COVID-19関連追加(2021112-2)ワクチンブレイクスルー感染についてその13(無症候性ワクチンブレイクスルー感染)

【定期的ユニバーサルサーベイランス検査で確認された医療従事者の無症候性SARS-CoV-2ワクチンブレイクスルー感染】

Novazzi F, et al. Asymptomatic SARS-CoV-2 Vaccine Breakthrough Infections in Health Care Workers Identified Through Routine Universal Surveillance Testing. Annals of Internal Medicine. Out 19, 2021. https://doi.org/10.7326/M21-3486.

Background

COVID-19ワクチンは,懸念されているウイルス変異(VOCs)による免疫逃避に対する有効性が懸念されている: デルタは現在,世界的に最も多く見られるVOCであり(1),鼻咽頭スワブ(NPS)において,ワクチン未接種者と同様に,完全ワクチン接種者も感染性ウイルスを保有している(harbor infectious viral loads )ことが分かっている(2).これまでの報告では,医療従事者(HCWs)におけるワクチンブレイクスルー(VBT)感染の有病率が評価されてきたが,そのほとんどが症候性HCWsによる自発的な自己申告に基づいていたため,病原体を媒介する可能性のある無症候性感染者を見逃していた.HCWsに陽性反応が確認されると,ほとんどの国では,HCWsを職場に復帰させる前に,14日間の隔離か,少なくとも10日後に2回の連続した経過観察を行うことが求められる.このような強制隔離は,HCWsの大幅な不足を招き,病院での健康危機を引き起こす可能性がある.

Objective

20212月にASST Settelaghi病院(イタリア・ロンバルディア州)でBNT162を完全接種したHCWs2397人を系統的に調査する.

Methods and Findings

20213月以降,hospital directive IGG02PG32/2021では,通院患者からの感染リスクに応じて病棟を区分し,HCWsのサーベイランスを義務付けている.高リスクとみなされた8つの病棟で勤務していた完全ワクチン接種のHCWsn= 2397)は2週ごと,中リスクとみなされた8つの病棟は4週ごとのSARS-CoV-2ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)検査(NPS: nasopharyngeal swabs)が義務付けられた.スクリーニングには,2種類のリアルタイムPCR検査(m2000 RealTime SystemまたはAlinity m SARS-CoV-2 Assay[Abbott])のうち1種類が使用された.もしSARS-CoV-2 RNAが検出された場合,2回連続してNPSSARS-CoV-2陰性になるまで,HCWsは毎日NPSを用いて検査された.Ct値が25未満の陽性サンプルはスパイク遺伝子シーケンスによって再検査された; Ct値が2535の陽性サンプルは,L452RE484KN501Yを標的としたVOC特異的マルチプレックスリアルタイムPCRSARS-CoV-2 Extended ELITe MGB Kit [ELITechGroup])で再検査された.また,LIAISON SARS-CoV-2 S1/S2 IgGアッセイ(Diazorin)を用いて,任意のワクチン接種後血清検査プログラムが実施された.

2021315日〜817日までの間に,サーベイランスプログラムの一環として,SARS-CoV-2感染症例を33確認したその内訳は,2週間ごとに検査を受けた高リスク群HCWs789人のうち17人(2.1%)と,4週間ごとに検査を受けた中リスク群HCWs1387人のうち16人(1.1%)であった; これらの症例患者はいずれも症状を発症したことはなく(無症候性),免疫不全や重大な併存疾患もなかった.さらに,5人はスパイク遺伝子シーケンス,12人はVOC特異的リアルタイムPCRで特徴づけられた.Figureは,調査期間中のCOVID-19症例と背景の地域社会における有病率を示している.同じ期間に,8HCWs0.4%)が症候性で陽性と判定された; シーケンスによってアルファと同定されたのは1つの変異(variant)のみであったTableは,サーベイランスの結果と症状に応じたHCWsの特徴を示している.無症候性患者33人全員は,最初の陽性反応の翌日に陰性反応を示し,そしてその2日後の3回目のNPSですべて陰性反応が確認された一方,症候性患者は,平均11日後にクリアランスしたまた,平均IgGレベルは,無症候性群の方が,症候性群よりも2倍高かった

 

 

Figure: PCR Cts for SARS-CoV-2 cases among HCWs and community COVID-19 cases during the study period.

丸は無症候性感染,四角は症候性感染を示す.色は,アルファ(緑),デルタ(青),またはundefined strain(黒)を示す.矢印はスパイク遺伝子シーケンスに基づく帰属を示す.

Table:

Table.

 

Discussion

我々の結果から,無症候性ワクチン接種HCWsの系統的なサーベイランスによって,症状に基づく検査の何倍ものVBT感染症例が発見されることがわかった.無症候性VBT感染の発生率は,職業上のリスクや地域の有病率ではなく,検査の頻度に依存しているようであった.無症候性症例は,症候性症例に比べてウイルスクリアランスが早く,平均抗体レベルも高かった.無症候性VBT感染ではウイルスクリアランスが早いため,我々のサーベイランスプログラムでは,他の多くのVBT感染を見逃している可能性がある.

Benenson(3)は,7週間の調査でHCWs6680人のうち689人(10.3%)がVBT感染に罹患したと報告したが,この推定値にはBNT162b21回接種したのみのHCWsが含まれていた.Keehner(4)は,BNT162b2またはmRNA-1273を完全接種したカリフォルニア大学サンディエゴ校のHCWs5455人およびカリフォルニア大学ロサンゼルス校のHCWs9535人から7人(0.05%)を報告した.また,別の研究では,BNT162b2を完全接種したHCW3694人のうち33人(軽度の症状が16人,無症候性が17人)が報告されており(ウイルスクリアランスまでの時間については詳しく述べられていない)(5),我々が推定した症候性症例と一致している.これらの研究はすべて,SARS-COV-2変異ウイルスのアルファが主流であった時期に行われたが,我々の研究はほとんどデルタが主流であった時期に行われた

本研究の限界として,Ct値が>25の患者において,より正確なVOC推定のために遺伝子シーケンスを行うことができなかったこと,中和抗体レベルを評価するためのウイルス中和アッセイが行われなかったことが挙げられる.PCR検査の合間において発生した,無症候性VBT感染の大部分を見逃している可能性が高い

今回の知見は,SARS-CoV-2陽性と判定された無症候性ワクチン接種HCWsを定期的に検査することで,長期間の隔離が不要になる可能性を示唆しているが,この点についてはより大規模な研究で確認する必要がある.すべてのVBT感染を捕捉することを目的としたサーベイランスプログラムでは頻回検査が必要であるこのような頻繁なサーベイランスが行われない場合は,個人用保護具を注意深く使用することが必要であろう

 

References

1) Farinholt T ,  Doddapaneni H ,  Qin X , et al. Transmission event of SARS-CoV-2 Delta variant reveals multiple vaccine breakthrough infections. med. Rxiv. 2021. [PMID: 34268529] doi:10.1101/2021.06.28.21258780

2) Riemersma KK, Grogan BE, Kita-Yarbro A, et al. Vaccinated and unvaccinated individuals have similar viral loads in communities with a high prevalence of the SARS-CoV-2 delta variant. medRxiv. Preprint posted online 31 July 2021. doi:10.1101/2021.07.31.21261387

3) Benenson S ,  Oster Y ,  Cohen MJ , et al. BNT162b2 mRNA Covid-19 vaccine effectiveness among health care workers [Letter]. N Engl J Med. 2021;384:1775-1777. [PMID: 33755373] doi:10.1056/NEJMc2101951

4) Keehner J ,  Horton LE ,  Pfeffer MA , et al. SARS-CoV-2 infection after vaccination in health care workers in California [Letter]. N Engl J Med. 2021;384:1774-1775. [PMID: 33755376] doi:10.1056/NEJMc2101927

5) Rovida F, Cassaniti I, Paolucci S, et al. SARS-CoV-2 vaccine breakthrough infections are asymptomatic or mildly symptomatic and are infrequently transmitted. medRxiv. Preprint posted online 3 July 2021. doi:10.1101/2021.06.29.21259500