試験では,医学生,看護師,医師による訪問診療や通信による追跡調査を介して患者との直接的な接触が行われた.また,COVID-19救急環境受診や入院の発生率が高いことに加え,患者の募集が迅速に行われたため,予定していた集団の一部が集まった時点で介入の効果を評価することができた.フルボキサミンを投与された患者が最初に募集されてから,本試験の最終データカットまでの期間は219日であった

この試験の主たる主な限界は,十分に特徴が明らかになっていない疾患で試験を行うことの難しさに関連している.COVID-19の早期治療のための標準治療は存在せず,様々な支援団体が,今回の試験や過去の試験で評価されたものを含め,様々な介入を推進している20).さらに,多くのリスク因子を持つ患者が早期に回復する一方で,確立されたリスク因子がより少ない患者が回復しないこともあり,この疾患による疾患進行の最大のリスクが誰にあるのかはほとんど分かっていない.我々の集団は,ほとんどの臨床試験で観察されたものよりも入院イベントの割合が高く20),そのため,このような高リスクの集団における治療効果を推論することができる.per-protocol解析よりもintention-to-treat解析の方がよりリアルワールドの証拠が得られるが,最適なアドヒアランスを報告した患者(可能な日数で>80%; per-protocol解析)の方が治療効果は高く,治療へのアドヒアランスを強化することで,かなりの臨床効果が得られることを示唆しているしかし,アドヒアランスは忍容性と関係があるかもしれないこの理由で,フルボキサミン群では84人,プラセボ群では64人が中止した.最後に,試験開始時にはブラジルではワクチンが入手できなかったが,試験が進むにつれて広く入手できるようになった.我々は試験中に組み入れ基準を変更してワクチン接種を許可したが,試験終了時にCOVID-19ワクチンを少なくとも1回接種したと報告したのは1497人中86人(6%)のみであったため,主要アウトカムへの影響は最小限であったと我々は考えている.

我々の試験では,安価な既存薬であるフルボキサミンが,この高リスク集団における高度な疾患治療(advanced disease care)の必要性を減少させることがわかった.フルボキサミンの10日間の投与は,リソースが豊富な環境でも約US$4ドルである21)

我々の試験は,外来治療用のモノクローナル抗体を含む,より高価な治療法の効果と比べても好ましい結果が得られた20)22)23)フルボキサミンに関連する重篤な有害事象の絶対数は,プラセボに比べて少なく,これはフルボキサミンの全身性炎症に対する調整効果を反映していると考えられる下気道感染は,プラセボ群に比べてフルボキサミン群の方が報告頻度は低かった.これは,フルボキサミンを投与されたCOVID-19確定患者の入院数が減少したことや,機械式換気を必要とする患者数が数値的に少なかったことと一致している.

フルボキサミンは広く流通しているが,WHOの必須医薬品リストには掲載されていない24).一方,近縁のSSRIであるフルオキセチンはリストに掲載されている.現在,class effectが存在するかどうか,COVID-19に対してこれらの薬剤を互換的に使用できるかどうかを確立することが重要である.今回の試験と類似した集団において,吸入ブデソニドが回復までの時間を短縮し11),入院を減少させる傾向があるという重要な知見が得られたことから,外来診療における代替または追加の介入として評価されるべきと考えられる.PRINCIPLE試験では,ブデソニド投与の無作為化後28日までの自己申告による回復までの時間を評価している11).我々の試験では,WHO臨床悪化スケールの改善を14日目と28日目まで評価した点が異なる(appendix 2 p7).また,本試験では,主にワクチン未接種患者を対象としている.ワクチン接種者におけるフルボキサミンの効果を確立するためには,治療効果に関するさらなる証拠が必要である.

疾患進行や入院を防ぐために,フルボキサミンを含む介入策を使用するには,高リスク者を特定することが決定的に重要である.選別されていない集団はリスクがより低いだろう.患者が治療を選択する動機となる臨床的悪化リスクの絶対的減少がどの程度なのか(おそらくは我々が観察した約5%,しかし,もしかするともっと低い)はまだ明らかではない.以上のことから,COVID-19感染の早期である患者の悪化を予測する有効なルールを開発することが重要である.

Conclusions

COVID-19と診断された高リスク外来患者を対象にした,早期のフルボキサミン(100mg12回,10日間)投与は,COVID-19救急環境への待機,または三次医療機関への転院で定義される入院の必要性を減少させる

 

 

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Supplementary appendix