COVID-19関連追加(20211116日)

SARS-CoV-2感染の抗体依存性増強は,IgG受容体であるFcγRIIAおよびFcγRIIIAによって媒介されるが,マクロファージによる異常なサイトカイン産生には関与しない】

Maemura T, …, Kawaoka Y. Antibody-Dependent Enhancement of SARS-CoV-2 Infection Is Mediated by the IgG Receptors FcγRIIA and FcγRIIIA but Does Not Contribute to Aberrant Cytokine Production by Macrophages. mBio. 2021 Oct 26;12(5):e0198721. Epub 2021 Sep 28.

https://doi.org/10.1128/mBio.01987-21.

Abstract

COVID-19パンデミックでは,抗体の有害な影響が懸念されている.抗体依存性感染増強(ADE)は,SARS-CoV-2ウイルス再感染時の抗体応答だけでなく,COVID-19ワクチンに対する反応も含めて,最大の関心事の一つである.我々は本研究で,COVID-19回復期血漿とヒトFcγ受容体(FcγR)を発現させたBHK細胞を用いて,感染のADEを評価した.我々は,SARS-CoV-2に対して緩やかな感染のFcγRIIAおよびFcγRIIIA媒介性ADEを検出したSARS-CoV-2(そのvariantsを含む)を感染させた単球由来マクロファージでは,感染のADEが観察されたが,マクロファージでは炎症促進性サイトカイン/ケモカインの発現は上昇していなかった.このように,SARS-CoV-2感染は,感染のADEを誘発する抗体を産生するが,この抗体はマクロファージによる過剰なサイトカイン産生には寄与しない

IMPORTANCE

ウイルスは,主に細胞表面の特定の受容体を介して細胞に感染する.抗体依存性感染促進(ADE)は,ウイルスが免疫細胞に感染する際に,抗体やIgG受容体(FcγR)を介して行われる代替感染メカニズムである.デングウイルスやネココロナウイルスなど,いくつかのウイルスの病態にADEが関与していることから,ADEの正確なメカニズムとSARS-CoV-2の病態への寄与を評価することは重要である.本研究では,COVID-19患者の回復期血漿を用いて,FcγRIIAおよびFcγRIIIA2種類のFcγRsSARS-CoV-2感染のADEを媒介することを明らかにしたまたSARS-CoV-2とその最近のvariantsでは感染のADEが観察されたが,単球由来マクロファージにおける炎症促進性サイトカインの産生は増加しなかった.これらの結果から,SARS-CoV-2感染により,感染のADEを誘発する抗体が産生されるが,これらの抗体はSARS-CoV-2感染の間のマクロファージによるサイトカインの異常放出には関与していない可能性が示唆された.

 

 

INTRODUCTION>

コロナウイルス感染症2019COVID-19)の原因ウイルスである重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2SARS-CoV-2)は,世界中に急速に広がり,壊滅的なパンデミックを引き起こしている(1)20215月現在,世界中で166,220,000人を超える患者と3,445,000人を超える死亡者が出ている(2)SARS-CoV-2とそのvariantsは,人々の健康と世界経済を破壊し続けている.

パンデミック時には,感染および拡散のリスクを軽減するために,世界規模でのワクチン接種キャンペーンが不可欠である(3).現在までに,いくつかのワクチンが開発され,承認されている(4).しかし,ワクチンの安全性に関する最大の懸念事項の1つは,ウイルス感染の抗体依存性増強(ADE)と呼ばれる現象である(5).患者が回復期血漿やモノクローナル抗体で治療を受ける際にも,感染のADEADE of infection)を考慮する必要がある(5).また,SARS-CoV-2 variantsの出現により,再感染の危険性があるため,感染のADEの可能性も考えられる.

ADEは,ウイルスが細胞に感染する際の代替メカニズムの一つである(5-7).ウイルスと抗体(主に非中和抗体や交差反応抗体)の免疫複合体は,免疫細胞上のFcγ受容体(FcγRs)と呼ばれる受容体分子と結合して体内に取り込まれ,ウイルス侵入が促進される(5,7).マクロファージ/単球は,その表面にFcγRFcγRIAFcγRIIAFcγRIIIA)を発現していることから(7-9),マクロファージは感染のADEの主要な誘発因子と考えられている.さらに,様々なウイルス感染のADEに伴い,マクロファージを含む免疫細胞によって炎症亢進が引き起こされることが多い(10)

感染のADEは,デングウイルス,RSウイルス,インフルエンザウイルスのほか,コロナウイルスのSARS-CoV-1や中東呼吸器症候群コロナウイルス(MERS-CoV)など,さまざまなウイルスで起こる(5, 6)SARS-CoV-2感染が感染のADEを引き起こすかどうかを調べる研究がいくつか行われており(11, 12)SARS-CoV-2感染のADEは,回復期血漿療法の研究で観察された(12).この研究では,FcγRIIASARS-CoV-2感染症のADEを媒介することが報告されているが,その正確なメカニズムは完全には解明されていない.また,FcγRIAおよびFcγRIIIAは,それぞれ豚繁殖呼吸障害症候群ウイルス(porcine reproductive virus and respiratory syndrome virus(13),デングウイルス(14),日本脳炎ウイルス(15)に感染した際のADEを媒介することが報告されているが,SARS-CoV-2感染のADEに関与しているかどうかは不明である.さらに,SARS-CoV-2感染のADEがマクロファージの異常サイトカイン分泌を引き起こすのか,あるいはSARS-CoV-2 variantsで感染のADEが誘導されるのかについては不明である.

そこでこれらの不明点に取り組み,我々は,COVID-19患者の回復期血漿を用いて,SARS-CoV-2感染のADEのメカニズムを調べたところ,感染のADEは主に2種類のFcγRが関与していることがわかった: FcγRIIAFcγRIIIAである

 

RESULTS AND DISCUSSION

SARS-CoV-2 infection induces antibodies that elicit ADE of infection:

我々はまず,FcγR自体がSARS-CoV-2の侵入を媒介するかどうかを調べた.我々は,ヒトFcγRFcγRIAFcγRIIAFcγRIIIA)またはヒトアンジオテンシン変換酵素2hACE2)(SARS-CoV-2の侵入受容体)を安定的に発現させたBHK細胞を作製した.野生型BHK細胞はヒトACE2の発現を欠き,SARS-CoV-2には感受性がないため(16),これらのトランスフェクトされたタンパク質がSARS-CoV-2感染のADEを媒介するかどうかを調べるために,これらの細胞を使用することができた.BHK細胞に,VSV-G遺伝子を欠き,SARS-CoV-2スパイク疑似ウイルス誘導したホタルルシフェラーゼを発現する水胞性口内炎ウイルス(VSV)を感染させた(VSV-SARS2-S).細胞は溶解され,感染後24時間(hpi: hours post infection)でルシフェラーゼ活性が評価された.予想通り、BHK-hACE2細胞はVSV-SARS2-Sに感受性を示したが,BHK-FcγRIABHK-FcγRIIABHK-FcγRIIIA細胞はhACE2を欠くために感受性を示さなかった(see Fig. S1A in the supplemental material(16).次に我々は,COVID-19患者の血漿がSARS-CoV-2感染のADEを媒介するかどうかを検証した.我々は,110の血漿サンプル(listed in Fig. S2A and B)の中から無作為に選んだ15の回復期血漿サンプルと,非感染者の血漿サンプル1つを用いた.BHK-FcγRIABHK-FcγRIIABHK-FcγRIIIA細胞に,連続的に希釈した血漿サンプルでインキュベートしたVSV-SARS2-Sを感染させた.24時間後にルシフェラーゼシグナルを評価した.我々は,どのサンプルでもルシフェラーゼシグナルを検出しなかったことから,FcγRsそれ自体を発現しているBHK細胞はSARS-CoV-2感染のADEを媒介していないことが示唆された(Fig. S1B to D

次に我々は,hACE2の存在下で感染のADEが惹起されるかどうかを検証した.我々は,BHK-FcγRIIA細胞をhACE2発現ベクターでトランスフェクトし,連続的に希釈した血漿でインキュベートしたVSV-SARS2-Sで感染させ,ルシフェラーゼシグナルを評価した.我々は,COVID-19患者の110の血漿サンプルをスクリーニングした.これらのサンプルを無作為に6つのグループに分けた(see Fig. S2A for complete results of the screen).Fig. 1で我々は,1:1,600の希釈で最も高いルシフェラーゼシグナルを示した5つの回復期血漿サンプル(compared to the control in Fig. S2A)と,代表的なデータとして2つの対照血漿サンプルの結果を示した.その結果,COVID-19患者の血漿(Fig. 1A, red lines)では,1:25希釈条件でルシフェラーゼレベルが対照血漿(黒線)に比べて有意に低く,VSV-SARS2-Sの中和が確認された一方,COVID-19患者の血漿の1:1,600希釈条件では,ルシフェラーゼレベルが有意に高く,ACE2の存在下でFcγRIIAを介して回復期血漿によりVSV-SARS2-S感染が増強されたことが示された(Fig. 1A.我々は次に,BHK-FcγRIIA細胞で感染のADEを誘発したのと同じ5つの血漿サンプルを用いて,hACE2をトランスフェクトしたBHK-FcγRIA細胞およびBHK-FcγRIIIA細胞で感染のADEを評価したところ,ACE2の存在下でもFcγRIAおよびFcγRIIIAを介してADEは誘発されないことがわかった(Fig. 1B and C

Fig. 1: ADE of SARS-CoV-2 infection is mainly mediated by FcγRIIA and FcγRIIIA. (A to E) Serially diluted convalescent-phase plasma from five individuals and two control plasma samples incubated with VSV-SARS2-S were used to infect the indicated cells that had been transfected with an hACE2 expression vector; the luciferase activity in the cell lysates was determined at 24 hpi. The experiment was performed with duplicate samples; means and standard deviations (SD) are shown. (F) Serially diluted convalescent-phase plasma from two individuals and two control plasma samples incubated with VSV-SARS2-S were used to infect the indicated cells, and the luciferase activity in the cell lysates was determined at 24 hpi. The experiments were performed in duplicate; means and SD are shown. Statistical analysis was performed using an unpaired t test. ***, P<0.001; **, P<0.01; *, P<0.05.

 

 

以前の研究では,FcRγサブユニット(Fc fragment of IgE receptor Ig [FCER1G])との関係が,細胞表面におけるFcγRIAおよびFcγRIIIAの活性化と機能に必要であることが報告されている(8).我々はそこで,FCER1Gを安定的に発現するBHK-FcγRIAおよびBHK-FcγRIIIA細胞を設計した.次に我々は,hACE2発現ベクターをトランスフェクトしたBHK-FcγRIA/FCER1G細胞およびBHK-FcγRIIIA/FCER1G細胞を用いて、感染のADEを評価した.我々はBHK-FcγRIA/FCER1G細胞では感染のADEは検出しなかったが(Fig. 1D),BHK-FcγRIIIA/FCER1G細胞では1:4001:1,600希釈の患者血漿でルシフェラーゼシグナルの有意な増加が観察されたことから,VSV-SARS2-Sによる感染はFcγRIIAだけでなくFcγRIIIAを介して回復期血漿によって増強されることがわかった(Fig. 1E.さらに我々は,hACE2を単独で発現させたBHK細胞では,感染のADEは検出しなかった(Fig. 1F).以上のことから,我々のデータは,SARS-CoV-2感染によって,ヒトにおける感染のADEを誘発する抗体が産生されることを示しているSARS-CoV-2感染のADEは,hACE2の存在下FcγRIIAおよびFcγRIIIAを介して観察された

次に我々は,感染のADEの評価を,hACEの存在下でBHK-FcγRIIIA/FCER1G細胞を用いた90の血漿サンプルに拡大した.1:1,600希釈血漿で最も高いルシフェラーゼシグナルが観察されたので(Fig. S2A; Fig. 1A and E),我々はこの実験条件でADE誘導血漿サンプルをスクリーニングした.我々は,対照血漿サンプルと比較して,BHK-FcγRIIA細胞およびBHK-FcγRIIIA/FCER1G細胞において,それぞれ1917.3%)および1516.7%)の血漿サンプルがルシフェラーゼシグナルを有意に増加したことがわかった(Fig. S2B and C検査した血漿のうち,6つ(6.7%)の血漿サンプルがFcγRIIAおよびFcγRIIIA/FCER1Gを介して感染のADEを誘導した

Antibodies that induce ADE of infection are present for at least 6months after infection:

我々は,COVID-19患者から診断後136ヶ月時点の回復期血漿を得た.そのため,COVID-19患者における感染のADEを誘発する抗体の持続期間を調べることができた.我々は,FcγRIIAを介した感染のADEに陽性であった8つの血漿サンプル(40014013401440314040404140484055)を選択した(Fig. S2A and B).hACE2発現プラスミドをトランスフェクトしたBHK-FcγRIIA細胞に,連続した希釈血漿をインキュベートしたVSV-SARS2-Sを感染させ,24時間時点でルシフェラーゼレベルを評価した.診断後3ヶ月また6ヶ月時点で採取した血漿では,診断後1ヶ月時点で採取した血漿で同定されたレベルまでルシフェラーゼシグナルが増加し(Fig. 2),ADE誘発抗体(ADE-inducing antibodies)は,SARS-CoV-2感染後少なくとも6ヶ月間は存在する可能性が示唆された

Fig. 2: Antibodies that induce ADE of infection exist for at least 6months after infection. Serially diluted convalescent-phase plasma samples (obtained at 1, 3, and 6months after diagnosis) from the indicated individuals and seven control plasma samples that had been incubated with VSV-SARS2-S were used to infect BHK-FcγRIIA cells that had been transfected with the hACE2 expression vector; luciferase activity in the cell lysates was determined at 24 hpi. The experiments were performed in duplicate; means and SD are shown.

 

 

 

 

SARS-CoV-2 infection is enhanced by convalescent-phase plasma in primary macrophages:

マクロファージは内因性にFcγRを発現している(7-9).そこで,ヒト初代マクロファージにおいて感染のADEが誘発されるかどうかを調べるために,我々は1:1,600希釈の回復期血漿でインキュベートしたauthentic SARS-CoV-2NCGM02)を単球由来マクロファージに感染させた.我々はこの実験では、FcγRIIAおよびFcγRIIIA/FCER1Gを介してADEを誘発した3つの回復期血漿サンプル(403140414048)を代表的な血漿として選択した.感染後24時間および48時間時点の細胞からRNAが分離され,ウイルスN遺伝子を定量化するために逆転写-定量PCRが行われた.我々は,感染後24時間および48時間時点において回復期血漿でインキュベートしたマクロファージでは,N遺伝子の発現が有意に増加していることがわかった(Fig. 3A).我々のコホートの患者は,20204月にCOVID-19と診断されており,初期SARS-CoV-2に感染していた.そこで次に我々は,これらの回復期血漿が,最近のSARS-CoV-2 variantsに対して感染のADEを誘発するかどうかを調べた.我々は,3種類のvariantsVOC202012/01あるいはB.1.1.7[QHN001]; VOC202101/02あるいはP.1[TY7-501]; VOC202012/02あるいはB.1.351[TY8-612])を用いて,初期株NCGM02で行った実験を繰り返した.我々は,回復期血漿でインキュベートしたvariantsに感染したマクロファージが,対照血漿でインキュベートしたマクロファージに比べて,高いレベルのN遺伝子を示したことがわかった(Fig. 3Bこれらの結果は,variantsでは感染のADEによって誘発されるN遺伝子の発現レベルの増加は低い傾向であったが,初期SARS-CoV-2株に感染した患者から採取した回復期血漿は,SARS-CoV-2 variantsに対する感染のADEも誘発することを示している

Fig. 3: SARS-CoV-2 infection is enhanced by convalescent-phase plasma in primary macrophages. Three representative ADE-inducing plasma samples (4031, 4041, and 4048) and control plasma were used for these experiments. Monocyte-derived macrophages were infected at an MOI of 1 with (A) NCGM02 or (B) QHN001, TY7-501, or TY8-612 that had been incubated with the indicated plasma diluted to 1:1,600. Total RNA was isolated from cells at 24 and 48 hpi. The N gene was quantified by RT-qPCR. Results are presented relative to the control plasma-treated cell levels (2−ΔΔCT). Statistical analysis was performed by using a one-way analysis of variance (ANOVA) followed by Dunnett’s test. ***, P<0.001; *, P<0.05. The experiments were performed in triplicate; means and SD are shown.

 

 

Contribution of ADE of SARS-CoV-2 infection to cytokine expression in macrophages:

COVID-19は,重症例は,炎症性亢進状態を引き起こし,マクロファージを含む免疫細胞においてインターロイキン6IL-6),IL-8IL-10,腫瘍壊死因子αTNF-α),CCL2などのサイトカインが異常に産生されるとも言われている(17-20)Zhengらは,SARS-CoV-2感染後,単球由来マクロファージにおいて,炎症促進性サイトカインの遺伝子発現がアップレギュレートすることを示した(21).我々は,回復期血漿がSARS-CoV-2感染を増強することがわかったので,SARS-CoV-2感染のADEがマクロファージにおける炎症性サイトカインの発現に寄与しているかどうかを評価した.我々は,単球由来マクロファージに,1:1,600希釈の回復期血漿(403140414048)でインキュベートしたNCGM02 SARS-CoV-2を感染させた.このマクロファージにNCGM02を感染多重度(MOI: multiplicity of infection1.0で感染させ,感染後24時間時点で上清を回収し,サイトカイン/ケモカインプロファイルを解析した.我々は,ごく少数のサイトカインを除いて,ほとんどの炎症性サイトカイン/ケモカインの発現レベルは,対照と比較してADE誘発血漿(ADE-inducing plasma)によって変化しないことがわかった(Fig. 4これらの結果は,ADE誘発抗体がマクロファージにおけるサイトカイン異常産生に寄与していない可能性を示している

 

 

Fig. 4: ADE of SARS-CoV-2 infection and cytokine expression in macrophages. Three representative ADE-inducing plasma samples (4031, 4041, and 4048) and control plasma were used for these experiments. Monocyte-derived macrophages were infected at an MOI of 1 with NCGM02 that had been incubated with the indicated plasma diluted to 1:1,600. Supernatant was collected at 24 hpi and analyzed for cytokine expression. Statistical analysis was performed by using a one-way ANOVA followed by Dunnett’s test. **, P<0.01; *, P<0.05. Data are means and SD.

 

 

本研究で我々は,SARS-CoV-2に対する回復期血漿中のADE誘発抗体を評価した.我々は,単球/マクロファージに発現している3種類の主要な活性化型FcγRsFcγRIAFcγRIIAFcγRIIIA)を評価した(7-9); FcγRIIIAはナチュラルキラー細胞にも発現している.我々は,FcγRsを介した感染の増強を評価するために,BHK細胞をモデルとして使用した.これらの細胞では感染のADEは誘発されなかったが(Fig. S1B-D),BHK細胞におけるSARS-CoV-2感染のADEには,FcγRIIAおよびFcγRIIIAだけでなく,hACE2も必要であることがわかったのは興味深い(Fig. 1A and E; この知見は,FcγRIIAおよびFcγRIIIAが感染のADEにおいてコアセプター(coreceptors)として機能していることを示唆している.なお,SARS-CoV-2感染時のFcγRを介したADEは,強力なADEを誘発することが知られているデングウイルス感染のADEと比較して,わずか(modest)であった(22)SARS-CoV-2感染のADEは,初代マクロファージでも確認され(Fig. 3A),過去にも報告されているように(12)hACE2FcγRsと同様に単球由来マクロファージに発現していることを示している.

いくつかのSARS-CoV-2 variantsが出現したことから,これらのvariantsの抗原性が初期株の抗原性と異なることが報告されているため(23, 24),我々はSARS-CoV-2への再感染のリスクを評価した.今回の研究では,variantsについて感染のADEが確認された(Fig. 3B).今回のコホートサンプルでは,>1400希釈血漿でのみ感染のADE が認められ,それよりも低い希釈率で強い中和活性が認められた(Fig. 2).これらの結果は,中和抗体が十分に存在する血漿では中和が起こる可能性があるが,ADE誘発抗体は中和抗体よりも低濃度で機能する可能性があることを示している.最近の研究では,SARS-CoV-2 Sタンパク質に対する中和抗体は最大8ヶ月存在することが示されていることから(25, 26)ADE誘発抗体は数ヶ月間は感染のADEを誘発しない可能性がある.COVID-19ワクチン接種者の抗体集団と期間に関する知見はまだ限られている.最近の研究では,FcγRを介さないSARS-CoV-2感染のADEの新しいメカニズムが明らかになった(27, 28).これらの研究は,SARS-CoV-2の初期株に基づいて開発されたワクチンに反応して産生された抗体が,B.1.617.2(デルタ)を含む最近のvariantsにおける感染のADEを誘発する可能性を示唆している(27, 28).ワクチン接種者にADE誘発抗体や中和抗体がどのくらいの期間存在するかを評価するには,さらなる研究が必要である.

最近の研究では,ADE誘発抗体とCOVID-19の重症度との間に相関関係があることが示唆されている(11).また,COVID-19患者では,マクロファージから炎症性サイトカインが異常に放出される高サイトカイン血症が発症することが報告されている(17-20).我々は,感染のADEが高サイトカイン血症に寄与しているかどうかを調べるために,ADE誘発血漿でインキュベートしたマクロファージからの炎症性サイトカインの放出を調べた.しかし我々は,ADE誘発血漿でインキュベートしたマクロファージでは,炎症性サイトカインレベルは増加しないことがわかった.これらの結果から,ADE誘発抗体は,炎症の誘導としては機能せず,抗ウイルス,すなわちマクロファージ内にウイルスを補足する,として機能する可能性が示唆された; なお,我々の実験では、マクロファージでSARS-CoV-2の複製は観察されず(データは示されていない),これは過去の研究と一致している(21, 29)

結論として,我々はSARS-CoV-2感染は感染のADEを誘発する抗体を誘導し,ヒトではSARS-CoV-2感染後少なくとも6ヶ月間はADE誘発抗体が存在することを明らかにしたこの感染のADEは主にFcγRIIAおよびFcγRIIIAによって媒介されるが,マクロファージによる有害な寄与は観察されなかったSARS-CoV-2感染におけるADE誘発抗体の効果を評価するには,長期的な研究が必要である.

 

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