COVID-19関連追加(2021118日)ミュー変異ウイルスについて

SARS-CoV-2ミュー変異ウイルスに対する回復期およびワクチン血清による中和】

Uriu K, …, Sato K. Neutralization of the SARS-CoV-2 Mu Variant by Convalescent and Vaccine Serum. N Engl J Med. Nov 3, 2021. https://doi.org/10.1056/NEJMc2114706.

 

現在のパンデミックにおいて,コロナウイルス感染症2019Covid-19)の原因ウイルスである重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2SARS-CoV-2)がかなり多様化している.20219月の時点で,世界保健機関は4つの懸念される変異ウイルス(VOCs)を定義している(アルファ[B.1.1.7],ベータ[B.1.351],ガンマ[P.1],デルタ[B.1 .617.2 and AY]),さらに5つの注目すべき変異ウイルス(VOIs)(イータ[B.1.525],イオタ[B.1.526],カッパ[B.1.617.1],ラムダ[C.37],そしてミュー[B.1.621])を定義した1)

ミューは,最近認識されたVOIである1)2021830日の時点で,ミュー変異ウイルスは39ヶ国で検出されている(Table S1 in the Supplementary Appendix, available with the full text of this letter at NEJM.orgミュー伝播のエピセンターはコロンビアで,2021111日に初めてこの変異ウイルスが分離された(Figure 1A and Table S2コロンビアでは,20213月〜7月にかけて,Covid-19症例が大急増したこの急増の初期段階ではガンマ変異ウイルスが優勢であったが,5月にはミュー変異ウイルスが他のすべての変異ウイルスを上回り,それ以降コロンビアでの流行を牽引している(Figure 1A

新たに出現したSARS-CoV-2変異ウイルスは,伝播率や病原性,免疫応答への耐性が高まる可能性があるため,注意深く監視する必要がある.Covid-19回復者やワクチン接種者から得られた血清に対する,VOCsVOIsの耐性は,ウイルススパイクタンパク質の様々な変異に起因すると考えられる2).ミュー変異ウイルスの大部分は,N末端ドメイン(NTD)のT95IおよびYY144-145TSN変異; 受容体結合ドメイン(RBD)のR346KE484K,およびN501Y変異; スパイクタンパク質のその他の領域のD614GP681H,およびD950N変異を有している(Tables S3 and S4).これらの変異の中には,VOCsによく見られるものもある(Table S5).これらの変異のうち,E484K(ベータおよびガンマ変異に共通)は,SARS-CoV-2自然感染やワクチン接種によって誘導される抗体に対する感受性を最も低下させることがわかっている3)4)

SARS-CoV-2感染やワクチン接種によって誘導される抗体に対するミュー変異ウイルスの感受性を評価するために,我々はミュー変異ウイルスのスパイクタンパク質,あるいはVOCsVOIsのスパイクタンパク質を保持した疑似ウイルスを作製した.パンデミック初期(20204月〜9月)に感染したCovid-19回復者13人の血清を用いてウイルス中和アッセイを行ったところ,ミュー変異ウイルスは,D614G変異を持つB.1系統のウイルス(親ウイルス)の10.6倍の中和抵抗性を示したFigure 1Bまた,BNT162b2ワクチンを接種した14人の血清を用いて測定したところ,ミュー変異ウイルスは親ウイルスと比べて9.1倍の中和抵抗性を示したFigure 1Cこれまで最も耐性が高いとされていたのはベータ変異ウイルスであったが3)4)ミュー変異ウイルスはベータ変異ウイルスに比べて,回復期血清による中和に対して2.0Figure 1B,ワクチン血清による中和に対して1.5Figure 1Cの耐性を示した.このように,ミュー変異ウイルスは,SARS-CoV-2自然感染やBNT162b2 mRNAワクチンによって誘発される抗体に対して顕著な抵抗性を示す.ブレイクスルー感染は,新たに出現したSARS-CoV-2変異ウイルスの大きな脅威であるため5),このVOIsのさらなる特性評価とモニタリングが必要であることが示唆される.

 

Figure 1: SARS-CoV-2 in Colombia and Characterization of the Mu Variant.

パネルAは,コロンビアにおける20211月〜8月までのCovid-19新規症例を示している.ミュー変異ウイルスは,2021111日にコロンビアで初めて分離された(Global Influenza Surveillance and Response System accession number, EPI_ISL_1220045).黒線は毎週の新規症例数を示し,色付き棒は,症例におけるSARS-CoV-2の各変異ウイルスの割合を示している.Table S2 in the Supplementary Appendixにまとめている.パネルBおよびCは,ウイルス中和アッセイの結果を示す.中和アッセイは,アルファ,ベータ,ガンマ,デルタ,イプシロン,ラムダ,ミュー変異ウイルスのSARS-CoV-2スパイクタンパク質を保有する擬似ウイルス,またはD614G変異を保有するB.1系統のウイルス(親ウイルス)を用いて行った.血清サンプルは,Covid-19回復者13人(パネルB)と,BNT162b2ワクチン接種者14人(パネルC)から採取した.各血清サンプルのアッセイは,50%中和価(50% neutralization titer)を決定するために3回実施した.各データポイントは個々のサンプル()を表し,各サンプルで得られた指示された疑似ウイルスに対する50%中和価を示す.棒グラフの高さおよび棒グラフ上の数字は幾何平均力価を示し,𝙸棒グラフは95%信頼区間を示す.括弧内の数字は,親ウイルスと比較した場合の中和抵抗性の平均的な差を示す.横の破線は検出限界を示す.血清サンプルの回復期ドナー(性別,年齢,疾患重症度,検査およびサンプリングの日付)およびワクチン接種ドナー(性別,年齢,2回目のワクチン接種およびサンプリングの日付)に関する生データおよび情報は,Tables S6 and S7 in the Supplementary Appendixにまとめた.

 

 

 

 

References

1) World Health Organization. Tracking SARS-CoV-2 variants. 2021

(https://www.who.int/en/activities/tracking-SARS-CoV-2-variants/.).

2) Harvey WT, Carabelli AM, Jackson B, et al. SARS-CoV-2 variants, spike mutations and immune escape. Nat Rev Microbiol 2021;19:409-424.

3) Collier DA, De Marco A, Ferreira IATM, et al. Sensitivity of SARS-CoV-2 B.1.1.7 to mRNA vaccine-elicited antibodies. Nature 2021;593:136-141.

4) Wang P, Nair MS, Liu L, et al. Antibody resistance of SARS-CoV-2 variants B.1.351 and B.1.1.7. Nature 2021;593:130-135.

5) Hacisuleyman E, Hale C, Saito Y, et al. Vaccine breakthrough infections with SARS-CoV-2 variants. N Engl J Med 2021;384:2212-2218.

 

Supplementary appendix