COVID-19関連追加(2021114-2)ワクチンブレイクスルー感染についてその14(ワクチン接種者と未接種者におけるSARS-CoV-2 デルタ変異のウイルス量)

 

【英国におけるワクチン接種者と未接種者におけるSARS-CoV-2 デルタ(B.1.617.2)変異の地域社会伝播とウイルス量の動態: 前向き縦断コホート研究】

Singanayagam A, et al. Community transmission and viral load kinetics of the SARS-CoV-2 delta (B.1.617.2) variant in vaccinated and unvaccinated individuals in the UK: a prospective, longitudinal, cohort study. Lancet Infectious Disease. Oct 29, 2021.

https://www.thelancet.com/journals/laninf/article/PIIS1473-3099(21)00648-4/fulltext.

Summary

Background

SARS-CoV-2デルタ(B.1.617.2)変異は伝播性が高く,ワクチン接種率の高い集団を含め,世界的に広がっている.我々は,地域社会でデルタ変異に軽症感染したワクチン接種者と未接種者におけるウイルス量動態を調べることを目的とした.

Methods

2020913日〜2021915日の間に,英国のCOVID-19指標症例471人の地域社会での接触者602人(英国のコントラクトトレーシングシステムを介して特定)がAssessment of Transmission and Contagiousness of COVID-19 in Contacts cohort studyに募集され,最大20日までの毎日のサンプリングで8145個の上気道サンプルが提供された.5歳以上の家庭内接触者および非家庭内接触者には,インフォームド・コンセントが提供され,上気道の自己スワブ採取に同意できる場合は募集の適格とされた.我々は,疫学的にリンクするデルタ変異感染の指標症例162人に曝露した接触者231を対象に,ワクチン接種状況による伝播リスクを解析した完全ワクチン接種したデルタ感染者(n= 29)と,ワクチン未接種デルタ感染者(n= 16),アルファ感染者(B.1.1.7; n= 39),アルファ前の感染者(n= 49)のウイルス量の推移を比較した疫学解析の主要アウトカムは,接触者のワクチン接種状況と指標症例のワクチン接種状況で層別された家庭内接触者の二次発病率(SAR: secondary attack rateを評価することであった.ウイルス量動態解析の主要アウトカムは,SARS-CoV-2変異ウイルスとワクチン接種状況に応じて,参加者間のピークウイルス量ウイルス増加速度(viral growth rateウイルス減少速度(viral decline rateの違いを検出することであった.

Findings

デルタ変異に曝露した家庭内接触者におけるSARは,完全ワクチン接種者では25%95%CI 18-33)であったのに対し,ワクチン未接種者では38%24-53)であった完全ワクチン接種した家庭内接触者における2回目ワクチン接種から試験参加までの時間(中央値)は,感染者(中央値101[IQR 74-120])の方が非感染者(64[32-97], p= 0.001)よりも長かった完全ワクチン接種指標症例に曝露した家庭内接触者におけるSARは,ワクチン未接種指標症例に曝露した家庭内接触者と同程度であった(ワクチン接種者では25%[95%CI 15-35] vs ワクチン未接種者では23%[15-31].完全ワクチン接種家庭内接触者31人のうち12人(39%)は,疫学的にリンクした完全ワクチン接種指標症例からの感染であり,さらに指標症例と接触者の3組のゲノムおよびウイルス学的解析により確認された.ピークウイルス量は,ワクチン接種状況や変異型によって差はなかったが,年齢とともにわずかに増加した(10歳〜50歳までの間で, peak log10 viral load/mLの差は0.39[95%CI, 0.03-0.79]完全ワクチン接種デルタ変異感染者は,ワクチン未接種感染者(アルファ前[0.69],アルファ[0.82],デルタ[0.79])に比べて,ウイルス量の平均減少速度が速かった1日あたり0.95 log10 copies/mL)(事後確率> 0.84個人内では,ウイルス増加速度が速いほどピークウイルス量が多くcorrelation 0.42[95%CI 0.13-0.65]),ピークウイルス量の低下が遅い(−0.44[-0.67-0.18])という相関関係が見られた

 

Figure 2: Virological, epidemiological, and genomic evidence for transmission of the SARS-CoV-2 delta variant (B.1.617.2) in households.

(A) Genomic analysis of the four households with lineage-defining mutations for delta18 and additional mutations within ORFs displayed to give insight into whether strains from individuals within the household are closely related. Lineages AY.4 and AY.9 are sub-lineages of delta. (B) Viral trajectories and vaccination status of the four index cases infected with the delta variant for whom infection was detected in their epidemiologically linked household contacts. All individuals had non-severe disease. Each plot shows an index case and their household contacts. Undetectable viral load measurements are plotted at the limit of detection (101·49). C=contact. I=index case. FV=fully vaccinated. ORF=open reading frame. PV=partially vaccinated. U=unvaccinated.

 

 

 

Interpretation

ワクチン接種はデルタ変異感染リスクを減少し,ウイルスのクリアランスを促進する.それにもかかわらず,完全ワクチン接種感染者は,ワクチン未接種感染者と同様のピークウイルス量を示し完全ワクチン接種接触者を含め,家庭内で効率的に感染を伝播することができる.感染早期における宿主−ウイルス相互作用が,ウイルスの全軌跡を形成する可能性がある.

 

BNT162b2ワクチンおよびブースター接種後のSARS-CoV-2デルタ変異のブレイクスルー感染のウイルス量】

Levine-Tiefenbrun, M., Yelin, I., Alapi, H. et al. Viral loads of Delta-variant SARS-CoV-2 breakthrough infections after vaccination and booster with BNT162b2. Nat Med (2021). https://doi.org/10.1038/s41591-021-01575-4.

Abstract

BNT162b2ワクチンの疾患防止およびブレイクスルー感染(BTI)のウイルス量減少における有効性は,SARS-CoV-2のデルタ変異の増加と同時に低下している.しかし,ウイルス量を減少させるワクチン有効性の低下は,デルタに固有のものなのか,それともワクチン接種からの時間に依存するものなのかは明らかではない.今回,イスラエルにおけるデルタ変異を主としたパンデミック波の間の16,000人を超える感染者のウイルス量を解析した結果,最近完全ワクチン接種した人のBTIsでは,ワクチン未接種者のBTIsに比べてウイルス量が低いことがわかったしかし,この効果はワクチン接種後2ヶ月から低下し始め,最終的にはワクチン接種後6ヶ月以降は消失する注目すべきことに,我々はBTIのウイルス量を減少させるBNT162b2の効果が,ブースター接種後に回復することを発見した.これらの結果から,BNT162b2はデルタ変異であってもBTIsの感染性を低下させる可能性があり,この防御効果は時間とともに低下するが,3回目のブースターワクチン接種で,少なくとも一時的には,回復することが示唆された.

Table 1: Study population.

これらすべての感染者(n= 16,553)を対象に,我々は,感染前の異なる時間区間(time bins)でのワクチン接種,そしてブースター接種を考慮するとともに,性別,年齢,暦日を調整し,3種類のSARS-CoV-2遺伝子それぞれのCt値の多変量線形回帰モデルを構築した.RdRp遺伝子に注目すると,ワクチン接種者と未接種者の回帰係数(両群間のCtの差を表す)は,2回目接種後BTI 730日で4.695%CI, 2.2-6.9)で始まったが,経時的に減少し,約2ヶ月後には0.695%CI, 0.05-1.12)となり(P= 0.00005, Methods: ‘Change in Ct over time’),そして接種後6ヶ月以上経過した感染では有意でない値にまで消失した接種後34日までのデータを解析したところ,この低下はブースターショット後に逆転し,Ct2.495%CI, 2.0-2.9)増加したことがわかったCtの差が1単位は,サンプルあたりのウイルス粒子の数が約2倍と同等であることを考えると,このCtの増加はウイルス量の5倍を超える減少に相当するMethods: ‘Linear regression’; Fig. 1a).また,他の2つの遺伝子,NEについても同様のCtの変化が見られた(Extended Data Fig.1).このモデルでは性別と年齢を調整しているが,national rollout guidelinesにより,ブースター群の平均年齢が2回接種群よりも高かった(58.6 vs 42.0歳)ことに着目し,>50歳と<50歳に分けて多変量線形回帰解析を繰り返したところ,同様の結果が得られた(Extended Data Fig. 2).さらに、2回目接種またはブースター接種から7日後には完全な防御が得られない可能性があるため16),これらの投与から14日後からの時間軸を考慮して解析を繰り返したところ,同様の関連性が認められた(Extended Data Fig. 3).また,結果において重症症例の可能性のある影響を避けるため,入院患者を除外して解析したところ,同様の結果が得られた(Extended Data Fig. 4).最後に我々は,今回の急増では,ワクチン接種後最初の2ヶ月以内の患者はごく一部であるため,全体として全集団を対象とした場合,ワクチン接種群と未接種群の間のウイルス量の差は非常に小さい(0.22[95%CI, 0.02-0.42]; Fig. 1b)ことを指摘する

Fig. 1: Association of infection Ct with two-dose vaccination and with the booster.

a, Ct regression coefficients, indicating an infection Ct relative to unvaccinated control group (dashed line), show an initial increase in Ct in the first 2 months after the second vaccination dose, which then gradually diminishes, ultimately vanishing for infections occurring 6 months or longer after vaccination. Increased Ct is restored after the booster (right bar). Coefficients were obtained by multivariate linear regression analysis, adjusting for age and sex (Methods; n=16,553). b, Same model as in a but without binning post-vaccination times. Because most of the vaccinated population during the current surge are more than 2 months after their second vaccine shot (Table 1), at the whole population level the average effect of the vaccine on Ct is negligible. Error bars represent one standard error. *P < 0.05, **P < 0.01, ***P < 0.001; all P values are two sided. Data are shown for Ct of the RdRp gene; for genes N and E, see Extended Data Fig. 1a, b. NS, not significant.

 

 

Fig. 1

我々の結果は,本ワクチンは,デルタBTIsのウイルス量を最初に10倍(95%CI, 4-30)の大きさで減少させる効果があり,デルタ以前の変異ウイルスに対する最初の有効性と一致していることを示す4)5)しかし,このウイルス量減少の有効性は接種後の時間経過とともに低下し,接種後3ヶ月で有意に減少し,約6ヶ月後には実質的に消失している.ワクチン接種集団の大部分が接種後最初の2ヶ月を過ぎた頃にデルタ変異が出現したため,デルタ変異のウイルス量に対する集団全体の平均的なワクチンの効果はごくわずかであり,デルタ変異に感染したワクチン接種者と未接種者の間でCtに差がないという報告と一致する14)15)また,デルタ変異が優勢な急増の際にも,ブースターショットを接種するとウイルス量が再び減少することから,ワクチンによる伝播性緩和が回復したことが示唆された.以上の結果から,デルタ変異BTIsのウイルス量を減少させる最初のワクチン有効性は,デルタ変異の急増前に観察された効果と同様であるが,この有効性はワクチン接種後の時間経過とともに低下し,その後3回目のブースター接種で回復することが示唆され,感染に対する免疫の減弱と3回目接種によるブーストと一致している.

Limitation: @ウイルス量は感染性の一般的な指標であるが,PCRが陽性であっても必ずしもviable virusが存在するとは限らず,ウイルス量と感染性の相関関係は十分に確立されていない.A最近の研究では,ワクチン接種者は,ワクチンを接種していないデルタ変異感染者に比べて,ウイルス量の減少が早いことが示唆されており14)15),発症してからかなり時間が経過した後に採取されたサンプルでは,Ctに差異が生じる可能性がある.したがって,ワクチン接種者と未接種者のCtの差は,これら2群間の最初のウイルス量の差だけでなく,群間のウイルス量の減衰の差を反映している可能性もある.しかし,今回は,各患者の最初の陽性反応のみを対象とすることで,この影響を最小限に抑えた(検査は,通常,感染後56日以内,すなわち発症12日後に実施される16)18)19)).B今回のデータセットに含まれる感染のうち,どれだけが症候性または無症候性であったかは不明であり,ワクチン未接種者における症候性感染の割合はもっと高い可能性がある.Cワクチン接種者と未接種者の間に見られる社会行動上の違い(potential socio-behavioral differences)も,データセットの構成に影響を与える可能性がある.

BTIのウイルス量を減少させるというブースターの新たな効果がどのくらい続くのか,また,同じ変異ウイルスや今後発生する他の変異ウイルスに対して,将来的に追加のブースター接種が必要になるのかどうかは,まだ明らかではない.さらに,重症感染に対するワクチン有効性は,ウイルス量と相関しているが20),異なるtime scalesで減弱し,ブースター接種によって異なる影響を受ける可能性がある.しかし,少なくとも短期的には,ブースターワクチンを接種したデルタBTIのウイルス量が少ないことは,感染性が低いことを示しており,ソーシャルディスタンスやマスクなどの他の手段と合わせて、パンデミックの拡大を抑制することができるだろう.

 

 

References

4) Levine-Tiefenbrun, M. et al. Initial report of decreased SARS-CoV-2 viral load after inoculation with the BNT162b2 vaccine. Nat. Med. 27, 790–792 (2021).

5) Petter, E. et al. Initial real world evidence for lower viral load of individuals who have been vaccinated by BNT162b2. Preprint at

https://www.medrxiv.org/content/10.1101/2021.02.08.21251329v1 (2021).

14) Chia, P. Y. et al. Virological and serological kinetics of SARS-CoV-2 Delta variant vaccine-breakthrough infections: a multi-center cohort study. Preprint at

https://www.medrxiv.org/content/10.1101/2021.07.28.21261295v1 (2021).

15) Kissler, S. M. et al. Viral dynamics of SARS-CoV-2 variants in vaccinated and unvaccinated individuals. Preprint at

https://www.medrxiv.org/content/10.1101/2021.02.16.21251535v3 (2021).

16) Bar-On, Y. M. et al. Protection of BNT162b2 vaccine booster against Covid-19 in Israel. N. Engl. J. Med. 385, 1393–1400 (2021).

18) Levine-Tiefenbrun, M. et al. Association of COVID-19 RT–qPCR test false-negative rate with patient age, sex and time since diagnosis. Preprint at

https://www.medrxiv.org/content/10.1101/2020.10.30.20222935v2 (2020).

19) Xin, H. et al. The incubation period distribution of coronavirus disease 2019 (COVID-19): a systematic review and meta-analysis. Clin. Infect. Dis.

https://doi.org/10.1093/cid/ciab501 (2021).

20) Fajnzylber, J. et al. SARS-CoV-2 viral load is associated with increased disease severity and mortality. Nat. Commun. 11, 5493 (2020).