COVID-19関連追加(2021115日)吸入シクレソニドのRCTその2

★当院HP関連ファイル:

2021412日(STOIC

2021811日(PRINCIPLE

2021915日(シクレソニドの無作為化,二重盲検,プラセボ対照試験[米国,preprint], ref. 17

 

【成人covid-19外来患者治療のための吸入および経鼻シクレソニド: CONTAINII相無作為化比較試験】

Ezer N, et al. Inhaled and intranasal ciclesonide for the treatment of covid-19 in adult outpatients: CONTAIN phase II randomised controlled trial. BMJ 2021; 375

https://doi.org/10.1136/bmj-2021-068060 (Published 02 November 2021)

Abstract

Objective

covid-19外来患者の呼吸器症状を軽減する上で,吸入および経鼻シクレソニドがプラセボよりも優れているかどうかを調べる.

Design

無作為化,二重盲検,プラセボ対照試験.

Setting

カナダの3州(Quebec, Ontario, and British Columbia).

Participants

ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)で確定したcovid-19で,発熱,咳,呼吸困難を呈した18歳以上の成人203人.

Intervention

参加者は,14日間の吸入シクレソニド(600μg12回)および経鼻シクレソニド(200μg12回),または定量吸入薬(MDI: metered dose inhaler)および経鼻生理食塩水プラセボのいずれかに無作為に割り付けられた.

Main outcome measures

主要アウトカムは,7日目の症状消失であった.解析は,修正intention-to-treat集団(試験薬を少なくとも1回服用し,1回の追跡調査を完了した参加者)を対象とし,性別による層別無作為化を調整して行った.

Results

修正intention-to-treat集団には203人の参加者が含まれた: 105人がシクレソニドに,98人がプラセボに無作為に割り付けられた(脱落者2人,追跡調査不能1人を除く).年齢の中央値は35歳(IQR 27-47歳)で,54%が女性だった.7日目までに症状が消失した参加者の割合は,介入群(42/105, 40%)と対照群(34/98, 35%)の間に有意な差はなかった; 絶対調整済みリスク差は5.5%95%CI 7.8%-18.8%)であった.この結果は,主に合併症のない若年層を対象とした研究集団に限定されるかもしれない.また,本試験は早期に中止されたため,もしかすると十分な検出力が得られなかったかもしれない.

Conclusion

プラセボと比較して,吸入および経鼻シクレソニドの併用は,顕著な呼吸器症状を呈する,生来健康のcovid-19若年成人患者において,症状の消失に統計的に有意な増加を示さなかった.covid-19の治療における吸入および経鼻コルチコステロイドの有益性を判断するには証拠が不十分であるため,さらなる研究が必要である.

 

Main:

Introduction

自宅でできる安全で安価な治療法で,症状の負担や入院を減らすことができる治療法が早急に求められている.20202月,米国食品医薬品局が承認した2069品目を含む5406品目の化合物について,感染Vero細胞におけるウイルススパイクタンパク質発現を測定することで,中東呼吸器症候群(MERS)関連コロナウイルスに対する抗体を調べた5).その結果,MERS関連コロナウイルスに対する抗体に対して>70%の活性を示した12品目の化合物が選択された5).シクレソニドは,本来の抗炎症作用に加えて,SARS-CoV-2に対する活性を特異的にスクリーニングしたところ,強力な抗ウイルス作用を示した6)in vitroのデータとシクレソニドの既知の抗炎症作用に基づいて,我々は,covid-19の経過の早期にシクレソニドを投与することで,顕著な呼吸器症状を呈する成人の症状負担を軽減できるのではないかと考えた.

Methods

Study design:

我々は,主に呼吸器症状を呈する成人のcovid-19患者の症状の消失を評価するために,無作為化二重盲検プラセボ対照試験(Inhaled Ciclesonide for the Treatment of COVID-19 in Nonhospitalized AdultsCONTAIN))を実施した.参加者は,シクレソニド吸入・経鼻群と,プラセボ吸入・経鼻群に,1:1で無作為に割り付けられた.治験責任者,参加者,統計担当者は,治療の割り付けについて盲検化された.ケベック州では,主にソーシャルメディアと,McGill University Health CentreにおけるSARS-Cov-2陽性者への電話連絡で参加者を募集した.オンタリオ州では,Sunnybrook Health Sciences Centreのバーチャルcovid-19遠隔医療クリニックで参加者を募集した.ブリティッシュコロンビア州では,1つの保健局がSARS-CoV-2陽性者の地域リストを提供し,電話連絡で参加者を募集した.参加者は,ケベック州全域,オンタリオ州ではSunnybrook Health Science Centreのサービスエリア,ブリティッシュコロンビア州ではVancouver Coastal Health regionから募集された.

参加者は,Research Electronic Data Capture systemを使用したsecure internet based surveyで,セルフスクリーニングを行い,適格であれば登録した.参加者は,オンラインで同意書を読み,一連の理解度を問う質問に答えた後,電子署名を行った.調査票は,登録日,0日目(開始前の治療を受け取った日),1日目,3日目,7日目,10日目,14日目に記入された.29日目には,より長期的なアウトカムを把握するための追調査が行われました(別途報告).参加者がアンケートに回答しなかった場合は,リマインダーメールが送られ,またアウトカムを把握するために電話連絡された.参加者全員が,電子メールや電話に応答しない場合の緊急連絡先を提供した.緊急連絡先は,電子メールや電話に応答しなかったことが病気や死亡に起因するものかどうかを判断するために使用された(最大10回).

我々は,疾患過程の早期に治療を行うことが最も効果的であるという仮説を立てた.そのため,PCR陽性となり,発症してから5日以内に参加者を募集することを目標とした

Protocol changes and rationale:

covid-19パンデミックが進行していることと,試験責任医師が入手できる新しい情報の迅速性ため,我々はプロトコルを変更し,試験を早期に中止した.プロトコルの変更および試験の中止に関する詳細は,CONSERVECONSORT and SPIRIT Extension for RCTs Revised in Extenuating Circumstances)の拡張版であるConsolidated Standards of Reporting Trialsのチェックリストに従って報告されている.プロトコルの変更は,臨床試験の修正としてHealth Canadaの承認を得た.

参加者が登録される前の20209月に,我々のグループが参加した同様の外来患者を対象としたcovid-19試験の結果に基づいてサンプルサイズを更新した.その試験では,7日目までに約65%症状の消失が示され,7日目までに呼吸器症状が消失した参加者の割合を主要アウトカムとして定義された.

202010月には,一部の地域で即日配送が可能になったため,対象基準を拡大し,登録と同日に試験薬を届けられる場合に限り,発症してからの期間を5日から6日以内に延長した当初のプロトコルでは,発症してから5日以内の人を対象としていたが,試験薬は翌日配送を許可したことで,実質的には発症して6日間の人も含んでいた.この試験は,カナダでのワクチン接種キャンペーンが大きく展開される前に実施された.2021128日,試験担当者は,ワクチン接種を受けた参加者は、症状の負担が軽減され,症状消失が早いとの仮説に基づき,試験から除外することを決定した.ワクチン接種を受けた参加者は,本試験には参加しなかった.

20215月末時点で,カナダではワクチン接種率が急速に上昇し,症例数が顕著に減少していた.6月の最初の2週間で,登録者数は,ピーク時には毎週22人だったのが,全国的に毎週2人未満と大幅に減少した.215人の参加者が登録され(修正intention-to-treat集団では203人),盲検化を解除せずにデータ安全性監視委員会とのミーティングが行われた.その際,7日目の全体的な症状消失率が,予測されていた65%に比べて約37%であったことが指摘された.これは,登録時に呼吸器症状のある参加者が多かったことが関係していると考えられた.また,STOIC試験(Inhaled Budesonide in the Treatment of Early COVID-19)が報告され,ブデソニドが地方の外来診療ガイドラインに掲載され始めていることも指摘された.夏になると新たに診断された患者が減少し,ワクチン接種率がさらに上昇すると予測されることから,意図したサンプルサイズを確保できない,あるいは意図したeffect sizeを満たすために必要なより大きなサンプルサイズを確保できないと判断したデータ安全性監視委員会の許可を得て,登録者数を満たすことができないと判断し,試験を早期に終了した

Participants:

我々が対象としたのは,18歳以上の成人で,登録時に発熱,咳(湿性または乾性),息切れ(同義として呼吸困難,胸の詰まり,あるいは胸の締め付けを含む)の症状のうち少なくとも1つを呈していたPCRで確認された18歳以上のcovid-19成人患者である.入院中,非呼吸器症状(鼻づまり,筋痛,胃腸症状など)のみ,すでに吸入ステロイドを処方されている,またはその他の除外基準に該当する患者は除外した(補足資料および試験プロトコルを参照).参加者全員がオンラインで同意した.

Randomisation and masking:

無作為化は,カナダのモントリオールにあるMcGill University Health Centreresearch pharmacyで集中的に行われた.試験統計担当者は,2468の異なるサイズのブロックを用いて,性別で層別した並べ替えブロック無作為化シーケンス(permuted block randomisation sequence)を作成した.盲検化されていない研究助手が参加者を順次割り当てた.割り付けは試験責任医師と参加者には隠蔽された; 薬局と中央研究助手のみが治療法の割り付けを知ることができた.

Procedures:

吸入および経鼻シクレソニドは薬のciclesonideは市販の宅配便で一晩かけて参加者に発送・分配された: ただし,発症してから6日目に登録された参加者は,同日中に製品を受け取った.シクレソニド吸入製剤の喘息に対する推奨用量は100800µg/日であり7),アレルギー性鼻炎に対しては200µg/日の経鼻製剤が推奨されている.covid-19の治療におけるシクレソニドの具体的な投与量は不明であり,我々はシクレソニド経鼻剤の通常投与量(200µg/日)に加えて,(吸入剤の)1日の総投与量を多くして(1600μg12回)14日間投与した.対照群には,シクレソニドと同様の外観を持つ,生理食塩水のプラセボ定量噴霧器と経鼻の生理食塩水を同じ投与スケジュールで投与した.

Outcomes:

参加者は,登録後14日間のアウトカムデータを自己申告した.これには,covid-19に関連する呼吸器症状の改善,その他のcovid-19の症状、試験介入へのアドヒアランス,有害事象,入院などが含まれる.試験実施の詳細は,補足ファイルのプロトコルおよび統計解析計画に記載されている.

我々は,主要アウトカム治療開始7日目に自己申告による発熱およびすべての呼吸器症状の消失と規定した.呼吸器症状には,咳(湿性または乾性)または呼吸困難(同義としての,息切れ,胸の詰まりchest congestion,胸部圧迫感chest tightnessなどの表現を含む)が含まれた.

主要副次アウトカムには,covid-19による入院または死亡が含まれた.その他の副次アウトカムには,14日目の主要アウトカムの評価,7日目および14日目までの総合的な気分の改善(自己申告による「良い」または「とても良い」),7日目および14日目にベースライン時と同等の呼吸困難を報告したサブセットにおける呼吸困難の消失(息切れ,胸部圧迫感,胸の詰まりがないことと定義)が含まれる.ベースライン時に咳があった患者においては7日目および14日目に咳の改善(症状がない場合の0から重度の症状の場合の10までの範囲の視覚的アナログスケールで,2ポイントの減少または0への減少と定義),PROMISpatient reported outcomes measurement information system: 患者報告アウトカム測定情報システム)の呼吸困難スコア8)で測定された息切れの改善,PROMIS睡眠障害スコア4a 9)で測定される睡眠の改善,PROMIS emotional distress anxiety score 7aPROMIS情緒的苦痛不安スコア7a 10)で測定された不安の改善(Tスコアで3ポイント以上の変化があった場合に意味のある改善と定義)10),が含まれる.

各調査では,自覚的な副作用に関する自由記述の質問(テーマ別に分類)と,カンジダ症,喉の違和感,声の変化,喘鳴,嘔気,頭痛の存在に関する具体的な質問を組み合わせて副作用を収集した.また,参加者は,covid-19症状が増悪する,あるいは試験薬による副作用の可能性が生じた場合には,試験責任医師にメールまたは電話で連絡することができ,これらの事象は記録された.

Statistical analysis:

同様の集団を対象に実施され,患者報告アウトカムが用いられているヒドロキシクロロキンを用いた過去のcovid-19治療試験11)に基づき,我々は治療開始7日目までに参加者の65%の症状が消失すると予想した.症状が消失する割合を80%にするための絶対リスクを15%,両側α0.05,検出力を80%とするとするフィッシャー正確法を用い,最大15%の脱落率を考慮して,318人(各群159人)の参加者を登録する必要があると推定した.

Interim analyses:

参加者の50%が登録された後,独立したデータ安全性監視委員会がデータを検討した.中止基準は提示されず,試験は継続された.20215月末にデータ安全性監視委員会の2回目の会合が開かれ,試験の早期中止が決定した.

Analysis:

TCLABは介入群を伏せてデータを解析した.我々は,性別による層別化で調整された,すべての割合のリスク差を算出するために,リンク関数(identity link)を用いた二項回帰を使用した12).すべての解析は,第一種過誤を犯す確率を両側α0.05とした,修正intention-to-treatの原則に従い,STATAソフトウェアバージョン17を用いて実施された.

すべてのリスクとリスク差は,パーセントで示した.参加者は,出荷された試験薬を受け取り,少なくとも1回服用し,少なくとも1回の追跡調査を完了した場合に,修正intention-to-treat解析に含まれた.多重比較の問題を避けるため,P値は主要アウトカムについてのみ示した.調査データが欠損している参加者については,最終日の調査回答を繰り上げた.また,試験プロトコルに従わなかった参加者を除外したプロトコルごとの解析(定義については補足ファイルを参照).事前規定したサブグループには,年齢(>40歳以上および< 40歳),性別,治療開始日(1日目, 2日目, 3日目 vs 4日目, 5日目, 6日目),喫煙状況,民族(白人 vs その他),ベースラインでの発熱,咳,呼吸困難の症状の数(1, 2, 3)アルファ変異出現(20213月)前後を含めた.

Patient and public involvement:

この研究には,patients or members of the publicは関与していない.covid-19パンデミックと試験開始の迅速性を考慮して,試験実施中はmembers of the publicが関与することはなかった.本研究では,米国国立衛生研究所(NIH)の資金提供を受けて患者と一緒に発展させたvalidated PROMIS patient reported outcome scoresを使用した.

Results

本試験への登録は,ケベック州では2020915日,オンタリオ州では202129日,ブリティッシュコロンビア州では2021322日に開始された.最後の参加者は202168日に募集された.

全体で215人の参加者が無作為化され,修正intention-to-treat集団には,呼吸器症状または発熱を有する成人203人が含まれた.参加者は,シクレソニド吸入・経鼻群(n= 105, 脱落2, 追跡調査不能1人を除く)と,生理食塩水吸入・経鼻群(n= 98, 脱落3, 追跡調査不能6人を除く)のいずれかに割り付けられた(fig. 1参加者の年齢の中央値は35歳(IQR 27-47歳)で,54%n= 109)が女性であったTable 1は,参加者の個人的および臨床的特徴を示している.合計20%n= 41)が慢性的な健康状態(chronic health condition)を報告しており,喫煙者はわずか7%n= 15)であった.症状としては,咳が最も多く(86%, n= 175),次いで呼吸困難,息切れ,胸部圧迫感,胸の詰まり(50%, n= 101),発熱(46%, n= 93)の順であった.

 

 

Fig. 1: Flow of participants through study.

 

 

Table 1:

発熱と呼吸器症状は,7日目までに37%n= 76)の参加者で消失した.7日目までに症状が消失した割合は,介入群(42/105, 40%)と対照群(34/98, 35%)の間に有意な差はなかったTable 2.調整済みリスク差は5.5%95%CI 7.8%-18.8%)であった.プロトコルごとの解析も同等で,調整済みリスク差は3.4%(−10.4%-17.1%)であった.

Table 2:

14日目に症状が消失した参加者の割合も両群間で有意差はなく,シクレソニド群が66%69/105)であったのに対し,プラセボ群は58%57/98)であり,調整済みリスク差は7.5%95%CI 5.9%-20.8%)であったシクレソニド群では6人,プラセボ群では3人が入院した死亡例はなかった補足ファイルには,サブグループ解析に加えて,PROMIS睡眠,不安,および呼吸困難質問票の結果が示されているが,これらの質問票では群間の統計的に有意な差は検出されなかった

全体的なアドヒアランスは高く,シクレソニド群の94%99/105人),プラセボ群の93%91/98人)が,ほとんどの調査日に,あるいは少なくとも症状が消失するまで試験薬を服用した.副作用は,シクレソニド群の22%23/105),プラセボ群の15%15/98)に報告された(Table 3最も多く報告された副作用は頭痛と嘔気で,これらは治療群でより多く見られた.全体的に,盲検化はよく保たれていた(補足ファイル参照).

 

 

Table 3:

 

Discussion

covid-19の早期治療を目的とした経鼻および吸入シクレソニドの無作為化二重盲検プラセボ対照試験において,我々は7日目の呼吸器症状の統計的に有意な改善を検出することができなかった本試験の参加者は若くて健康であり,症候性呼吸器疾患の負担が大きかった.ほとんど(most)が咳をしており,多く(many)が息切れ,胸の詰まり,胸の締め付けを自覚していた.試験薬のアドヒアランスは良好で,盲検化も十分に行われた.ほとんどの場合,治療は疾患経過の早期に開始され(登録までの期間の中央値は発症後3),高用量の吸入および経鼻シクレソニドが投与されたにもかかわらず,介入群はプラセボ群と比較して,7日目または14日目までに症状消失を示す可能性は高くなかった

Comparison with other studies:

吸入コルチコステロイドの無作為化比較試験は他に2件行われている.STOICSteroids in COVID-19)試験はオープンラベル試験で,咳があり,発熱または嗅覚消失,あるいはその両方を伴う成人146人を対象に,吸入ブデソニド群と通常治療群を比較した13).主要アウトカムは,緊急治療のための来院(visits for urgent care),救急外来の受診,入院の複合であった.修正intention-to-treat解析(n= 139)では,主要アウトカムが発生したのは,通常治療群では11人(15%),ブデソニド群では2人(3%)であった(割合の差0.12, 95%CI 0.03-0.21; P= 0.009).また,臨床的回復は,ブデソニド群が通常治療群よりも1日短かった(中央値7[95%CI 6-9] vs 8[7-11]; log rank test P= 0.007).しかし,プラセボを使用しなかったことと,試験担当看護師の盲検化が行われなかったことにより,通常治療群における治療を求める行動にバイアスが生じた可能性がある.この点は,呼吸器疾患において吸入薬に実質的なプラセボ効果があることが示されているため,特に重要である14).入院ではなく,緊急治療のための受診が含まれていることが,このバイアスを悪化させていたかもしれない.

2番目のオープンラベル試験であるPlatform Randomised Trial of Treatments in the Community for Epidemic and Pandemic IllnessesPRINCIPLE)試験15)でも,吸入ブデソニドの効果の可能性が示唆されており,自己申告による最初の回復までの時間が2.94日(95%bayesian credible interval 1.19-5.12日)(ブデソニド群11.8[10.0-14.1] vs 通常治療群14.7[12.3-18.0]; ハザード比 1.21[95%BCI 1.08-1.36])であった.観察された症状消失効果は,合併症を持つ5065歳の参加者と,65歳を超えた参加者で同様に明らかだった.我々の今回の研究では,症状消失に対して統計的に有意な効果を検出できなかったが,我々は,主に若年で,健康な参加者を登録していた.STOIC試験と同様に,PRINCIPLE試験の重大な限界は,プラセボ対照がないことであり,吸入薬と通常治療を比較することで,STOIC試験と同様にプラセボ効果や医療を求める行動(healthcare seeking behaviour)にバイアスがかかる可能性があることである

Strengths and limitations of this study:

我々の研究にはいくつかの強みがある.本研究では,プラセボ対照とすることでバイアスを最小限に抑え,ウイルスの早期複製部位である鼻腔上皮に直接薬剤を運ぶ経鼻副腎皮質ステロイドを補助的に使用した; 我々は,副腎皮質ステロイドとしては,in vitroで抗ウイルス効果があり6),抗炎症作用も知られているシクレソニドを選択した; 不十分な曝露による試験結果の偽陰性の可能性を最小限にするために高用量で試験を行ったさらに,吸入ステロイドの効果が最も期待できる重要な呼吸器症状を持つ参加者を募集したさらに,参加者は疾患経過の早期(平均3日以内)で登録されており,これは医療機関を受診するまでの遅れを考慮すると,現実の環境で達成可能なものに近いと思われる

これらの強みにもかかわらず,本研究にはいくつかの限界がある.カナダでは,ワクチン接種の増加に伴い,covid-19症例が急速に減少したため,予定していたサンプルサイズを集めることができなかった.しかし,効果の違いを認めたSTOIC試験よりも多くの参加者を募集した.また,高齢の高リスク者を対象にして研究集団が不充実であったため,このグループにおける症状の早期回復や臨床的悪化の予防という効果の可能性を排除することはできない.しかし本研究における入院率は,他の外来患者を対象とした試験や11)や,高リスクの参加者を対象とした試験16)と同様であった.

我々は,登録後7日目に最大65%の症状消失が示唆された過去のデータに基づき11),この7日目に主要アウトカムを検討することにした.登録後7日目までの全体的な症状消失は予想よりも低かったものの,14日目の副次アウトカムには顕著な差は見られなかった.この試験では,ワクチン接種を受けた参加者が除外されていることに留意する必要がある.ワクチンを接種することで,我々の主要および副次アウトカムである,症状の負担や症状持続期間,重篤な合併症のリスクが減少することが想定されている.吸入コルチコステロイドがワクチン接種者の症状を軽減できるかどうかはまだ確定していないが,我々はいかなる観察効果もワクチン未接種者に比べて小さいと予想している

我々の試験は早期に中止されたため,早期の症状消失に対するシクレソニドの小さな有益性を示すには力不足だったかもしれない最近,シクレソニドの別のプラセボ対照試験(400人)がプレプリントとして発表されたが,こちらも症状消失に対するいかなる効果も示すことはできなかった17)我々の研究では,絶対リスクの減少は5.5%であったが,信頼区間は広かった.比較的安価で,一般的に忍容性の高いこの治療法が,臨床的に有益であるかどうかは,メタアナリシスによってさらに明らかになるかもしれない.

Conclusion

吸入コルチコステロイドは,高齢の高リスクcovid-19成人患者の症状消失を改善する可能性があり,若年健常集団は有益性を得る可能性が低いかもしれないIn vitroデータでは,シクレソニドがSARS-CoV-2に対して抗ウイルス活性を有することが示唆されている.しかしながら,今回のプラセボ対照無作為化試験では,顕著な呼吸器症状を呈する健康な若年参加者において,症状の統計学的に有意な改善は認められなかった.今回の結果を受けて,我々は今後の研究では,ベースラインで息切れを訴えている患者を対象とし,14日目までのアウトカムを検討することを提案する.また,オープンラベル試験は避けるべきであり,プラセボ対照試験を追加して,異なるクラスの吸入コルチコステロイドの効果を検討すべきである.

 

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